第166話 ワシとタカってどっちが強いんだろう

〈Zero〉『次のは飛翔モードだから、ゆきむらは基本見てるだけだな』

〈Yukimura〉『あ、弓装備に変えましたので』

〈Gen〉『え、いつのまに!?』

〈Senkan〉『つか弓もあったのかゆっきー』

〈Yukimura〉『昔にやってただけで、スキル150くらいで止まったままですけど』

〈Daikon〉『武器は?』

〈Yukimura〉『天魔の弓です』

〈Gen〉『わーおw高い弓使ってんなーw』

〈Zero〉『買ったら使いたくなるやつじゃんw』

〈Senkan〉『みんなすげーなーw』

〈Zero〉『じゃ、次は二人とも俺のすぐ後ろから狙撃で』

〈Daikon〉『そうね』

〈Yukimura〉『離れなくていいんですか?』

〈Zero〉『離れすぎると、敵が俺から離れて攻撃防げないからさ』

〈Gen〉『ウィザードなしだと、盾役がかばう形で戦うんだよ』

〈Yukimura〉『なるほど』

〈Senkan〉『そんな戦法もあるのかー』

〈Gen〉『なつかしいなw』


 しかしゆきむらの弓、俺の盾相当のくっそ高額装備だぞ。

 メインで使わないのに買うかね、普通……?


 そんな次の戦闘に向けた会話をしつつ、空トカゲとの戦闘場所から移動し、スタートからだと14分後、〈Hawk Emperor〉、通称タカ王を発見。

 打合せは事前に済んでいるので、そのまま突っ込み、再び俺のチアアップから戦闘が開始する。

 すぐさま俺の背後にだいとゆきむらも移動し、狙撃開始。

 いいペースで削れて行くが、武器性能の差か、だいの方が倍近い火力がありそうだった。


〈Zero〉『麻痺』

〈Senkan〉『おっと』


 だいに迫る攻撃をすぐ前にいる俺が盾で防ぐ。

 その攻撃を防ぐや、俺のステータスに麻痺のマークが付与される。

 タカ王の攻撃は麻痺や毒、沈黙などの行動阻害や継続ダメージ、スキル不可の状態異常を付与してくるため、回復要因のヒーラーは必須なんだよな。


 俺のログに少し遅れて大和が反応。しかし少し遅れたせいか、俺の盾が発動せずだいが1発くらってしまった。


〈Daikon〉『何を受けたかはログに書いてるから、がんばって』

〈Senkan〉『ま、まかせろ!』


 だいの要求も、素早く流れていくログを見て判断しろ、となかなか簡単ではないことなのだが、言われてからの大和は頑張ってくれた。

 ちなみにタカ王は常時飛翔モードのため、物理攻撃である硬直スキルが使えない。

そのため連撃を決めることができないため、基本的に地道に削るしかないのだ。

 HPは多くないのが救いだな。


 しかし地道に削るということは――


〈Gen〉『こっからしんどいぞw』

〈Zero〉『おう!』


 一気に削り切ることができないため、必ず敵が猛攻状態になる。

 戦闘開始1分ほどで、残り3割を切ったあたりから攻撃間隔が加速し、右から左からと上空を飛翔してから迫る攻撃。

 それに合わせて必死にキャラを動かし、攻撃を防ぐ俺。

 いやほんと、だいがヘイト管理うまくてよかったなー。

 だいとゆきむらと、両方に行ったり来たりされたらと思うと、ちょっときつかったぜ。


〈Daikon〉『おつかれさま』

〈Gen〉『今のはかなりよかったな!w』

〈Zero〉『いやー、やっぱリダはすげーやw』

〈Senkan〉『うし、じゃあボス急ごうぜ!』

〈Yukimura〉『槍に持ち替えますね』


 それでも1分半ほどでタカ王を撃破。

 空トカゲよりはね、うまくできたのではないだろうか。


〈Zero〉『次はモードチェンジがあるから、だいは位置取り気をつけてな』

〈Daikon〉『OK』

〈Senkan〉『しっかし、いつもと違うプレイするのっておもしれーなw』

〈Gen〉『いやー、いつも何も言わなくてもジャックの魔法もらってるけど、やる側ってなるとついつい効果切れてからになるんだよなー』

〈Zero〉『ジャックよりうまい奴いねーよw』

〈Daikon〉『タロさんもうまかったけど・・・』

〈Yukimura〉『他のギルドの方とプレイするのも、面白いかもしれませんね』

〈Gen〉『それは面白いな!w』

〈Daikon〉『え・・・』


 ボスである〈Merciless Eagle〉目指して空中庭園を走り抜ける俺たち。

 ゲーム内時間がだんだんと夕暮れになると、このエリアの空も合わせて赤い夕陽を浮かべるようになる。

 そんな綺麗な景色には目もくれず、俺は思わずゆきむらの言葉に絶句するだいに笑ってしまった。


 やっぱ、知らない人は苦手か、こいつ。


〈Gen〉『どっか一緒にやってくれるギルドないかなw』


 だが、ゆきむらの発言にリダはけっこう前向きなようで。


〈Senkan〉『倫ってけっこうフレンド多いんじゃないのか?』

〈Zero〉『あー、いるにはいるけど、ギルドリーダーなのはもこさんしかいないよ。フレフレンドもほとんど【Mocomococlub】の人だし。リーダーだった人は、もうみんな引退しちゃってるなー』

〈Yukimura〉『セシルさんにお願いしてみてはどうですか?』

〈Zero〉『はい?』

〈Daikon〉『え、【Vinchitore】にお願いするの?』

〈Senkan〉『それならジャックに言った方が早そうだけどなw』

〈Yukimura〉『あ、それもそうですね』

〈Gen〉『【Vinchitore】かー。ルチアーノさんのプレイ、目の前で見てみたい気はするなー』

〈Yukimura〉『わたしはもこさんを見てみたいですけど』


 ゆきむらの発言には少し焦ったけど、そこからしばらく妄想チックなあのプレイヤーがすごい、見てみたいなどの会話が始まる。


 ちなみに俺が一緒にプレイしたいのは誰かって?

 そりゃやっぱり、自分より上手いって思ってるガンナーだよ。

 【Vinchitore】がたまに公開する動画見ても、間隙を縫うようなスキルで攻撃したりするし、無駄がねーんだよな、あいつ。

 なんだったら2ガンナーでどっちが強いか確認したい気持ちもある。

 

 あ。あれだよ? 普通にゲーマーとしての力量確認だからね?

 変なプレイじゃないからね?

 純粋なゲーマーとしてのプレイだからね?


 そんなことを思う俺をよそに、この会話も5分ほどで終了。


 まもなくボス戦ということで、俺らは改めて強化を確認。


 コンテンツの残り時間はあと8分ほど。

 攻略の鍵は俺のタゲキープとだいのDPS次第ってとこかな。


〈Gen〉『時間が時間だし、飛ばれると厄介だから、地上にいるときに一気に削るか』

〈Yukimura〉『タゲ大丈夫ですか?』

〈Zero〉『フルスキルでやってみる』

〈Senkan〉『ま、頑張って回復するわw』

〈Daikon〉『うん、じゃあ行きましょう』


 あ、最後の仕切りはだいなのね。


 ということで、全雑魚を無視してきたこともあり、このパーティで三度目の戦闘を開始するべく、俺のキャラの倍ほどある大きさのワシに突っ込んでいく。

 開幕からチアアップ・ビルドアップでヘイトを大きく上昇。

 このあとの戦闘はないんだし、MPは使い切っても大丈夫だろう!


〈Zero〉『おk』

〈Yukimura〉『いきます』


 俺の合図とともにゆきむらも攻撃開始。開幕からいきなりツインスラストで単発スキルを使ってくるゆきむらの攻撃に、5%ほどのHPを減らすことができた。

 いや、ゆきむらだけじゃなくだいのやつも何かスキルを使ったのかな?

 ゆきむらの攻撃は単純に2連続で突くエフェクトのはずなのに、ワシ周辺にパチパチと電気が走っているから、これはサンダーショットかな?

 銃スキルの中でも低スキルから使える、属性ダメージ付きの銃撃だ。


 当然そのダメージ量に応じてタゲが動きそうになるも、俺は即座に守護の陣という範囲内にいるメンバーの防御力を上昇させるスキルを発動。これには自身へのヘイト上昇もあるから、なんとかゆきむらからタゲを守り切った。


〈Zero〉『いく』


 そして間髪入れずシールドタックルで飛翔モードになる前にワシを硬直させ、だいとゆきむらの連撃が決まり、一気に3割ほどのHPを削ることができた。


〈Zero〉『だい!』


 この攻撃の直後ワシが飛翔モードへ移行し、先ほどのタカ王同様だいが俺の後ろへと移動する。

 懐かしいなぁ、この動き俺もやったわー。


〈Gen〉『今の連撃はいいタイミングだったな』

〈Senkan〉『しかし武器つえーなーw』

〈Yukimura〉『でも、攻撃届かないのは暇ですね』


 飛翔モード中は物理攻撃が届かないのでゆきむらはお休み。

 でもだいは手を休めることはできないけど、さて、だいはちゃんと削れるかな?


〈Daikon〉『むう』

〈Gen〉『いやー、これだけ飛び回られると難しいか!』

〈Senkan〉『すげーなこれ、どうやって倒してたんだ?』

〈Yukimura〉『そういえばみんなでやってた頃は、だいさんとぴょんさんがウィザードで来てましたよね』

〈Senkan〉『あーなるほど』

〈Senkan〉『しかし、倫はガンナーで来てたんだろ?』


 必死に攻撃を防ぐ俺だが、なかなかワシのHPは減っていかない。

 まぁな、こいつめっちゃ飛ぶから照準合わせるの大変なんだよな。


 何回かやれば、なんとなく動きの予測もできるけど、初見だとなかなかなー。

 だいの『むう』に全てが込められてるな。

 慣れろ、しか言えないから、がんばれと心の中で言う俺。


〈Gen〉『ゼロやんも最初は苦戦してたっけなw』

〈Yukimura〉『あ、でも当たり出しましたね』


 え、マジ!?

 だが、たしかにゆきむらの言う通り、だいの攻撃がワシに当たり出す。

 そして元の攻撃力が高い分、HPを削るのも早い……。


 え、待って、だい、すごくね……?


 その技量を前に、ちょっと自信をなくす気分……。


〈Yukimura〉『いきますね』


 そして残り6割ほどで再びワシが地上に降りてきたので、ゆきむらが攻撃を再開。

 再びいいテンポでHPを削っていく。


 そして残り5割を切った頃、再び飛翔モードへ。


〈Gen〉『こっからは範囲攻撃あるぞー』


 リダの言葉通り、飛翔したワシは大きな翼を羽ばたかせるモーションの後、竜巻のエフェクトを起こし、盾で防げない範囲大ダメージが俺たちを襲う。

 俺のHPが2割弱、だいとゆきむらが3割強を削られた。

 比較的大きく削られた分、ヘイトも減少してしまうので、すかさすチアアップでヘイトを上昇させる俺。


〈Daikon〉『ゆっきー離れて』

〈Yukimura〉『はい』

〈Zero〉『回復!』

〈Senkan〉『おう!』

〈Daikon〉『強化』

〈Gen〉『すまん!』


 範囲攻撃の射程外にゆきむらを退避させ、代わりにだいがまた俺の後ろへ移動。

 だがワシの攻撃も加速し、後衛の二人も少しずつ忙しさを増す。

 しかもここから付与された状態異常付きの攻撃に、定期的にくる範囲大ダメージと、じりじりと減っていく大和とリダのMP。


 それでもだいはいいテンポで攻撃を当てていき、残り4割で再びワシが地上へ。


〈Yukimura〉『一気にいきますか?』

〈Daikon〉『まだ早い』

〈Senkan〉『MPやばいかも』

〈Gen〉『ああっと、すまん!』


 ヒーラー慣れした嫁キングなら配分を考えて回復魔法を使うだろうし、支援慣れしたジャックなら強化魔法やMP回復魔法を使うタイミングも分かっているのだろうが、やはり不慣れということもあり、画面右下のパーティステータスを確認すると〈Senkan〉と〈Gen〉のMPバーはかなり少なくなっていた。


〈Zero〉『一気』

〈Zero〉『なら』

〈Zero〉『3割』

〈Daikon〉『そうね』


 防ぎつつなので俺のログが細切れだが、やはり連撃も二人分しかないため残り4割を一気に削れる火力があるとは思えず、俺の言葉にだいも同意のようだった。


 しかし状態異常を治す魔法が繰り返されるたびに、1回の消費MPは少なくとも確実に大和のMPが減っていく。

 そうか、武器とか装備がジャックとかなり違うから、リダの魔法MP回復の効果も低いのか。


 変わらず迫りくる攻撃を防ぎつつ、なんとか早く3割まで削ってくれと願う俺。


 アタッカーのだいとゆきむらも、細かに単発スキルで削っているせいで、大技オリジナルスキルを使うMPはもうなさそう。

 まぁ今回それは使わないでおこうとは決めたんだけど。


〈Zero〉『いく』


 そんな葛藤の中、ついにおよそ残り3割までワシのHPが減ったので、俺は間髪いれずシールドタックルを使おうとしたのだが――


〈Yukimura〉『あ』

〈Gen〉『うわ、これ中に人いるだろ!』


 俺のシールドタックルの構えログがでたものの、発動までの一瞬の間で再びワシが飛翔。

 スキルは不発に終わってしまう。

 なんてこったい!


 だがこうなってはしょうがない、再び耐えて次に降りた時を攻めるしかあるまい。

 残り時間はまだ3分あるし、降りてくれば、こちらの勝ちだ。


 飛翔したワシを前にゆきむらが後方へ、代わってだいが俺のそばへ移動を開始。 


 そう思って俺は残り少ないMPを消費して、守護の陣でみんなの防御力を上昇。


 しかし、思ったよりもはやく使用してきた、もう見慣れた翼を広げる動作に攻撃範囲外に移動途中のゆきむらも巻き込まれる。俺のHPが一気に半分削られ、だいが7割弱とゆきむらが8割ほどHPを削られた。

 おいおい、強くね!? さっき範囲防御上げなかったらやばかったよな!?

 あ、もしかしてこれ、残り3割微妙に切ってるの猛攻状態か!?


〈Daikon〉『回復!』

〈Zero〉『ちがう!』


 だが、大きく減少したHPに焦ったのだろう、大和がゆきむらへ大回復魔法を唱えてしまう。

 もちろん今回復すべきは、盾の俺か、飛翔中のダメージソースであるだい。


〈Senkan〉『あー!』

〈Gen〉『おちつけ!』


 今の魔法のせいで大和のMPはもう大回復魔法が使えなくなり、大和とリダが小回復魔法の連打で俺とだいを回復させるも。


〈Yukimura〉『あ』


 30秒後、再びワシが大きく翼を広げ、範囲大ダメージが俺たちを襲い、回復しきっていなかったHPのだいが死亡戦闘不能

 再使用までの間隔があったため、守護の陣も間に合わなかった。


〈Daikon〉『耐えれる?』


 そしてテンパった大和からの回復魔法も届かず、状態異常で麻痺を受け、毒を受け、俺のHPバーもついに0になる。

 はい、詰んだ。


〈Senkan〉『ごめんごめんごめん!』

〈Zero〉『いやきちーなー』


 そしてタゲを持っていた俺が倒れたことでワシの攻撃が他3名へ襲い掛かり、為す術なく全員が倒れ伏せる。

 残り時間もあと2分だし。うん、負けだわ。


〈Yukimura〉『悔しいですね』

〈Gen〉『いやー、俺がもっとうまくできればなー』

〈Senkan〉『いや、マジでごめん!』

〈Zero〉『どんまい!』

〈Daikon〉『そもそもリダのスキル値でくるとこじゃないし、ここのコンテンツ自体初のせんかんがヒーラーだし、厳しかったのは元から分かってたもんね』

〈Zero〉『うむ。俺ももっとうまくできたなー』

〈Daikon〉『私も、次はもっと早く削れると思う』

〈Yukimura〉『今度リベンジですね』

〈Senkan〉『ちょっとちゃんと調べておくわ!』

〈Gen〉『そうだな!いやー、いい経験なったな!』


 そのまま全員戦闘不能のまま、少しの間反省点を洗い出し、俺らは揃って死んだままダンジョン外へと排出され、その後もなお、反省点を洗い出すのだった。


 リダの動画、見直して勉強しとこっと……。





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以下作者の声です。

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