第273話 新人君、その実力 後編

〈Hitotsu〉『魔法おkです』

〈Gen〉『うし、じゃあ突っ込むぞー』

〈Zero〉『間違ってもリダ追い越すなよw』

〈Loki〉『了解っす!』

〈Soulking〉『はいよー』

〈Daikon〉『k』


 前回は、エリア切り替えと同時にもうルチアーノさんたちが走り始めててそれは焦ったけど、今回はちゃんと突っ込む準備があったので焦りはなし。

 でも真実もしっかりスキル使って強化の範囲化も忘れてないし、よしよし。


〈Gen〉『いくぞ!』


 そして、気合の入ったリダのログとともに、行軍開始。

 小型の恐竜モンスターやトカゲ、蝙蝠等の雑魚モンスターひしめく火山内部という設定のコンテンツダンジョン内部は、けっこう薄暗くて見づらいところもあるんだけど、もう道程はのりは身体が覚えてるからね、迷うこともあるまい。

 リアルだったら、こんなとこ恐ろしくて歩けないだろうけど。


〈Loki〉『回復なしっすよー』

〈Soulking〉『おうよっ』

〈Hitotsu〉『でも、ちょっとずつ減ってくHP見ると回復したくなりますね・・・』

〈Zero〉『回復したら死ぬぞw』

〈Loki〉『ヘイトの仕様理解は、経験詰めば覚えますよ!』

〈Soulking〉『だねー』

〈Zero〉『中ボス見つけたら、とりあえずリダの自己回復待ちな』

「強化も?」

「うん」

「わかりましたっ」


 ログの会話に続く形で、後方から聞こえる肉声。

 いやぁ、なんというかオンラインゲームなのに、オフラインで3人一緒にいるってやっぱ不思議だな。


 ま、今はそれを気にしてる暇もないんだけど。


〈Gen〉『発見!』


 っと、ほらね。30分で計5体の中ボスを倒す必要がある以上、このダンジョン内は複雑な雰囲気を見せているが、実はさほど広くない。

 ということで、俺たちはまず1体目となるトカゲ型の中ボスモンスターに遭遇。

 発見報告をしたままリダがからまれる形でファーストヘイトを取り、戦闘開始。それと同時にリダが立ち止まったから、追ってきていた雑魚モンスターたちがボコボコとリダを殴っていく。

 そしてみるみると減っていくリダのHP、だが。


〈Loki〉『ナイスっす!』

〈Gen〉『おうよっと!』


 あと1割ほどまで減ったHPを、リダ自身が回復魔法を唱えてHPを大回復し、一気に6割ほどまで回復。それと同時にロキロキが範囲阻害魔法で雑魚モンスターたちを硬直させ。


〈Zero〉『いくぞ』

〈Daikon〉『k』

〈Loki〉『リダの回復と強化よろっす!』


 俺とだいは範囲攻撃スキルを展開し、嫁キングと真実に指示を出したロキロキも即座に範囲魔法を唱えだす。

 その間にリダは中ボスモンスターのタゲをがっちりと固定し、嫁キングがリダのHPをフル回復させ、真実のMP持続回復魔法が発動。


 しかしあれだな、ルチアーノさんと比べるのは申し訳ないけど、ちょっと今のは分かってても見てて怖かったな。

 いやぁ、いつか自分がやるとなると……うん、装備見直しておこっと。


〈Zero〉『やっぱ3人だとけっこうMP食うな』

〈Loki〉『ゼロさん、ウィンドエレメント使ってから乱れ撃ちしてみてもらっていいすか?』

〈Zero〉『エレメントを?』

〈Loki〉『そっす。合わせましょ』

〈Zero〉『合わせる?』

〈Zero〉『あ、おk』


 この前の範囲狩りの時は、俺、だい、亜衣菜、もこさん、こっぺぱんと5人の火力でスキルの使用は1回で済んだけど、今回はやはり3人になっているせいで与ダメ不足で雑魚を倒しきれていない。

 さてもう1回と思ったところで、俺に対するロキロキの助言が送られたわけだが、俺は一瞬の間を置いてその意味を理解。

 しかしまぁ、他武器への理解もすごいな、ロキロキ。


〈Loki〉『俺の合図でもっかいっす!』

〈Daikon〉『k』

〈Zero〉『k』


 そして、ロキロキの意図をだいも理解したのだろう、ロキロキのログ直後の詠唱を見て、俺はスキル欄からウィンドエレメントを発動させ、うじゃうじゃしているモンスターの中心へ範囲攻撃スキルである乱れ撃ちの照準をスタンバイ。

 だいも、敵陣の中心地に突っ込んで、スタンバイ完了。


〈Loki〉『今っす!』


 そしてそのログとともに、俺とだいのスキルが発動。


〈Soulking〉『おー』

〈Hitotsu〉『すごいですねっ』

〈Gen〉『じゃ、倒すかw』


 俺とだいのスキルが発動したことによってリダに襲い掛かっていたモンスターたちは見事に全滅。残されたのはHPが残り6割ほどとなっている中ボスのみ。

 いやぁ、なるほど、勉強なったな。


 ちなみに解説すると、銃の範囲攻撃スキルである乱れ撃ちは基本が物理ダメージなのだが、銃や弓使いが行使できるウィンドエレメントなどの属性エレメントというスキルを使うと、銃や弓の攻撃を使用したエレメントの属性ダメージへと変化させることができるのだ。

 これは遠隔攻撃専用のスキルで、物理アタッカーには使えないスキル。

 そしてなぜウィンドエレメントという風属性にしたかというと、短剣の範囲攻撃スキルであるハリケーンエッジが風属性攻撃だから。

 そしてそして、俺らがスキルを発動する前にロキロキは敵の風属性耐性を下げる範囲攻撃魔法を使っていたので、俺とだいの攻撃が1発目より明らかに強化される結果となったのだ。


 ううむ、属性エレメントとか普段滅多に使わないけど、こういうスキルの重ね掛けもあるのか。いやぁ、ほんとさすが元【Vinchitore】支部幹部だな。


〈Loki〉『ゼロさんとだいさん、理解早いっすねw』

〈Zero〉『いやいや、いいアイディアもらったよ』

〈Daikon〉『でもMPもつかしら』

〈Gen〉『ぼちぼちいくぞー』


 っと、そうか。まずは中ボス倒さなきゃだもんな。

 でも、MPもつかってだい心配してるけど、さっきの2回目の範囲攻撃、与ダメに余裕ありそうだったから、大丈夫じゃないかね? 


〈Gen〉『1番タックル!』

〈Zero〉『2番!』

〈Daikon〉『3番』

〈Soulking〉『いけいけーw』

〈Hitotsu〉『がんばれー!』

〈Loki〉『あー、たしかにだいさんの言う通りっすね!』


 むむ?

 1回目の連撃とロキロキの魔法が終わり、残り6割ほどだった中ボスのHPは残り1割から2割の間。たしかに倒しきれなかったけど、このくらいならあとは通常攻撃何回かやってれば、押しきれると思うけど。


〈Loki〉『とりあえずこいつは押しましょう!』

〈Gen〉『よろしく!w』

〈Zero〉『k』

〈Loki〉『倒したらちょっと進言あるんで』

〈Loki〉『真実さん、その間に移動魔法お願いします!』

〈Hitotsu〉『了解です!』


 そして連撃後30秒ほどで、中ボスを撃破。

 普段なら移動魔法をもらったらすぐ移動するとこなんだけど、とりあえずロキロキの指示があったので、待機。

 でも今の戦闘、別に問題なかったと思うけど……?


〈Loki〉『お二方とも火力高いっすね!』

〈Loki〉『2連撃であそこまで削るとは思わなかったっすw』

〈Zero〉『なら問題ないんじゃ?』

〈Daikon〉『1体目はHPが少ないけど、たぶん3体目から2連撃2セットでも2割残るかも』


 ほお……。2割残しだと、ちょっと通常で削るには時間かかるな……。


〈Gen〉『ほお』

〈Loki〉『おお、すごい!さすが数学科っすね!』

〈Soulking〉『え、与ダメログから計算したの!?』

〈Hitotsu〉『すごい・・・』

〈Daikon〉『3セットやると、4体目倒したとこでみんなMP切れると思う』

〈Loki〉『同感っす!』

〈Loki〉『アイテム使えばごり押しできるっすけど、ちょっと効率化してみませんか?』

〈Gen〉『おお、最適化かwいいことだなw』

〈Soulking〉『でもどうするの?』

〈Zero〉『そういったって、アタッカーは2枚だぞ?どこを変えるんだ?』


 効率化、か。

 うーん、石橋叩いて途中途中MP回復の時間作ってけば、制限時間内でギリ足りると思うんだけど。

 ロキロキを短剣に変える? いや、でもそうすると範囲阻害が出来ないから、範囲狩りで詰むし、うーむ?


〈Loki〉『2枚だとしても、だいさんロバーじゃないっすかw』

〈Loki〉『前方範囲攻撃とかある敵増えてて、最近じゃあんまりやらないっすけど』

〈Loki〉『リダの盾性能高いですし、ゼロさんもガンナーだから回復不要なんで』

〈Loki〉『だいさん大変っすけど、だいさん>ゼロさん>だいさんでいけますよ!』


 いや、全然わからん!

 だいがロバーだから何なんだ?

 リダの性能と、俺がガンナーだから、何なんだ?

 くそう、LAのことでよく分からないこと言われるって、久々だな……!


〈Gen〉『マジ?』

〈Soulking〉『スキル発動硬直あって、繋がるの?』

〈Daikon〉『あ』


 む、だいの奴何か気づいたのか? 何だろ?


〈Daikon〉『トライシオンエスパーダ?』

〈Loki〉『おお、そっす!』


 だが、俺が考えに考えても出なかった答えが、だいによって発せられる。

 まともに短剣鍛えてなかったから出てこなかったけど、たしかにそれは、だい>俺>だいの連撃を可能にするスキルの名前だったのだ。


〈Hitotsu〉『ええと、なんですかそれ??』

〈Loki〉『次は移動魔法あるから、からまれないですし、移動しながら説明します!』


 いやー、なるほど。盲点だったなぁ。

 最近じゃ盾のスキルや魔法が充実してめっきり使う場面なくなってたけど、ヘイトリセットスキル多用型のレアモンスター討伐する際には欠かせなかったスキルじゃんな、それ。


「トライシオンエスパーダはね、自分と攻撃対象の間にいるプレイヤーがスキルを発動させてダメージを与えたことにするスキルなの。だから、私がリダの後ろから使えば、リダが攻撃スキル使ったっていう判定になって、スキル使用硬直するのはリダになるの」

「ほうほう。そんな技があるんですね!」

「うん。間にいるプレイヤーのヘイトを上げる効果がメインだから、ダメージは大きくないけど、使ってすぐ動けるからたしかに連撃が出来るわね」

「でもリダのタックル前にスタンバっとかなきゃいけないし、連撃前に範囲攻撃きたら食らっちゃうよな」

「そこでゼロやんがガンナーだからってことでしょ? 回復するのが私だけならいけると思う。ダメージカット装備で待機してれば、即死もないだろうし」

「あ、そっか」

「うん。すごいね、このアイディア」

「うむ……」


〈Loki〉『ってことっす!』

〈Hitotsu〉『なるほど!』


 移動しながら、今我が家で繰り広げられた会話とほぼ同じ内容のことをロキロキがログでも説明してくれたのだが、つまりはそういうこと。

 だいがリダの連撃開始前にリダの後ろに移動しておき、リダが敵を硬直させた直後、だいが連撃の1番手を担い、俺が2番手、その隙に硬直なしという状況を利用して即座に背後に移動、だいが3連撃目を放つ、という作戦だ。

 たしかにそれなら連撃のダメージボーナスも増えるし、ロキロキの魔法ダメージもボーナスが入る。

 たしか苦無にも似たようなスキルがあるはずだけど、これは斧や大剣、槍の火力系重装備アタッカーたちには出来ない、短剣や苦無の遊撃アタッカーならではの戦略だな。

 いやぁ……さすが本職がロバー短剣使いなだけあるなぁ。アイディアの量が違うぞ、ほんと。


〈Gen〉『じゃ、やってみるかw』

〈Loki〉『よろっす!w』

〈Loki〉『いっちゃんさん、だいさんに移動速度UP魔法を』

〈Hitotsu〉『はい!』


 ということで、出会った2体目の中ボス。

 さっそくさっきの作戦お披露目タイムだな。

 でもいきなりで上手くいけるかな――


〈Gen〉『1番タックル!』

〈Daikon〉『2番』

〈Zero〉『2番!』

〈Daikon〉『4番』

〈Soulking〉『2番が二人!w』


 あ、マクロのセリフ直すの忘れてた。

 でも。


〈Loki〉『完璧っすね!だいさんさすがっす!w』

〈Loki〉『いっちゃんさんもナイスっすw』

〈Daikon〉『すごいね』

〈Hitotsu〉『え?私はなにも??』

〈Loki〉『シャドウスタッブは敵の背後が1番ダメージ出るんすよw』

〈Loki〉『移動速度上がってたから、完璧な位置取りいけてましたね!』

〈Zero〉『それにしても一気に減ったな』

〈Daikon〉『ロキロキ2回魔法いれてたね』

〈Loki〉『あ、気づかれましたか!』

〈Gen〉『マジかw凄まじいなw』

〈Soulking〉『あっという間だねっ』

〈Hitotsu〉『移動魔法、しちゃったけどいいですか?』

〈Loki〉『おお、ナイスっすw』

〈Gen〉『よし、サクサクいくか!w』


 いやぁ……見事すぎるなぁ、マジで。

 ロキロキの提案にしっかり応えただいもだけど、4連撃目のだいのシャドウスタッブ直後だけじゃなく、だいのトライシオンエスパーダ1回目のスキルと俺のマルチプルショットだいの2回目前の直後にもロキロキは攻撃魔法いれてんじゃん。

 ほんとわずかな時間しかないそのタイミングに魔法詠唱完了させてボーナス付きのダメージ与えるとか、どんな技量してんのマジで。


 ……恐るべし。


 そんなロキロキの実力に敬服してるのか、だいまで声に出してログで褒めてるしな。


〈Loki〉『皆さん上手くて楽しいっすw』

〈Soulking〉『いやいやwロキロキが1番すごいよっ』

〈Daikon〉『そうね、ほんとすごい』


 あ、また褒めた。

 ……今までこんなこと、あったかね?


 うーん、こんな褒めるだい、記憶ないぞ?



 と、ほんとね、驚くばかりのロキロキの実力はその後も遺憾なく発揮され。



『WIN!!』


〈Gen〉『ナイス!w』

〈Hitotsu〉『おお!』

〈Soulking〉『やったねっw』

〈Loki〉『皆さんさすがっす!』

〈Zero〉『いやー、すげぇわ』

〈Daikon〉『うん、ほんとすごい』


 5体目の中ボス討伐完了が、20分。

 そしてボスであるキングサウルス討伐に27分。


 後半はもうみんなMPすっからかんの大激戦ではあったが、俺たちは新人のロキロキ、いや、『軍師』ロキロキの名采配と活躍の甲斐もあり、この構成では初めての、そして久々の6人でのキングサウルス討伐の挑戦を無事に成功で終えるのだった。


 





―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―

以下作者の声です。

―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★― 

 ああ、ゲームパート書くの楽しい……。


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