第242話 個性が出るから面白い
「む、割と重いなっ」
「たしかに、ちょっと重いか」
「あれ? わたしのは軽いよ~」
「でもあれだなー、大根ではないな!」
「それも考えたけどやめたわ」
「いや、考えたのかよっ」
だいからそれぞれ手渡されたプレゼントを受け取った3人の反応はぴょんと大和が一緒で、ゆめだけ違う。
そんなプレゼントにぴょんがこてこてにボケたけど、まさかのだいのボケ殺しに結局は俺がツッコむ羽目に。
やっぱこいつも軽く天然だよな……!
「じゃ、あたしから開けるな!」
そんな自分のボケが流されたにも関わらず、またしても1番手でプレゼントを開けたのはぴょん。
そのぴょんが取り出したのは、箱だった。
そしてその箱を開くと、瓶詰された粉が何種類か。
「お塩~?」
「いや、椎茸とか鰹とかって書いてるな」
「おー、顆粒のは使ってたけど、こんな粉のもあるのか!」
「うん、それお出汁のパウダーなの。箱の中に使用例のレシピも載ってるけど、お手軽に使えて便利よ」
「ほうほう」
なるほど、さすが料理好きのチョイスだな。
だいがあげた箱の中には椎茸、鰹、昆布、鰯、
瓶詰だったから、ちょっと重かったのか。
「ぴょんって自炊してるの~~?」
「おいおい、一人暮らしのレディになんてこというんだよ! 当たり前だろー」
そしてジャックがぴょんに自炊してるか尋ねると、やたらと胡散臭いレディの発音をしながらぴょんが答える。
まぁ、イメージからすると、そんな感じはするよね。
でも俺と同じタイミングで一人暮らし始めたはずだから、ぴょんも一人暮らしはもう10年目なはずだろ? となると、その期間ちゃんと自炊してたなら、ぴょんもけっこう料理は慣れてるんじゃないかね。
「出汁とるのってちょっと面倒だからなー。こういうの便利だよな」
「あー、分かる。というか俺は顆粒のかパックのしか使ったことないけどな!」
そんなだいのプレゼントに大和ものっかるけど、うん。分かる。
というか俺も大和と同じだな。
だいの家で料理作った時に、キッチンに色々調味料置いてあったの見たけど、何だかんだ仕事終わって料理するってなったらぱぱっと作りたいもんだし、時短アイテムは大事だよね。気づかなかったけど、あの時もあったのかな?
「じゃあ来週のオフ会の時にご飯作りで使ってみたら~?」
「あ、それいいね~~」
「皆さんでご飯作るのも、楽しそうですね」
「うん、それ楽しそう」
と、そこでゆめからナイス提案がなされると、それにジャックとゆきむら、だいも前向きに反応。来週はかなりの大所帯でジャックん
ゆめとジャックは知らないけど、だいもゆきむらも料理は得意だから、変なことにはならないだろうしね。
「しょうがねぇなぁ。あたしの女子力見せてやるかー」
「いや、言葉と動き!」
女子力を見せる、そう言ったぴょんが、右の拳を左手で包むポーズを取ったので俺は思わずツッコミをいれたが、こんな言葉とポーズは一致しないことって、そうそうないよね!?
「じゃ、次のプレゼントオープン!」
「お先!」
「あ、も~」
そしてだいのプレゼントによる話題がひと段落し、次はゆめを制して大和が袋を開けた。
すると、ぴょんの時と同じように箱が登場。ぴょんと同じの、かと思いきや箱の柄が違うから違うものか。なんだろ?
「えらいカラフルだなこれ」
「なにそれ~?」
「えーっと、野菜のお塩? 野菜のお塩ー?」
そして箱を開けた大和の前にはぴょんのより数多くの瓶が並んでいた。
俺の位置からは書いてある文字まで見えなかったが、紫やら緑やら、色とりどりの何かが入っている感じ。
瓶に書いている文字を読んだぴょんが野菜のお塩って言ってるけど、ぴょん同様、みんなはてなを浮かべている状況である。
「お野菜って、乾燥させると軽くなるけど栄養価って変わらないのよ。むしろ増すのもあるし、その乾燥野菜を使って作ったお塩なの」
「ほうほう」
そんな表情を察してかだいが丁寧に説明すると、興味を持ったぴょんやゆめやらが瓶を手に取り眺め出したので、俺もゆめから瓶を渡してもらってパッケージを見てみると、緑色の瓶にはほうれん草と書かれていた。
ほうれん草のお塩……うーん、イメージつかねぇなぁ。
……だいの家にもあったりするのかな?
「せんかんが自炊するのか知らなかったけど、ふりかけ的にも使えるし、栄養価も高いからいいかなって思って」
「だいさんはお料理アイテム詳しいですね」
「さすが料理好き」
なるほど、ふりかけね。それなら誰でも簡単に使えるし、よく考えてんなー。
そんなだいに対してゆきむらと俺が称賛を送る。
こういう消耗品系のギフトってさ、買わないけど、使ったらどんな感じかなって思ったりはするアイテムだよね。
箱詰めされてた感じギフト目的で買う人が多そうだったし、プレゼントの定番って感じだなー。
「せんかんって自炊するの~?」
「人並みにはするぞ。俺も一人暮らし歴けっこう長いからなー」
「色々使えるから、試してみてね」
「おう! さんきゅ!」
「この流れだと、わたしもお料理系かな~?」
そして続けてゆめが袋を開けると、またしても箱が登場。
その箱を開けると、何やら乾燥した植物が入った袋が何種類か入っているようだった。
なんか、ちょっと怪しげ。
でも
「あ、これハーブ~?」
「うん。オーガニックのやつで、香りと色が楽しめるよ」
「よかった~。わたし料理しないから、調味料とかだったらどうしようってちょっと焦っちゃったよ~」
「いやー、一瞬なんかやばいやつかと思ったわー」
「さすがにここでそれはねーだろ!」
箱を開けた瞬間ゆめは何かぱっと気づいたみたいだけど、乾燥したハーブが入っている袋のパッケージは英字でよく読めなかったし、ぱっと見の見た目がね、大和が思いっ切りツッコんでたけど、俺もちょっとぴょんと同じことを思ったのは秘密な。
「だいのチョイスはおしゃれだね~~」
「そうですね、せんかんさんの瓶は飾っても綺麗ですし、ゆめさんにハーブティーは、お似合いな感じですもんね」
だが変なことを考えた俺やぴょんをよそにジャックとゆきむらがだいのプレゼント内容を褒めたりして、俺も彼女が褒められてちょっと嬉しい気分に。
口にするものを選ぶって、相手の好みもあるから難しいとこだけど、出汁とか塩とかお茶なら誰でも使えるし、種類があれば好みのものがある確率もあるもんな。
よく考えたなー、だいのやつ。
「笑える要素なさすぎるけどな!」
「いや、目的変わってんじゃねーかそれ」
と、俺がちょっと鼻高々な気分になっているのをぶち壊すぴょんの一言。
センスバトルって言ってたのお前だからな?
「わたしカモミールの香り好きなんだ~。今度疲れた時に飲ませてもらうね~」
「うん。喜んでもらえて嬉しい」
でもまぁ、ぴょんは置いといて、ゆめとだいが別な意味で、いい笑顔を見せ合ってるから、とりあえずよしとしよう。
ほんと、プレゼントは個性でるなぁ。
さて、じゃあ次は俺か……!
「しっかしあれだな、ありがたいけど持って帰るもの多いな!」
「そだね~、わたし鞄に全部入るかな~」
「たしかに。俺もちょっと全部入るかわかんねーな」
と、ここでぴょんがまさにそう言えば、なことに気づいてしまう。
プレゼントをもらう側の3人も、あげる側でもあったから全員自分のプレゼントが入る鞄で来た今日だけど、もらう側のメンバーは持って帰るものが大量なんだよな。
大和なんかゆきむらからもらったプロテインがかなりの大きさだし、だいがあげたものも箱詰めされてるから、けっこうかさばる。
プレゼント用の包装の袋だと、持ちやすいわけでもないし、両手いっぱいに袋掴んで帰るのは、ちょっと大変そうだな。
その言葉に、次にあげる番の俺が一番動揺したんじゃないかね!
「ふっふっふ~~。そんなこともあろうかと~~」
だが、ぴょんの言葉にみんなが「あー……」となった空気の中、少しだけ自信ありげにのんびりした声が響く。
「先にあたしのプレゼント渡すね~~。みんな同時に開けていいよ~~」
そしてその声の主、ジャックが俺にちらっと目配せしてから、3人へそれぞれ小さめのプレゼント用の袋が渡される。
このタイミングで、なんだ?
「あ」
「お」
「おお!」
そしてジャックから受け取った3人が言われるがままに袋を開けると、そこから現れたのはそれぞれ柄が違うけど、小さく折りたたまれた袋だった。
「やるなージャック!」
「LAさながらの先読みだね~」
「これなら自分の鞄も合わせて、全部入りそうだな!」
その袋を広げたところで、先ほどまでプレゼントを持ち帰ることに不安を覚えていたであろう3人の表情がぱっと明るくなる。
「ゆめさんの可愛い柄ですね」
「ぴょんのもシンプルでいいね」
「ご時世柄ね~~、持ってても損しないよ~~」
ゆきむらとだいがそれぞれ柄が見えるように広げた袋に感想を述べると、ジャックは少しドヤ顔を浮かべる。
そう、この展開で用意が良すぎるだろと思わざるを得ないが、ジャックがあげたのはどうやらエコバック。大和がカーキで、ぴょんのがシンプルなベージュ、ゆめのはタータンチェック柄のもの。
サイズ的にもけっこう大きめっぽいし、今日使えるのはもちろんのこと、今後買い物なんかでも使える、便利アイテムだな。
……ほんと、ゆめの言う通りさすがの先読みだなこれ。
「あ、しかもなんか入ってる~」
そして袋の中をのぞいたゆめが何かに気づく。
ゆめが取り出したのは、手のひらよりも全然小さい、何かのカードだった。
ゆめに続いて大和もぴょんも取り出すと、そのカードもそれぞれ柄が違うようだ。
大和のが花火の絵で、ゆめが白や黄色の花の絵、ぴょんのは……あ、なるほど。
ぴょんのカードの柄でそれが何に気づいたが、いわゆるぴょんのはスタンダードな、そのカードを発行しているお店に行けば、誰もが見たことがあるあのキャラクターの絵が描かれたカードだった。
「3000円分チャージしといたよ~~」
「え、嬉しい~ありがと~!」
そのカードに一番喜んでみせたのはゆめだったけど、そう、それはスラーバックスのプリペイドカードのようだった。
たしかにもらったら嬉しいなそれ。
「みんなのプレゼントで持って帰るの多くなるし重くなると思ったから、あたしは一番軽いプレゼントを選びました~~」
「やー、さすがだわマジで」
「目の付け所が違うな!」
ほんと、二人の言う通り。
何をあげたら喜ぶか、嬉しいか、それを考えてみんなプレゼントを選んだみたいだけど、ジャックの視点はそれを踏まえた上で、だもんな。
この状況を見越してのエコバック。しかも一番小さいプレゼントも添えるというお洒落さもある。柄を変えることでそれぞれへのプレゼント感も出るし、やりよる……!
ぴょんの持って帰るの多いな発言に、だいの次に渡すはずだった俺はちょっと焦ってたけど、ジャックのプレゼントもらった後ならもう何あげても大丈夫そうだし、俺からしてもありがたいな……!
「これでゼロさんが何あげても大丈夫ですね」
「そうね。ここでゼロやんもエコバックだったら笑えるけど」
「や~、倫にその発想はないだろ」
「うむ。ゼロやんがそれはないな!」
「え、何か俺ディスられてる!?」
「ゼロやんのはなんだろ~?」
そしてジャックのプレゼントにみんながほっとすると、次の番である俺にみんなの視線が集まり、何故かちょっといじられる展開に。
でもね、俺だって俺なりに何がいいか考えたのだ。
同い年の大和やぴょん、同じゲーマーであるゆめならば、何が嬉しいか。
いくぜ!
「俺のプレゼントはこれだ!」
さぁ、喜ぶがいいぜ!
―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―
以下
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いよいよ真打ち(?)ですね……!
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本作スピンオフシリーズである『オフ会から始まるワンダフルデイズ~Side Stories~』。3作目となる〈Yuuki〉が本編と隔日更新くらいのテンポで再開しております。
本編の回顧によろしければ~。
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