第13章
第348話 色んな世界を見せてあげたいは親心
前回のあらすじ
いちゃいちゃしてました。
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以下より本編です!
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「じゃあ、今日はこれで帰るね」
「あれ? 早くない……って、あ、そっか。今日火曜日か」
「うん。ゼロやんは今月いっぱい謹慎だから、今日は参加しちゃダメだよ?」
「え?」
「もう忘れたの? ぴょんに怒られちゃうよ?」
「え、あー……はい。そうでした」
幸せな時間を過ごしてから、どちらからともなくちょっとだけ眠り、起床後手早く夕飯の準備をしてくれただいと食事を共にし……迎えた20時過ぎ。
ふわっとした水色のワンピース姿に戻って、クスクスと笑いながら俺の鼻先をつんってしてくるだいは、まるで小説の中から飛び出してきたお姫様のようだった。
でも、そんなだいの発言内容はぴょんたちから下された俺の月内謹慎を思い出させるもので……そうだった、と思い出した俺は少ししょんぼりしながらだいに頷く。
オフ会後のログインったらみんなが「楽しかったねー」って話したりするし、リダや嫁キングへの報告やら何やらで大半の話題がオフ会になることが多い。
その会話で改めて楽しかったなー、って再確認したりしてきたけど……今回はそれが出来ない。
たしかに今回は楽しい思い出ばかりじゃないこともあるけど……ううむ。
……なるほど、これがぴょんの言ってた寂しさか。
自分だけ蚊帳の外って、辛いなこれ。
あの時は別に大丈夫だろって思ってたけど、うん。だいから直接言われたのもね、ちょっと堪えたよね!
「でも、明日は活動日じゃないから一緒に遊ぼうね」
「お、おう……!」
だが、どうやら寂しいのは俺だけではないみたい。
俺に笑いながら「禁止」って告げてきただいは、話題を明日変えると、俺にギュッと抱きついてきながら明日の約束を伝えてくる。
カンストという目標を掲げているスキル上げもまだ途中だし、明日は外食の日返上でお家ご飯にして、スキル上げって約束だったもんな。
となれば明日は仕事をささっと片付けないと。
まぁ文化祭も終わったし、こっからは基本授業と部活くらいだからな。
うん、明日があるなら、今日を我慢できるってもんよ。
「じゃあ家まで送るよ」
「うん、ありがとね」
ということで、ギュッと抱きついてくるだいの身体をそっと離し、見つめ合いながら俺が送ってくことを伝えると、だいも嬉しそうに笑ってくれた。
そして外に出たら出来ないからと、この数時間だけで何回目か分からないキスを交わして……俺たちは我が家を後にする。
とはいえ、そう遠くない頃にまた俺は一人で戻ってくるんだけどね。
帰ってきたら……うん。
そんな、ちょっとしたことを考えながら、俺はだいと手を繋ぎながら、だいの家まで彼女を送り、俺はこの長く続いたオフ会を、完全に終了させるのだった。
帰り道に見上げた夜空には、綺麗な半月が浮かんでいた。
そんな月を見上げながら歩く道中は、明日が平日だからか非常に静かで……。
そう、何とも穏やかな夜なのだ。
そんな平和を感じると同時に、胸に残る満足感も非常に大きい。
だいを送り帰して一人になったのは少し寂しくもあるけれど、それとは別に先ほどまでの楽しさの余韻も残る、そんな気分。
慣れ親しんだ道を行って戻ってきた我が家にはもちろん誰もいないけど、さっきまでここにだいがいて、一緒に笑い合い、ベッドの上では……って思うと、うん、やっぱりいい時間を過ごしたなって思うよね。
そんなことを思いつつ、俺が帰宅して手早く風呂を済ませたのは、21時20分くらいのことだった。
この時間はいつもなら既にログインして……みんなと会話してる頃だろう。
ぴょんのボケにツッコんだり、ゆめの無茶振りにツッコんだり、ゆきむらの天然にツッコんだり、あーすのボケを無視したり、何より……だいとこそこそ個別チャットで話したり、ね。
そんな楽しい時間が、今日はお預け。
でも……これは罰なんだからしょうがない。
そんなことを考えながら、俺はさて……とPCデスクの椅子に座り、前を向く。
【Teachers】のみんなには会いに行けないし、当然もうだいも我が家にはいない。
こんな時俺は何するかって?
そりゃ高尚に読書したり、適当にソシャゲやったりテレビ眺めたり……時間の使い方なんかたくさんあるけど……今日の俺はそんなことをしたりしない。
俺がするのはね、と誰に答えるでもなくそう思いながら押したボタンは……ちょっと前まではメインの愛機として使っていた、デスクトップPCの電源ボタン。
最近のメインは先日大富豪の方々にもらったノートPCだから、こいつはほとんど我が家のお飾りみたいになってたんだけど……あえて今日はこちらを起動。
ノートPCを起動しなかった理由は、もらった相手とか、そういうのを考えれば返上した方がいいのかもしれないから……というわけ、でもない。
物には罪がないというか、そもそも送り返す時の送り先も分かんないし、なんかわざわざ色々あったから返します、ってのもそれはそれで嫌味っぽくて嫌なんだよね。
東京駅からの帰り道、あいつのことで悲しむだいの顔は本気だった。
敵対意識を持って向き合った
でも、そう願ってくれるのは嬉しいが、俺の立場からするとあの二人とあいつを同じ括りにすることは難しい。
俺に対する矢印がね、「もう終わりだよ」って伝えたはずなのに、全然消えてなかったから。
それだけ好きになってもらったってのは、嬉しく思わないわけでもないけど……どうしても応えられないものは応えられないから。
でも、それでもどこかで折り合って、って部分が0じゃないのが、ままならない人の心ってものなんだろうけど……この部分はどうやらだいの方が大きいようだった。
ほら、だいからすればあいつと出会ってそんなに長くないけど、喧嘩することもなく仲良くしてきたって思いがあるみたいだから。
だからこそ後悔って部分がね、けっこう強いみたいなんだよね。
ほんと……やっぱり俺がもっとビシッと線を引くべきだったって強く思う。
最も反省すべきはこの俺。
俺がもっと上手く対処してれば、今もだいとあいつは友達でいれたかもしれないのだから。
だからこそ、俺もだいも何となくモヤモヤする部分があるんだろう。
もちろん俺からすればまたこうなる要素が少しでも見えたなら、再び何かしらの関係を持つことはないって断言するけれど……色々話す中で、だい自身があいつと仲直りしたいって部分は、無視していいのか悩む大きさだったのだ。
それにほら、
きっとこの感覚には、早朝の俺の言葉による自分への自信もあるから、だろう。
だから……って言うと、結局何だかんだそれっぽいこと言って、もらったものを返さないための意地汚い言い訳みたいだけど、そんな未来の可能性を残すことも含めて、俺とだいはPCをそのまま使おうって話でまとまったのである。
だい自身も、まずはLAの中で話してみようかなって言ってたしね。
だからきっと今頃は、だいもあの夫婦に頂いたPCを使っている、はずなのだ。
俺も明日はそっちを使う予定だし。
でも、これだけ長く高性能な貰い物の話をしておいて……俺が今起動したのは、さっきも言った通り古い方なんだけど。
……そう。
物には罪はなく、むしろそれを未来に繋げようとする意識が俺らにあるのなら……データというものにも罪はないだろう。
俺が普段使いしてるノートPCで使用するメインアカウントは、もちろん俺の分身の〈Zero〉である。
だが元々そのノートPCには別アカウントが登録されていたことを覚えているだろうか?
あの日、PCをもらった日。
俺が〈Zero〉でゲストログインをしてあの廃人ズと遊んだ日。
もらったノートPCには俺がすぐ
そしてそのアカウントのキャラ名は思い出すと何とも言えない気持ちになるが……そのキャラが持たされていた装備は超有能装備群で、ほんとスキルさえ上げれば簡単に上位コンテンツにもいけるレベルのアイテムが所持されていたのである。
もしバザールで全部買おうと思えば俺の所持金では破産するレベルの、そんな逸品たち。
それ故に単純なキャラ削除でそれらの装備を手放すのは惜しいと、俺はPCをもらって間もない頃、あいつに許可を取った上で持っていた装備を一旦〈Zero〉に預けてから、古いPCの方にノートPCに登録してあったアカウントを登録し直して、キャラを作り替えたのだ。
そして〈Zero〉で使わないだろうなって判断した装備は荷物の所持数制限の関係から新しく作り直したキャラに持たせ直させ、俺のキャラメイクは完了した。
作り直すって言った時は「えー、消すのー?」なんて文句を言われたけれど、つまり今うちの古い方のこのPCには、〈Zero〉と入れ替わるように登録されたキャラのアカウントがあるってことなのである。
と、いうことで……話が長くなったけど、今俺には〈Zero〉以外のキャラがある。
今まではアイテム運搬に使ったり、ちょこちょこソロで出来る範囲のスキル上げしかしてなくて、こっちのキャラは【Teachers】のみんなにも知られていない。
キャラメイクの時一緒にいたからだいだけは存在を知ってるけど、フレンド登録をしてるわけじゃないからログインしてもキャラ名でサーチしない限り見つからない。それに今はきっとみんなで話してるか何かしてる頃だろうから、おそらく気付かれることもないだろう。
え? 姑息じゃないかって?
いやいや。俺は【Teachers】の活動を謹慎してるだけであって、LA謹慎って言われたわけじゃないし?
うん、これはセーフ。
むしろ俺の権利である!
ってことでね、こっちのキャラは〈Zero〉ほど自由にプレイ出来るわけじゃないけど、今日はこいつで連休中全然やれなかったLAを楽しもうかなと、そう思うわけですよ。
スキルはあんまりないけど装備はあるし、うん、懐かしのストーリーを改めて進めるのも悪くないかもしれない。
そんなことを考えながら、俺は慣れ親しんだパスワード、じゃないパスワードを入力し、手慣れた動きでログインを進める。
性能いいPCを使ってたからこそ、ほんのちょっとの動作の遅さとか画質の悪さが気にならないわけじゃないけど、それも少しの懐かしさがカバーしてくれた。
そしてついに、俺のもう一人の分身がLAの世界に現れる。
ううむ、やっぱり可愛いな……!
その姿は肩くらいの長さまで黒髪を伸ばし、少し切長の目つきが特徴的なクールビューティー。
可愛い寄りの〈Zero〉とは違う、綺麗って言葉がしっくりくるお顔立ち。
え? ビューティーで合ってるのかって?
ええ、もちろんこの表現は間違ってません。
何たってイメージしたのは……ね!
我ながら、上手くその美しさを再現したと思います。
雰囲気としては【Teachers】のキャラなら美人エルフの〈Yume〉に似てるけど、こちらはヒュームのお嬢さん。
ドレスとかあったらもう速攻着せちゃいたいって感じの美人令嬢なんですよ!
でも、そんな彼女が身に付けているのは、〈Zero〉も盾役の時に使っている
ただしこちらはせっかくの可愛いお顔が見えるように、頭装備だけはバーゴネットではなくサークレットをおしゃれ着として装備して、その美しさを世界に見せつけているわけである。
もちろん戦闘するなら装備は変えるけど……それはさておき、この凛々しく美しいお顔を見ていると……うん、女キャラでプレイする男がたくさんいる理由もね、分からなくない気がしてくるね……!
系統は圧倒的美人なんだけど、自分のキャラだと思うと愛娘のように可愛く見えるから不思議だよね。
あ、もちろんリアルの本人には及ばないけどね?
……え? あーすと同じことにしてんじゃんって?
いやいやいや! 俺は
濡れ衣濡れ衣!
そう、純粋に我が子を愛でてるだけだから!
喋り方とかをどうしようとかさ、そもそも考えたことなかったし。
まぁ今日はソロで懐かしの色々やるだけだから、別に考える必要もないだろう。
頻繁にログインするわけでもないもんな。
さて、ということで……紆余曲折あったけど、とりあえず冒険行ってみますか!
そんな思いと共に、俺はコントローラーを握る手に力を込め、颯爽とプレイヤーホームから彼女を出発させていく。
たなびく黒髪も、凛々しいねぇ。
さぁ行こう〈Nkroze〉!
今日はお前と冒険だ!!
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以下
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新章ネカマ編、スタートです☆(嘘)
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本作スピンオフシリーズである『オフ会から始まるワンダフルデイズ~Side Stories~』。停滞中……!
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