第405 気をつけろ ノリと勢い 長話
〈Zero〉『おつかれっしたー』
〈Ikasumi〉『あざした!w』
〈Rei〉『おつかれさまですー』
〈Daikon〉『お疲れ様でした』
〈Reppy〉『おつー』
10月9日24時16分。つまり、10月10日0時16分。スキル上げを終えた俺たちはそれぞれホームタウンに帰還。
そしていつも通り、互いに労いの会話をして、いつも通りの流れを知るメンバーだからこそ、それぞれが自由にパーティから抜けていく、と思ったのだが。
〈Reppy〉『なぁなぁ』
〈Zero〉『ん?』
今日抜けたのはイカさんのみで、レイさんもレッピーも、残ったまま。
そんな状況でレッピーが何か話を切り出してきた。
〈Reppy〉『今日やってて思ったんだけど』
〈Zero〉『うん』
〈Reppy〉『ゼロやんとだいって、ボイチャでやってん?』
〈Reppy〉『や、だいに細かい指示出してねーのに、やたら場面でしっかり動いてたじゃん?』
〈Reppy〉『さすがに臨機応変ってレベルじゃねーし』
〈Reppy〉『え、まさか戦闘中だいにだけ個別メッセとかダルくてキモいことしてんの?』
〈Rei〉『阿吽の呼吸ってやつかもー?』
〈Reppy〉『そういうのもゼロやんとだいならあると思うけどさー』
〈Reppy〉『俺がミスって
〈Reppy〉『巻き込んだ敵のタゲ、秒でだいが取ってくれたじゃん?』
〈Rei〉『ありましたねー』
〈Reppy〉『で、そいつを一旦マラソンして遠く持ってって』
〈Reppy〉『その隙にゼロやんが火力上げて一気に先に戦ってた方倒したけど』
〈Reppy〉『倒した直後ジャストタイミングでだいがこっち戻ってきてたじゃん?』
〈Rei〉『あー・・・そうだったような?』
〈Reppy〉『で、ゼロやんが秒でだいがマラソンしてるのに空砲かましてたじゃん?』
〈Reppy〉『あんなん阿吽の呼吸とか言うなら、もうお前ら結婚しろwってレベルだぜ?』
〈Rei〉『あーw』
……ふむ。
鋭い。
結婚しろ、って発言まで、絶妙に鋭い。
とはいえ、だ。
「よく見てたわね……」
「まー、伊達に長年やってないってことだな。さて、なんて言うかね」
「うーん……レッピーさんに正直に言うと、色々いじられそうよね……」
「まぁ、だろうな」
歯に衣着せぬレッピーだ。それを知ればここぞとばかりにいじってくるのは明白だろう。
と、なると……。
「適当に誤魔化してみるから、だいも適当に合わせてなんか言ってみてな」
「分かった。よろしくね」
まぁ、とりあえずボイチャってことにしといた方が、楽よな。
〈Zero〉『次の拡張でボイチャあった方がいいって話だからな。今から練習中だよ』
〈Reppy〉『ログの会話しねぇのにボイチャはすんのかよw』
〈Reppy〉『マジでどんな関係だお前らw』
〈Zero〉『7年来の長期フレンド!w』
〈Rei〉『おー、ながー』
〈Daikon〉『フレンド歴はレッピーさんの方が長いんじゃ?』
〈Reppy〉『うへ、もうそんな経つんかー。マジに腐れだな』
〈Rei〉『ほうほう。腐の関係なんですねー』
〈Zero〉『なんかその言い方やだな!』
〈Reppy〉『でもそうか』
〈Reppy〉『ボイチャかー』
〈Reppy〉『ボイチャ、俺も準備してみっかなー』
こんな感じで適当に誤魔化してみたが、案外なんとかなるもので、特に深掘りされずに話が進む。
というかレッピーはあれだな、俺たちに興味があったんじゃなく、ボイスチャットに興味があった、って感じなんだろうな。
なんか、嘘でごめんと、ちょっと罪悪感。
〈Reppy〉『次ってPvP実装じゃん?どんなシステムでやんだろなー。攻防比のバランスとか、激ムズじゃね?』
〈Zero〉『既存のデータじゃ攻撃スキル当てたら一撃必殺になりかねないもんな』
〈Rei〉『いっそFPSみたいなシステムになったりしてー』
〈Zero〉『いや、それじゃもう別ゲームじゃんw』
〈Reppy〉『ま、与ダメ設定ゴン下げしてやってくのかなー』
〈Rei〉『ガンナー有利そうですよねー。射程ないし』
〈Zero〉『いや、攻撃の適距離仕様はさすがに設定されるでしょ』
〈Reppy〉『ま、とにかくは実装待ちかー』
〈Rei〉『ですねー』
そしてあっという間に話題が変わる。この辺はみんなゲーマーだから、ってとこが強そうだ。
何はともあれ、上手く誤魔化せて安心安心。
さて、じゃあもう時間も時間だし、明日もあるし、落ちようか。
そう思ったのだが。
〈Reppy〉『あとそうだ、レイはいつのまに二人と知り合ったんだ?』
〈Rei〉『聞きたいですかー』
〈Rei〉『お手伝い先でだいさんと会って』
〈Rei〉『その後、だいさんからスキル上げ誘われたら』
〈Reppy〉『!?』
〈Rei〉『実はゼロさんの主催だった、って感じかなー』
〈Reppy〉『だいが誘うことなんてあんの!?w』
〈Daikon〉『あります』
〈Reppy〉『www』
〈Reppy〉『今世紀最大の衝撃だわ』
〈Zero〉『そこまでかよw』
〈Zero〉『まぁでも、だいの目は確かだったと思うよ。ガチに上手い』
〈Rei〉『いやいやー。そんなことないですよー』
〈Reppy〉『ほほう』
〈Reppy〉『ゼロやんがサポーターの奴をそんなガチ褒めすんの初めて聞いたな』
〈Rei〉『むむ?』
〈Reppy〉『まぁ、
〈Reppy〉『レイ、遜色ない感じなん?』
〈Zero〉『難関コンテンツ一緒にやったことないから、確実なことは言えないけど』
〈Zero〉『振り返ってみれば戦闘がノーストレスだったなぁとか』
〈Zero〉『いつもより自分が強かった気がするとか』
〈Zero〉『パーティ終わった後、ジャックとなんかやった後と同じ感覚があるんだよな』
〈Daikon〉『言いたいこと、分かる』
〈Rei〉『えっと、私、褒められてます?』
〈Daikon〉『レイさんは上手い』
〈Reppy〉『おおwだいのお墨付きじゃんw』
〈Reppy〉『誇りたまえ^^』
〈Rei〉『なんかウザ^^』
〈Reppy〉『^^』
〈Zero〉『仲良いんだなw』
とまぁ、こんな調子で会話が進んでしまい、なかなか落ちるタイミングが掴めない。
しかしだいがギルドメンバー以外とこうやって話すなんてマジで珍しいな。
……いや、元々どんだけ静かなんだって話なんだけど。
〈Rei〉『私から言わせればゼロさんとレッピーの方が仲良しだと思いますよー?』
〈Zero〉『いやぁ』
〈Reppy〉『仲良し、かー』
〈Zero〉『なんか違うよな?』
〈Reppy〉『うむ。割り切った関係だからな^^』
〈Rei〉『えー、なんだかアダルティー』
〈Zero〉『なんでや!』
「ふふ、仲良しじゃない」
「どこがだよっ」
そして仲良しというワードから話が変わり、俺とレッピーが仲良しじゃないかとレイさんが言ってきたが、何というか、俺とレッピーはそんな感じではないのだ。
もちろんアダルティな割り切った関係なんかは全くの的外れだが、そんな会話にだいが笑い、俺はオンでもオフでもツッコミをいれるという事態に。
でもほんと、なんて言うかな、俺とレッピーは文字通り腐れ縁ってのが適切なのだ。
言いたいことを言い合って、気の向くままに遊び、都合が悪ければその時はそれまで。
ずっと一緒にいただいとの関係とは、全く違う。
お互いがお互いに対して自由という、そういう関係なのだ。
だから普通に笑い合って話すこともあれば、そうじゃない時もある。
こんな、場面で変わる関係は、仲良しとは言わないだろう。
お互い都合のいい相手。
なんか言い方が悪いから、つまり腐れ縁。いや、これも言い方は決していいわけじゃないけど、そんなもんなのだ。
〈Reppy〉『そもそも元々会った時から仲良しってわけでもなかったしな』
〈Zero〉『うむ。ギルドの一員、くらいだわな』
〈Reppy〉『ぶっちゃけ【Natureless】時代のゼロやんと今のゼロやんは別人やで』
〈Rei〉『ほほー』
〈Zero〉『まぁ、そうだな。あの頃は別にフレンドも多くないし、主催とかもやってないしな』
〈Reppy〉『いつ頃だったかね。だんだんギルドの雰囲気悪くなってきて』
〈Reppy〉『そのことの陰口言い合って、俺らフレンドなったくらいの関係やで』
〈Rei〉『おー、なんか女々しいですなー』
〈Zero〉『でも、俺とレッピーがフレンドなったのはその経緯で間違ってないw』
〈Daikon〉『そうなんだ』
〈Rei〉『あれ?だいさんもあんまり知らない感じなんです?』
〈Reppy〉『まーそもそも、俺とだいがそんな絡みないからなー』
〈Reppy〉『そんなもんっしょ』
〈Rei〉『友達の友達は友達ではー?』
〈Reppy〉『舐めんなよ?w』
〈Reppy〉『フレンド登録もしてないからな!』
〈Zero〉『え、そうなの!?』
〈Daikon〉『うん、してない』
〈Reppy〉『でもあれだな』
〈Reppy〉『ゼロやんを介してパーティ一緒なるとかはあったけど』
〈Reppy〉『昔の方がもうちょい喋って、草生やしてくれたりした気がするな』
〈Rei〉『え!だいさんって草生やすんですか!?びっくりだー』
そして、俺とレッピーの関係の話から巡り巡ってなぜか、今度はだいへ話題の中心が移っていく。
そんな状況に振り返って当人の様子を伺えば、何と答えたものか悩んでいるような、困惑した様子が一目瞭然。
まぁ、あれだよな。最近はめっきり女として話すけど、昔は男のフリをしてくれてたわけだもんな。こいつの性格を思えば、頑張ってノリに合わせてた部分もあったのだろう。
俺からしても、会話の中でだいが草を生やしていたのは遠い記憶である。
〈Daikon〉『素は、今』
〈Reppy〉『暗すぎるんだろw』
〈Zero〉『いや、でもだいは確かに元々こんな感じだよw』
〈Zero〉『初めてパーティで会った時とか、挨拶くらいしか言ってこない奴だったし』
〈Reppy〉『ほんとにそんな奴がボイチャしてんのかよw』
そんなだいの答えから、さらに巡って再び話題が俺とだいがボイスチャットしていることに逆戻り。
こうなると、もう俺とだいがオフ会を通してリアルで知り合ってるのは、伝えたほうがしっくりくるか。
〈Zero〉『うちのギルド、オフ会やったから、リアルで知り合ってんだよ俺らw』
ってことで、俺はここでリアルで繋がりがあることをカミングアウト。
まぁたぶんこれで、レッピーなら納得してくれる、だろう。
そう思ったのだが。
〈Reppy〉『オフ会なんてやってんのかよ!』
〈Reppy〉『え、誰々さん実は女だったの!?みたいなことが起きるあれか!』
予想以上にレッピーが盛り上がった反応を見せた上に、これまた絶妙に真実を突いてきて、俺は思わず苦笑い。
「実は女でした」
「えぇっ!? そ、その節はすんませんでしたっ」
そんなレッピーの反応に誘われてか、不意に聞こえた俺いじり。
当然それに、俺はたじたじにならざるを得ず、そんな俺の反応にだいの小さく笑う声が聞こえてくる。
こ、こいつ、会話のタゲが自分から逸れたと安心しているな……!?
〈Reppy〉『しかしそうか、リアフレなのかお前ら』
〈Zero〉『まー、うちのギルドは全員会ったな』
〈Reppy〉『規模でか!』
〈Reppy〉『おいおいまさかあれかー?実はオフ会で会ったら女だらけで、僕実はハーレムなんですよ、ぐへへwwwみたいなことなってんのか!?』
っ!?
エ、エスパー!?
「ハーレムだと思ってるの?」
「え、あ、いや、僕は菜月一筋だよ?」
「でもそうね。ギルド以外の人も、会う人会う人女の人ばっかりだものね。よかったわね、ハーレムで」
「ええ!? な、なんか冷たくない!?」
「別に」
そしてレッピーの更なる発言が、奇跡的な的中具合を見せ、何か面白くてツボに入ったのだろう、珍しく悪ノリするだいが現れる。
俺からすれば全くもって不可抗力な事実なだけなのに!
そんな俺を嘲笑うかのように、背後から聞こえるクスクスという笑い声。
〈Reppy〉『んだよー。なんか楽しそうなことやってんなー』
〈Rei〉『すごいですよねー』
そんな俺のリアルの状況など伝わるはずもなく、画面上では【Teachers】に驚く二人の会話が続くが、そんな状況が、ある発言で一変する。
〈Rei〉『私もリアフレですけどね!』
〈Reppy〉『!?!?』
〈Rei〉『昨日の夜も会ったくらい、ご近所さんなのです☆』
〈Reppy〉『え、そんななん!?』
きっとそれは、レイさんからすればこの流れに乗った、ノリで言ってしまった発言だったんだろうけど、その発言に反応したのは、レッピーだけにあらず。
「昨日の、夜?」
さっきまでクスクス笑っていた、そんな雰囲気は闇の彼方へ消え去った。
背後から聞こえた静かな声に、俺は恐れ慄き、その首を振り返らせることが出来ないのだった。
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