第243話 俺のターン!

「んー? 輪っかかー?」

「そうだな、輪っかだな」

「え、わたしのは箱入りだよ~」


 自分の番になったということで、俺は意気込んで3人へ丁寧に包装されたプレゼントを渡す。

 そして俺からプレゼントをもらった3人はそれぞれ包装越しにプレゼントを探るけど、ゆめのは箱に入っているから分からないだろうし、大和とぴょんのも触っただけでは分からないんじゃないかな!


「先に開けちゃうね~」


 そして大和とぴょんを制して、ゆめがオープン。

 そこから出てきた箱のパッケージに、みんなが視線を送る。


「何ですかそれ?」

「ゴーグル?」


 ゆきむらやだいがそれに不思議そうな視線を送るけど、確かに見た目はゴーグルっぽいとこはあるな。


 そして箱から中に入ったものをゆめが取り出すと。


「また充電式~?」


 と言って笑いながら、取り出したそれを装着して見せてくれた。


「似合う~?」

「けっこうでかいな!」

「なんか、アベンジャーズのファルコンみたいだね~~」

「そういうロボット、いそうですね」


 装着したゆめの姿は、ちょっと似合ってるとはいいがたい気もしたけど、まぁそれは似合う似合わない関係ないアイテムだから気にしない。

 そう、俺がゆめにあげたのは、USB充電式のホットアイマスク。さらにBluetooth対応で、マッサージャー機能もついている、らしい。

 見た目は白地のVRゴーグルっぽい感じだけど、何かを見るより、見ずに目を休めるためのものだぞ。


「せんかんの扇風機もそろそろ充電出来てるんじゃない?」

「そっか、じゃあこっち充電してみる~」


 そんなだいの提案を聞いて、大和があげた扇風機を充電器から外し、今度は俺があげたプレゼントの充電を開始。

 その隙に大和があげた扇風機を首にかけてオンにするゆめ。


「あ~、気持ち涼しいね~」


 と、ようやく大和のプレゼントも効果を確認できたご様子。

 最初にあげた大和のが今ってことは、俺のやつが使えるようになるのはまだ先なわけで。


 そうか、すぐ使えないから充電式のはその場で感想言いづらいか……!

 と、とりあえずあげた意図だけは伝えとくとしよう……。


「ほら、俺らただでさえ画面見てる時間長いしさ、目が疲れたなーってことあるじゃん? 学校でもなんだかんだVDT作業多いし、疲労回復にいいかなって」

「疲労回復目的って、なんかあれだな、ゼロやんおっさんっぽいな!」

「でもホットアイマスクは気持ちいいよね~~」


 俺の説明に同い年のぴょんからおっさん評価をもらうも、1個上のジャックからはホットアイマスク効果のフォローが入る。

 うん、俺もたまに使い捨ての使うけど、気づくと寝ちゃうくらい気持ちいいよね、あれ。


 ゲーマーは目が命だからな……!


「ゼロ様も、ゆめさんにあげたの使ってるんですか?」

「え、や、俺は持ってない、けど……」

「おいおい、疲労回復とか言って自分が使ったことないのあげたのかよ?」


 と、ジャックのフォローが入ったのも束の間、まさかの隣から痛恨の一撃が炸裂。

 そのゆきむらの言葉に、大和が笑いながら追撃をしてくるが、いや、ほら、ホットアイマスク自体は使ったことあるんだし、ネット上の口コミの評価とか、家電量販店の店員さんの話を聞いたりしながら選んだものだから、外れはない、はず……です。


「え~、わたしで人体実験なの~?」


 と、俺があげたアイマスクを額の方にずらしながら、この流れの会話に笑いながらゆめも参戦。

 額の方にずらしたゆめは、なんか発明少女感あってちょっと可愛い。


「いや、充電式なら使いたいときいつでも使えるかなって、そう思いまして……」

「しょうがないな~。じゃあゆめちゃんが実験に付き合ってあげるよ~」

「よかったわね、ゆめが優しくて」


 俺としてはけっこう全力で選んだつもりで自信もあったのに、見事その思惑は総崩れで、むしろみんなにフォローをされる始末。

 ううむ、こんなはずでは……。


「やー、これはあたしのも期待できねーかー?」


 と、ちょっと落ち込み加減の俺に、今度はぴょんが袋を開けようとしているのが目に入る。


「あ、ぴょんと大和は、一緒に開けてくれ!」

「ん? なんだジャック方式ってことは、同じものかー?」

「ゆめだけ分けて俺らは同じって、おいおい俺らは手抜きか?」

「ちげーし! ほら、俺ら同い年だしさ……色々共通することあるかなって思ったから……」


 だが二人のプレゼントにはちょっとした俺の計画があったので、慌てて大和も一緒に袋を開けるように頼むと、またしても茶化すような言葉が大和からやってくる。

 いや、でもほんとね! 二人のは同い年ならではの発想で考えたアイテムだぞ!


「ではゼロやんのセンス、オープン!」


 そして俺の言葉を聞いてくれたぴょんが、大和と一緒に袋から中に入っていたプレゼントを取り出すと。


「あー、同い年ねー。こうきたかー」

「これって効果あるのか?」

「つーかよー、この麗しきレディとこんな色黒マッチョに同じもの送るか普通ー?」

「いや、おい、言い方!?」


 と、感動どころかそれ以前な二人の様子が目に入る。

 ぴょんにジト目で見られた大和が大げさにツッコむけど、うーむ。

 ……なんかあれだな、この段階で既に自分の勝利がないの、見えてくるなー……。


 ちーん。


「ネックレス?」

「色違いみたいですね」

「たぶんそれ、磁気のやつだよね~~」

「あ、たしかにアスリートがつけてるやつに似てるね~」


 そして他のみんなも俺があげたものに視線を送ると、やはり反応的に感動は薄い様子。

 というかゆめにあげたプレゼントもそうだけど、これもすぐにどんな性能かも分からないし、リアクションしづらかったか!


 だいとジャックの言葉が俺がプレゼントしたものを説明してるけど、そう、俺があげたのは肩こりを軽減させる効果を持つというシリコン製の磁気ネックレス。

 一応これは大学時代に部活の先輩からもらったの使ってたことあるけど、正直あの頃はあまり肩こりに悩んだりはしてなかったから、効果のほどは自信持って言えるほどじゃない。でももしかしたら使ってたから肩こりに悩まされなかったのかもしれないし、効果がないとも言い切れないアイテムだ。

 

 とはいえ二人はもう28になったんだし、肩こりとかも一人暮らしが続くとそれなりにしてくるもんだろうから、いいかなって思ったけど……。


「しかもあたしが赤でせんかんが黒とか、ランドセルかよっ」


 自分との大和のとのを交互に眺めるぴょんのツッコミにみんなが笑うが、実はここにも意図があった。

 色々いい感じの二人ってことだからさ、ごく自然に、お揃いのものをあげるとかどうかなー、なんて、そんな意図。

 粋な計らいってやつ?


「今度のは俺も昔使ってたことはあるし、効果は断言できないけど、その時のよりも医療用効果高そうなやつ選んだつもりだぞ」


 あげる前に持っていた自信はどこへやらって感じだが、二人お揃いにしたぜ! とか言うのは野暮ってもんだから、カモフラージュ的な意味合いも込めて、自分のと大和のを見比べながら笑うぴょんにプレゼントの説明する俺。


 でも今あげたのを俺が使ってたことあるわけじゃないから、これも人体実験って言われるのかなー……。


「つけてみたら~?」

「二人とも運動部顧問だし、似合いそうではあるわね」

「んー、あたし黒のがいい!」

「え、俺が赤つけんの?」

「いーだろ、交換しよーぜ!」

「ぴょんってば強引だな~~」


 だが、俺の不安やしょんぼり感を置き去りにするように、ゆめの言葉からぴょんと大和の間でやりとりが生まれ、みんなもその光景に呆れ笑い。

 男だから大和が黒、女だからぴょんが赤って色違いにはしたけど、大和にあげた黒いのを奪って赤いのを渡すぴょんは、もはや山賊のようだった。

 でもちょっと、ぴょんのやつ楽しそう、かな?


 そして何だかんだ二人がつけ終えると。


「アスリートっぽ~い」


 お世辞にもお洒落と言えるわけではないけれども、ゆめの言葉通りの雰囲気は出てるし、シンプルなデザインの磁気ネックレスはアクティブな雰囲気漂うこの二人には似合ってるような気はした。

 とはいえ地肌が黒い大和に赤いのは、目立つなー。


「ぴょんさんとせんかんさん、お揃いですね」

「そうね、なんかペアネックレスみたい」

「たしかに~~」


 と、二人合わせて装着したのを見て、不意にゆきむらが俺の隠れた意図を口にしてしまった。

 それに合わせてだいとジャックも乗っかるけれど、これで外されたりしたらどうしよう、ちょっとそんな不安がよぎったが。


「そうだな! あたしら年寄り同盟だからな!」


 そんな不安を一瞬で蹴散らすように、楽しそうにぴょんは大和と肩を組みながら笑ってくれた。

 恥ずかしがる気配もないし、ここはぴょんの性格に助けられたなー。


「おいおい、俺はまだ若いつもりなんだけど――」

「うっせーな、もう30近いんだし、おじさんおばさんだろーが!」


 そんなぴょんにお揃いであることには気にする様子も見せない大和がツッコミを入れるが、その言葉は食い気味に否定された模様。どんまい。


「耳が痛いな~~」


 むしろぴょんの言葉を食らったのはこっちジャックだったか!

 とはいえジャックも本気にしているわけではなさそうで、笑ってくれてるんだけどね。


「皆さんまだお若いですよ?」

「ゆっきーから言われてもね~」


 そんな年長者たちの様子にゆきむらが若いって言ってくれるけど、うん、君に言われてもね……!

 

 でもあれだな、なんかこの雰囲気だと、このプレゼントは、悪くなかった感じ、かな?


「効き目ありそうですか?」

「いや、そんなすぐ効果分かるものじゃないよ~~」

「そうね、しばらくつけないと効果分からないものよね」

「じゃあぴょんたちもわたしと同じく人体実験だね~」

「しゃーねぇなぁ、しばらくつけといてやるかー。せんかんも外すなよー?」

「分かってるって。というか俺けっこう肩こりあるから、ちょっと期待してるし」


 うん、やっぱこっちはけっこう感触悪くないな!

 やはり同い年なだけあり、悩みは一緒でよかったぜ!


 大和とぴょんに自然にお揃いのものあげれたし、策士俺、成功か……!?


 お揃いって面については、今度学校で大和から感想聞くとしよっと。


「ゼロ様も肩こりとかしてるんですか?」


 と、俺が二人にあげたプレゼントにちょっと手ごたえを感じていると、隣に座るゆきむらから何気ない質問が。

 そりゃしてるかどうかったらね。


「うん、まぁそれなりに」

「じゃあお揉みしますね」

「へ?」


 そして俺が頼むでもなく、ぐいっと思ったよりも強い力で肩を回された俺は、背後をゆきむらに向ける体勢になりそのまま肩もみを受ける状態に。

 あ、思ったよりも気持ちいい……。


「顔」

「え、あ、いや!?」


 と、突然のリラックス効果に気が緩んだ俺に対して、ゆきむらに背を向けたことで俺の正面になっただいから、冷たい一言がかけられる。

 その表情も、冷たいです。


「若い子にマッサージされて喜ぶおっさんだったな、今の!」

「ゆっきーのスキンシップ、相変わらずさすがだね~~」


 そしてその流れから、またしても俺が冷やかされる状況に。

 いや、今のは不可抗力!

 強制イベントだったんですけど!?


「ご迷惑でしたか?」

「あ、ううん。そんなことないよ、ありがとな」

「ゆっきーも、そんなに甘やかさなくていいのよ?」


 いや、甘やかされてる自覚はないんだけど……

 しかしほんと、外だとだいはたまに怖いなぁ。家だとだいの方から肩もみしてくることだってあんのに。

 これあれか? その役目は私のよ、的なそういう嫉妬なんですかね……。


 うーん、この二人の関係は、正直たまによくわからんな……。


「じゃ、あとはぴょんだね~」

「やっとかー。ま、みんなよく頑張ったとは思うけど、優勝はあたしで決まりだな!」


 とまぁちょっと話が脱線したけれど、ゆめの言葉にぐいっとビールを飲み切ったぴょんがドヤ顔を決める。

 最後のぴょんが何あげるんだろって思いつつね、さりげなく追加のビールを注文する俺。グラスが空いたら頼む、基本だね。


 ここまでのみんなの様子を見る感じ、ゆめはゆきむらのが一番喜んでた感じあったけど、ぴょんと大和はまだ分からないな……。でも、全体的な気遣いや有用性を含めると、ジャックが強いか?

 ちなみにもうね、実用性を重視しすぎた俺のはその場で渡すプレゼントとしてパンチが今一つだったのは分かったので、期待してません。無念。


 そしてぴょんが自分の用意した袋をテーブルの上に用意する。

 長かったセンスバトルも間もなく終了。

 この軍配、誰に上がるんだろうなぁ。







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以下作者の声です。

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 めぐ〇ズムの蒸気でホッとアイマスクは香りも素敵ですよね。

 

 ちなみにUSB充電式のホットアイマスクは、常用しております……。笑


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本作スピンオフシリーズである『オフ会から始まるワンダフルデイズ~Side Stories~』。3作目となる〈Yuuki〉が本編と隔日更新くらいのテンポで再開しております。

 本編の回顧によろしければ~。

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