第241話 喜ぶ顔って素敵だね

「じゃあ私から開けるな!」

「あ、一人ずつなの~?」


 真っ先に袋を開けだしたぴょんの言葉で、ゆめの動きがストップ。

 その間ももらったものが何なのか気になるようで、ゆめも大和も袋をいじったりはしてるけど、しかしあれだな、大和のはでかくて、ゆめのは小さく、ぴょんのは中間。

 ほんと、相手に合わせて選んだのが分かるね。

 だいと一緒に買いに行ったみたいだけど、だいはアドバイスとかしたんだろうか?


「あ、可愛いじゃん!」


 そしてぴょんが袋を開けると、そこには白地にピンクや黄色など、パステルカラーで描かれた可愛らしい花柄のある折り畳み傘が入っていたようだった。

 いや、たぶん用途的に、日傘か?


 みんなに開いてデザインを見せてくれたけど、ちょっとぴょんが持つには可愛すぎるかな? いや、でも可愛いものが好きってぴょんなんだし、本人は気にいったご様子。

 なるほど、直射日光上等のぴょんだから、日傘は持ってなさそうだもんな。


「紫外線を受けすぎるのもよくないかと思いまして選んでみました。雨の日も大丈夫ですよ」

「あちゃ~」


 そしてぴょんが取り出したゆきむらのプレゼントを見て、自信ありげな表情を見せるゆきむらに、何故かゆめがちょっと苦笑い。

 どうしたんだろ?


「割り込んじゃうけど、わたし先にぴょんにあげていい~?」


 そして苦笑いしたまま、ゆめがぴょんに自分の持ってきた袋を差し出す。

 

 あえての割り込み……って、ことは……。


「おいおいまさか」

「……そんなことあるの?」


 そこでピンときた俺の心の声が漏れると、おそらくゆめのプレゼントを予測したであろうだいが、俺と同じ考えになったのか驚きの声を漏らす。


 そしてゆめから袋をもらって少し触れたぴょんは、一気に笑いだしていた。


「マジかー!」

「や~、やっぱぴょんの日焼けは将来的に心配だし~?」


 そして順番前後で取り出されたのは、またしても折り畳み傘。

 再びぴょんがみんなにデザインを見せるように開いてくれたけど、ゆめがあげた方は、ゆきむらがあげたパステルカラーのポップな日傘に対して、紫陽花が描かれた高級感溢れる少しシックな和柄の傘だった。

 見た目ならすらっとした美人であるぴょんが、和服でも着てその傘を使ってたらすごく似合いそうな、そんな印象のアイテムだな。


「むむ、綺麗なデザインですね……」

「ゆっきーのすごい可愛い~」


 まさかのプレゼントかぶりをした二人は、顔を見合わせてお互いがあげたものを褒め合うけど、やっぱ6人もいるとかぶることもあるか……!

 俺はかぶらない自信あるけどね……!


「ゆめの傘綺麗だね~~」

「そうね、でもゆっきーのもほんと可愛い」


 褒め合う二人に続いて、好みが分かれたかジャックとだいも二つの傘に視線を送る。

 この辺は、やっぱ自分の趣味嗜好で好みが分かれるところ、かな?

 だいもけっこう可愛いもの好きだしなー。


「しゃーねぇなぁ。今度両方差して歩くかー」

「いや、それは変な奴だろっ」


 そしてどっちがいいかを選びきれないのか、ぴょんが割と真剣そうに言うものだから、すかさず大和からツッコミが入る。

 でもやっぱぴょんからしてもね、年下の二人からもらったものだし、どっちがいいかはちょっと選びづらそうだな。


「二人ともありがとな! ちなみに、もう傘の奴はいねーよなー?」


 そして片方の傘を大和に畳ませ、自分も傘を畳みながら、笑いながら確認を取るぴょん。

 さすがにそこに乗っかる奴はいなかったけどね。

 俺があげるのは別なのだけど、だいとジャックは何選んだんだろ?


「かぶっちゃったから割って入っちゃったけど、流れ戻すね~」


 そして誰も名乗り出さないし、大和は傘を畳んでいるからか、流れを戻すようにゆめがゆきむらからもらった袋をあげだす。

 大和にあげた袋と比べると、ゆめにあげたのはすごい小さいけど、何なんだろ?


「え、可愛いっ!」


 そして袋を開けたゆめが取り出したのは、かなり小さなアイテムだった。

 手のひら大のビニール袋の中に、何かが複数個入ってる感じ。

 でもいつもゆったり話すゆめの言葉が短くなる感じ、けっこう喜んでるご様子。


「可愛いけど、なんだろ?」

「んー?」

「使ってる友達いて、いいなぁって思ってたよ~」


 ゆめが取り出したプレゼントを眺めるぴょんとだいは用途が分からなかったみたいだけど、ゆめはほんとにご満悦だな。

 でも俺も正直何かわかりません。


「持ってたらどうしようとも思いましたが、喜んでもらえてよかったです」

「うん、嬉しい~。明日から使うね~」


 そのゆめの表情を見て、ゆきむらも嬉しそうな感じに、見えた。

 もうちょっと顔に出してもいいような気はするけど、まぁこれがゆきむらか。


「それ、何に使うんだ?」

「譜めくりマーカーって言ってね~、パッと楽譜めくりたい時に便利なんだよ~」

「なるほど~~。音楽科のゆめにぴったりだね~~」


 結局なんのアイテムか分からなかった大和が改めて聞くと、ようやくゆめが用途を教えてくれた。

 形としては様々な楽器と音楽記号の形をしたクリップのよう。

 見た目もいい感じだし、ゆめにぴったりだし、なるほど、高価ではなくともいいセンスだな……!

 

「ありがとね~」

「いえ、喜んでもらえてよかったです」


 もらった側ももらう側も嬉しい、これはいい光景だなぁ。

 うん、やっぱ誰かが喜んでるの見るのって、いい気分なるよね。


 そしてこのセンスとは誰もかぶらなかったようで。


「じゃ、次は俺が開けるな!」

「せんかんの袋大きいけど、なんだろ~~?」

「オープン!」


 そして頃合いを見て、大和が袋をオープン。

 手探りもせずにばっと開けた大和の袋から出たものに、一同が笑いだす。


「あー、それはあたしも考えたわ!」

「あたしもちょっと思ったよ~~」

「……私も」

「ね~、それあげる人いると思った~」

「むむ」


 え、マジか!?

 まさかの女性陣が全員同じことを思っただと……!?


 そんなことを言われて、プレゼントを受け取った当の本人は。


「俺って、そんな風に思われてんの!?」


 と、ちょっと慌てるご様子。


「使いませんか?」

「やー……学生の頃は使ってたけど、あ、でもこれ高いやつじゃん。……効果高いのかな」

「は~い、割り込みま~す。誰かあげるだろうな~、と思ってたから、わたしはせんかんのこれにしたよ~」

「え、まさか?」


 そしてまたしてもゆめが先に見てと言わんばかりに大和に袋を渡し、それを開けると。


「おいおい、打ち合わせでもしたのかー?」

「ほんと、組み合わせとしては完璧ね」

「せんかん今日から使うしかないね~~」

「いやー、見事な連撃だな!」


 ゆきむらとゆめからもらったものをそれぞれ持ちながら、大和は笑っていた。


「もっと鍛えろってことかもよ?」

「いや、俺より倫の方が鍛えたほういいだろっ」


 そんな笑う大和に俺も茶化しをいれるが、そう、大和がゆきむらからもらったのはプロテインで、ゆめからもらったのは電動のプロテインシェイカー。

 まぁ大和はガタイがいいしな、筋トレしてそうって見えるもんなー。


 同じ職場の俺からすればそこまで大和がトレーニングしてるの見てるわけではないから選択肢には入らなかったけど、先ほどの女性陣のコメントからも客観的には使ってそうって思える男だとは思う。


「もらったからには、また筋トレやっかなー」

「じゃあ鍛えたら、わたしとゆっきーで腕にぶらさげてもらお~」

「おお、それは楽しみですね」

「じゃあ全員でせんかんにぶらがってみるか!」

「いや、さすがにそれは無理だからな?」


 そしてさすが大和、もらったものは大切しようという精神を見せると、その言葉に乗じてゆめやらぴょんが反応する。

 さすがに全員はどうやっても無理だろうけど……大和ならゆめとゆきむらの二人くらい、いけるか?

 一人なら今でも数秒はいけそうな気もするけど……。


 そんな女の子たちを腕にぶらさげる大和の絵面を想像していると。


「一緒に鍛えてみたら?」

「え、やー……俺は筋肉タイプじゃないからなー……」

「ムキムキのゼロ様も見てみたい気はしますね」

「いや、大和とはそもそも骨格が違うから……」


 まさかの隣のだいが俺に筋トレを推奨し、それに乗じてゆきむらまで似たようなことを言ってくる。

 いや、俺だってガリガリじゃないし、腕にぶらさげるのは無理でも女性一人お姫様抱っこくらいなら出来ると思うけど……え、だいのやつ、マッチョ体形が好きなのかな……。


 そう言われたら、筋トレするけど。


「元が色白なんだし、鍛えた方が男らしく見えるわよ」

「え、ゼロ様も日焼けしてる気がしますけど……」

「え、あ、ほら、ゼロやんは東北の出身だしね?」


 やっぱ男らしい方が好みなのか? と俺が思った矢先、俺が色白という言葉にゆきむらが反応。

 そりゃ外部活の顧問だからね、俺も腕とかの見える範囲は人並みに日焼けして見えるから、ゆきむらには分からなかったのだろうけど、ゆきむらのその反応にだいが少し慌てだす。

 俺は生まれが東北なだけあり、実際日焼けしてないとこはけっこう白いんだけど、それは基本的に人前で見せない範囲だからね!

 それを知ってるってことはね、そういうことだもんね!


「おいおい、主役ほっぽってイチャイチャすんなよー?」

「してませんっ」


 そしてね、こういう会話してるとだいたいぴょんから注意されるのも、定番だね。

 ぴょんもよく見てるなぁ。


「ゼロ様色白なんですか?」

「あー、うん。だいの言う通り、ほら、焼けてないとこんな感じ」

「あ、たしかに白い」


 もやは様付けをやめてくれる気配がないのことには諦めつつ、俺がシャツを肩までまくって普段見えない部分を露出してみせると、たしかにけっこう白い肌が見えたからかゆきむらは少し納得した様子を見せていた。


 あれだね、変に誤魔化そうとしたりしないで、最初からこうすればよかったね。


「私も白い方ですし、一緒ですね」


 って!


「いや、うん。見なくても知ってるからね!?」


 一緒ですね、とアピールしたゆきむらがまさかのTシャツの首元を引っ張り、鎖骨のちょい下を見せてきながらのスマイル。

 そしてこれには俺が困惑。


 いや、それもうちょっとで胸やん! って違う違う!?

 たしかにめっちゃ白いけど、それはわざわざ見せてもらわなくても知ってるからね!?

 そもそもゆきむら元々日焼けしてないしね!?


 ああもう、どんな気持ちでやってんだよそれ……。


「ゆっきー、おじさん目のやり場に困ってるよ~~?」

「むむ?」


 そんな俺たちのやりとりに気づいたか、ジャックから冷やかしの声が入るとゆきむらが少し戸惑いを見せるも、戸惑うのはこっちだからね!


 いや、まぁがっつり見ちゃったけどさ!


「ちゃんとしなさいよ」


 そしてぴょんの方を向いていたと思っていただいからの冷たい言葉が。

 

 いや、え、怒られるの俺なの!?


「精神鍛えるために、倫も俺と鍛えるか!」

「……遠慮します」


 そんな俺の様子を見た大和が笑ってくるけど、いや、お前と同じレベルのトレーニングは絶対俺には無理だからな!

 大和みたいな逞しさになるのは、うん、生まれ変わらないと無理ゲーだろそれ。

 っていうか筋トレでメンタルまで鍛えられるもんなのか……?


「ゆっきーもゆめもありがとな!」


 とまぁ何だかんだの脱線を軌道修正し、筋トレアイテムをくれた二人に改めてお礼を言う大和。

 俺はまだ苦笑いだけど、相変わらず、爽やかな笑顔だなこいつは。

 

 その笑顔に場が落ち着いたので、そろそろ次にいくのだろう。

 なんだかんだゆきむらの流れでゆめもプレゼントを公開する形になっちゃったけど、大和が言った年齢順は一応続いてるのか。

 

 となると次は。


「わたしももうあげちゃったから、年齢順だと次あげるのはだい~?」

「だな! リア充のセンス、かもん!」

「はいはい」


 ハイテンションなぴょんとはえらい差だが、それでもどこか自信ありげに自分の袋を机の上に並べるだい。

 全部大きさは同じくらいな感じだけど、置いた時少しドンってなったから、少し重いものがあるのかな?


「誕生日おめでとう。私からのお祝いです」


 果たしてだいのプレゼントとは?

 うーん、野菜詰め合わせ? まさかねー。







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以下作者の声です。

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 あと4人……!


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本作スピンオフシリーズである『オフ会から始まるワンダフルデイズ~Side Stories~』。3作目となる〈Yuuki〉が本編と隔日更新くらいのテンポで再開しております。

 本編の回顧によろしければ~。

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