第388話 試される愛⑤

〈Daikon〉『残り4分』

〈Jack〉『きっちり測ってるねーーーーw』

〈Yume〉『さすが数学の先生って感じ〜w』


 だいから出された愛の試練。

 それは謎の数字が示す暗号を解読せよという問題だった。

 そんなものだいと長く一緒にいる俺からすれば朝飯前……と思いたかったのだが、残念無念、俺にはその数字が示す意味が全く分からない。

 どうする? どうするよ俺!

 

 次回、俺死す。

 来週もまた、見てくれよな!


〈Daikon〉『残り3分』


 は!!!

 何ともしょうもない現実逃避をしている間にも時が進み、俺に残されたのは後180秒を切っていた。

 おそらくみんなも考えているのだろう。

 だいの示す残り時間に反応を示したのは、既に分かったを告げている二人のみ。

 大多数はまだ分かっていない、のだが。


〈Yukimura〉『はい、確認お願いします』

〈Daikon〉『うん、どうぞ』


 まさかゆきむらに先手を打たれるとは。

 うーん、リダが基準で、リダが7514=26、嫁キングが55で、ジャックが14……。

 7514=26ってとこが分からん!

 というかそもそもなぜ7514。

 ううむ……。


〈Daikon〉『うーん、残念』

〈Daikon〉『ゆっきーはどうしてこうなったの?』

〈Yukimura〉『私たち、ということでしたので、watかなと』

〈Jack〉『あーーーー』

〈Daikon〉『惜しい』

〈Yume〉『そこも一応謎解きだよ〜』

〈Yume〉『でもさりげにその惜しい発言は、ゼロやんへのヒントだね〜w』

〈Jack〉『ゆめのその発言もヒントって認めたヒントになってるかもよーーーーw』

〈Pyonkichi〉『くどいな!』

〈Daikon〉『あ、残り1分50秒』


 そして、俺が考えている間にゆきむらの答え合わせが行われ、残念ながら不正解。

 でもその後の会話はたしかに何か答えに繋がりそうな会話に見えて、ゆめもジャックもそれがヒントになるということを教えてくれたので……俺はそこから全力で思考を加速していく。

 私たち、だから、wat、が惜しい。私たちをローマ字で打った最初3文字だよな。

 最初3文字、最初3文字……3文字と言えば……〈Gen〉リダ

 そうか、リダが基準ってことは、全員3文字で考えろってことか!


〈Daikon〉『残り1分』

〈Loki〉『はい!』


 つまりgen=7514で、結果これが26。嫁キングだったら〈Soulking〉だから、souで、これが55。〈Jack〉ならjacで、これが14。


〈Daikon〉『正解』

〈Loki〉『やったっす!』

〈Yukimura〉『もう一度お願いします』


 嫁キングとジャックもきっと55なり14なりにいきつく前の数字があるわけだよな。

 で、それがリダなら7514で……。3文字が7514になったってことは、7514も3文字を表してるわけで……は!

 そうか、7514じゃなくて、7と5と14、gとeとnのアルファベット順か!


〈Daikon〉『ゆっきー今度は正解』

〈Yukimura〉『ありがとうございます』

〈Hitotsu〉『すごいなぁ・・・うーん、わかんないよぅ・・・』

〈Pyonkichi〉『思考放棄もまた、道の一つだぜ?』

〈Senkan〉『ギブアップをカッコよく言うなw』

〈Senkan〉『あ、俺も答え合わせおなしゃすw』


 7と5と14で26ってことは……和か!

 ってことは、嫁キングはsが19、oが15、lが21で55で、ジャックはjが10、aが1、cが3で14。

 なるほど、となれば、私たちは——


〈Daikon〉『せんかん正解。あと5秒』

〈Senkan〉『いぇーいw』

〈Gen〉『わからん!無念!w』


 いや、だいは【私たち】って、意図的な表記をしてた。この表記をするのは……【Teachers】俺たち!!

 ってことは——


〈Daikon〉『時間切れよ』


 ああああああああああ!!!


〈Zero〉『あと計算だけだから30秒!』

〈Daikon〉『はいはい』

〈Yume〉『頑張ってる〜w』

〈Jack〉『でもこの答え、偶然だろうけどさすがって感じがするねーーーーw』

〈Loki〉『そっすね!』

〈Yukimura〉『ジャックさんとだいさん、一緒ですよね』

〈Jack〉『そだねーーーーw嫁キングとぴょんとゆっきーは連番だよーーーーw』

〈Yume〉『ゆめちゃん連番ちょっとずれぴえん』


 あと一息で答えに辿り着きそうなところで時間切れが告げられたものの、俺は全力でアディショナルタイムを要求し、みんなの会話もろくに聞きもせず、頭を回転させる。

 tは20、eは5、aは1、だから……!!


〈Zero〉『答えはリダと一緒だ!!』


 ……大丈夫、合ってる。きっと合ってる。

 そう信じてだいからの答え合わせを待つ。


〈Daikon〉『うん、正解』


 おお……!

 っし!!


 告げられた味も素っ気もない短文に、俺はモニターの前でガッツポーズである。


〈Jack〉『いい答え方だねーーーーw』

〈Yume〉『だね〜。【私たち】とリダが一緒って、さすがリダって感じ〜』

〈Gen〉『え、ええと、つまり答えは、26ってことなのか?』

〈Pyonkichi〉『解説求む!』


 そして俺の答え方がノーヒントで解けた二人に賞賛され、答えが分からないからこそ意味が分かっていないリダが困惑を見せる。

 いやぁ、でもたしかにまさかのリダの数字と【Teachers】の数字が同じ26になるなんて。だいのやつ作問センスすごいなこれ。


 そしてぴょんの求めに応じてだいが問題解説を行い、答えに辿り着けなかったメンバーたちがそれぞれ「なるほど」、となっていく。

 しかし俺より先に答えられなかったのは、リダとぴょんと真実の3人で、それ以外のメンバーは正解。

 しかも俺は会話によるヒントがなければ5分じゃ解けなかっただろうし、そもそも5分という制限時間は守れていない。

 今回のがOKなのかどうなのか、ちょっとドキドキしながら主審ぴょんの判定を待つ。


〈Pyonkichi〉『ま、だいの試練もクリアってことでいいだろ!』

〈Yume〉『あ、自分が解けなかったからって、優しくなってるでしょ〜w』

〈Pyonkichi〉『ぴょんきちの愛の大きさですわ』

〈Yume〉『はいはいw』

〈Daikon〉『でも、ゆめとジャックのログがなかったら、たぶんゼロやん分からなかったと思うけど』

〈Zero〉『ぎくっ』

〈Jack〉『ヒントなるようにゆっきーにギルドチャットで質問したのはだいなのにねーーーーw』

〈Yume〉『だよね〜、素直に最初からヒント出せばよかったのに〜w』

〈Daikon〉『そ、そんなことないわよ!』

〈Yukimura〉『では、ゆめさんとジャックさんはゼロさん奴隷権獲得ということでよろしいのでは?』

〈Zero〉『え?』

〈Senkan〉『ナイスゆっきー!wそれが妥当だな!w』

〈Pyonkichi〉『それぐらいはバチも当たらんな!決まり!』


 なんとか合格をもらった思ったのだが、やはり完全セーフとはならなかったようで……まさかのゆきむらの提案によりジャックとゆめに限り、何かしらのアイテムを買ってあげるか、取れるまで手伝い続ける罰ゲームが決定してしまう。

 いや、でも二人がいなかった正解に辿り着かなかったのは事実だし……これはやむを得ないか……。


〈Jack〉『なんかあったら言うねーーーーw』

〈Yume〉『何でも言うこと聞いてもらえる権ゲット〜』

〈Zero〉『いやいやいや、それは解釈デカすぎないか?』

〈Yume〉『まぁまぁ細かいことは気にしな〜い』

〈Daikon〉『じゃあ、次はゆめが出題ね』

〈Yume〉『あ、そっか。おっけ〜』


 ゆめのお願いとかなんかちょっと怖い気ないでもないけど、まぁLA上の話なら何とかなるだろう。

 何はともあれこの試練もあとゆめ、真実、ゆきむら、リダの4人の出題を残すのみ。

 時刻は22時30分になろうかというところ。

 23時までに試練は突破出来るかなぁ。


〈Yume〉『問題で〜す』


 時間のことを考えていたら、幸先よく告げられた言葉。

 さてゆめの問題とは。

 気を取り直して、俺はモニターをじっと見つめるのだった。

 

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