第311話 想いを重ねて今度こそ……あ
「あっ、そだそだ。せんかんさん写真いいっすか?」
「お? いいぞ?」
集合場所で女性陣を待ち始めて1分程が経った頃、昨日全員と2ショット撮ると言ってたロキロキがその使命を思い出したのか、大和に向かって写真撮影の許可を請う。
そんなロキロキに大和はすんなりと応じたわけだが。
「あれ、倫は入んないの?」
「あ、今度は2ショットでおなしゃす!」
ここまでの写真が全部3ショットだったからか、大和の隣に立ったロキロキが俺がいないのにスマホを構えたため、あれ? って感じで大和がこちらに視線を送る。
俺からすればロキロキの目的を知ってるからね、なんの違和感もないんだけど。
しかしあれだな、こう客観的に見ると、大和は単独でネズミ耳だったけど、俺とロキロキは種類こそ違うが、2人してダルメシアン系の頭装備だったんだよな。
となると、はたから見たら俺らの方が仲良く見えたりしたんだろうか?
まぁ体感的に、昨日の色々があった分、なんとなく俺の方が懐かれてるって感覚はあるんだけど。
とにかく、ロキロキが俺らに馴染んでくれたことに安堵だなぁ。
「あざっす!」
大和とロキロキの2ショットをロキロキが自撮りするのを眺めつつ、そんなことを思ってる間に終わる撮影。
さて、あとは誰と撮ってないんだろうか?
それを聞こうと思ったら。
「じゃあゼロさんもいいっすかっ」
「へ? いや、俺は昨日——」
「昨日?」
「いいじゃないすか! 昨日とは明るさも格好も違うっすから!」
「あー、まぁ別にいいけど」
まさかまたしても写真のお願いが来るじゃありませんか。
まぁ減るもんじゃないし、自分の肖像権がー、とかも言うこともないからいいんだけど。
ということで俺が許可を出すと、ささっと俺のそばにやってくるロキロキ。
で、肩がくっつくくらいの距離感で、パシャっとな。
「あざっす! これであとはぴょんさんとゆめさんとゆっきーさんとセシルさんっす」
「おー、いいペースだな」
「そっすね!」 あとはまだの人たちとうまく一緒の班なれたらいいんすけど」
「まぁそれは時の運だろ。で、みんなとはどんな写真撮ったの?」
「あ、見ます?」
「おいおい、男だけで写真たー華のねーこったなー」
と、俺とロキロキの本日の写真撮影が終わり、どんな写真を撮ったかを見せてもらおうと思った矢先、懐かしい相変わらずの雑な物言いが聞こえ、その声の方へ顔を向ける俺とロキロキ。
もちろんそこにいたのは――
「おかえり! 髪乱れてっけど、また絶叫系行ってたのか?」
「ったりめーだろー。叫んでなんぼよ遊園地は!」
「でも朝より混んで来てるからね~、3つ乗って終わっちゃった~」
「でも待ち時間はのんびりおしゃべりできるから、楽しかったねっ」
「ですねっ。皆さんのお話楽しかったですっ」
我らが盛り上げ隊長のぴょんを筆頭に、同じ班だったゆめとあーすと真実の姿。
その戻って来たぴょんに大和が真っ先に声をかけ、乱れた髪をとかしてあげながら何に乗ったのかを確認してたけど、どうやらぴょん班はまたしても絶叫系を周回したらしい。
もちろん楽しみ方は人それぞれだからね。
それにどうこう言うことはないけど……それよりも、4人班だったから自然と2・2になるのは分かるけど、ぴょんとゆめが並んで戻ってきて、少し下がって残りの二人が並んでた状況に、なんとなく複雑な気持ちになる俺。
そういや最初の班で戻ってきた時も、真実のやつあーすと並んで話してたような……。
まぁ昨日からあーすと一緒にいる時間が多かったし、あーすは何だかんだいい奴だからな。うん、それが楽しいと思ってるならそこは本人次第でいいんだけど……。
でも、あーすの中身って言っていいものなんだろうか……!
「あとはだいたちかー」
「だね~」
「あ、じゃあだいさんたち戻ってくるまでに写真撮ってもらっていいすかっ」
「お? あたしと写真撮れるなんて幸せ者だぞー?」
と、俺があーすと横並びしてる妹を見ている間に、ロキロキは早速残る4人のうちの二人と写真撮りに行っていた。
昨日はよく分かんない思いつきだと思ったけど、そうやって写真撮ることでみんなともより近づけてるみたいだし、仲間に入りたてのロキロキからすれば意外といい案だったのかもな。
「あ、じゃあゼロやんは僕と写真撮ろうよっ」
「へ?」
「あっ、じゃあお兄ちゃん私ともっ」
「お、おう」
「よしよし、じゃあ俺が撮ってやろう」
そして視線をロキロキとぴょんとゆめの方に移したところで、気づけばあーすと真実が俺の近くに来て、俺との写真を求めてくる。
その撮影役は大和がやってくれたけど、なんかみんなもいるのにあえて
「あ、じゃあみんなわたしとも2ショットよろ〜。可愛い顔でよろしくね〜」
と思ってたら、ロキロキとの写真を終えたゆめとぴょんがこちら側に参戦。
で、先に俺と大和が交互にカメラマンをしつつ、だいたちを待つ間わいわいとみんなで写真を撮るイベントが発生。
しかもロキロキに習ってなのか、ゆめの言葉に合わせたのか、みんなそれぞれ2ショットに拘るって言うね。
「じゃ、最後にゼロやんよろしく〜」
「はいよっと」
ここらへんのノリは俺たちらしさったららしさだと思うけど、みんなと写真撮り終えて、最後にゆめとの2ショットを撮る時になって気づく。
そういやお互い頭に乗せてるのが同じやん。
インカメに写った光景に、なんかちょっとカップルみたいになってんなって思ったりした、おそらく16時を少し回った頃。
「ごっめん! 遅くなっちゃったー! でもゆめちゃんその写真は羨ましいっ」
「すみません、お手洗いが混んでいまして」
「トイレの場所にも迷っちゃって……遅くなってごめんね」
「ったく、ちゃんと時間見て行動しろよー?」
ようやく戻って来た残る3人の登場。
いの一番に謝罪しつつもゆめを羨ましがる辺りについてはノーコメントだが、そんな3人にわざとらしく注意をするぴょんは、なんかほんと先生みたいだった。
いや、まぁもちろん先生なのは知ってるけど、これだけお客さんもいたら女子トイレは大変そうだもんな。
注意はほんと口だけって感じ。
「後で写真送ったげるね〜」
「ん、ああ、さんきゅ」
そしてみんなの視線が遅刻してきた3人に向けられる中、写真の流れで隣にいたゆめがそんなことを言ってきたけど……なんだろう、だいが何か言いたげにこっちを見てる。
ううむ、なんだろ?
「うしっ、じゃあ最後の班分けいきますかー」
「了解っす!」
「また集合して、最後はみんなでパレード見ようね~」
そんなこっちを向くだいの方に向かう間もなく、遅れてきた3人を迎えてすぐにぴょんが班決めするって言い出したから、俺はだいと話す暇もなかったんだけど……大丈夫。三度目の正直、今度こそ俺たちは同じ班になれるはず……!
そう信じて胸に拳を当て、俺はいざ班分けじゃんけんに臨み――
「じゃん! けん!」
円陣になるみんなの中で、密かに気合を入れ直し――
「ぽんっ!!」
差し出した拳が同じだったのは――
「あっ」
顔を上げて確認するより早く、耳に聞こえた弾んだ声。
そして同時に——
「うわ〜やっちゃったよこれ〜……やり直ししない〜〜?」
「うーん……」
可愛い顔に困惑を浮かべるゆめと珍しく歯切れが悪くなるぴょんの姿。
「むむ? この班分けに何か問題でも?」
だが、その二人がそうなった理由がピンとこないようで、いつものトーンでゆきむらが疑問をぶつけるのだが……とりあえずゆきむらが疑問を呈した結果は、俺からすればいけるだろって言いたいところだった。
俺自身の結果的にもね、やり直ししたいかどうかで言えば、気持ちが半々で何とも言えないってのもあるんだけど。
「いや〜、なんかぴょんに悪いじゃ〜ん?」
そんなゆきむらに歯切れ悪く言葉を返すゆめの答えに、どんな班になったかが見えてくるってものだろうけど、そう。
午前中の俺とゆきむらよろしく、今度はゆめと大和だけがパーを出して二人班なんだよね。
大和自身も何とも言えない顔してるけど、それはたぶん表面上で、実際はそんな気にしてないような気はする。でもあれだな、ぴょんの気持ちもあるし、ぴょんの判断待ちってとこなんだろうな。
「でも、それを言うなら私はゼロさんと二人になりましたけど……」
だが、苦笑いのゆめに対してもゆきむらは変わることなく、ゆめに言葉を返しつつチラッとだいの方に視線を向けると、だいはだいでゆきむらに対して余裕を感じさせる微笑みを返していた。
それはだいなりの彼女としての余裕って意味でもあるんだろうけど、それ以上にその表情から伝わるご機嫌な様子。
だいにとっては、どうやら今回の班分けは満足みたいだね。
……愛い奴め。
「まー、しゃーねーな! ゆめも気にせずそいつのこと連れ回していいぞ!」
「ん〜、わかったよ〜ぅ。じゃあぴょん情報を伝える時間にするね〜」
で、ゆきむらが見事論破……のような形での決着となり、大和とゆめの二人班を認めたぴょんはバシッと大和の背中を叩いて送り出していた。
まぁ大和が見た目ならゆめがタイプって話を知ってるからこそ思うところもあるのかもしれないけど、この二人に限って何かが起こるはずもなかろうて。
ゆめは大和のことタイプじゃないっつってたし。
「あーすさんまたまたよろしくお願いしますねっ」
「うんっ。ほんと奇遇だねー、3連ちゃんなんてねっ」
「しっかしあれだなー、わけーのばっか集まっちまったなー」
「え、でも俺ぴょんさんと1個しか違わないっすよっ?」
「最年少ですが、よろしくお願いします」
で、大和をゆめの方に送り出したぴょんを中心に、わちゃわちゃと班メンバーが集まってるけど、そのメンバーはまさかの3連続で一緒となった真実とあーすに、ゆきむらとロキロキ。
なんか、どんな会話するのか全く読めないけど……あれだな、昨日の昼に俺があーす迎えに行った時の気持ち、今ならぴょんと共有出来るかもな!
と、いうことで、残った3人がチームグーで同じ班ということなのだが……。
「菜月ちゃんまた一緒だねっ」
「うん、またよろしくね」
この班になった瞬間、真っ先に声を弾ませた亜衣菜と笑い合うのは、ようやく俺との想いが通じ合った愛しのだい。
本当は二人がよかったけど、まぁここは贅沢を言うまい。
よく考えればさ、逆に亜衣菜なら変に気を使うこともないもんな。
うん、そうだよ。亜衣菜がゆきむらだった方がやりづらかったと思うし。
……でも、ゆきむら可愛かったからまた同じでもよかったかな……って、いやいや違う違う!
ほら、ゆめやぴょんだと、逆に気を遣われそうだし。
うん、なったもんはしょうがないだろう。
「じゃ、20時にまたここな!」
「おっけ~。じゃあせんかんさ~、歩き疲れちゃったからとりあえず座れるとこで話そ~」
「おうよ、おっけ」
「ゼロさんたちも、またあとでっす!」
「行ってきますね」
「遊び倒してくるぜー!」
「またあとでねーっ」
ということで、俺がだいと亜衣菜の3人班を覚悟している間にも、他の班が出発進行。
手を振って出発するみんなに手を振り返しつつ、じゃあ俺らはどこに行こうか決めるかと思った矢先。
「じゃ、いこっかっ」
「うん。じゃあもう1回あれから行く?」
「あれ?」
「あっ、いいねっ! じゃああれに向かってレッツゴー!」
「いや、あれってなんだよ」
「いいからいいからー。ほら行くよっ」
「って、おい引っ張んな!」
話す間もなくね、よく分からないだいと亜衣菜の会話が繰り広げられ、俺はさっぱりの理解不能。それでも強引に亜衣菜が俺の左腕を引っ張るから、とりあえず足を動かすしかなかったなんだけど、それを見ただいはだいで俺の右腕を引っ張るっていうね。
普段こんなことしなそうなのに、なんだろう、ちょっとテンション高めなのかな。
俺と一緒なのが嬉しいからだったら……俺も嬉しいけど。
「ついて来ればわかるわよ」
「まぁ、だいがそう言うならいいけどさ……」
とはいえ、正直どこ行くかくらいは教えて欲しいとこだけど、楽しそうなだいの表情を前に、俺はそれ以上追及できず。
まぁ、だいがいるからよしとする、か。
うん、なんだかんだだいの楽しそうな顔見れるのは嬉しいし。
ここはこいつらに合わせるしかないな。
ということで、俺はどこに行くかもわからぬまま、両腕を美人二人に引っ張られるという、はたから見たら羨ましい限りであろう光景の下、夢の国班別行動ラストとなる班での行動を開始するのだった。
☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―
以下
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ここからが本番です……!
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本作スピンオフシリーズである『オフ会から始まるワンダフルデイズ~Side Stories~』。停中……!
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