第389話 試される愛⑥

〈Yume〉『ゆめちゃんのいいところ、5つ答えよ〜』


 ……へ?


〈Pyonkichi〉『それが問題・・・だと!?』

〈Gen〉『だいの問題から180度変わったなw』

〈Senkan〉『なんかもう180度どころか、540度変わったなw』

〈Yukimura〉『むむ、それは同じでは?』

〈Daikon〉『ゆめの問題、模範解答ってあるの・・・?』

〈Yume〉『わたしが納得するかどうか、かな〜』


 目の前にいなくとも、イタズラっぽく笑うゆめの姿が目に浮かぶ。

 そんな問いに正直俺は苦笑い。しかも採点基準、めっちゃ主観っていうね。

 だが今の俺はこの問いに対して出し直せという立場にはない。

 可能性があるとすればぴょんからNGが出ればというところだが……二人の関係性を思えば——


〈Pyonkichi〉『斬新だな!ゼロやん忖度すんなよ!』


 ですよねー。

 仲良しコンビのゆめに対してぴょんがダメなんて言うとも思ってなかったし、そうなれば、真面目に答えるのみである。

 まぁゆめとも付き合いは長いし、二人だけのオフ会全参加という間柄だからな、5つくらいパッと浮かぶってもんよ。

 

 ってことで。


〈Zero〉『仲間想いで、面倒見がよくて、頼りがいがあって、ゲームが上手くて、ピアノが上手い!』


 と、俺がさらっと一気に5つ伝えてみたのだが。


〈Yume〉『ん〜・・・』

〈Senkan〉『最初の3つ似てね?w』

〈Daikon〉『でもたしかにって思うわね』

〈Loki〉『ゆめさんの格ゲーの強さ尋常じゃなかったの思い出したっすw』

〈Yukimura〉『ピアノ、私も聴いてみたいです』

〈Pyonkichi〉『一個大事なのがない気がすっけど、ゆめの判定はー?』


 ゆめの最初の反応から、正解と言い切っていいのか分からない感じがしたが、他のメンバーの反応は悪くないように見える。

 でも、最大の仲良しであるぴょんの反応が何とも言えない。

 んーむ……実はあと1個、ちょっとみんなの前だと言いづらいのが浮かんではいるんだけど、もしこれがぴょんの思ってるやつと違ったら相当つらい感じになっちゃうんだよね。

 なのでとりあえず、判定員であるゆめの答えを待ってみると。


〈Yume〉『一個ピンとこないのあるかな〜』

〈Jack〉『ほーーーー、どれーーーー?』

〈Yume〉『ひみつ〜☆』

〈Yume〉『ゼロやんもう一個言ってみていいよ〜』

〈Gen〉『お、チャンスだな!w』


 ……ふむ。

 もう一つ、か。


 うーん……なんか今頭に浮かんでるの以外……怒らせると恐い、はダメだし、実は男前気質、ってのもたぶんゆめのOKは出ないだろう。優しいとか当たり障りないこと言ったって、それこそ先に伝えたのと被っちゃうし……うーむ……。


〈Pyonkichi〉『んだよ、考えなきゃゆめのいいとこでてこねーのかー?』

〈Zero〉『そ、そんなことねーよ!』

〈Yume〉『じゃあ、追加解答どうぞ〜』


 ええい、やむを得ん!

 考える時間も奪われたので、俺はもう腹をくくって、一単語をタイピングし——


〈Zero〉『可愛い!』


 と、ゆめについて考えた時に、一番最初に思いついたことを言ってみた。

 今この場にはだい彼女もいるのに、だ。

 これで判定アウトだったら、もう穴があったら入りたいレベルの恥ずかしさなんだけど——


〈Yume〉『えへ☆』

〈Pyonkichi〉『ま、そこだよなー』

〈Daikon〉『うん、私も思ってた』

〈Hitotsu〉『私もです!』

〈Yukimura〉『同意します』

〈Loki〉『そっすよね!』

〈Jack〉『みんな思ってそーーーーw』

〈Senkan〉『いやぁ、第一印象ったらそれだよなぁ』

〈Pyonkichi〉『あ?』

〈Gen〉『まぁまぁwでもたしかに、分かる』

〈Soulking〉『これについては同意する!w』

〈Yume〉『あっ、嫁キングおかえり〜』

〈Yume〉『でもみんなに言われたら照れちゃうな〜w』

〈Yume〉『ってことで、ゼロやんゆめちゃんの問題突破おめ〜☆』


 ……はぁ、ドキドキした!

 彼女がいる前で、その友達に「可愛い」って言うの、やっぱ言いづらいよな!

 しかも対面じゃなく、文字で伝えるわけだし、だいがどんな様子か分からないんだからさ!

 とは言え、幸いにも俺が思ってたことはみんなも思ってたみたいで、事なきを得たようで何より何より。


 みんなが戻ってきた嫁キングに「おかえり」を伝える中、俺はゆめの問題を無事正解出来たことにホッと胸を撫でおろす。

 まぁでも大和じゃないけど、俺もゆめに対する第一印象は可愛いだったし、見た目だけじゃなく振る舞いも含めて可愛いを伝えてくるのがゆめなんだよな。

 ただもちろん可愛いだけじゃないのは、たぶんギルドメンバーの中で俺が一番分かってるところだとは思うけど。

 

 ま、とりあえずこれで癖のありそうな問題出す可能性のあったゆめも無事突破できたわけだし、次の出題は真実、か。

 しかしあいつ、何が聞けるんだ?


〈Hitotsu〉『うーん、ぴょんさん、これって問題じゃなきゃダメですか?』

〈Pyonkichi〉『んー?どういうこった?』

〈Hitotsu〉『私、ギルドに入って日も浅いので、出せる問題が浮かばないんです』

〈Hitotsu〉『でも今日のみなさんをみていて、お兄ちゃんに聞いてみたいことが出来たので、それじゃダメかなって』

〈Pyonkichi〉『よし、あたしが確認しよう!メッセ送って!』

〈Hitotsu〉『はい!』


 ギルドに入って1ヶ月半ほどの妹に、果たしてどんな問題が作れるというのか、そう思っていたんだけど、何やらぴょんへ不思議な提案があり、ぴょんがそれを確認する時間が訪れる。

 そして数十秒の間を置いて。


〈Pyonkichi〉『許可する!w』

〈Hitotsu〉『おお、ありがとうございます!』

〈Pyonkichi〉『いや、これは良問だ!w』

〈Jack〉『おーーーー?w』

〈Gen〉『なんだなんだ?w』

〈Senkan〉『倫の地元時代の話とかか?w』

〈Yukimura〉『それはギルドとは関係ないような』

〈Yume〉『この前聞いたプライベートの話、妹にも全部言ってたりしたら軽く引くけどね〜w』

〈Soulking〉『えっ、何それ気になるっ』

〈Zero〉『やめい!』

〈Daikon〉『それで、いっちゃんは何を聞くのかな?』


 ぴょんの許可と良問発言から、みんなが色んな想像をして会話が盛り上がるが、道を正すのはまたしてもだい。

 改めて役割分担しっかりしてるなぁ、って思った矢先。


〈Hitotsu〉『えっと、この問の判定員は皆さんです!』

〈Gen〉『ほう?』

〈Hitotsu〉『問題は、あなたが【Teachers】をどれくらい大切に思ってるか、あなたの考えを書きなさい』

〈Hitotsu〉『です!』


 ……え?


〈Senkan〉『それあれだなw倫がよくテストに出す、模範解答無しの、問題文で聞いてることに対してちゃんと書けば、文字数に応じて点がもらえるサービス問題と同じだなw』

〈Jack〉『そんな問題あるのーーーー?』 

〈Daikon〉『問題見せてもらったことあるけど、哲学者の話を授業でしてるから、そこについて思ったことを書かせてるみたい』

〈Yukimura〉『ほうほう。そんな問題もあるんですね』

〈Soulking〉『そういうのってレポート書かせたりするもんじゃないのかな?』

〈Senkan〉『いやぁ、うちの生徒にレポート課題は敷居が高いw』

〈Yume〉『でも、いっちゃんいい問題だね〜w』

〈Loki〉『そっすね!古株のゼロさんですし、熱い想いがありそうっすよね!』

〈Pyonkichi〉『いいぞロキロキ!ナチュラルハードル上げ素敵だぞ!w』

〈Gen〉『いやぁ、楽しみだ^^』

〈Jack〉『リダが悪い笑顔だーーーーw』

〈Zero〉『いや、え、あの、問題チェンジは・・・?』

〈Gen〉『却下^^』

〈Pyonkichi〉『妹がお兄ちゃんのために考えたラッキー問題だぞー?むしろイージーだろイージーw』

〈Soulking〉『うんうんっ。まさかゼロやんに限って浮かばない、なんてことはないだろーしねっw』

〈Zero〉『う・・・』


 俺のテスト問題のネタバレについてはいいとして、ギルド立ち上げメンバーであるリダと嫁キングからかけられるプレッシャーがハンパない。

 いや、もちろん想いがないわけではない。むしろ大切な場所だし、伝えたい感謝はほんと、山より高く海より深いってレベルなんだけど……それを言うってなるとさ。ね?


 いい年してこういうのって、恥ずかしい、じゃん?


 でも。


〈Daikon〉『さっきのゆめの問題みたいに、思ったこと言えばいいじゃない』


 俺の逃げ道を潰すように、どんどんとプレッシャーは増えていく。

 

 ええい、恥ずかしがってる場合じゃないよな!!

 大丈夫、みんなに感謝を言うだけ。それだけだ!!


〈Zero〉『ああもう分かった!分かったよ!今から言ってくから、途中で茶々いれすんのだけはやめてくれよ!?』

〈Pyonkichi〉『それはもう、みーんなお口にチャックで待つって!』


 面白がられてるのは百も承知だが、これは逃げられる戦いじゃないのだから、腹をくくるしかない。

 なんかさっきも腹をくくったから、もうくくる腹がない気がしなくもないが、とりあえず俺はぴょんのログ以降みんなのログが出なくなったことを確認し、カタカタとキーボードを打ち始めた。


〈Zero〉『俺が一番にみんなに対して思ってることは、感謝です』

〈Zero〉『LAは俺の趣味にして人生の中心みたいな存在なわけだけど、社会人なってからもLAが変わらず楽しいって思えるのは、間違いなくみんなのおかげだし』

〈Zero〉『オフ会やろうって言ってくれたから、長年のフレンドだっただいともリアルで会うことができたし』

〈Zero〉『みんなとリアルで知り合ったことで人生がすげー彩られて、LAで遊ぶ時間の楽しさが倍増しました』

〈Zero〉『リダは誰の文句も言わずにみんなの意見や要望を聞いたりして、本当にすげーと思うし』

〈Zero〉『嫁キングは子育てで忙しいだろうに、合間縫ってでも顔出してくれるし』

〈Zero〉『ぴょんとゆめはオンオフ問わず、いつだってみんなを楽しませようと盛り上げてくれるし』

〈Zero〉『ジャックとロキロキは持ってる知識と技術を惜しみなくみんなに提供してくれてすげー勉強になるし』

〈Zero〉『ゆきむらのやり込みスイッチ入った時の熱心さには正直尊敬レベルだし』

〈Zero〉『真実が楽しんでくれてると、なんだかんだ俺も嬉しいし』

〈Zero〉『今いないあーすも、鬱陶しい時もあるけど、底抜けの明るさはすげーと思うし』

〈Zero〉『だいは・・・元から一緒にいてくれたけど、プライベート含めて、本当に伝え切れないレベルの感謝でいっぱいだし』

〈Zero〉『しばらくLAでみんなと会えなかった分、今日改めてみんなのことが大好きで、大切で』

〈Zero〉『みんなと遊ぶからLAが楽しいんだなって実感しました』

〈Zero〉『これから先、みんなにもリアルで色々があったりして、いつかは引退しちゃう日も来るかもしれないし』

〈Zero〉『LAのサービスが終わって、ギルドそのものが解散する日も来るかもしれないけど』

〈Zero〉『俺は【Teachers】がどうなったってこのギルドのことは一生忘れないし、みんなと出来た縁を大切にしたいと思ってます』

〈Zero〉『なのでこれからも、末永くみんなよろしくって、改めて伝えたいと思います』

〈Zero〉『みんな、本当にありがとう』


 ……書き出した時は恥ずかしかったのに、気付けばすげー長々と話してしまったのは、仕様ですしょうがない

 むしろ言い終わった今の方が恥ずかしさが押し寄せてくるけど、ログに託して伝えたい言葉は、伝えられたと思う。

 もちろん文字だけじゃ伝わらないこともあると思うけど、でも、とりあえず俺が言いたいことは言い切った。

 あとは、みんなの判定待ち。

 なんかまるで告白した直後のような気持ちで、俺はみんなの反応を待つのだった。

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