第351話 連休明けて、再出発
「おはよーっす」
9月23日水曜日。
19日の土曜日は部活だったから出勤するのは3日ぶりなんだけど、それでもなんだかえらい久しぶりに学校に来た気がするな……。
そんなことを思いながらやってきた我が2E教室に入り、俺が全員にいつも通りの挨拶を交わすと——
「倫ちゃんおはよっ」
「おはよ〜」
「菜々花ちゃんっ、倫ちゃん来たんだからもっとシャキッとしなよっ」
教卓の前の席にシャキッと座り、満面の笑みで今日も元気に挨拶をしてくる市原と……なんだか眠そうにふにゃふにゃした十河である。
そんな十河に市原の謎の檄が飛んでるが……よくわかりません。ありがとうございます。
でも、こいつらもあの文化祭以降すっかり仲良くなってるし、よきかなよきかなってね。
「お前は相変わらず元気だなぁ」
「えへへっ。取り柄ですからっ。ってか、倫ちゃんは連休明けだってのに何か疲れてないー?」
「え? そ、そんなことないぞ? ちゃんと休んだぞ?」
そして先に元気な市原へ相変わらずだなって何気なく声をかけると、なぜか返ってきたのは少し怪訝そうな言葉でした。
いや、ほら、昨日あれだけ元気だったからその反動で……特に腰が……って、そんなことを言えるわけもないよね!!
連休はたしかに満喫した。休んだ。
休んだからこそ、うん、大人は色々あるってことなのだよ!
って俺は一人で色んなこと思い出すが、今こいつらに俺の話はいらないな。よし、話題変えよっと。
「お前らは連休しっかり休んだか?」
「うんっ。でも3日もオフとか久々だったからさっ、遊んだりもしてたけど、やっぱ早く部活やりたくてうずうずしてるよっ」
ということで今度は俺から市原たちの思い出を尋ねたわけだが、返って来た
そしてもう片方は——
「市原さんは朝から元気だな~。ふぁ~……でもあたしも久々にいっぱいゲームしてフルチャージだよ~」
へにゃ〜って目を眠そうに目を細めながらの、凄まじきザ・インドア派バリバリのお答えでした。
てか十河よ、お前のそのぐったり感でどこがフルチャージ……って、あ……なるほど、メンタル的なチャージってことね。
なんだかんだ不登校解消の一件以降はちゃんと規則正しい生活してくれてたみたいだけど、休みの日に好きなことするくらいは、あの親御さんも許してくれたんだろう。関係改善も見られて何より何より。
しかしまぁ、こんな対極な二人が仲良いって、改めてJKって生き物はすごいよね。
……いや、
「ん、何はともあれそれぞれ英気を養ったなら、今日からまたのんびり頑張ってこうな」
「うん! でもエイキってなにっ!?」
「い、市原さん……」
「前言撤回。国語の授業に本気だせ」
そしてまぁ、これも平常運転だなってくだりもかましつつ……俺は久々の生徒との会話や授業と、そして放課後の部活を終え、残業もそこそこにだいとの約束のため、さっさか退勤するのだった。
同日、20時半頃。
「じゃあ、二人によろしく」
「うん。あっ、そうだ。はいこれ。週明けの抽選会で提出する合同チームの申請書。うちの学校の公印押しておいたから、当日持参よろしくね」
「あ、そっか。さんきゅ! 大会まであと3週間かー。気合いれてかねーとな」
「うん、連勤増えちゃうけど、一緒に頑張ろうね」
「ん、一緒なら俺も頑張れる気がするよ。……あ、そうだ。明明後日の土曜の練習、そっちでやるんだしメニュー決めといていいぞ」
「うん、わかった」
「しかし4人も復帰したのかー。すげぇな」
「それでも半分ちょっとだけどね」
「いやいや、それでもうちより多いし、全員復帰されたらそっちで単独なれちゃうわけだろ? こっちとしてはこの人数がありがたいよ」
「たしかに、それはそうね」
仕事が終わり、だいと合流したのが18時半。今日の外食会場は吉祥寺駅から割と駅近にあった塩ラーメンのお店だった。
だいの方からラーメンのお誘いとは、って少しびっくりもしたけど、どうやら俺がラーメン好きってのを知ってから検索の幅を増やしたらしい。
いやぁ、ほんと愛を感じるね、こういうとこにも。
ちなみに今回のお店はだいも行ったことがなかったはずなのに、お味は大変美味しゅうございました。検索センサーの感度の凄さには脱帽ですよ。
そしてそんな夕飯を一緒に食べ終えて、だいを家まで送って来て、現在に至る。
今日は真実もあーすもいないからね、もちろんだいの家の中で会話中。
でも、俺はこれから約束があるだいに対して長居することなく、太田さんと風見さんによろしくと社交辞令的な言葉を告げて帰ろうと思ったのだが、ふと思い出したようにだいから仕事の話がやってきた。
こんな時間から仕事の話かー、って思うかもしれないけど、ほら、部活絡みの仕事はだいと一緒にやる仕事だから、勤務時間外に話をされても気持ち的に無問題。
で、その話の中で渡された秋の新人戦への大会申し込み書である合同チームのエントリー書類には……俺の知らない名前が4つあった。
知ってる名前の3つは、飯田、戸倉、南川というこの前の大会であまり目立つことのなかった2年生3人組。そしてそれ以外の4つが国見、三宅、石丸、矢崎という俺の知らない名前たち。
そういや市原が後輩のこと「みぃちゃん」っつってたから、この中で「み」で始まる名前は……。
「この国見さんっての、みな…も? って読むのか?」
「あ、うん。その子が市原さんの後輩の子で、うちで一番上手い子だよ」
「ほうほう。噂のキャッチャーね」
「うん。元々自己主張の強い子じゃなくてさ、春先の新入生がまとめてやめちゃった時も、周りに合わせてって感じだったんだと思う」
「ほー……」
俺が見つけた「み」で始まりそうな名前は、背番号2の欄に書いてあった「
そしてどうやらそれが
……いや、でもあれ? 市原をして「癖が強い」って言わしめるような、そんな話も聞いてた気がするんだけど……。
まぁ高校生なって大人になった、ってことなんだろうか。……ううむ。
「あとは三宅さん以外の石丸さんと矢崎さんが初心者だから、次の大会は二人がベンチかしらね」
「まぁ、順当に言えばそうなんだろうな」
「そこらへんもさ、土曜日に確認よろしくね? 北条監督」
「お、おうっ……! 任されよっ」
で、この話題の最後の「北条監督」ってとこで、珍しくもあざとくこちらの顔を覗き込むように上目遣いをよこしてきたもんだから……。
ちょっと食らっちゃったよね!!
と、それはさておき、まぁこんな感じで大会関連の話も終え……そろそろお時間もお時間ってことで、俺たちは——
「じゃあ改めてまたな」
「うん。明日は一緒に遊ぼうね」
「おうよ。二人によろしくな」
これからの約束があるだいをギュッと抱きしめ、バイバイの挨拶を交わしてからどちらからともなくキスをして……といういつもの流れで解散である。
一緒に上がっただいの部屋までの階段を、今度は一人で降りる俺。
そりゃ本当はもうちょっと一緒いたいけど、約束があるだいにそれを破らせるなんて出来ないから。
え、俺との約束が先だったじゃんって?
そこはまぁね、俺はいいのさ。だってほら、俺はだいとならいつでも遊べるんだからさ。
それに俺は俺で今日こそ〈Nkroze〉で久々にLAのメインストーリーを堪能するって目的もあるし。
……まぁ、ドレミがいたら……ちょっと面倒見てやってもいいけど。
そんなことを考えつつ、俺はエントランスの自動ドアを抜け、月明かりの下、一人我が家への道を進むのだった。
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以下
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お久しぶりです。もうほぼ1年ぶりですね……。
仕事が忙しすぎて、だいぶブランクが出来てしまい、書く時間もコメントする時間もままなりません。
書き溜めの繋がりを確認しながら、少しずつ更新できるように頑張ります。
読んでくださる方々、ありがとうございます。
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