第347話 エネルギー充填100%

※後半からR15回です。ご注意ください。

苦手な方は途中で出てくる♡以降は飛ばしてください!


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以下より本編です!

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 9月22日火曜日、14時過ぎの杉並区にて。


 9月の連休もあと半日ほどで終わりを迎え、明日からはいよいよ仕事再開。

 仕事と言えば部活も大会に向けた動きが活性化するし、秋には修学旅行もある。

 プライベートでも行きたいところは多いし……LAでは久々の大型バージョンアップによる世界の拡張も控えていて、楽しみは多い。

 夏の名残を感じさせる9月の陽気は、まだまだこれからの訪れを隠す気満々みたいだけど。

 そんな暑い陽射し差す青空の下を、俺とだいは手を繋いで歩いていた。

 

 こうして二人で歩くのは……ちゃんと二人で歩くのは、なんかすごい久しぶりな気がするなぁ。


「しかしまー、長いようであっという間の4日間だったなー」


 そして俺は右手にだいの手を、左手にスーパーの袋を持って、慣れ親しんだ我が家までの道を歩きながら、隣を歩くだいに話しかける。


「そうね。真実ちゃんやロキロキ、久門さんに会えて楽しかったけど……亜衣菜さんのことは、やっぱりまだ悲しいかな」


 そんな俺に返ってきたのは、寂しそうな横顔から放たれたしょんぼりした声。

 その声は何も包み隠す感情がないような、素直な心からの声に聞こえた。


 昨日から今に至るまでずっと他の誰かが近くにいたから、周囲に気を遣わせないようにだいの中でも自分を誤魔化して、平静を装ってたところもあったんだろうけど……やっぱり心の優しい奴だからな。

 俺と二人きりになったことで強がる必要がなくなったから、抑えていた感情の蓋が外れて、あの時の出来事を思い出しちゃったんだと思う。

 

 あいつのことは……もちろん俺も思うところはある。

 でも、包み隠さずに寂しそうな顔を見せてくれるのは、俺への信頼だから。

 だから——


「あれはしょうがないって。ああなるまで調子乗らせた俺が悪い。……でも、あいつのことがあったから、なんつーか俺も覚悟っつーか、そういうのが定まった。だからこそってのも変な話だけど、太田さんや風見さんの前であんなこと愛の主張言えたのも、あいつのことがあったからだと思う。気にすんなって言っても難しいかもしんないけどさ、今はあいつのことは忘れておこうぜ」

「……うん、だよね。そう思うしかないよね」

「そうだって。それにほら、考えようによっちゃ1減2増で友達増えたわけだろ? 数をどうこういうわけじゃないけど、だいの友達が増えるってことはだいの魅力が他の人にも伝わってる証拠だと思うから、俺はこれでよかったと思うよ」


 俺は少しでもだいの重荷がなくなるように願いながら、多少の冗談も混じえつつ、お前は悪くないし、仕方なかったってことを伝えていく。

 そんな俺の思いを察したか、だいも表情を苦笑いに変化させながら「どうせ友達少ないわよ」なんて言い返してきたけど……こうやって言い返せるくらいがね、ちょうどいいんだろうね。


 なんて、俺がよかったよかった、なんてだいとの会話に胸を撫で下ろしかけたと思えば——


「……でも、そうね。愛してくれる人がいるもんね」


 おっふ……!


 さらっと言われたその言葉は——笑顔になりながらでも、わざとらしい表情でもなく、当たり前のことのように告げられたその言葉は——予想以上の破壊力で俺の心に襲いかかってきたではありませんか!

 いやもちろん間違ってないぞ?

 俺は世界で一番だいのことを愛してる自負があるし、俺が世界で一番だいに愛されてる自信もある。

 そんなラブラブカップルだからね、俺たちは。

 だからだいの言葉は間違ってないんだけど……!

 

「どうしたの?」


 でも、俺が何も言わないことが不安だったのか、下から覗き込むようにだいが俺の顔の前にその可愛いお顔を持ってきたもんだから——


「……お前はまだまだ俺に愛されてる自覚が足りないな……!」


 思い切り抱きしめたい欲求を何とか我慢して、両手の自由の効かない俺は精一杯の力でだいを睨んでみせるのだ。

 ほんと、これを我慢しろとか酷すぎるってもんだって!

 もちろんその睨みの本心にはさ、溢れる愛が込められてるわけだけどね!!


「早く帰って、ゆっくりしようね」


 そして、ようやく俺の気持ちを理解してくれただいがそう言ってきたけど……これを言っただいの表情のずるさったら、ほんとみんなに自慢したいくらいだったね。


「二人の時間も必要だな」

「うん、とっても」


 そして、どちらからともなく握り合う手の力を少し強くして、少しだけ進める歩を早めながら。


 そうやって……俺たちはまた、二人の日常へと戻っていくのだった。







 ♡







 閉じたカーテンの外から差し込んでいた光はいつの間にか消え去り、さっきまでははっきり見えていたはずの目の前の人の表情にも薄暗さが浮かぶ頃。


 帰宅してから、もうどれほどの時間が経っただろうか?

 それも定かではないほど、特別な時間を過ごした多幸感に包まれながらも……俺は薄暗い部屋の中、目の前で顔をしかめる愛しい人だいを前に、我に返って少し焦りを覚えていた。


 いや、帰宅したのに何で焦ってるかって? ……、いや、その、うん。


「……変な味」

「だ、大丈夫か? 今ティッシュと水持ってくるっ」

「ティッシュ?」

「え?」

「なんで?」

「え、いや、ほら、吐き出すかなって……」

「飲んじゃったよ?」

「えっ!?」

「だって……そういうものなんじゃないの?」

「いや、たしかに嬉しいけど……ってか、何それどこ情報!?」

「カナさんから。今朝から色々話してるやりとりしてるんだけど、ちょっとそういう話にもなったから……」

「な、なんて話を……!!?」


 ご覧の通りの会話から、場面は推し量り給え。

 え? 無理? 何の会話か教えろって?

 いや、そこはほら、賢者になって考えてくださいよ。

 察する能力って大事じゃん?

 ……いや、そこを何とかって? 

 ええい、馬鹿野郎! 察せ! 細かく言えるかこんな場面!


 ……と、乱心失礼。取り乱してしまったが……。

 太田さんのやつ、何の話してるんだよマジで……。


 そんな脳内で毒を吐きつつ、俺は薄暗い部屋の中を何も身に付けず歩き、冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出し、部屋の方の机の上にあったコップへお茶を注ぎ、それをだいに渡す。

 ついでに自分のコップにもお茶を注いで……ふぅ。水分補給完了、と。

 

 そして改めてまた先程までの定位置に戻り……だいがテーブルにコップを置いたのを確認してから、その身体に必要以上にくっついて……俺たちは二人でごろんと横になる。

 もちろんだいの方も、俺と同じ格好で。

 設定強めに付けたエアコンが冷やしてくれた室温が、の身体には心地良い。

 とはいえだいの身体が冷えないように、タオルケットには二人一緒にくるまってるんだけど。


「でも今日はすごい元気だったね」

「え……いや、だってずっと一緒だったけど、二人じゃなかったし……」

「そんなにシたかったの?」

「……っ! ……ダメかよ……」

「ふーん? 別に?」

「むぅ、なんだよっ」


 そんな幸せに包まれた状態の中で、おでことおでこをくっつけながら繰り広げられる俺とだいの会話である。

 もちろんだいの大きなあれも、ノーガードで密着中。

 さらにはちょっと唇を突き出すだけで互いの唇が触れ合うレベルの、そんな距離。

 ……でも今だいの唇を見るのは……ちょっとドキドキしちゃうけど。


「つーかさ……その……口でってのは嬉しいけど……無理してする必要もないんだぞ?」


 あっ、べ、別にこの発言がドキドキと関わってるわけじゃないからね!?


「んー、でもゼロやんの余裕なさそうな顔見るのは悪くないかも」

「えっ!?」

「普通にシてるときって、私の方が幸せ過ぎて余裕ないし、ゼロやん意地悪な顔をしてる方が多いんだもの。だから、今日はちょっと新鮮だったし、楽しかったよ?」

「……Sっぽい顔をなってんぞ……」

「ふふ、たまにはいいでしょ? 倫の前だけなんだから」

「っ!!」


 もちろんこの会話の詳細も秘密だが、不意をつくように俺を「ゼロやん」呼びから「倫」呼びにしてきただいの悪戯っぽい上目遣いを見せる、小悪魔系の笑顔たるや、それはそれはとてつもない可愛らしさで——


「えっ?」


 妖艶さを帯びつつも、征服欲を駆られるような笑顔は……何と既に2発を撃ち終えた俺のに新たな銃弾を込めてきたのである!


「今は私触ってもないけど……」


 そして、さすがにこの充填にはだいもびっくりしてるみたいなんだけど……いや、俺だってびっくりはしてるんだぞ?

 さっきは帰宅後のお昼寝後、普通に一戦を終え……イチャイチャとくっついてる時にだいが何気なくを弄ってきたことで第二射の装填が行われたけど、今回はただただくっついてただけで、だいが可愛すぎる笑顔を見せてくれただけなんだから。

 でも……この疼きは、出来れば我慢したくない。

 俺のガンナーとしての心もね、そう叫んでるよね!

 

「……もう一回する?」


 そして、そんな俺の気持ちを察してくれた最愛の人は、またしても先程のような、俺の心をくすぐる笑顔を浮かべてそんな提案をしてくれるものだから——


「明日に響かせないようにね?」


 コクッと頷いた俺が、テーブルの上の箱から本日の2袋目を取り出して開封すると、だいが悪戯っぽくこんなことを言ってきたので——


「こんな可愛い菜月を前に、我慢する方が身体に悪い」


 ってね、今この場に漂う甘美な空気に合わせ、物理的にだいを閉口させてやりました。

 その時間は……いつもより長めに、ね。


 この後の流れは……まぁもう言わなくてもいいだろ?

 

 そんな甘い時間に、俺たち二人は溺れていく。

 いや、溺れるんじゃなく、潜り進んでいくのである。


 進んだ先は、まだ見ぬ世界かもしれないけど、二人だったら心配はないから。

 

 愛してるし、愛されてるから。


 今はただ、この時間に酔いしれたい。

 ここに幸せはある。


 確かな想いを胸に、俺たちは二人の時間を過ごすのだった。






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以下作者の声です。

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 これを出退勤中の電車の中で書いた作者です。

 メインヒロインへの水やり回となりました。

 ……え? 水じゃないって?

 いやいや。笑


 次回から新章!

 いよいよ久々のゲームパートにいきます!

 

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 本作スピンオフシリーズである『オフ会から始まるワンダフルデイズ~Side Stories~』。停滞中……!

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