元旦投稿番外編 ※本編関係ありません!

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 作者の声です。

 

 あけましておめでとうございます!(※投稿2021/1/1 12:30)

 ついに2021年が始まりましたね。

 今年はどんな年になるのか、まずは平和な一年が訪れますよう、お祈り申し上げます。


 さて、本話もお送りするは前話の大晦日投稿に続き番外編!

 頂いたコメントを参考に、大晦日に一生懸命書きました。笑


 清々しく番外編だという認識でお楽しみいただければ幸いです!


 それでは!



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「お待たせしました」

「わっ、可愛い~」

「前見た時も似合ってたけど、やっぱ本物はちげーなー」

「お二方も、お似合いですよ」

「って、あ、挨拶遅れちゃったね~、あけましておめでと~」

「っと、そうだなっ。あけおめ!」

「あけましておめでとうございます」


 迎えた新年元日、いつもなら家族と行くはずの初詣にも行かず、現在私はお仕事の休憩中。

 その私のところへ、知り合ったのは2年……じゃなくて西暦だと3年前、お会いしたのは昨年という方々が、着物姿で会いに来てくださりました。


「いいなぁ、わたしも着てみたいなー」

「ゆめが着たら神聖感なくねーかー?」

「えっ、どういう意味さ~」

「乙女じゃない」

「わっ、新年早々話題がひどいな~……間違ってないけど」

「だからこそゆっきーが適任だなー」

「乙女……ですか。ふむ」


 今はお昼休憩なので、私は社務所を離れ、ちらほらと初詣に来られた方々の視線を受けているのを感じつつ、『きたよ~』という連絡をくれた方々と幸いの好天の下おしゃべり中。

 とはいえ、新年早々からお会いしてるなんて、お二方は本当に仲がいいですね。


「それにしても、遠路はるばる来てくださってありがとうございます」

「いやいや、あんな話聞いたらね~」

「来るしかねーだろなぁ? LAで言った通り、実家帰ってもね、あたしも特にやることねーからさ」

「ふむ。……せんかんさんは、帰省中なんでしたっけ」

「そそ。なのであたしは独りぼっちなゆめと新年初デートでハッピーさ」

「あ、その言い方ムカつくけど、親戚のとこから逃げる言い訳に使えたから今日だけは許す~。年明け早々音羽さんは重たいからね~」

「音羽さん?」

「あ、わたしの親戚のね、ピアノ馬鹿だよ~」

「話には聞いたけど、色々すげー人っぽいな」

「そうなんですか」

「いやほんともう、詳しくはゼロやんに聞いて~」


 新年の挨拶もそこそこに、早くも雑談モードの私たち。

 え、どうして私が元旦からお仕事中で、社務所なんかにいるのか、そしてどうしてお二方がわざわざ横浜や町田から、ここ大宮まで来てくださってるのか、ですか?


 ええとですね、お話すると長くなるのですが、事の発端は、数日前。

 クリスマスも終わって、世の中が冬休みモードに移行し、年末の準備に慌ただしくなった、そんな頃でした。







〈Yukimura〉『すみません、遅れました』


 あの日、12月29日火曜日の21時15分頃、勤めている塾の冬期講習を終えた私は、集合時間の21時を過ぎてしまっていたため、少し焦りながら年内最後の【Teachers】の活動日に参加するべくLAへログインをしました。


〈Jack〉『やっほーーーーw』

〈Gen〉『おっす!』

〈Soulking〉『こんばんはっ』

〈Daikon〉『こんばんは』

〈Zero〉『よっ』

〈Hitotsu〉『こんばんは!』

〈Earth〉『やっぴー☆』

〈Yume〉『こんばんは~』

〈Pyonkichi〉『ノ』

〈Senkan〉『うっすw』

〈Soulking〉『これで全員揃ったねっ』

〈Gen〉『最後に全員集合は嬉しいなw』

〈Jack〉『今日はあーすもいるもんねーーーーw』

〈Earth〉『冬休み万歳☆』

〈Hitotsu〉『私も昨日で仕事納めでした!』

〈Yukimura〉『すみません、明日の講習の準備がちょっとかかってしまって』

〈Yume〉『お~、そっか、ゆっきー塾の先生だもんね~』

〈Yukimura〉『でも大晦日と三が日はお休みですので』

〈Pyonkichi〉『いやぁ、えらいのぉ』

〈Senkan〉『公務員ズはもうみんな休みだもんなw』

〈Zero〉『年末年始くらいゆっくりしたいもんだよ』

〈Soulking〉『子どもできるとそうも言ってられないぞー?』

〈Daikon〉『そうよね、子育てにお休みはないもんね』

〈Gen〉『それ以上にいいものだけどな!』

〈Earth〉『リダはいいパパだねっ☆』

〈Jack〉『その時が来たらご助言おねがいしますーーーーw』

〈Soulking〉『任せてっ』

〈Gen〉『さて、最後は何するかな!』


 皆さんは今日はお休みだったようで、私が最後のログインだったようです。

 そしてお休みだったからなのか、皆さん少しテンション高めなご様子で、いつも通りの雑談をしていた、そんな時でした。


Prrrr.Prrrr.


 私のスマートフォンが、誰かからの電話を知らせてくれました。


〈Yukimura〉『あ、ごめんなさい電話が』

〈Jack〉『でてらーーーーw』


 一言皆さんに断りをいれてから電話にでると。


『あ、優姫ちゃん? 今大丈夫?』

「沙良ちゃんこんばんは。どうしたんですか?」


 電話の相手は、中高を共に過ごした親友の清水沙良ちゃん。

 彼女は現在私と同い年の大学院1年生で、理系の道を進むいわゆるリケジョ理系女子。通う大学院は違いますが、高校を卒業しても定期的に会って遊ぶ、私にとってかけがえのない存在です。

 先日のクリスマスも、一緒に遊びましたね。


 そんな沙良ちゃんなので、電話がくることは珍しくなかったのですが、その時の声は、なぜか少し慌てた様子でした。


『うん、ちょっとお願いがあって』

「お願い、ですか?」


 いつも元気な沙良ちゃんが弱っているというか、困っているのは珍しい。

 不思議に思ってお話を聞くことにすると、沙良ちゃんは私の予想していなかったことをお話してくださいました。


沙希さきがさ、怪我しちゃってさ』

「え、沙希ちゃんが? 大丈夫ですか?」

『うん、大した怪我じゃないんだけど、馬鹿して階段から落ちて、足首やっちゃって』

「ふむ……大事なくてよかったです」


 あ、沙希ちゃんというのは沙良ちゃんの妹さんで、現在高校2年生。

 私と私の妹であるゆずちゃんにとっても、妹みたいな存在です。


 でも、足首ですか。誰かさんと似ていますね。痛そう……。


『うん、でね、沙希お正月に護国神社で巫女のバイトやる予定だったんだけど、行けなくなっちゃって』

「巫女、ですか」

『うん、それでね、私もお正月はもうバイトのシフト入っちゃってるから代わることもできないし、ゆずちゃんにお願いしようと思ったけど、ゆずちゃん今年受験生でしょ? だから』

「え……」

『優姫ちゃんに代わりお願いできないかなって!』

『優姫ちゃんごめんねっ』


 な、なんと……。


 まさかのお願いに、私は少し硬直してしまった気がしますが、少し離れたところから沙希ちゃんの声も聞こえてきたことで、これはなんとかせねば、そんな気持ちが湧きあがり出します。

 年末年始は海外から両親も帰国し、家族でのんびりと思っていたところですが、妹みたいな子のピンチ、これは、なんとかしてあげるのが人の道ですよね。


「分かりました」

『えっ、ほんと!?』

「はい。護国神社ですよね? 遠くないですし、私が行きます」

『ありがとーっ』

『優姫ちゃんありがとー!』

「いえいえ。困ったときはお互い様ですから」

『ほんとごめんねっ、ありがとっ。神社の方には沙希から代わりの子が行きますって連絡させるから、どうすればいいのかまた連絡するねっ』

「お力になれたなら何よりですよ」

『三が日過ぎて落ち着いたらまたご飯行こうねっ』

「はい。楽しみにしてますね」


 と、こんな会話をして通話は終了。


 まさか元旦から巫女さんのお仕事をすることになるなんて思ってもみませんでしたが、これも人助けですし、止むを得ません。

 というか巫女さんのお仕事ってアルバイト雇ってるんですね、そこから初耳で少しびっくりです。


 巫女さん……初めてオフ会に参加した時、コスプレした記憶もありますし、ゼロ様が1番似合ってるって褒めてくれた恰好ですよね。

 まさかまた着ることがあるとは思ってもみませんでしたが、悪いイメージがないお仕事、それが正直な気持ちでした。


 っと、そうだ、遅刻した上に電話で皆さんを待たせてるんでした。

 戻らないと。


 沙良ちゃんとの電話を終え、少し巫女さんのことを考えていた私がはっとしてモニターに目を向けると、どうやら秋に拡張された新エリアをみんなで散策してみようという方向で活動が決まった様子でした。

 なるほど。たしかに実装されたばかりのPvP仕様の新コンテンツだったり、その大会に向けた練習ばっかりで、あまりエリア開拓してませんでしたもんね。

 面白そうです。


 って、まずは戻ったことを報告しないと。ログを読み込んでる場合じゃありません。


〈Yukimura〉『お待たせしました』

〈Jack〉『おっかえりーーーーw』

〈Yume〉『お友達~?』

〈Yukimura〉『はい。お仕事の依頼でした』

〈Pyonkichi〉『仕事ー?』

〈Daikon〉『こんな年末に?』

〈Zero〉『塾で代行の依頼とか?』

〈Yukimura〉『いえ、お友達の妹が巫女さんのアルバイトをする予定だったみたいなんですけど、怪我をして行けなくなったみたいで』

〈Yume〉『むむ!』

〈Earth〉『巫女さん!』

〈Gen〉『ほおw』

〈Yukimura〉『代わりに行くことになりました』

〈Soulking〉『おおっ』

〈Jack〉『ゆっきーの巫女さんかーーーーw』

〈Gen〉『ゆっきーなら年齢もOKだなw』

〈Daikon〉『急な話ね・・・』

〈Zero〉『そっか、ゆきむらは帰省とかはないんだもんな』

〈Hitotsu〉『ゆきむらさん似合いそうですね!』

〈Yume〉『え~、いいな~巫女さんの恰好した~い』

〈Earth〉『あーちゃんにも着せたいなっ☆』

〈Senkan〉『あーちゃんはよくてもあーすはダメだろwww』

〈Pyonkichi〉『なるほど。相分かった』

〈Jack〉『え、なにがーーーーw』


 私が戻った報告と、電話での内容をお話すると、先ほどまで活動内容についてお話していた流れが嘘のように止まり、私の話した内容で皆さんが盛り上がり出します。

 でもぴょんさんは、何が分かったのでしょうか?

 私がそう思っていると。


〈Pyonkichi〉『見に行くしかあるまい!』

〈Yume〉『おおっ、賛成でありま~す!』

〈Zero〉『マジかよw』

〈Gen〉『フッ軽だな!w』

〈Earth〉『えー、いいなー;;』

〈Senkan〉『さすがに年末年始は実家だわw』

〈Zero〉『うむ。俺も』

〈Daikon〉『同じく。会いにいきたいのは山々だけど・・・』

〈Pyonkichi〉『んだよ、みんな帰るのかよー』

〈Soulking〉『というか、ぴょんも上京組実家名古屋でしょ?帰らないのー?』

〈Pyonkichi〉『帰っても飲むしかねーからなー』

〈Pyonkichi〉『同級生も全国散り散りだし、旦那実家行くとか、子育てとかってやつ多いから、パス!』

〈Yume〉『ご愁傷様です』

〈Pyonkichi〉『おいこら?』

〈Jack〉『なら結婚しちゃえばいいのにーーーーw』

〈Hitotsu〉『おおっ』

〈Senkan〉『繊細な話題のため発言は差し控えさせて頂きます』

〈Zero〉『大和www』

〈Gen〉『さすがにそこで大規模オフは発生しないかw』

〈Yukimura〉『え、オフ会なんですか?』

〈Pyonkichi〉『じゃああたしとゆめで行くから!』

〈Pyonkichi〉『あとで場所教えて!』

〈Pyonkichi〉『巫女オフ!』

〈Yume〉『あ、じゃあわたしは着物着ちゃおっかな~』

〈Pyonkichi〉『マジかよ!ならあたしも着る!』

〈Senkan〉『え』

〈Jack〉『旦那が見たがってるよーーーーw』

〈Daikon〉『気が早い発言ね・・・』

〈Senkan〉『3ショットでよろしく』

〈Pyonkichi〉『待ておい』

〈Zero〉『大和www』

〈Daikon〉『写真は私も見たいな』

〈Yume〉『撮ったらグループに送るね~』

〈Hitotsu〉『おおっ』

〈Earth〉『楽しみっ☆』

〈Gen〉『心待ちにしております』

〈Soulking〉『んー?^^』

〈Gen〉『ごめんなさい』


 ……等々、こんなやりとりがありまして。

 

 今に至るというわけなのです。






「でも、お二方ともお似合いですよ」

「えへへ~、今年は大人の色気目指して、シックに決めてみました~」

「ほんと、ゆめは何着ても似合うなー」

「ぴょんさんもお綺麗ですよ?」

「あー、まぁ和服はな、似合うのは自覚してるからなっ」

「色んな意味で細身だもんね~」

「おいこら」

「いひゃいっへわてば~」


 ゆめさんが着ているのは紺色ベースに牡丹柄の着物で、帯が白系、髪もそれ用に合わせたセットでお花の髪飾りがついていて、とても可愛らしいです。

 そしてお隣で睨みながらゆめさんの頬をつねるぴょんさんは、白地に紺色の蝶の柄がついた着物で、帯が金色の線の入った紺色。ぴょんさんは特に髪型をセットしたりはしてないようですけど、メイクがちょっと、いつもより着物に合わせた感じで、綺麗でした。


 ふわふわとしたイメージのゆめさんや、アクティブなイメージのぴょんさんですが、こうして着物姿になると、本当に普段のイメージとは違いますね。

 華やか、とはこうことを言うのではないでしょうか。


「でもほんと、ゆっきーは巫女さん似合うな~」

「だなー」

「そう、ですか?」


 私がまじまじと可愛らしくて綺麗なお二人を眺めていると、今度は私がお褒めの言葉を頂きました。

 お二人の着物と違って、巫女の衣装はシンプルな紅白。

 髪の毛を白い水引みずひきで束ねて、朱色の襟に、純白の白衣はくえに、朱色の緋袴ひばかまに、真っ白な足袋たびに、朱色の鼻緒はなおの草履と、本当に紅白なのです。

 私自身が似合っているかどうかの判断は分かりませんが、褒められると嬉しいものですね。


 ……ゼロ様も、見たらまた喜んでくれたでしょうか?


「はい、じゃあ写真撮りま~す」

「あ」


 そんなことを考えていた無防備な私を、ゆめさんがパシャリ。

 むむ、お写真は3ショットで撮るのではなかったのでしょうか?


「これ見たらみんな来たかったっていいそうだなー」

「だね~、ほんと、男子諸君は損してるね~」

「お二人の写真は撮らないんですか?」

「あ、それはもうたくさん撮りました~」


 あ、そうなんですね。


「うむ。せんかんなんかあたしの写真送りまくってたら、そろそろ他のが見たいとか言い出しやがったぞ」

「そんなに送られたんですか」

「いや~、ほんとぴょんも乙女になりましたな~」

「う、うるせーな!」

「顔赤くなってる~」

「ああもうっ」

「ほんと、ぴょんさんたちも仲良しさんですね」

「わたしたちもいい人出来るといいよね~」

「そう、ですね……」


 その言葉には、なかなか反応しづらい、です。


「うしっ、じゃあ3人の写真も撮ってもらうかっ! ……あ、すみませーん、写真頼んでいいっすかー?」


 と、ちょっとだけ「いい人」という言葉について考えている内に、ぴょんさんが初詣にいらしていた見知らぬ方たちへ声をかけに行きました。

 このアクティブさは、見習いたいものです。


「じゃ、お願いしまーす」

「はーい。撮りまーす」


 そして快く写真撮影を引き受けてくださった方に何枚か写真を撮っていただき、その方にお礼をして、私たちは写真を確認。

 本殿を背景に中央に私、両サイドにゆめさんとぴょんさんという構図の写真は、綺麗に撮られていましたけど、改めて思うと、本当に不思議なメンバーだなとも思います。


 年齢も、育った場所も、性格もバラバラなのに、そんな方々とこうして一緒に映っている不思議。

 オフ会の度に集合写真は撮ってきましたけど、これもまた、大切な思い出の一つですね。


「グループに送っとくから、そっから保存してね~」

「ありがとうございます」

「いやぁ、でもほんと年明けからわざわざ大宮まで来た甲斐あったなー」

「ね~、御守りも買ったし、今年もいい年になるといいな~」

「あ、買われてたんですか?」

「うん~、ゆっきーがお仕事してる時は邪魔しちゃいけないかなって、違う人のとこで買ってたんだ~」

「そうだったんですか」

「わたしは縁結びを買いました~。ゆっきーにも同じの買ったから、あげるね~」

「え、あ、ありがとうございます」

「あたしは健康守にしといたわー。もう若くねーからなー」

「ぴょんさんはまだお若いですよ?」

「いやいや、もうアラサーにはなー。この格好も気持ちは上がるけど、やっぱ疲れてくるんだわー」

「うわ~、おばさんくさ~い」

 

 写真撮影を終えて、また再び雑談になると、お二方が既に御守りを買われていたことを教えてくれました。

 そしてゆめさんが買われたという御守りを一つ私が頂くと、今度はぴょんさんが自分で買われたという御守りを見せてくれます。

 私からしても、この神社の御守りは初。

 普段家族と行く初詣は、別なとこなんですよね。


「そんなぴょんに、わたしから別な御守りのプレゼントで~す」

「え、何?」

「はいこれ~」

「って、おい!?」

「むむ……そんなご予定が?」

「いやいや、色々すっとばしすぎだろおい」


 ゆめさんがプレゼントと言ってぴょんさんに渡したのは、まさかの安産祈願の御守りでした。

 それをあげるなら、まだジャックさんだと思うんですけど……むむ?


「ほら、万一ってこともあるし~?」

「だったらあたしじゃなくてまだだいだろー」

「ん~、あっちはほら、だいがしっかり健康管理できそうだし~?」

「いや、あたしだってそれくらいできるわ」

「ぴょんさんは、せんかんさんと結婚されるんですか?」

「いっ? うーん……まだ早いかなー、知らんけど」

「お、照れてますな~?」

「ええい、黙ってろっ」

「でもほんと、仲良くやってるみたいだよね~」

「そうなんですか?」

「クリスマスの夜はせんかんが夜景の綺麗なレストランとホテル予約してくれたんだって~。いいな~」

「ほうほう」

「ぴょんが付けてるピアス、その時のプレゼントらしいよ~」

「おお、今気づきましたけど、綺麗ですね」

「ね~」


 そして気づけば安産祈願の御守りの話もどこへやら。ゆめさんがぴょんさんのクリスマスの日のお話を教えてくださいましたが、たしかに仰る通り、ぴょんさんの耳にはおそらくダイヤモンドと思われる、小さいけれども綺麗な輝きを放つ宝石のピアスがついていました。

 私は怖くてピアスはつけたことありませんけど、似合ってますね。


 ちなみにこのゆめさんがこのお話をされてる間、ぴょんさんは恥ずかしそうにゆめさんのことを睨んでらっしゃいましたけど。


 っと。


「あ、そろそろ私戻らないと」


 気づけば休憩時間も、あと5分を切っていました。


「あ、そっか、お仕事頑張ってね~」

「可愛いゆっきー見れてよかったよ!」

「いえいえ。わざわざお越しくださりありがとうございました」

「ううん~、わたしたちもおみくじ引いたら帰るよ~。今年もよろしくね~」

「今年もいっぱい遊ぼうな!」

「はい、こちらこそ今年もよろしくお願いします」

「じゃあ、またLAでね~」

「巫女さん頑張っ!」

「はい、それでは失礼します」


 お二方にお別れをし、私はゆめさんからもらった御守りを手に、再び社務所へ。


 短い時間ではありましたが、お二人とお話できてよかったです。

 でも、縁結びですか……。


 その御守りを眺めながら社務所へ向かう道中、浮かぶのは。


 ……今頃、何をされてるのでしょうか。

 帰省ということは、だいさんとは一緒にいないのは分かりますけど……。


 はっ。

 いけません。今新年早々にだいさんに対してよくないことを思ってしまいました。

 人を呪わば穴二つ。一年の始まりがこんなことでは、神様に見放されてしまいますよね。

 

 でも、私が望む道は……。

 

 少しだけ足を止め、何気なく振り返れば、おみくじが引ける方向に行く姿の着物姿の二人組。


 ぴょんさんは幸せになったから別として、ゆめさんもかつては争奪戦に参加してたと思うのですけど、どうやって気持ちを切り替えたのでしょうか?


 ……うーん……なんだかもやもやしますね。


 そんな何とも言えない気持ちを抱いたまま、私は再び巫女の役目を果たすべく社務所でお仕事をし、その日のお仕事を終えたのでした。






 仕事を終え帰宅し、家族での食事と団らんを終えた、22時過ぎ。


「ふぅ……」


 のんびりとお風呂を済ませ、お気に入りの白いもこもこのパジャマに衣装チェンジし、仰向けにベッドに寝ころびながら私はずっとチェックできていなかったスマートフォンを開きます。

 

「あ、たくさん……」


 そして開いてすぐ目についたのは、Talkアプリのアイコンにたくさん通知が来ていることを示す数字。

 その数なんと77。なんとなく、縁起のいい感じもしますけど、ラッキーセブンは神社で仕事をしてきた私とはちょっと違いますかね。


 新年の挨拶をしてきてた友達もたくさんいますし、ちゃんと返さないと、そう思ったのですが、まず最初に私が開いたのは【Teachers】のグループトークです。


 年明けすぐに皆さんと「明けましておめでとう」の挨拶はしていたのですが、どうやらゆめさんが送った写真以降、その件について盛り上がりを見せているようでした。


平沢夢華>【Teachers】『平沢夢華が写真を送信しました。』15:26

平沢夢華>【Teachers】『ゆっきー可愛かった!!』15:27

山村愛理>【Teachers】『来なかった奴はこの一年損スタートだな!』15:27

石神玄一郎>【Teachers】『Very Good!!』15:32

石神(沢渡)美香>【Teachers】『可愛いねっ』15:33


 送られていたのは、私たち3人で撮った写真だけだったのですけど、それを見てまずはリダ夫妻が反応してくれたようです。

 その後も。


大地>【Teachers】『可愛いねっ☆』16:02

大地>【Teachers】『生で見たかったー><』16:02

Shizu>【Teachers】『おーーーーw保存だーーーーw』16:23

里見菜月>【Teachers】『ゆっきーもだけど、ゆめもぴょんも可愛いね』17:12

山村愛理>【Teachers】『だろ!』17:15

平沢夢華>【Teachers】『現在ぴょんは着物疲れでぐったりしてまーす』17:16

田村大和>【Teachers】『大丈夫かー?』17:32

田村大和>【Teachers】『しかしその写真、素晴らしい』17:32

Mami>【Teachers】『おつかれさまです!』18:21

Mami>【Teachers】『皆さん綺麗ですね!いいなー』18:21

北条倫>【Teachers】『おお、ほんとみんな綺麗だな』18:22

北条倫>【Teachers】『しかしやっぱ、ゆきむらはその恰好似合うな(笑)』18:23

平沢夢華>【Teachers】『あ、また見たがってるな~?』18:31

山村愛理>【Teachers】『変態!』18:31

北条倫>【Teachers】『なんでだよ!』18:33

Mami>【Teachers】『また??』18:35

大地>【Teachers】『また??』18:35

平沢夢華>【Teachers】『かぶってるw』18:36

山村愛理>【Teachers】『コスプレ大会再びか!』18:37

石神玄一郎>【Teachers】『なにそれズルい』18:40

石神(沢渡)美香>【Teachers】『それは興味あるかもっ』18:41

田村大和>【Teachers】『強く所望する』18:45

里見菜月>【Teachers】『私は遠慮します』18:53

平沢夢華>【Teachers】『強制で~す☆』18:54

里見菜月>【Teachers】『なんでよ!』18:54

山村愛理>【Teachers】『そうか、家でやってるんですもんね。うん、わかります』18:55

里見菜月>【Teachers】『やってません!!』18:55

Shizu>【Teachers】『元旦から賑やかだなーーーーw』19:02


 という感じに、私以外の皆さんが参加する形でお話が盛り上がっていたようでした。

 私も、お二方にはお礼を言わないと。


神宮寺優姫>>【Teachers】『本日は遠方までお越しくださりありがとうございました。お写真もありがとうございます』22:17


 これでよし、と。

 む? ゆめさんから個別に写真も来てますね。


平沢夢華>神宮寺優姫『平沢夢華が写真を送信しました。』15:28

平沢夢華>神宮寺優姫『お仕事おつかれさま~。ゆっきーの写真送っとくね~』15:28


 あ、なるほど。私一人の写真だったり、お二方とのツーショットの写真はこちら、ということですか。


神宮寺優姫>平沢夢華『お写真確認しました。ありがとうございます』22:18


 ゆめさんにお礼を言って、頂いた写真を、一応保存。


 そしてまじまじと、自分で自分の写真を眺めます。


 ……皆さん可愛いって言ってくださいましたけど、うーん……可愛い、のでしょうか。

 

 そこに写っている私は笑顔でもなんでもなく、いつも鏡で見るままの自分の顔をした、紅白に彩られた巫女の恰好をした自分。


 たしかに普段とは違う恰好ですけれど……。


 その時、ふいっと首を傾げると、何気なく枕元に置いていた、ゆめさんからもらった縁結びの御守りが目に入りました。

 それを見てしまったから、なのでしょうか。


 ……可愛いかどうか、聞いてみようかな……。


 他にも来ている通知はたくさんあったのですけれど、一旦それらにはごめんなさいをし、私はある方とのトーク履歴を開き、写真とメッセージを送信してみることに。


神宮寺優姫>北条倫『神宮寺優姫が写真を送信しました。』22:23

神宮寺優姫>北条倫『可愛いですか?』22:23


「よし、と……」


 って、はっ。

 私のこの格好自体はグループの方で見ていらっしゃるのだから、もう知ってるはずなのに。

 そちらで似合ってると言ってくれていたのに。


 そう思うと、急に恥ずかしさが込み上げます。


 え、ええと、削除ってどうやるんでしたっけ……?


 慌ててスマートフォンを操作しながら、送った写真と画像を消そうとしていると。


 私のメッセージに、既読の文字つきました。


 み、見られてしまった……!


 その状況に私が少し慌てると。


北条倫>神宮寺優姫『わざわざ個別にか(笑)』23:25


 あ……で、ですよね。

 何と言うか、調子に乗ってしまった、というやつですよね、これは……。


 ちょっとだけ高揚していた気持ちも、返ってきたそのメッセージに少し肩を落とす結果になりました。


 が。


北条倫>神宮寺優姫『似合ってるし、可愛いと思うよ(笑)』22:26


 むむっ。


 続けて送られてきたそのメッセージが、お世辞だと分かっていても。


 何故だか胸が高鳴ります。

 ……嬉しい、という感情ですよね。これは。


 ……やっぱり、私は……。


神宮寺優姫>北条倫『ありがとうございます。嬉しいです』22:27

神宮寺優姫>北条倫『今年も一年間、よろしくお願いします』22:28


 そして何気なく、枕元の御守りを握りしめる私。


北条倫>神宮寺優姫『おうよ。また遊ぼうな!』22:29


 それはきっと、みんなで、という言葉が隠されているメッセージなんでしょうが。

 それでも、今の私は、満足です。


 いつか、そんな日が来れば。

 その日に、みんなで笑っていられれば。

 

 この気持ちになれただけで、早速御守りはご利益があったのでしょうか?

 それは、分かりませんけれど。


 ベッドの上で仰向けになり、天井を見上げながら。

 まさかまさか、新年早々巫女のお仕事をするなんて夢にも思っていませんでしたけど、やってよかったな、そう思います。

 一年の計は元旦にあり、と申しますし、今日この日がいい日だと思えたなら、きっとこの一年も、上手くいくはず。


 その結果は一年の終わりを迎える頃に今考えるものとは変わっているかもしれませんが、きっといい一年になる、今年の大晦日に、いい一年だったと思えるようになる。


 不思議と、そんな気がしてきます。




 さぁ、新年は始まったばかり。

 ここからまた、365日の日々が始まります。


 今年はどんな楽しいことが起きるのか、楽しみにしながら、そんな気持ちで皆さんも新たな一年を始めてくだされば幸いです。

 全ての方々にとって、この一年が良いものとなりますように。


 今年もよろしくお願いしますね。






 むむ。

 ところで私は、これを誰に向けて言ってるんでしょうかね?






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以下作者の声です。※投稿は2021/1/1ですよ……!

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 ということで、元旦番外編をお送りしました。

 大晦日に書くと決めていたので、そこまで時間もないし、今回はあっさりとお送りします。

 なんて後書きを先に書いておいたのに、いざ大晦日に執筆してみれば番外編3本で最長になりました。

 てへっ。

 元旦だし、とりあえず生身は出なくとも【Teachers】のみんなに発言くらいさせたいなー、と思ったら、こんなに長くなったわけですが、やはりログの会話は長くなります。ええ、ほんとに。気づくと〈Earth〉と〈Hitotsu〉がいないな! とかなるので、加筆に加筆でこうなっていくのです。

 てへっ(2回目)


 

 クリスマスはメインの二人。

 大晦日は主人公家族。

 そして元旦は、コメントの中で一番書きやすい人物を軸に三人娘でいかせていただきました。笑

 コメントいただいた方ありがとうございます。

 触れたいキャラでたくさんですが、今回はゆきむらということでご理解ください。笑

 巫女ゆきむら、可愛いですよ!

 色白ですらっとしてて、ぽーっとした表情で……自分に絵を描く才能があればなぁ、とつくづく思う次第ですね!

 あ、もちろん着物ゆめもぴょんも忘れてはいけませんね。笑

 ちなみに衣装について記載する時に、着物とか巫女服とか調べましたけど、いやぁ、可愛い服ですよね。それも楽しかったです。笑

 ……コスプレといえば亜衣菜(〈Cecil〉)?

 彼女は今回はごめんなさい、ということで……!



 なお途中出てきた沙良ちゃんはSide Story〈Yuuki〉に登場するキャラになってます。

 あ、まだそのSide区切りまでいってないじゃんとかいうのはやめてください。笑

 書きますから、必ず……!


 そして本編がまだ至っていない秋の拡張についてもちょっとだけ書いてますが、私は早くそこを書きたい気持ちでいっぱいです。

 早く進めてないのは自分なんですけどね!!

 はい。頑張ります。


 そしてそして、さもゆきむらはまだ争奪戦に参加している感じで書いてますが、物語は生き物ですので、これがもしかしたらパラレルワールドになる未来もあるかもしれません。

 本編(※投稿時最新は259話)辺りだと、怪しげな感じでてますしね!

 どうなるかは天のみが知るところ……。

 そんな時は、番外編は番外編だったとご理解いただければ幸いです。笑



 ということで、今年も執筆頑張ります。

 今年もお付き合いくだされば幸いです。

 本年もよろしくお願い申し上げます!


 ちなみに今年の抱負はゲームパートを増やしたい。

 その思いです。笑




 それでは、皆様にとって新年がより良い1年となりますように。


 元旦番外編でした。

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