第429話 人が集まらない時は

「は……?」


 現れた緑色の文字はギルドチャットの文字色で、発信者は〈Senkan〉なんだから、大和に違いないのだが、普段の大和からは想像のつかないログを目にし、俺の脳はしっかりと混乱してくれた。

 可能性としてあるなら、酔っ払い……?

 いや、でもあいつは酔ってるならログインするより寝ることを選ぶような奴だ。

 となると……。


「これは二人羽織ですな」

「へ?」


 後方から聞こえた言葉の意味が、俺には分からなかった。

 だが、その声はどこか楽しそうというか、自信満々というか、確信を持っているように感じられたのだが——


「二人羽織って……」

「せんかんのキャラだけど、中身はぴょんでしょ、これ」

「はっ!!」


 そういうことか!

 となると、なんだぴょんのやつ、大和んちに連泊か?

 ……いや、それは俺たちも同じだから何も言えないけど。


 とりあえず、謎が解けたことで俺も、ギルドチャットへ入力し。


〈Zero〉『悪霊退散!』

〈Loki〉『あ、これはそういうことだったんすか!?』

〈Senkan〉『臨兵闘者皆陣列在前!』

〈Zero〉『お前が言うんかい!』


 ツッコミつつボケてみたところ、見事なボケ返しがきたわけだが、素直なロキロキは素直な反応を示してくれました。

 いや、まぁロキロキもさすがにボケと分かっての反応だとは思うけど。

 てか——


〈Senkan〉『おいおい過疎ってんなおーい』

〈Jack〉『戻ってきたら、せんかんがガラ悪くなってるーーーーwww』


 ジャックも来てくれたけど、大和の中身のぴょん……やまぴょんが言う通り、たしかにもうすぐ集合時間だというのに、今日はやたらと集まりが悪い。

 そう思った矢先、ブブブッと同時に揺れた、2台のスマホ。

 その通知の主は、当然——


山村愛理>【Teachers】『集合遅いぞ野郎共!』20:34


 ですよねー。


「私がまとめて返しておくね」

「お、さんきゅ」


里見菜月>【Teachers】『私は体調不良につき、画面だけ見させてもらってます』20:35


 と、ご丁寧に自分がどこにいるかまで伝わる文面を送るだい。

 すると。


〈Senkan〉『だい大丈夫か?』

〈Jack〉『急にだいは俺の女感出してきたーーーーww』

〈Loki〉『違和感やばいっすね!w』

 

 即座に既読をつけたぴょんが、やまぴょんで発言し、ログインしているメンバーのツッコミが入る。

 

「これは私が打てばいいのかしら?」

「いや、ややこしいから!」


 そんなメンバーたちのツッコミに、後ろからはちょっとマジトーンな天然ボケが聞こえてきて、俺は即座にツッコミをいれる。

 あっちもこっちも忙しいな!


〈Jack〉『ちなみにリダたちは今日は実家行ってて来れないみたいだよーーーー』

〈Zero〉『ほう』

 

 これはもしかしたら、レッピーの方を手伝えるかもしれないな。

 みんなが来ない上にリダも来ないとなると、このメンツじゃ何だかんだ自由って可能性が高い。

 まぁまだ21時まで少しあるし、ゆめやゆきむらが来たら、何かやりたいことがあるかもしれないけど。

 と思ってたら。


神宮寺優姫>【Teachers】『事故渋滞に捕まってしまったので、帰宅遅れます』20:42

神宮寺優姫>【Teachers】『妹代筆』20:42


〈Senkan〉『なんだよゆっきーも来れねーのかよー』

〈Loki〉『ゆっきーさん、運転出来るんすか!?』

〈Jack〉『たしかに意外だよねーーーーw』


 と、そんな感じの連絡が続き——


〈Hitotsu〉『こんばんは!』

〈Senkan〉『いっちゃんよくきたな!』

〈Hitotsu〉『キャラ変!?』


 と、くる奴もいれば——


平沢夢華>【Teachers】『ゆめちゃんも欠席しまーす』20:56


 と、来ない奴もおり——


〈Jack〉『結局5人だねーーーーw』

〈Loki〉『何かやるには、ちょっと少ないっすね・・・』

〈Jack〉『何か希望あるーーーー?』


 ってことになったので。


〈Zero〉『あー、俺のフレがキングサウルス狩りに傭兵求めてんだけど、俺も行くから、サブ盾出せる人ー?ノ』


 と、切り出してみた。

 もし全員行くってなったらなったで別に削る敵のHPが増えるだけのことだしな。それにジャックは元よりロキロキも何かしら格闘か刀は鍛えてるはずだろうから、中身大和にしてもらっての〈Senkan〉と合わせて、誰か一人でも来てくれればよかったのだが。


〈Loki〉『俺あんまりサブ盾自信無いんで、せんかんさんかジャックさんにお任せするっす!』

〈Loki〉『いっちゃんさんが調理の制作スキル上げてるみたいなんで、素材狩りでも行ってきますよ!』

〈Hitotsu〉『え!いいんですか!?』

〈Loki〉『もちろん!』

〈Jack〉『せんかんは行けるーーーー?』

〈Senkan〉『しゃあねぇなぁ、俺様の実力見せつけてやるぜ!』

〈Jack〉『強気ーーーーw』

〈Jack〉『じゃあ、あたしも素材班行くよーーーー』

〈Hitotsu〉『ええ!ありがとうございます!』

〈Zero〉『じゃあ、それでいこう。大和でよろしくろw』

〈Zero〉『ロキロキとジャックは、妹をよろしく!』


 という流れで今後の予定が決定する。

 ちなみにまだあーすからの音沙汰がないが、あいつは全く来るかどうか読めないから、とりあえずいいや。


 ってことで。


〈Zero〉>〈Reppy〉『うちのサブ盾げっつ。初めましてだろうから、俺も行くよ』

〈Reppy〉>〈Zero〉『お、たまにはいい仕事するじゃん!』


 早速レッピーに報告し、これからの予定が確定する。

 ちなみにうちの予定が決まるまでレッピーとは雑談というか、来週実装される新アクセサリー装備への願望を語り合うという何の生産性のない会話を繰り広げていたんだぞ。

 ちなみにログこそないが、だいも俺の画面を見ながら色々言ってたので、俺としては3人で会話していた気分である。


〈Zero〉『〈Reppy〉ってのから誘いいくから、よろ!』

〈Senkan〉『俺復活!了解!』

〈Jack〉『戻ってきたーーーーw』

〈Loki〉『せんかんさんこんばんはっす!w』

〈Hitotsu〉『こんばんは!』

〈Senkan〉『いつから戻ったと錯覚していた・・・?』

〈Loki〉『えぇ!?』

〈Senkan〉『なんつって』

〈Zero〉『ややこしいんだわバカップル!』

〈Jack〉『一緒の画面見てる人たちに言われたくはなさそーーーーw』

「たしかに」

「バカップル認めるんかい!?」


 とまぁ、紆余曲折ありながらも、これにて今日の活動が決定で、めでたしめでたし。

 そういや大和と他のギルドのヘルプに行くのは初めてだな。

 ま、あいつ社交的だから大丈夫か。


 そう考えながら、俺はレッピーをリーダーとする大和も加わったパーティへと参加するのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る