第8章
第188話 情報は小出しにしてくれると嬉しいんですけど
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以下
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色々考えまして、ここからを第8章とすることにしました。
少しずつ、でも確実に色々と動き出していきます……!
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以下より本編です!
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どれほどの時間が経っただろうか。
食べ終えないままだった皿の上のオムライスから、卵の柔らかさが感じられないくらいには、時間が経ったと思う。
さっきの言葉以降、俺も亜衣菜も無言。
でも、気まずいとか、そういう感じではないような、そんな感じ。
そんな空気の中で、不意に俺のスマホに誰かからの通知が来た。
「あ、菜月ちゃんから?」
それを確認しようともしなかった俺に、目を泣きはらしつつも、もうほとんど泣き止んだ亜衣菜が「見ていいよ」と合図を送ってくる。
そういうことならと、通知を確認すると。
平沢夢華>Teachers『ぴょん誕生日おめでとー☆』13:54
「違った。ギルドのTalkグループだった」
「あ、そっか。りんりんのギルド、すごい仲良しなんだもんね」
「ん、まぁ、うん」
「いいなぁ。あたしもそっちに入ればよかったな」
「いや、流石にそれは……」
「えー、だってジャックだって先生じゃないんでしょー?」
「あ、知ってたの?」
「当たり前じゃーん。ジャックが【
「あ、そりゃそうか」
ある程度感情も収まったのか、亜衣菜の調子はいつもの感じに戻っていた。
それはまるで友達みたいな、ちょうどいいバランスの軽口にも、思えるかな。
「あのさ」
「んー?」
「さっき、話の中で事情があってLA頑張らなきゃいけなかったって言ってたけど、あれ、どういう意味なんだ?」
「あー……そっか、あたしそんなこと言っちゃったか」
「うん。というか俺聞き返したぞ?」
「あれ? そだっけ? 覚えてないやっ」
「ええっ!?」
そう言ってあっけらかんと笑う亜衣菜。
うん、でもまぁもう大丈夫そう、だな。
少しだけ胸をなでおろす俺。
「りんりんはさ、何であたしがLAやろうって言ったと思ってる?」
「え、そりゃ当時の新作ゲームだったからじゃないの、か?」
「でも、当時もMMORPGはいっぱいあったけど、あたしどれもやってなかったじゃん?」
たしかに。当時の亜衣菜は相当なゲーマーだったが、全部コンシューマーゲームだったもんな。
となると……。
「んー、LAはキャラメイクとグラフィックが綺麗って売りだったし、そこに惹かれたとか?」
「んー、それもなしじゃないけど、不正解っ」
「違うのか……となると……あ、お兄さんがルチアーノさんってことは……、そこ絡みとか?」
「おー、珍しいっ! りんりんが鋭いなんてっ」
「……え、俺馬鹿にされてる?」
「よくできましたー」
「おいっ!?」
そう言ってテーブル越しながら、身を乗り出して俺の頭を撫でてくる亜衣菜。
子ども扱いすんな! ってか、いや、そういうのはもうだめだろ!?
「撫でんなっ」
「えー、年下のくせにー」
「いや、3か月しか変わんねーだろ!」
「ちっちっち、甘いなりんりん。3か月あれば、けっこうスキル上げれちゃうぜ?」
「なんでそこLA基準なんだよおい」
「え、ゲーマーだから?」
「なんだそのキャラ……」
さっきまでの空気なんて微塵も感じさせずにボケてくる亜衣菜に、俺はもう苦笑いしかなかった。
いや、マジで何考えてんだよこいつは。
「っていうか、話逸らすよな」
「あ、そっか。そうだったね。うん、LA始めたのはお兄ちゃんのおすすめというか、お兄ちゃんから一緒にやらないかって言われたから」
「ふむふむ」
「お兄ちゃんはさ、札幌の実家にいるんだけど、ずっと言ってなかったけど、うちの実家ってけっこうおっきな会社運営してるんだよねー」
「あれ、土地持ってるとかじゃなかったの?」
「それもそうなんだけど……って、あれ?」
「あ、山下さんから聞いた」
「あ、そうだったの? なんだ、じゃあ話は早いか」
前にだいと亜衣菜の家に行ったとき、亜衣菜がだいと話してる間、俺はあの恐怖の眼鏡こと山下さんから、亜衣菜の家がすごい金持ちだという話は聞いていた。
土地とか色々持ってて、不労所得がすごいとかなんとか。
会社も経営されてましたか。うん、いわゆる上流階級ってやつなんだな。
全く、羨ましい生まれだよなぁ。
「今社長はお父さんで、お兄ちゃんは次期社長なんだけど、会社のことは全部俺が引き受けるからって、あたしは自由にさせてもらったんだよね」
「ほう」
次期社長なのにMMOガチ勢って、いいのかそれ?
まぁ……今だけってことなのかもしれないけど。
「まぁ他にもお兄ちゃんが実家離れにくい理由はあるんだけど、あたしはお兄ちゃんが全部引き受けてくれたから、好きにしなさいって、上京させてもらったんだよね」
「そうだったのか」
「うん。お兄ちゃんはずっとお父さんから経営のこととか、色々教わってたけど、あたしはその辺全くのノータッチで、むしろお義姉ちゃんの方が色々手伝ってる感じなの」
「ほうほう」
「だから、お兄ちゃんには色々恩があるというかね、あんまりお兄ちゃんが何かやりたいって言うこともなかったから、一緒にやろうって言ってくれたの、嬉しかったんだ」
「仲良いんだな」
「まぁねー。りんりんとこみたいにべったりじゃないけどさ」
「いや、うちもべったりってわけじゃ……」
いや、これはあんまり否定できないか。
でも、知らなかったな、そんな理由だったとは。
お兄さんがいるってのは昔から聞いてたけど。
「りんりんなら一緒にやってくれると思ってたし、だから誘ったんだけど。いやぁ、お兄ちゃんがあそこまで本気になるとは、あたしも最初は思ってなかったんだけどねー」
「本気度で言ったら、日本一レベルだもんな」
「うん、ほんとにそう思う。まぁお兄ちゃんとしてもさ、LAを盛り上げたいとは思ってたとは思うんだよね」
「そうなの?」
「うん。LA運営してるラフターってさ、LAやる前から知ってた?」
「え、名前くらいなら……」
「だよね。今じゃLAのヒットでその他作品も割と知られるようなったけど、LAのサービス開始前は、全然だったじゃん?」
「まぁ、そうだな」
ゲーマーを自負してた俺も、ほとんど知らなかったし。
ちなみにLAを運営してる株式会社ラフターは、LA以外だとファンタジー物の戦略シミュレーションゲームなんかが、今は割と人気なんだぞ。俺はやってないけど。
「他にも色々MMOタイトルがある中でお兄ちゃんがLAを選んだのは、LAのシステム担当をメインでやった
「えっ、そうなの!?」
「うん。お兄ちゃんは地元の大学を出てるんだけど、そこで仲良くなった人が二人いてね、そのうちの一人が、ラフターで働いてる赤井さんなの。あたしも会ったことあるけど、すごくいい人だよ」
「マジかよ。すげーな、その繋がり……」
「友達が開発に関わってるって知ってさ、お兄ちゃんもその人の力になりたかったんだと思う。で、お兄ちゃんはプレイする方向でLAを活性化させて、お兄ちゃんが仲良くなった人のもう一人が、LAの宣伝を頑張って、今に至るってわけ」
「宣伝した人って?」
「
「え、それって!?」
「うんー。『月間MMO』出してる会社」
「マジかよ」
いや、ほんと、え?
え、何その関係? ルチアーノさんと、その友達二人で、今やテレビCMも出す、グッズも色々出したりメディアミックスしたりしたLAのブーム作ったってことなの!?
……情報多すぎて、もうわけわかんねーな!
「あたしが『月間MMO』に携わらせてもらってるのも、上杉さんからあたしのSNSに連絡があったからなんだけど、どう考えてもお兄ちゃんの繋がりからだと思うんだ。直接は言われてないけどさ」
「そう、だったんだ」
それは、山下さんから何か聞いた記憶あるな……。
黙っとけって言われたけど、なんだ、亜衣菜も知ってたんじゃん。
「そういう繋がりがあってね、お兄ちゃんがLAをどうしても盛り上げたいからって、あたしも誘ってきたんだと思う。あたしもゲーマーだし、ハマれば役に立つって思ってくれたのかなー」
「なるほど……でもさ、いくら友達だからって、ルチアーノさんの本気度、すごすぎないか?」
「あー……その辺は、お兄ちゃんに会えばわかるかも」
「いや、会えばって、札幌にいる人に会えって言うのかよ?」
会ってみたくないわけじゃないけど、流石に遠すぎんだろそれは。
だが、亜衣菜は何故か不敵な表情を浮かべる。
「ふっふっふ」
「な、なに?」
「会いたい?」
「え?」
え、どういうこと?
その笑いは、何!?
不敵に笑う亜衣菜の表情の意味は、全く分からなかった。
「ま、最初っからそのつもりだったんだけどねー。お義姉ちゃんも会いたいって言ってたし」
「え? お義姉ちゃんって、もこさん……?」
「うん。菜月ちゃんに声かけたのは、そういうこと」
「え?」
「昨日からね、お兄ちゃんとお義姉ちゃん、うちにきてるんだ」
「え、マジ!?」
「ほら、くもんが新婚旅行行きたいからって、【Vinchitore】の活動休止期間作ったって、ジャックから聞いてない?」
「それは、聞いたけど……」
「だったらどうせならって、お義姉ちゃんがお兄ちゃんを引っ張ってきたみたいなんだー」
「マジかよ」
「まー、あたしの好意を踏み倒した男としては、会いづらいかもしれないけどー?」
「え、あ、う……」
「うそうそ。最初からね、どうなってもりんりんも呼ぶつもりだったから」
「え?」
「ログインIDとパスワードは、忘れずに」
「え?」
「それだけあれば十分だから」
「……はい?」
「思ったよりもまだ時間早いけど、呼べば菜月ちゃんって、もう動けるかな?」
「え、あ、たぶん、大丈夫だと思うけど……」
「おっけー。じゃあ、まずはここに呼んじゃおっか」
「え、あ、はい」
やばい、全然頭がついていかないんですけど!?
え、ルチアーノさんともこさんが今東京に来てて、俺とだいもそこにいくの?
え、なんで!?
いや、たしかにもこさんには昔お世話になったけど……え、そんなことある!?
だが、目の前では既に亜衣菜が誰かに、おそらくだいに電話をかけている様子。
さっきまであんな泣いてたやつとは思えんくらいの切り替えである。
これはもう、なるようにしか、ならないやつか!?
もはや、考えることに意味などないだろう。
北条倫>Teachers『ぴょんハッピーバースデー!』14:23
とりあえず思考停止した俺は、ゆめに続いてぴょんにメッセージを送ったりしながら、亜衣菜の電話が終わるのを、待つのだった。
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最近少しプロットに手を加えだしました関係で章構成をいじることに。
なんとなく前話で大きな戦いが終わった感がありますが、ここから作中の秋に向けて、加速的に色々と動かしていきたいと思います。
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本作スピンオフシリーズである『オフ会から始まるワンダフルデイズ~Side Stories~』。3作目となる〈Yuuki〉がこそっとスタートしました。
お時間あるときに、興味がお有りの方はそちらも読んでいただければ幸いです!
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