第403話 大人たちの週末
〈Zero〉『よっす』
〈Daikon〉『こんばんは』
〈Jack〉『やっほーーーーw』
〈Loki〉『こんばんはっす!』
〈Zero〉『お、今日は人少ないな』
〈Jack〉『金曜だしねーーーー。みんな飲みに行ってるのかもーーーー?』
〈Loki〉『お二人は今日もスキル上げっすか?』
〈Zero〉『おうよ!次はだいのキャップ目指すぜ!』
〈Jack〉『おーーーー!ゼロやんおめーーーーw』
〈Loki〉『え?あ、そういうことか!おめっす!』
〈Loki〉『キャップ持ち仲間っすね!w』
〈Zero〉『おう!さんきゅ!w』
〈Jack〉『次の拡張じゃキャップ解放ないみたいだし、これで他のことに集中できるねーーーーw』
〈Zero〉『だな!拡張前の新アクセドロップコンテンツ、追加されんのもうすぐだろ? 周回頑張ろうな!w』
〈Loki〉『うす!w』
〈Jack〉『おっけーーーーw』
〈Zero〉『じゃあ、行ってくるわw』
〈Jack〉『だいも頑張ってねーーーーw』
〈Daikon〉『ありがとう。行ってきます』
だいと揃ってログインしたところ、そこにいたのはわずか二人。
この21時半という時間にこの人数ということは、今日は珍しくこのまま人が少ないのかもしれない。
まぁ今日は活動日じゃないし、みんなと遊ぶわけじゃないので関係ないのだけど。
「今日はぴょん、せんかんちにお泊まりだって」
「あ、そうなの? ……俺大和から何も聞いてないな」
「え……私が泊まる日、毎回せんかんに言ってるの?」
「いや、言わねぇよ!? って……そうか。うん、俺がそうなら、大和もそうだよな」
「うん。男同士って、そんなものなんじゃないの?」
「たしかにそうでした」
そんなメンバーの少なさを話題にだいと話し、改めて男同士のそっけなさと、女性陣の連絡のマメさを実感する。
しかしほんと、だいたちは仲良しだな。
「ちなみにゆめはお友達と飲み会だって」
「ほうほう」
ま、金曜日ってそういう日だもんな。
俺もたまには職場の人らと飲みに行くし、それはゆめの自由なのだ。
……ん? ってことは、もしや……俺が大和に言ってたりしなくても、だいがぴょんに伝えることで、俺とだいがいつ会ってるとか、大和にも伝わってるかもしれないのか……?
……いや、この辺は考えてもしょうがない。別にやましい事なんて何一つないんだし。
うん、切り替え切り替え、俺たちは俺たちだ。
ということで、俺はスキル上げのメンバー集めのため、まずは最近の固定メンバーの3人がログインしているか、フレンドリストを確認しようとした。だがその時、ふとフレンドという言葉から思い出したことがあった。
そういえば昨日、
なんだかんだ無視する形になっちゃったわけだからな、さすがに連絡くらいしておくか。
そう思って俺はアルファベット順にずらっと並んだフレンドリストからRの辺りを探して、名前を選択し、メッセージを作成、送信。
〈Zero〉>〈Reppy〉『昨日はすまん!離席してた!何用だったんだ?』
これで、よし。中身がいればすぐ返ってくるだろうし、いなきゃいないで、後でなんか返ってくるだろ。
そう思って、俺は改めてレイさんとイカさん、ハニーさんを探そうと思ったら。
〈Reppy〉>〈Zero〉『肝心な時いないその使えなさ、安定してんなー』
と、何とも辛辣なメッセージが返ってきた。
だがそのメッセージに、俺が憤慨するなんてことは、全くない。
この口の悪さはレッピーの通常運転だし、むしろこんな性格だからこそこれまで長く付き合ってきたとも思えるから。
言うなれば、いじりいじられ好き勝手に言いたいことを言えるから、ここまで長続きした関係なのだ。
だいとは違う安心感があるんだよね。
「ちょっとレッピーからメッセきたから、パーティ少し待って」
「あ、そうなんだ。じゃあ私がみんなに声かけておくよ」
「え、いいの?」
「さすがにこれだけ固定で組んでたら、私だって話せます」
「おお……じゃあ、頼んでみようかな」
「うん。任せなさい」
返事が来たからちょっと話す、それをだいに告げ、パーティ編成を少し待ってもらおうとしたら、まさかまさかのだいからの提案がきて、俺は本当にちょっとびっくりした。
スキル上げを半固定でやり続け、既にすっかり顔馴染みとはいえ、だいがメンバーたちと日常会話している光景は、なんだかんだ見たことがない。
もちろん全く話さないわけじゃないけど、基本挨拶かLAに関する内容以外、話しているのを見たことがないのだ。
……え、まさか、挨拶してるから、ちゃんと話してる認定ってこと?
ううむ……で、でも本人が言うのなら……とちょっと悩んでから、俺はだいに声かけを託し、レッピーにメッセージを返すことに。
〈Zero〉>〈Reppy〉『まぁまぁwそれで?』
〈Reppy〉>〈Zero〉『いや、相談というか報告というか、昨日びっくりなことがあってだな』
〈Zero〉>〈Reppy〉『ほうほう。珍しいな、そういうの』
〈Reppy〉>〈Zero〉『うむ。で、経緯を話すと』
〈Reppy〉>〈Zero〉『昨日うちのギルメン3人しかおらんかったから、暇なんでキングサウルスの錫杖でも狙うかと野良募集かけたんよ』
〈Zero〉>〈Reppy〉『ほうほう。ついにヒーラーの目覚めか』
〈Reppy〉>〈Zero〉『それはそれ。しかも結局出なかったしな!今度手伝え^^』
〈Zero〉>〈Reppy〉『行けたら行く^^』
〈Reppy〉>〈Zero〉『まぁそんなんどうでもいいや。それでな』
〈Reppy〉>〈Zero〉『大物きてん』
〈Zero〉>〈Reppy〉『どうでもって・・・え?大物?』
〈Reppy〉>〈Zero〉『うむ。で、これはお前に言わねばと思って連絡したんよ』
〈Zero〉>〈Reppy〉『俺に?何でだ?誰が来たんだ?』
〈Reppy〉>〈Zero〉『聞いて驚くなよー?』
〈Zero〉>〈Reppy〉『もったいぶんなw』
〈Reppy〉>〈Zero〉『セシルきた』
……え?
ポンポン続いたやりとりの中、その名前を見て、俺の心に何か、もやもやしたものが立ち込める。
それは最近俺が、意図的に名前を思い出さないようにしていた名前で、心のしこりというか、そんな感じになっていた名前だ。
でも、当然そんな俺の事情をレッピーが知るはずもないから。
〈Reppy〉>〈Zero〉『いや、流石の俺でもこれはビビるっしょー?』
〈Reppy〉>〈Zero〉『なんで【Vinchitore】の幹部がソロで野良参加してくんのってな!』
〈Reppy〉>〈Zero〉『でもなんか、お前知り合いなんだろー?噂に聞いたぜー』
〈Reppy〉>〈Zero〉『おーい?』
〈Zero〉>〈Reppy〉『あ、うん。そらびっくりだな。いやぁ、驚いたわw』
〈Reppy〉>〈Zero〉『あー?どうしたお前?』
昨日の連絡に対し、メッセージを返さなきゃよかったと、本気で思ってしまった。
だが、話しかけてしまったものはしょうがない。
しかしほんと、この名前が出ただけでまさかここまで動揺するとは……我ながら情けない。
そりゃね、別にあいつが引退したわけでもないし、そこら辺の街とかで俺が出会っていたっておかしくなかったのだ。
たまたま会わなかっただけ。
まだフレンドリストに、名前は入ったままだしな。
〈Zero〉>〈Reppy〉『え?いや、普通だよ?普通普通。超普通』
〈Reppy〉>〈Zero〉『あー?・・・まぁいいや。でもあれなのな、セシル』
〈Zero〉>〈Reppy〉『ん?』
〈Reppy〉>〈Zero〉『割と普通だったわー。まぁ参加枠はガンナーじゃなく、グラップラーだったんだけど』
……あいつに対してそんなこと言えるのは、さすがレッピーだ。
その辛辣な彼女への言葉に、知り合いってことに対する追及を全くしてこないこのフレンドに、俺の中の動揺が少し和らぐ。
〈Zero〉>〈Reppy〉『言い方ひでぇなw』
〈Reppy〉>〈Zero〉『まぁメイン武器じゃないのに格闘もカンスト近いってのはすげーと思うけどさ。でもスキルレベルは時間さえあれば上げれんじゃん?』
〈Reppy〉>〈Zero〉『しかもあれは最初から良装備でスキル上げ始めたタイプだな。下積みが足りないように見えたぜ』
〈Zero〉>〈Reppy〉『まー、【Vinchitore】の幹部だしな。装備は揃ってたろうな』
〈Reppy〉>〈Zero〉『そんなん甘えだ甘えー』
ほんと、あいつのことをそんな風に言えるのは、俺の周りじゃお前くらいだよ、と思いながら、俺はこのやりとりで思わず口元を緩ませた。
どこか特別な存在だと思っていたセシルという名前が、レッピーと話している内に、何だかそうでもない存在に、何となく思えてきたんだと思う。
〈Zero〉>〈Reppy〉『はいはいwで、普通ってことは、なんかやらかされたか?』
〈Reppy〉>〈Zero〉『まさか。ノーミスよノーミス。むしろ俺のMP切れで回復遅れて、ボス手前の2体同時戦で一回うちの
〈Zero〉>〈Reppy〉『おいw』
〈Reppy〉>〈Zero〉『まぁでもノーミスだけど、なんつーかな、お手本通りのプレイって感じ過ぎてなー。よく喋ってくれたし、盛り上がりはしたんだけど、プレイ自体は派手さもないし、普通って感じだったわ』
〈Zero〉>〈Reppy〉『メイン武器じゃないんだし、むしろそれは上手いというべきなんじゃないか?』
〈Reppy〉>〈Zero〉『あー、まぁそう言えるかもしれないけど、そう言えないかもしれないじゃん?少なくとも公開動画に載ってるもぶくんのが上手いと思うぜ』
〈Zero〉>〈Reppy〉『それ本職の幹部じゃねえかよw』
そして身も蓋もない比較対象の登場に、俺は思わず吹き出して笑ってしまった。
でもたぶん、次にもしレッピーの募集にあいつが参加するようなことがあったら、きっとレッピーの評価は変わると思う。
あいつは……馬鹿みたいにLAに没頭してきたあいつは、経験を反復し、動きを最適化することに長けた奴なのだから。
前回以上の動きは、ほぼ確約されていると言っても過言ではないだろう。
まぁ、その次があるかどうかは分からないし、あえてそれを俺が言うこともないのだけれど。
「どうしたの?」
こんな風にレッピーと話しながら、少しだけあいつのことを思い出していたら、不意に聞こえた背中側からの声。
あ、そうか、あれ今笑っちゃったもんな。
そりゃ当然、俺の笑い声に反応するだろう。
「いや、すまんすまん。レッピーが面白いこと言い出すからさ。それよりそっち任せっぱでごめんな。みんないたか?」
そんなだいの問いかけに答えつつ、俺はレッピーとの会話を中座して、椅子を回転させ、だいの方に顔を向けて尋ねる。
すると。
「レイさんとイカさんは誘ったけど、ハニーさんは今はいないみたい。イカさんがメイン盾役でもいいよって言ってるし、レイさんはサポーター1枚でもいけますって言ってるから、あと一枠は誰でも良さそうだけど」
「ふむ。あ、じゃあちょうど話してるし、レッピーに声かけてみるか」
「うん、分かった」
何とも律儀な返答が返ってきたから、その律儀さに報いるように、俺もパーティ編成へ提案を返す。
それと同時に送られてきただいからのパーティの誘いに応え、俺もようやくパーティへ。
しかしあれか、律儀に俺がレッピーと話し終わるの待っててくれたのか。
さすがだなぁ。
〈Zero〉『よっす!w』
〈Rei〉『こんばんはー』
〈Ikasumi〉『だいさんから連絡とか、何事かと思って焦った!w』
〈Ikasumi〉『激レアすぎるw』
〈Zero〉『うむw』
「むぅ……」
だが参加したパーティメンバーであるイカさんの発言に、どうやらだいはちょっと不服のようで、後ろから可愛らしい不満な声が聞こえたりしちゃったり。
っと。
〈Reppy〉>〈Zero〉『ま、そんな報告だったわけよ』
改めてレッピーとのやりとりを振り返れば、俺が送ったメッセージの後にレッピーからもレスが来ていた。
おそらくそのメッセージを受けてから少し間が空いたと思うが、あえてそこには触れず。
〈Zero〉>〈Reppy〉『じゃあスキル上げ行こか^^』
と、流れ無視の誘いをかます俺。
ほんと、こういう時話しやすいフレンドは便利だな!
〈Reppy〉>〈Zero〉『えー急にー?』
〈Reppy〉>〈Zero〉『これからバザールの商品全チェックして1円商品見つけて買って売っての一攫千金ツアーに行こうと思ってたのになー』
〈Zero〉>〈Reppy〉『ねぇよそんなん!w』
そして俺の誘いにあからさまなだる絡みを見せたレッピーへ、俺は問答無用の誘いを送る。
そして予想通り。
〈Reppy〉『よろー』
と、すぐに誘いに応えるあたり、ほんと空気の読めるフレンドである。
〈Rei〉『あら。こんばんはー』
〈Daikon〉『よろしくお願いします』
〈Ikasumi〉『レッピーさんじゃんwレッピーさんもゼロさんの知り合いなん?w』
〈Reppy〉『おー、イカちゃんおひさー』
〈Reppy〉『ま、ゼロやんと俺は腐れ縁っつーか、腐った縁っつーか、腐れ外道っつーか』
〈Zero〉『おいw』
〈Reppy〉『知り合いかどうかったら、知り合い。だからだいも知り合い』
〈Ikasumi〉『なるほどw』
〈Rei〉『私のことも紹介してくださいよー』
〈Zero〉『あれ?レイさんとも知り合いなの?』
〈Zero〉『レッピー顔広いなw』
〈Reppy〉『お前に言われたくはないわな』
〈Reppy〉『ちなみにレイは、うちの傭兵』
〈Ikasumi〉『傭兵?』
〈Reppy〉『ギルメンじゃないけど、なんかやる時は基本声かける相手なのさ』
〈Rei〉『声かけられてますー』
〈Ikasumi〉『ほー。たしかにレイさん上手いもんなぁ。頼めば、うちの助っ人もやってくれるのかな?』
〈Rei〉『暇してる時なら大丈夫ですよー』
とまぁ、空気の読めるフレンドの顔の広さを改めて実感しつつ、俺はレイさんの不思議な立場に少し疑問も抱いた。
一回装備とか見させてもらった時のステータス表示に、所属ギルドは書いてた記憶がある。
でもこんなにもいつも俺たちとスキル上げにも行ってくれてるし、傭兵にも応じているという。
もちろん雑談オンリーのギルドなのかもしれないけど、なんでだろ?
あ、ちなみにレッピーはまったり系ギルド【
こいつがリーダーとか俺はちょっと願い下げだけど、なんだかんだ安定した運営をしている、イメージはある。
まぁ人は見かけによらないってことなのだろう。
イカさんのギルドは……なんだっけ、忘れたな!
〈Zero〉『じゃ、レッピー大剣で、イカさん盾で一狩りいきますか!』
〈Ikasumi〉『おう!』
〈Rei〉『はーい』
〈Daikon〉『了解』
〈Reppy〉『行ってらっしゃい!^^』
〈Zero〉『お前も行くんだよ!w』
って、ログインしてから紆余曲折あったけど、22時02分、俺たちは毎度のことながら、山脈地帯へと繰り出すのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます