第355話 強者との出会いは嬉しい限り
〈Zero〉『ハニーさんメイン盾だから、イカさん今日は火力全振りでよろ』
〈Ikasumi〉『おwいいねー今日は連撃祭りじゃーw』
〈Honeysoda〉『なら私
〈Zero〉『うん、それで。連撃はイカさん硬直させたら、2番俺、3番だいで』
〈Daikon〉『わかった』
〈Rei〉『タゲ固定なら回復も楽そうでいいですねー』
〈Zero〉『だねw支援魔法の相手多くて大変かもだけどw』
〈Rei〉『あ、そこは私範囲化できるので気にせずー』
〈Honeysoda〉『おお、
〈Ikasumi〉『やっぱゼロさんの主催は外れねーなw』
〈Zero〉『ふwまぁなw』
狩場への移動中、こんな風に戦略の打ち合わせをしている中で分かったレイさんの装備。
どうやらレイさんもジャックや真実と同じくキングサウルスが落とす現状最強ステータスのメイス、テュルソスを持っているようで、正直俺も驚いた。
もちろんレイさんのギルドで討伐してたとしても不思議はないし、せみまるさんとフレンドって人なんだから、その辺の伝てで装備を取ってもらっていても不思議ではないんだよね。
そういや、レイさんはどこのギルドの人なんだろうか?
あ、ちなみに移動のためパーティメンバーが集まったところで全員の姿も確認したわけだが、レイさんのキャラはたれ耳タイプの犬耳女獣人で、赤い瞳と水色の髪をショートボブにしているちょっと眠たそうな目が印象的な、可愛い系のキャラだった。
犬耳はついてるけど、正直髪色とか髪型は俺が密かに予想していた見た目通りだったし……たぶんレイさんのキャラモチーフはあのキャラだろう。
俺の〈Zero〉だってそのキャラの名前に漢字当てて、それを英単語に直したところからつけてるから、ちょっと親近感が湧いたのは秘密です。
そして何回か組んだ経験のある〈Honeysoda〉さんは小人族の女キャラながら盾役を務めるプレイヤーで、プレイヤースキルもそれなりに高い。うちだと俺やリダが使ってるキングサウルスが落とす最高峰の盾装備は持ってないけど、〈Nkroze〉で使ってるのと同じバザールで買える高額な盾装備は持ってるので、不安はなし。
また〈Ikasumi〉さんも何回か組んだことがあるからその実力は知っている。ゆきむらが使ってる刀は持ってないみたいだけど、盾役用と火力用で使う刀と装備をしっかりと組み替えてくれる実力派だから心配なし。ちなみにキャラは頭になんか入れ墨みたいな模様が入ったスキンヘッドの男ヒュームでけっこういかつい見た目だぞ。
〈Honeysoda〉『ちなみにゼロさん今スキルいくつなんだっけ?』
〈Zero〉『343だよ』
〈Honeysoda〉『カンストまであとちょいかー。ゼロさんの募集に参加できなくなるの残念だなぁ』
〈Zero〉『ハニーさん今いくつ?』
〈Honeysoda〉『339!』
〈Zero〉『あ、なら大丈夫wだいがまだ337だから、そのカンストまでは募集続けるからw』
〈Honeysoda〉『ほんと!?じゃあスキル上げ行く時私もインしてたら予約したい!』
〈Ikasumi〉『相変わらずニコイチだなーwでも俺も予約したいw』
〈Zero〉『後衛1でもやってくれる人がいればw』
〈Honeysoda〉『レイさんももし今日のスキル上げいい感じだなーって思ったら一緒にやろうよ!』
〈Rei〉『おー、ぜひー』
〈Rei〉『でも、ゼロさんってだいさんと固定組んでるんですか?』
〈Zero〉『まぁ7年来の相棒なんでw』
〈Rei〉『え、そんなに』
〈Honeysoda〉『だよねwちなみにだいさんはスキルがゼロさんより低くても火力が高い』
〈Zero〉『それは武器の性質だからね?^^』
〈Ikasumi〉『しかもミスらないからなー。うちのギルドの奴らに見せてやりてーよw』
〈Honeysoda〉『同感!』
〈Zero〉『でもたしかにだいは上手いw』
〈Daikon〉『普通です』
〈Ikasumi〉『それが普通だったら大半のロバーは短剣叩き折らなきゃだぞw』
〈Honesoda〉『うんうん』
で、いよいよ狩場である恐竜型モンスターが徘徊するエリアに到達し、狩り開始前にレイさんから支援魔法をもらいながらこんな会話もしたりした。
今日のメンバーの中だと俺が1番スキル値は上で、スキル上げ卒業が1番乗り濃厚なわけだが、俺がだいのカンストまでは一緒にやるってのを聞いたらね、ハニーさんもイカさんもけっこう嬉しいことに予約したいとか言ってくれて、主催冥利に尽きるってもんだよね!
でも会話の中で褒められただいは、照れてるのか謙遜してるのかすら分かりづらい反応を見せてきよったけど、だいとも組むのが初めてじゃない二人はだいが寡黙なことに慣れているからか、発言が少なくても気にしてないみたい。
〈Zero〉『じゃ、ぼちぼち始めますかー』
〈Rei〉『あ、ゼロさん』
で、俺が
俺が何だろうと思っていると――
『〈Rei〉があなたにトレードを申し込みました。』
と、俺に対するシステムメッセージが現れた。
トレード? アイテムもらったりするような話は、してないはずだけど……。
と、俺が不思議がりつつもトレード申請をとりあえず受けてみると――
〈Zero〉『え、マジ?』
〈Rei〉『強い人が使うとどうなるか拝見させてもらいますー』
〈Ikasumi〉『何したん?』
〈Zero〉『ペスカトーレもらった!』
〈Honeysoda〉『えーっと・・・なんだっけそれw』
〈Zero〉『遠隔アタッカー用の食事だよ!』
〈Daikon〉『高レベル料理職人しか作れないやつ、だよね?』
〈Rei〉『ですですー。私、料理スキルあげてるので作ってみたんですけど、よかったらお試しにどうぞー』
〈Honeysoda〉『おー。でも遠隔用の食事って、素材多いいわ流通少ないわで高額じゃなかったっけ?』
〈Zero〉『うむ。俺も専用食食うの初めてだなw』
〈Ikasumi〉『兼用食でも効果十分だもんなー』
〈Honeysoda〉『うんうん。今は汎用性高い食事も多いもんね』
ってことである。
食事アイテムはキャラクターの性能をリアル時間1時間の間強化してくれるアイテムなのだが、このステータス上昇はけっこう馬鹿にできない。
特に会話の中で兼用食って言ってる肉系の食事は攻撃力を上げる効果が高く、基本的にアタッカーはこの肉系の食事を食うことが多い。
俺も普段はそれを食って戦うことが多いんだけど、今回レイさんにもらったペスカトーレ、いわゆる魚介系食は素材となる魚介類系のアイテムを集めるのがけっこうめんどくさく、素材がバザールで安定流通してる肉系の食事でもステータス補正は問題ないことが多いから、なかなかバザールでも既製品が出回ってないのである。
でもこの魚介系食は銃と弓の攻撃力のみを肉食以上に上昇させつつ、クリティカルヒット率上昇という効果も付与してくれるおまけつき。
その中でも現在最高峰の食事とされるペスカトーレは高級料理として扱われるアイテムで、必要な素材が多いうえに、だいが言った通り料理スキルがかなり高くないと作ることができない。そんな理由で俺も今まで食った――食わせた――ことがないアイテムだったのである。
ちなみにこういう製作系のスキルは一人一つまでしか高スキルまで鍛えることができないので、普段料理を趣味にしているだいでも作ることは出来ないぞ。だいが選んだのは防具製作だからね。
ううむ、どれくらい強さがあがるか、楽しみだな!
ということで、そんな会話をした後、俺たちは改めて狩りを始め、延々と山脈エリアの雑魚恐竜を倒し続け……想像以上の成果を上げることが出来た。
正直俺の主催で過去最高の時給を稼いだのではないかと思う稼ぎが、今日のスキル上げで手に入ったのである。
この結果は、俺の食事効果しかり、安定した素晴らしいメンバーの甲斐もしかり、全てが上手く噛み合った結果だと思うけど……何よりレイさんの技量が俺の予想の上をいったのが大きいと思う。
単純な戦闘しかなかったから、ジャックと力量で並ぶかと言われるとそこは未知数なところはあるけど、戦闘中1秒たりとも味方への支援魔法が切れることも、メンバーのHPが大きく削られることもなかった。
目立つプレイをするわけではないが、レイさんは縁の下の力持ちとして見事にパーティを支えてくれたのだ。
この成果は、本当にレイさんの活躍あってだと思う。
そんな予想以上の経験値を獲得し、皆ほくほくな気分で俺たちはスキル上げを終えたのだった。
☆
同日、23時30分頃。
〈Zero〉『じゃ、おつかれした!』
〈Ikasumi〉『おつかれーい!激ウマあざす!wまたよろしくw』
〈Honeysoda〉『本当いい稼ぎだったよーまた誘ってくださいな!』
〈Daikon〉『おつかれさまでした』
〈Rei〉『ありがとうございましたー』
スキル上げを終えてそれぞれホームタウンに戻った俺たちは、皆上機嫌な感じでパーティを終えた。
普通ならここでリーダーである俺がパーティを解散させみんなソロに戻るところなのだが、俺とだいがセットであることをよく知るイカさんやハニーさんは俺の解散を待たず、自らパーティを離脱していった。
でも、レイさんはそんな俺とだいの習慣を知るわけもないので、おそらく俺が解散するのを待っていたのだろう。
そこにね、ちょっとした油断があったんだよね……!
〈Zero〉『そういや東中野の駅前に新しくフルーツサンドの店出来てたぞ』
〈Rei〉『東中野、ですか?』
〈Zero〉『あ』
パーティメンバーが減っていたから、もうだいと二人だと思い込んでしまっていた俺は、何気ない日常会話をだいとするつもりでログを打ったんだけど、それに対して想像していなかった名前からも反応があったことで、俺は自分のミスを自覚する。
〈Rei〉『ゼロさんは東中野にお住まいで、甘いものがお好きなんですか?』
〈Zero〉『え、あー、いやw』
だが、俺の焦りをよそにレイさんが俺の発言を拾ってくるので、俺はちょっとどう返事をするかと逡巡する。
でも、冷静に考えてさ、東中野を知ってるだけって方が確率的には高いだろうし、ここで話を急にやめるのも嫌な感じがするだろうから、とりあえず甘いものが好きかどうかだけに対して『そっすねー』とか適当に言えばいいかと俺が思った時――
〈Rei〉『教えてたってことは、だいさんも近いのかな?実は私高円寺で働いてるんですよー。活動範囲近いかもですねー』
な、なんだと!?
さらに続けられたのは、全く予想していなかった発言ではありませんか!
〈Zero〉『そ、そうなんだ!』
〈Rei〉『高円寺のカステラ屋さんに勤めてるんですけど、甘党さんならぜひ買いにきてくださいねー』
〈Rei〉『高円寺・カステラで検索すればお店出るはずですからー』
〈Zero〉『そうなんすね・・・!』
だがさらに続いた言葉はもっと予想外なもので、正直どう反応すればいいかに困るものだった。
密かに言われるがままの検索をかけたら、出てきたのはこの前真実と買いに行ったお店だし。
たしかにあのカステラうまかったけど……うちから徒歩10分もかからないとこで働いてるってことなんだよね、つまり。
その近辺にも住んでるとしたら……だいよりもうちに近いんじゃないか?
とはいえ、これは「会おうよ」とかそういう話でもないから、純粋にレイさんの宣伝ってことなんだろうけど……!
〈Zero〉『今度機会があったら探してみるよw』
〈Rei〉『ぜひー』
うん、別にぐいぐい何か言ってくるわけでもないし、住んでるところ近そうって分かったからこその、ただの宣伝だなこれは。
いやぁ……しかし変な汗かいた……。
そんな会話する俺とレイさんの間にだいが入ってこなかったのは、まぁある意味予定調和なんだろう。
なんだかんだ仲良くなったのかと思わせといて、そういうわけでもなかったみたいだし。
その後俺はいつもとは違う流れとなったがパーティ解散のボタンを押し、解散後だいと個別に少し話し、『迂闊よ』とか『あのカステラ屋さんかしら?』とか、『世間って狭いものね』なんて言われたりしながら、たしかな実力を持つププレイヤーと出会った木曜日のログインを終えるのだった。
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