第175話 ビギナーズラックって裏仕様はあると思います。

 和やかな外食から帰宅した、20時半頃。


「じゃ、俺今日はギルドの活動だから」

「えー、かまってくんねぇのー?」

「たまには一人でスキル上げでもしてこいよ」

「えー、私もギルドさいれてくれてもいんだよー?」

「いや、俺ら学校の先生の集まりだから」

「ぶーぶー」


 帰宅して、俺が部屋に戻るとさも当たり前のようについてきた真実が、頬を膨らませて拗ねてくる。

 うーん……ほんとにこいつちゃんと社会人できてんのか、なんか不安なるな……。


 だがとりあえず今は無視し、PCを立ち上げてログイン作業を進める俺。


 まぁ、ジャックとかゆきむらとか、学校の先生じゃないメンバーもいるけど、ジャックは学校で働いてるし、ゆきむらは未来の先生だからね。


「同じ公務員だしいいじゃんかー」

「くくり方がちげーんだよ」


 まぁたぶんみんなギルドに誘ってもいいかを聞いたら、受け入れてくれるとは思うけど。


 でもやっぱりね、妹もギルドにいれたら、色々めんどくさそうだし、女性陣が。

 なんというかあの交友関係の中に身内がいるってなるとね、ちょっと落ち着かないよね!


〈Zero〉『ちーっす』

〈Jack〉『やっほーーーーw』

〈Gen〉『おう!』

〈Yukimura〉『こんばんは』

〈Pyonkichi〉『うぃー』

〈Daikon〉『こんばんは』


 俺がログインした時にいたのは俺含めて6人。

 定刻まではまだ30分あるし、まぁもうちょっとしたらみんな来るのかな?


「この人たちとはみんな会ったことあるの?」

「ん? ああ、そうだよ。この前みんなで宇都宮に集まったんだ」

「え、わざわざ宇都宮に?」

「うん。ギルドリーダーが宇都宮の人で、子ども小さいからさ、なかなか東京は来れないから、俺らが会いに行った」

「えー! なんか楽しそう~……でもオフ会かー。イメージつかないやー」

「そういや、友達とかでやってる子いないのか?」

「んー、特に聞いたことねね」

「そうなのか。うん、でもとりあえず、あちーから離れろ」


 俺が定位置につくや、俺の肩に顎を乗せバックハグしながら俺のPCの画面を眺め出す真実。

 いや、暑いし重いんですけど。お兄ちゃんそれすげー肩こりしそうなんですけど?

 そして髪の毛耳に当たってくすぐったいからやめてくれ。


 しっしっと手を振るも、なかなかどかない妹。


 でもまぁ、そうそう同じMMOやってる知り合いなんて、元々ゲーム好きの友達多くないといねぇか。

 俺も実はやってたんだよって知り合い特にいねーしな。


 と、完全に油断したところで、まさかの――


〈Daikon〉『今日は妹さんは?』


 この発言である!

 いや、たしかに君ら仲良くなったかもしれないけどさ!


〈Jack〉『むむーーーー?w』

〈Pyonkichi〉『え、誰の!?』

〈Daikon〉『ゼロやんの』

〈Jack〉『おおーーーーw』

〈Pyonkichi〉『おいおい、妹もやってたのかよwww』

〈Yukimura〉『ゼロさんの妹さんも、プレーヤーだったんですか』

〈Zero〉『・・・今後ろにいるよ』

〈Pyonkichi〉『言い方がホラーwww』


「これ、呼ばれてるよね!」


 変わらぬ姿勢のまま、ちょっと嬉しそうな声が真横から聞こえる。

 そしてぱっと俺から離れ、一昨日からずっと俺の部屋に置きっぱなしのPCを立ち上げだす真実。


 くっ……だいめ! なんてことを……!


〈Gen〉『ゼロやん帰省中なのかw』

〈Pyonkichi〉『あ!たしかに!実家戻ってまでログインするとは、プレーヤーの鏡だなwww』

〈Yukimura〉『仲のいい兄妹なんですよね』

〈Daikon〉『うん、昨日一昨日と一緒に遊んだけど、すごくいい子だったよ』

〈Jack〉『あ、なんかやってるなーって思ったら、そういうことだったのかーーーーw』

〈Yukimura〉『むむ、私もログインすればよかったです』

〈Gen〉『いや、ゆっきーは来週の面接試験に備えなさいw』

〈Pyonkichi〉『早く呼べよw』

〈Zero〉『いや、始めて8か月くらいだけど、まだまだ全然駆け出しだぞ?』

〈Jack〉『別に強さとか求めてないよーーーーw』

〈Pyonkichi〉『うむw普通に話したいだけだしw』

〈Yukimura〉『ご挨拶しないといけませんね』

〈Zero〉『いや、なんでだよ!』

〈Daikon〉『でも、知り合いが増えたほうが楽しめるゲームでしょ?』


 え、だいがそんなこと言うの!?

 かつて完全なる野良プレイヤーだった君が!?


「ログイン完了っ! とりあえず、菜月さんに挨拶しよっと」


 そして聞こえる楽しそう不穏な声。

 こ、こいつ俺がギルドいれてくれなさそうだからって、だいを篭絡ろうらくするつもりか!!


〈Daikon〉『あ、ログインしたみたい』

〈Pyonkichi〉『おいおいwもう義姉妹関係かよw』

〈Jack〉『仲良くなったんだねーーーーw』

〈Gen〉『どれ、じゃあ招待するかw』

〈Zero〉『え、マジ!?』

〈Yukimura〉『加入条件でしたら、私も満たしてませんし・・・』

〈Jack〉『おなじくーーーーw』


 いや、そうだけどさ!

 え、マジで!?


〈Gen〉『名前は?』

〈Daikon〉『Hitotsuちゃん』

〈Jack〉『0やんの次に生まれたから1つなのーーーー?w』

〈Pyonkichi〉『おいおいw数学科はだいだろw』


「あ、ギルドの招待来た!」

「……なんと」

「入っても、いいんだよね?」


 さっきまであんなに入れろと言ってたくせに、いざ招待を受けたらちょっと戸惑ったのか、少し俺の顔色を窺うような声になる真実。

 振り返れば上目遣いに俺の方を見てくる妹の姿。

 いや、逆にそんな風に言われたらダメって言えねぇだろうが……。


「お兄ちゃん怒らない?」


 その姿は、小さい時から変わらない、俺が何でも許してしまった妹に他ならなかった。

 しょうがねぇなぁ……。


「別に怒ったりはしねえよ。みんなも話したいって言ってるし」


 やれやれというように振り返り、俺は真実に苦笑い。


「じゃあ遠慮なくっ」


 だが、そんな俺のしょうがねぇなぁみたいな空気を簡単に蹴散らし、しおらしくお願いしていた姿から一瞬で変身を見せる真実。

 え、ま、まさかこいつ確信犯!?


〈Hitotsu〉『はじめまして!ひとつと申します!』

〈Jack〉『ようこそーーーーw』

〈Pyonkichi〉『よろしくねーw』

〈Yukimura〉『はじめまして。ゆきむらです』

〈Gen〉『ようこそ【Teachers】へ!』

〈Daikon〉『よろしくね』

〈Zero〉『妹がご迷惑おかけします』

〈Hitotsu〉『あ、兄がいつもお世話になっております!』


 あー、なんかむずがゆいな、この会話。

 友達の集まりに妹連れてった時のような、そんな感じ。


〈Pyonkichi〉『ゼロやんの妹でひとつだから、いちやん……いや、それだと可愛くないから、いっちゃんか!』

〈Gen〉『お、早くもあだ名付けかw』

〈Hitotsu〉『なんでも大丈夫ですよ!』

〈Jack〉『あたしたち名乗ってもないのにねーーーーwあたしはジャックだよーーーーw』

〈Pyonkichi〉『あたしぴょん!』

〈Gen〉『俺はゲンだwみんなからはリダって呼ばれてるけどw』

〈Hitotsu〉『あ、兄の画面をよく見ていたので、皆さんのお名前は聞いてますー』

〈Yukimura〉『仲良し兄妹なんですね』

〈Hitotsu〉『そう、かなぁ?』

〈Daikon〉『うん、仲良しだと思う』

〈Zero〉『ノーコメントでお願いします・・・』

〈Jack〉『ゼロやん照れてるーーーーw』


 いや、だってね?


「みんないい人だねっ」

「まぁそうだなー。うん、いいギルドだと思うよ」


〈Jack〉『いっちゃんいつから始めてたのーーーー?』


 あ、ジャックもその呼び方でいくのね。


〈Hitotsu〉『今年の年明けくらいからですー』

〈Hitotsu〉『元々02サーバーだったんですけど、一昨日こっちに移転してきましたっ』

〈Gen〉『おw移転組かw』

〈Zero〉『俺のことびっくりさせたかったらしいけど、サーバー違うの全然気づかなかったんだって』

〈Pyonkichi〉『おいおいwプレイヤーサーチでいなかったら分かるだろww』


「はっ! そういえば!!」


〈Zero〉『後ろでびっくりしてます』

〈Pyonkichi〉『ド天然かよwww』

〈Jack〉『ゼロやんと違ってゲーマーじゃなかったんだねーーーーw』

〈Yukimura〉『でも、これてよかったですね』

〈Daikon〉『うん、セシルさん伝てに【Vinchitore】の人が代わってくれたみたい』


 あ! こいつ!?

 それ言う!?


〈Pyonkichi〉『おーおーwそのコネ使ってんのかよw』

〈Jack〉『でもたしかに【Vinchitore】で移転希望者って、実はけっこう多いからねーーーーw』

〈Daikon〉『そうなの?』

〈Jack〉『そだよーーーーwここ01サーバーで一番強いって言われるのは、敷居高いからねーーーーw』

〈Jack〉『何だかんだ幹部メンバーって、ほんとに強いからさーーーーw』

〈Hitotsu〉『でも、おかげさまで来れてよかったです!』

〈Senkan〉『うぃーっす・・・って、あれ? 新しい人?』

〈Jack〉『やっほーーーーwゼロやんの妹さんだってーーーーw』

〈Hitotsu〉『はじめまして!ひとつと申します!』

〈Pyonkichi〉『新人のいっちゃんだぞ!』

〈Senkan〉『え、倫の妹だとう!?』


 20時46分、大和POP。


「あれ? この人お兄ちゃんのこと名前呼びなの?」

「あー、まぁ違和感あるかもしんないけど、そいつ職場の同僚でもある」

「えっ!? そんなことあんだか!?」

「でも初めて会ったのはゲームの中。1回引退して、この前復帰したんだよ」

「うわー……びっくり……」


 いや、うん。それ普通の反応だよね。

 いや、改めて考えると色々信じられないことばっかだよなぁ、うん。

 もうなんか、何が起きても平気なくらい慣れてきたけど。


〈Senkan〉『俺はせんかん!いっちゃんよろしくな!w』

〈Hitotsu〉『こちらこそ。兄がいつもお世話になっております』

〈Senkan〉『おお、ログなしで情報がいってる感じ、リアルだな!w』

〈Gen〉『あ、嫁から今日は仁が全然寝ないから、私のことは放っておいてと言われました』

〈Daikon〉『あら』

〈Jack〉『そっかーーーー』

〈Hitotsu〉『あ、リダさんは夫婦のプレイヤーなんですよね!』

〈Gen〉『おうwゼロやんから聞いてたかw』


 そっかー。嫁キング休みか。やっぱ子どもいると大変だなぁ……。

 リダのログにはちょっと残念だったが、仁くんの可愛さを思い出せば、しょうがないとも思う。うん、あの子は天使だからな。最優先だもんな。


 しかし真実も思ったよりは普通に話せてるし、やっぱ普段はちゃんと市役所で働いてるってことか。

 

 そして20時49分。


〈Earth〉『あーちゃん参上☆』

〈Jack〉『やっほーーーーw』

〈Hitotsu〉『はじめまして!ひとつと申します!』


 あーす登場。律儀に毎回挨拶して、えらいなぁ、こいつ。


〈Earth〉『あれ?新しい子?よろしくねっ☆』


「変わった人だねー」

「あー、中身男だからな、そいつ」

「え、んだの?」

「うん、この前の写真の中で、真実がイケメンって言ってたやつ」

「えっ! 意外……」


 残念イケメンだからね、あーすは。

 まぁ、悪いやつじゃないというか、いい奴ではあるけどさ。


〈Gen〉『ゼロやんの妹だってw』

〈Pyonkichi〉『いっちゃんって呼んでやれよー』

〈Earth〉『ええ!?すごーいっ☆』

〈Earth〉『仲良しなのー?』

〈Yukimura〉『そのくだりはもう終わりましたよ』

〈Jack〉『ゆっきー辛辣ーーーーwww』


 南無。


「あれ? なんか当たり強くね……?」

「あーすはなんていうか、いじられキャラだから。いつもこんな感じだぞ」

「そ、そうなんだ……」


 まぁあれか、俺らからするともう1年以上の付き合いだから普通だけど、初見だとちょっと可哀想にも見えるか。


 とまぁそんな会話をしている間に、気づけば時刻は21時を回り。


〈Pyonkichi〉『ゆめこねーなー。ちょっと連絡してみるわー』

〈Daikon〉『そうね、おでかけしてるのかしら?』

〈Senkan〉『ま、夏休みだし、それもあるかも?』

〈Gen〉『最近のゆめのログイン率高かったんだけど、珍しいな』


「ゆめさんって?」

「えーっと、この前の写真で真実がこの人可愛いって言ってた人だよ」

「ほうほう」

「ゆめと、リダの嫁と合わせて10人のギルドだったんだよ俺たち」

「じゃあ私で11人目かー」

「まぁそうだな」


〈Pyonkichi〉『連絡かえってこないや』

〈Earth〉『最近暑いからねーおねむさんかも?』

〈Jack〉『そうかもしんないねーーーーw』

〈Gen〉『ま、いるメンバーで活動するのが俺らだし、なんかするかw』


 ぴょんがゆめからの連絡を待っている間、この前撮った集合写真で誰が誰なのかを教えたりしていたのだが、そうか、今日は8人……いや、真実いれて9人か。

 何すんだろ?


〈Jack〉『この前のリベンジは、二人いないから今度にするとしてーーーー』

〈Earth〉『いっちゃん歓迎会かなっ?☆』

〈Hitotsu〉『えっ、あ、全然そんな!おかまいなく!』

〈Pyonkichi〉『お!あーす珍しくいいこというな!』

〈Daikon〉『うん、せっかく入ってくれたんだもんね。賛成』


 ほおほお。みんな優しいな。

 でもそれ、何すんの? え、ずっとおしゃべりとか、か?


〈Yukimura〉『でも、歓迎会とは?』


 俺の心の声を代弁してくれたゆきむら、ナイス!


〈Gen〉『定番なのは、装備取りに行ったりか?w』

〈Jack〉『武器は何上げてるのーーーー?』

〈Hitotsu〉『えっと、メイスです。まだスキル110しかないですけど・・・』

〈Jack〉『お、あたしのメインと一緒だねーーーーw』

〈Senkan〉『じゃあ、ジャックと同じ武器取りに行くかw』

〈Daikon〉『あ、でも火山ってまだ行けないかも』

〈Hitotsu〉『あ、行けますっ』

〈Daikon〉『え?』

〈Hitotsu〉『今日の朝から夕方までで、火山も行けるようになりました!』

〈Hitotsu〉『というかしてもらいました!』

〈Earth〉『してもらいました?』


 どうも、してあげた人です。

 いやさすがに2年前に実装されたストーリーとはいえ、ソロ戦闘に長けた武器鍛えてない俺一人じゃきつかったから、ちょうどログインしてたフレンドには力を借りたけど。

 ありがとう〈Yakobやこぶ〉。礼を言うぜ。

 あ、こいつはあれね、俺の【Mocomococlub】時代のフレンドね。


〈Zero〉『フレンドの力借りてね、ささっとやってやりました』

〈Daikon〉『あ、そうなんだ』

〈Pyonkichi〉『これが兄妹愛ってやつかーw』

〈Zero〉『ほぼPLパワーレベリングと同じだったけどな』

〈Yukimura〉『じゃあ、キングサウルスに挑戦ですか?』

〈Hitotsu〉『えっと、すみません、それはどなたですか??』

〈Jack〉『実装されてる中では一番強いモンスターだよーーーーw』

〈Hitotsu〉『ええっ!?』

〈Gen〉『大丈夫!たぶん勝てる!』

〈Gen〉『ジャックがいれば勝てる!w』

〈Senkan〉『あ、そっか、嫁キングいないとヒーラーがw』


 驚く真実だけど、まぁリダの言う通りだろう。

 実際初勝利の時は嫁キングいなかったし。

 割と喋りながら戦闘するジャックが無言なるくらい大変そうだったけど。


 でもあの時はぴょんもあーすも大和もいなかったんだし、今思い出すと、ほんとよく勝てたな。


〈Zero〉『あーすもずっと盾に回れば、回復楽になるんじゃね?』

〈Earth〉『おお!あーちゃんがみんなを守るぜいっ☆』

〈Zero〉『いや、メイン盾はリダね』

〈Yukimura〉『ゆめさんの分、火力侍でいきますね』

〈Senkan〉『じゃあ俺も火力全振りでいくか!』

〈Jack〉『がんばるさーーーーw』

〈Pyonkichi〉『よし、あたしの強さを見せてやろう!』

〈Gen〉『じゃあ、火山集合で!w』


 ということで、リーダーから届いたパーティの誘いに全員が加入に、俺たちは9人でのパーティを結成。

 最近定番だったボス戦であーすをアーチャーにする作戦は今日は使えなさそうだが、まぁ俺が二人分頑張ればそれでいいだろうし。


「なんか、よくわかんないけどどうせばいいの?」

「ついてくればいいさ」


 ヒュームのホームタウンまで〈Hitotsu〉を迎えに行き、俺は転移魔法を発動。

 ま、習うより慣れろだ。


 若干の困惑を見せる真実を連れて、俺は火山へと移動するのだった。




 そして、火山到着から1時間後くらい。


〈Jack〉『おつかれーーーーw』

〈Gen〉『いや、ジャックが一番言われるべきだけどなw』

〈Pyonkichi〉『いやー、もう余裕なんだなー』

〈Daikon〉『ガンナーのギミックは大きいわね』

〈Yukimura〉『いっちゃんさんも、おつかれさまでした』

〈Hitotsu〉『え、ええと、全然よくわかんなかったですけど、ありがとうございます!』

〈Senkan〉『しっかしあれか?これ初勝利ボーナスでもあんのか?w』

〈Earth〉『そういえば、せんかんのときも1発だったねっ☆いっちゃんおめでとっ☆』


 戦闘はまぁ、俺の後ろでバタバタと真実がわめいていたが、実際の所問題なくクリアできた。

 編成的にも少し火力は減っていたが、盾2枚を置く盤石の守りで、ジャックの負担も少なかったためか、適宜を出してくれてたし。

 いい経験にはなったのではないだろうか。


 そしてドロップしたのは、大和のログ通り何かしらの隠れボーナス仕様を感じざるを得ない、メイスドロップ。

 ミトゥムという、ジャックも使用しているメイスで、MPの大幅上昇を初めとするステータスボーナスや耐性UPに加え、詠唱時間短縮、支援魔法の効果UP、支援魔法の効果時間延長、オリジナルスキルで支援魔法の範囲化等々の盛沢山性能である。特にこの支援魔法の範囲化は羨ましい。消費MPが倍になるという点はあるけど、MP自体が大幅に増えてるわけだから、大して問題にはならないだろうし。

 うん、俺も欲しいと思う装備である。


「この武器、すごいやつなんだよね?」

「うむ。うちのギルドもジャックしか持ってないよ」

「え、もらってよかったのかな?」

「いいんだって、みんなおめでとうって言ってたろ?」


 装備がドロップした瞬間は、それはもう歓声があがった。

 歓迎会効果だのなんだの、みんな言ってたけどやはり一番多かったのは『おめでとう!』。俺らとしてもね、これから頑張りたくなる武器を手に入れさせてあげられたのはよかったと思うしな。


〈Gen〉『ちらっと装備見せてもらったけど、金かかってる装備してるし、これはメイス鍛えてもらえれば、我々の活動の幅も広がりますなw』

〈Daikon〉『うん、セシルさんが一式くれたんだって』

〈Pyonkichi〉『おー、ゼロやんの妹でよかったなw』

〈Yukimura〉『スキル上げがんばってくださいね』

〈Senkan〉『俺らも一緒にできそうなのあったらやるからさw』

〈Earth〉『強くなってこー☆』

〈Jack〉『動きも悪くなかったから、スキル上げたらもっとうまくなれるよーーーーw』

〈Hitotsu〉『が、がんばります!』

〈Zero〉『みんな、ありがとな』


 ということで、あーす以来1年8か月ぶりに加わった新メンバーである真実を美を加えての初活動は、見事すぎる結果となった。


 うん、みんなと遊べて真実も楽しそうだったし。

 加入するってなった時はちょっと色々思ったけど、これなら大丈夫そう、かな?


〈Earth〉『でも結局ゆめちゃんこなかったねー』

〈Senkan〉『これはもう今日は寝てるんじゃね?』

〈Jack〉『初オフ会前は、この終わったタイミングでゆめがきたんだけどねーーーー』

〈Pyonkichi〉『そういやそんなこともあったなー』

〈Yukimura〉『待ってれば来ますかね?』


 火山からみんなそれぞれホームタウンに帰還し、これ以上何か活動することはなさそうだけど、みんなでのんびりとチャットを続ける俺たち。

 ジャックの言う通り、たしかに初オフ会はゆめの欠席と、終わってからのログインでの『みんな聞いて!』から始まったんだよな。

 

 うーん、どうしたんだろうか?



 だが、その後も23時くらいまでチャットを続けた俺たちだったが、結局ゆめはログインしなかった。

 ま、明日になればグループに連絡くるかもしんないし、ぴょんとかだいとか、仲良いメンバーには連絡あるだろう。


「みんないい人だねー」

「だな。活躍できるよう頑張れよ?」

「うんー」


 さすがに明日は東京に戻るから、今日はこのくらいにしておこうということで、俺と真実も揃ってログアウト。

 今日寝たら、明日からはまた一人暮らし。

 ま、それはそれで気楽なんだけどね。


 寝る前に少しだいと電話してから、俺は帰省3日目を終えるのだった。





―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―

以下作者の声です。

―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―☆―★―

 チャット会話をいれると話が長くなる不思議。

 文字数多めになりました。


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本作スピンオフシリーズである『オフ会から始まるワンダフルデイズ~Side Stories~』。現在は〈Airi〉と〈Shizuru〉のシリーズが完結しています。

 え、誰?と思った方はぜひご覧ください!

 

 3本目こつこつ進行中です。

 毎日更新とはいかなくても、ぼちぼちのんびり更新始めようかと思います!

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