第390話 試される愛⑦

〈Daikon〉>〈Zero〉『恥ずかしそうなところなんだけど』


 腹をくくりにくくって伝えた言葉。その言葉たちを味わっているのか、俺のログがひと段落しても、すぐにはみんなの反応は来なかった。

 そんなタイミングできた、だいからの個別チャット。

 なんでこのタイミングで個別に?

 もしや俺に感化されて、だいも感謝を伝えたくなったとか?

 なんて思ってたら。


〈Daikon〉>〈Zero〉『一人分、足りない』

〈Zero〉>〈Daikon〉『へ?』


 何やら不思議な内容が告げられ、その言葉の意味を考えてみたわけだが……あ。

 遡った自分の発言ログを振り返り、俺はだいの言葉の意味を知る。

 そして取ってつけたように急いでキーボードを叩き始めた、のだが。


〈Pyonkichi〉『いやぁ、よく恥ずかしげもなく言えたもんだなぁ!』

〈Yume〉『ね〜wでもそっか〜、わたしたち一生覚えててもらえるんだね〜w』

〈Jack〉『でも言葉にされると、言われる方も恥ずかしいもんだねーーーーw』

〈Loki〉『俺、もっともっとみんなの役に立てるように頑張るっす!』

〈Yukimura〉『私、尊敬されてるんですか?むむ?』

〈Hitotsu〉『いやぁ、いい兄を持ってよかったでありまーすw』

〈Soulking〉『ほんとはもっとみんなと遊びたいんだけどね!でも、いいこと言ってくれるなぁw』

〈Gen〉『うむw俺より【Teachers】に強い想い持ってそうw』


 と、みんなの反応が始まってしまって、俺はそっと打ち始めた文字を取り消した。

 今更追加で書いたところで、もう後の祭りだなって思ったから。

 そして。


〈Senkan〉『あれ?俺だけハブ?』

〈Pyonkichi〉『ん?』

〈Yume〉『およ?』

〈Yukimura〉『むむ?』


 と、だいのご指摘通り、足りなかった一人分が、当の本人から告げられた。

 いや、別に感謝してないわけじゃないよ?

 でもなんというか、もう俺にとって大和は、ギルドメンバーというよりは、職場の同僚って感覚が強いわけだし? 1回目の引退前なら確実に忘れなかったと思うんだけど、うん。


〈Zero〉『いつも感謝してるよせんかんくん』


 ってことで、さっき一回消したログを手直しつつ改めて打ち、俺はこれ以上ない感謝を同僚にして友である大和へ送った。

 もうこの言葉には心からの謝意で溢れまくっている、というのに。


〈Senkan〉『棒読み臭がひどいぜマイフレンド!』

〈Zero〉『そんなことないよ?』

〈Yume〉『珍しいゼロやんが攻めだ〜w』

〈Senkan〉『学校じゃ肩組んで歩く仲じゃないか!』

〈Daikon〉『え』

〈Jack〉『おおっとーーーーwこれはだいのガチ引きだーーーーw』

〈Pyonkichi〉『いや、マジにそんなことしてんのかよ・・・』

〈Yukimura〉『お二人は仲良しですし、別に変ではないのでは?』

〈Soulking〉『いやいやゆっきー!お仕事中の成人男性二人が肩組んで歩くのは、変なことだよっw』

〈Zero〉『いや待て、お前の発言は正確じゃない!組んでるんじゃなく、俺は組まれてるだけだ』

〈Gen〉『でもマジなのかよw』

〈Yume〉『これは一部の女の子たちが変な目で見てそうですにゃあw』

〈Daikon〉『え』

〈Zero〉『いややめろ、変なこと言うな!』

〈Pyonkichi〉『セン×ゼロかー』

〈Soulking〉『とみせかけて、ゼロ×センだったりっ』

〈Yukimura〉『むむ・・・掛け算の結果は同じでは・・・?』

〈Hitotsu〉『い、色々あるんだよ!』

〈Jack〉『いっちゃんも分かる人なんだねーーーーw』

〈Senkan〉『俺はどちらでも☆ミ』

〈Zero〉『さっきの感謝の言葉返せ!』

〈Senkan〉『はっはっは!まぁ、今日のこのひとネタに免じて許してあげよう』

〈Gen〉『イケメンは心が広いな!w』

〈Loki〉『夢の国でも思いましたけど、ほんと仲良いっすよねw』

〈Senkan〉『いやいや、そんなこと言ったらロキロキだって倫と仲良しに見えたぜ?』

〈Jack〉『ゼロやんほんとモテモテだなーーーーw』

〈Yukimura〉『むむ。争奪戦激化傾向?』

〈Zero〉『これ以上ややこしくすんな!』


 ……はぁ。疲れた。

 最初こそ大和のこといじってたと思ったのに、気づけばあっという間にこれだよ、ほんと。

 まぁでも完全に大和のこと忘れてたのも事実だから……明日缶コーヒーでも奢って許してもらおうかな。大和ならそれで大丈夫だろ、たぶん。


〈Hitotsu〉『えっと、じゃあ私の問題はクリアということで、よろしいでしょうか?』

〈Pyonkichi〉『ん、ひと笑いも起きたし、おっけ!』

〈Yume〉『おめ〜w』

〈Yukimura〉『では、次は私ですね』


 そして気づけば真実の問題もクリアが決まり、出題者は順調にラストの手前、ゆきむらまで進んだことも判明した。

 今の段階で時刻は23時11分。いつもなら活動は終わってる時間だが、今日は誰もおやすみを言わないのは、きっとみんながこの時間を楽しんでいるからだと思う。

 明日は金曜日で、みんな今週も疲れてきてるはずなのに……ありがたいね。ほんと、みんないい奴らのギルドだよ。


〈Jack〉『ゆっきーの問題が、一番読めないねーーーーw』

〈Gen〉『だなwあらゆるパターンが想像できそうで、何も想像がつかんw』

〈Yume〉『ゆめちゃんパターンの出題もあるかも〜』

〈Pyonkichi〉『私の好きなところ108個言ってください、とかか!』

〈Loki〉『え、多っ!』

〈Soulking〉『そこでその数字出すのがぴょんらしいねっw』

〈Hitotsu〉『でもやっぱりその数はちょっと多すぎるのでは・・・』

〈Pyonkichi〉『いや、でもゼロやんならだいにこのくらい言えそうだし』

〈Daikon〉『はいはい』

〈Senkan〉『これは見事なスルー!w』

〈Daikon〉『茶化さないで、ゆっきーの問題を待ちましょう』

〈Yume〉『さすがお姉ちゃんだ〜w』

〈Hitotsu〉『ですね!』


 ゆきむらの問題を待つ間に相変わらずな会話が成されるが、だいによるぴょんスルーに俺はモニターの前で思わず笑ってしまったのは秘密である。

 ホント、野良パーティ組んでる時じゃ絶対に見れない、身内だけにだいが見せる姿だな。

 そして。


〈Yukimura〉『それでは問題です』


 ラスト手前、きっとおそらく最後の関門であろうゆきむらの口が開く。

 ま、ここまできたら何となく何でも大丈夫な気がするからな。

 よしゆきむら、どんとこい!

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