第240話 輝くセンスは誰のもの?
「ここ前も来たとこだね~」
「個室で探すとなー、かぶっちゃうよなー」
「でも、楽しかった思い出の場所ですよね」
「そだね~~、懐かしい~~」
「いや、俺は初めてだけど」
「そっか、あの時はせんかんいなかったものね」
「倫がスーパーハーレム時代だな!」
「あー、はいはい。あれだな、カラオケ移動する時に大和に見られた日でもあるな」
見覚えのある居酒屋に到着し、案内された部屋は割と広めの個室で、それぞれがゆったり座ることが出来るような部屋だった。
そこに適当に着席し、俺たちは第2回オフの時の記憶をそれぞれ口にした感じ。
大和からしてもね、ある意味復帰のきっかけになった日だから、完全に関係ないとは言い切れないのが人生の不思議なとこだな。
ちなみに今日の配置は主役の二人が奥に座り、大和の隣にぴょんが座って、その隣にジャックが座っている。そしてゆめの隣がだいで、その隣に俺、そしてその隣にゆきむら。
この席はまぁなんというか流れで座ったけど、大和の隣にぴょんが座ったのとかね、なんか意図を感じちゃうよね!
「とりあえず乾杯しようぜ!」
「飲みたがりだ~」
「祝いの席だろー? 当たり前だろっ」
だが俺が意図を感じたりしつつも、ぴょんに特に変化はなし。
飲みたがるってあたりは、ゆめの言う通りいつも通りだし、よく考えればぴょんはだいたいテンション高めだから、態度じゃなんか今までとの違い分からないか……?
って、大和は気になってるって言ってたけど、ぴょんがどの程度の気持ちなのかは分からないんだけどさ。
「あ、俺今日ノンアルで」
「なんだと!? あたしの酒が飲めないってのか!?」
「むむ、ぴょんさんのお酒だったんですか?」
「いや、そんなわけないでしょ……」
「まだ飲んでないのにテンション高いな~~」
そして俺が大事を取って今日は飲まない旨を告げるや、早速ぴょんからの口撃が炸裂。
ゆきむらの天然は最早驚きもしないけど、宇都宮以来のぴょんのテンションに、ジャックは楽しそうに笑っていた。
「ほら、ゼロやん頭だけじゃなくて、足もまだよくないから」
そのだいの発言、ちらほら笑い出す奴らが数名。
「その言い方だと倫の頭が悪いみたいだぞ?」
「だいも言うね~~」
「え、あ、そう言う意味じゃ」
そう言って少しテンパるだいが俺の方を見るが、俺はそれに苦笑いするしかなかった。
俺のフォローをしようとしてくれたのはね、うん、ありがたいんだけどね。
正直俺も大和のツッコミ通りのことを思ったのは言うまでもない。
ツッコんだ大和もジャックもめっちゃ笑ってるし、これチャットの会話だったら「w」の嵐だな。
「ゼロ様の分も私が飲みますね」
「いや、うん、だからその呼び方はやめような?」
「ゆっきーはその呼び方気に入ったんだね~」
そして今度は相変わらず様付けをやめないゆきむらの方を向いて苦笑い。
そんな様子にゆめが楽しそうに笑ってるけど、いや、いい加減俺も普通に笑いたいんですけど?
どうなってんだ
「とりあえずさっさと飲むもん決めようぜ!」
と、そこでいい加減飲みたくなったのだろう、ぴょんがタッチパネルを回しだす。
自分の分を選んだぴょんが隣のジャックに渡し、ジャックから俺に渡され、二人が頼んだのを確認すると、そこには生ビール3と入力されていた。
なるほど、大和は言わずもがなビールっていうぴょんの判断か。
間違ってないだろうけど。
「だいさん何にされますか?」
「私はウーロンハイかな」
「じゃあ私も同じのにします」
「ゼロやんカシオレよろしく~」
「はいはい」
そして注文用のタッチパネルを持つ俺に口々にオーダーが来るので、それを順に入力し、自分用のノンアルコールビールを選んで注文を確定する俺。
なんというか、生ビールチームとそれ以外チームに分かれてるんだな、今の席。
本来なら俺も
一人ノンアルだと誰かつぶれた時介抱要員になりかねないけど、何だかんだこのメンバーで酔いつぶれた奴いたことないし、あっても誰かが睡魔に負けるくらいだろ。
と、そんなことを考えつつ、飲み物が届くまでの間、気づけば注文要員は俺と認定されたようで、適当にみんなの食べたいものを聞いてそれを選んでいく俺。
ちなみにあれね、フード選んだのはほとんどだいね。
主役二人よりも、色々選んでたあたり、さすがだよほんと。
そしてフードの方のオーダーを終えた辺りで、飲み物が到着。
「お注ぎしますね」
「あ、さんきゅ」
グラスやらジョッキで飲み物が届く中、唯一瓶に入った状態だった俺のノンアルビールをゆきむらが注いでくれて、準備完了。
ゆきむらも気が利くようになったなぁ。
なんかちょっと、俺だけ接待気分。なんつって。
「若い子にお酌してもらって喜ぶとか、倫ももうおっさんだなー」
「いや、喜んでねーし!?」
よく見てるな
でもまぁ、怪我の治り具合とかね、十分おっさんになってきてるとは俺だって自覚あるけどね……!
「じゃ、乾杯の音頭はゆめ!」
と、俺と大和のしょうもないやり取りを無視して、ぴょんが乾杯の号令をゆめに託す。
ほんともうね、早く飲みたくてしょうがないんだな、ぴょんは。
「え、わたし~? ん~、今日はみんな、わたしのために集まってくれてありがと~。かんぱ~いっ」
「「「「「かんぱーいっ」」」」」
「え、俺は!?」
そして大和のツッコミもむなしく、俺たちは和気あいあいとグラスを合わせ、誕生日オフが開幕。
自分で「わたしのため」って言うあたり、さすが安定のゆめクオリティ。でもそれに対して大和以外疑問を抱かないこの空気感が、俺らっぽいね。
「ゼロやん2杯目頼んどいて!」
「へ? って、うわ、はや!」
「ぴょんってばとばすね~~」
「明日月曜日なの知ってるわよね……?」
みんなそれぞれ乾杯の発声の後、ほどよく飲んだと思ってたけど、一気にジョッキの2/3ほどを空けていたぴょんの言葉に俺が驚くと、それに続けて少しだけ呆れた様子でジャックとだいも苦笑い。
いや、そのペースで大丈夫なのか?
あれだぞ、きっと大和のサプライズは、後半だぞ……?
サプライズだからぴょんが知らなくても当たり前なのだが、豪快な飲みっぷりを披露するぴょんに俺は密かに心配になったり。
もちろんほどほどに、なんて言えないから、言われた通りにね、注文はしとくけどさ。
「じゃ、さっそくセンスバトル開幕といくか!」
そして会が始まりフードもぼちぼちと届き始めた頃、ぴょんの仕切りで今日のメインイベント開幕が宣言される。
きっとみんなもいつだろうと思ってたのか、その言葉に少しそわそわした感じでそれぞれ鞄の方に手を回し、ラッピングされた袋たちがみんなの鞄から現れだす。
ラッピング必須とか話してないけど、この辺はみんな暗黙の了解だよな。この方がドキドキ感あるもんな。
もちろん俺も流れに合わせて袋を取り出したけど、今出したのは2つ。
本当はもう1つ入ってるけど、ぴょんの分はね、ちょっとしたサプライズ要素だからな……って!?
「ん? ゆっきーなんで袋3つあるんだ?」
みんな2つずつ、ゆめと大和用のプレゼントを出し始める中、明らかに3人分のプレゼントを鞄から取り出したゆきむらに、ぴょんの視線がロックオン。
「あ、ぴょんさんも先月誕生日でしたよね。なので、ぴょんさんの分も用意しました」
そして淡々と3つ用意した理由を話すゆきむら。
な、なんだと!? ゆきむらも用意してただと!?
「なんだとぉ!?」
奇しくもぴょんと反応がシンクロしたけど、何とか顔に出さないように耐える俺。
だが、まさか気を利かせてゆきむらまで用意してたとは……!
思考がかぶったか!
「え~、ゆっきーも用意してたの~?」
「え、ゆめも!?」
そしてぴょんからの、ゼロやんの気遣いさすが! 的な反応を狙っていた俺の魂胆は、ゆめの言葉によりさらに粉々に砕かれた。
というか。
「私もぴょんの分買ったわよ」
「あたしも~~」
「……俺も」
「え、何それ! みんなマジかよ!?」
だい、ジャックと続いたので、俺もそこでカミングアウト。
なんとまぁ、みんな考えることは同じだったか……!
そうやって続々とみんなもぴょん用の袋を取り出し始める流れにぴょんも驚きはしているみたいだけど、こうやってみんなからプレゼントがあるって言われて、何だかんだ嬉しそう。
うん、この顔見れたから、いっか!
「みんなマジかー。くそう、俺だけ気が利かないやつみたいじゃん」
「いや、ないんかい! んだよ、この流れだったらせんかんも持ってきとけよー」
そして一人だけ用意してなかった大和が、顔に手を当ててちょっと後悔する仕草を見せ、ぴょんがそれに対して肩をばしっと叩いてツッコミをいれる。
いやー、二人とも見事な演技ですなぁ。
そりゃねぇ、大和はみんなより先にぴょんにあげてるもんねぇ。
今日は用意しないよねぇ。
ぴょんとてそれが大和の演技だと分かっての反応なんだろうが、これで実は大和がぴょんにはプレゼントではなくサプライズケーキを用意してるって知ったら、どんな反応するんだろうな!
と、ちょっとニヤニヤしそうな気持ちになりながら、二人を見守る俺である。
「ったく、みんなあたしのこと大好きだなー」
全くもって「ったく」みたいな表情はしてないくせに、わざとらしく振舞うぴょんは嬉しさを隠しきれてないけど、ぴょんが愛されてるってのは、間違ってないだろう。
ぴょんからすればゆめと大和が主役のオフ会で企画したんだろうけどさ、やっぱぴょんだってこの前誕生日迎えたばっかってね、グループトークで祝ってから一か月も経ってないんだし、みんな思うとこは同じだったんだろうね。
いつも企画ありがとうってね、思いは一緒だな。
「じゃーあたしの分を用意してなかったせんかんからセンス公開な!」
「くそう、言い返せねぇ……! だが見せてくれる。俺のプレゼントは、自分じゃ買うか迷うけど、もらえるんだったら使いそうなアイテムだぜ!」
そしてどう見ても自然にしか見えないやりとりの末、まずは大和がゆめにプレゼントを送ることに。
自分じゃ買うか迷うけど、もらえれば使う……なるほど、実用性で選んだのか?
「え~、なんだろ~?」
大和から包装された何かを受け取ったゆめは、袋を開ける前に色々触って予想してたけど、時折包装されてる袋が角張ったりしてたから、袋の中に箱が入ってる感じかね。
うーん、大和は何を選んだんだろう?
「あっ、たしかにこれ買おうかなって思ったことある~」
そして中身を予想するのを諦めた様子のゆめが袋を開けると、それなりの大きさの箱が登場。
そのパッケージには一瞬ヘッドホンのように見える形のものが印刷されていた。
「お~~、それ最近使ってる人よく見るね~~」
「まだ暑い日が多いし、いいね」
みんなが興味深げにその箱に視線を送る中、ジャックとだいが大和のプレゼントにコメント。
なるほど、大和のプレゼントはいわゆるあれだな、ポータブル扇風機ってやつだな。
「何となくさ、ゆめは暑さに弱いイメージだったから」
「うん、わたしバリバリインドア派だし、暑いのは苦手~」
「しかも首掛けれるから、邪魔にならない」
「お~、それは便利だね~」
そう、ポータブル扇風機だけど、大和があげたのは手で持つタイプではなく、ヘッドホンの耳当て部分が小さな扇風機になっている首にかけるタイプのやつ。
なるほど……考えたな。
たしかに最近街中で手で持つタイプの使ってる人たまに見るし、外に出てる時なんか見かけるとちょっといいなとか思うこともある。かといって自分で買うかどうかは悩むラインの商品だよな……!
言葉通りもらったら使うって感じのやつをチョイスするとは、なかなかやるな大和……!
「あ、かる~い」
そしてそれを首にかけてみせるゆめ。
デザイン的には黒が多くて、可愛いとかではないけど、可愛い系のゆめがつけるとそれはそれでちょっとギャップがあって、悪くないね!
「涼しいんですか? それ」
「ん~、あ、充電ないからつかないや~。とりあえず充電してみるね~」
そしてさすがに箱から出したてでは充電がないため動かなかったようで、ゆめは自分の鞄から携帯充電器を取り出して扇風機の充電を開始。
最近のはUSB接続できれば何でも充電できるの多いしね、便利な時代だなぁ。
とりあえず効能は充電終わるまで待機か……評価はどうなんだろうな……!
「じゃ、せんかんが次のセンス公開する奴を指名して!」
「お、なるほど。そういう形式か。じゃあ誰にすっかなー」
ゆめの充電がすぐには終わらなさそうだと判断したか、ぴょんが大和に次のプレゼントを渡す人を当てるよう促すと、大和がみんなの持ってきた袋を眺め出す。
いや、みんなの包装されてるからね、見てもわかんないと思うけどね。
サイズ的に言えば、ゆきむらの持ってきた袋に1つけっこう大きいのがあるのが、目立つかな?
「じゃあ若い順に、ゆきむら!」
「私ですか。お任せください」
そして悩んだ末俺と同じことを思ったのか、大和がゆきむらを指名すると、ゆきむらは何だか自信ありげにちょっとだけ不敵な笑みを浮かべた気がした。
果たしてゆきむらが買ったものは何なのか。
そしてセンスバトルの栄冠は誰のものになるのか。
そんな思いを浮かべる中、ゆきむらがゆめ、大和、そしてぴょんへとプレゼントを渡す光景に皆が視線を送る。
この戦い、まだ続くぜ!
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以下
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長くなりそうな予感のオフ会です。笑
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本作スピンオフシリーズである『オフ会から始まるワンダフルデイズ~Side Stories~』。3作目となる〈Yuuki〉が本編と隔日更新くらいのテンポで再開しております。
本編の回顧によろしければ!
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