第99話 人間は人間にとって狼。ただし好きな人に限る

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作者の声です。


本話は前話・前々話までよりも比較的性を連想させる内容になっています。

苦手な方は読み飛ばしてください。

本話を一言で表すと「甘々」です。

読み飛ばす方は、甘々して次の話にいったんだな、の認識で大丈夫です。


それではお楽しみにしてくださる方はどうぞ、下記へとお進みください。

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「ちょ、もう……!」


 長いキスの末、俺から離れただいは、ぐったりした様子でその場に座り込んでしまった。


「……初めてだったのに」

「あ」

「いきなりこんなの……ずるい」

「ご、ごめん」

「謝んないでよ! ……嬉しいんだから」

「あ、う、うん……」

「ああもう! 私もする!」

「えっ!?」


 どういう理屈か分からないが、座り込んだだいが勢いよく立ち上がり、俺に近づく。

 そしてそのまま、2回目のキス。


 俺の真似をしようとしているぎこちなさが、愛しくてたまらない。


「あ、だめっ……!」


 もう我慢の限界だった俺は、だいの胸あたりに手を伸ばす。

 だがそれはだいが離れたことによって阻止された。


「……お風呂入ってから!」

「お、おう」

 

 お風呂入った後なら、いいのか。

 ってまぁ、アレも買ったんだし、OKってことだろうけど。


「覗かないでね!」

「あ、一緒に入らないの?」

「無理! 明るいところは恥ずかしいから無理!」

「はいはい」

「ちゃんと待ってなさいよ!?」

「当たり前だろ。ほら、お風呂行ってらっしゃい」

「っ!?」


 一歩離れたところで顔を赤くしながらあれこれ言ってくるだいの頭にぽんと手を置いて、今度は軽いキスをする。

 行ってらっしゃいのキスである。


「……ああもう、ずるいよ……」

「タオルとか用意しとくから、行っておいで」

「……ありがと」


 顔を真っ赤にしただいに背を向け、俺は少しだけ部屋に戻る。

 なんだろう、照れてるだいを見ると、なんか逆に余裕がでるというか……あれ、俺こんなにSだったっけ。

 いやMではなかったけど……。

 普段はツンツンしてばっかだっただいを、いじめたくてしょうがない。


 でもまずは約束を守るべく、浴室からシャワーの音が聞こえたのを確認し、俺はすぐに使えるようにバスタオルを用意しておく。


 あと、数十分後くらいに、か。


 俺はコンビニの袋の中に入ったままの箱を取り出し、とりあえずビニールの包装だけ破いておく。

 

 つか、やっぱあいつ、可愛いよな……。

 あんな美人で可愛い子が彼女とか、やばい。

 しかも料理が抜群に上手い、やばい。

 趣味も合う、なにこれ、幸せすぎないか?


 時計を見ればまもなく時刻は午前3時半。

 これは寝る頃には外明るくなってそうだなー。


 そわそわした感情のまま、俺はだいが浴室から上がるのを待つ。

 きっと今日は一生、忘れられない日になるんだろうな。

 でも、6年間片想い、か……。

 すげえなだいのやつ。


 オフ会してなかったら、あいつどうしてたんだ?

 一生、抱えてたのか?

 いや、これはさすがにないだろうけど……。


 でも……幸せにしてやらないとな。




「で、電気は消してね」

「わ、わかってるよ」

「あ、カーテン閉まってる?」

「閉まってるって」

「大丈夫? ちゃんと見えてない?」

「大丈夫見えてないよー」

「棒読みじゃない!」


 だいが風呂から上がり、俺も速攻で風呂に入り、そして現在。

 電気を消した暗がりの中、我が家のシングルベッドの上で、だいは体育座りの姿勢でタオルケットにくるまり、上目遣いに俺のことを睨んでくる。

 暗いのがいいって言うけど、きっともうすぐ夜が明け始めちゃうのは俺のせいじゃないからな?


「怖くないよー」

「……それ、ずるい」


 俺が頭を撫でてあげると、迫力なく睨んでいた目が、とろんとしてくる。

 ああほんともう、可愛いなおい。


 そのまま撫で続けると、今度はだいの方からくっついてきてくれた。

 くっついてきただいを、ギュッと抱きしめて。


「好きだよ」

「ひゃっ!?」


 耳元でそう囁く。

 顔を赤くして照れるだいが、愛おしくてたまらない。

 その反応のよさに、俺のS心が刺激されることこの上なし。


「や、優しくしてって言ったからね……!」

「ん、大丈夫」


 上目遣いに睨んでくるだいへ、優しく紳士的に俺は微笑む。

 だけど中身は完全に狼さん状態。


 そろそろ俺も限界です。

 

 後のことは、みんなの想像にお任せな。







「……平気だった?」

「まだ、変な感じ……」

「よく頑張りました」

「……予想以上の痛みだったわ」

「あー、やっぱそうなんだ……」


 カーテン越しに外が明るくなってきたのが分かる頃。

 俺とだいは、二人並んでベッドの上にいる。

 だいがベッドから落ちたりしないように、壁にくっつけたベッドの壁側にだいがいて、俺の右腕にちょこんと頭を乗せている。

 姿勢的にはお互い横向きで向かい合う。左腕をだいの肩に回して、ぎゅっとしてる状態だ。


 今の恰好? それを聞くのは野暮ってもんだろ。

 言わねえからな!


「でも」

「うん?」

「……幸せなのはわかった」

「お、おう……」

「恋人同士が、こういうことする気持ち、わかった気がする」


 俺も幸せです。

 今の顔、気持ち悪いくらいニヤけてます。


「ねぇ」

「うん?」

「ちゃんと気持ちよかった?」

「当たり前だろ?」

「そっか」

「うん」

「またしようね」

「お、おう」


 色んな意味でスッキリしたとか、そんなんじゃなく、今の俺の、いや俺たちの心が、満たされてる気がする。


 昨日ぴょんに言われた「誰でもいいから突っ込んで、腰振って出して満足。それでいいのか?」って言葉を思い出す。

 絶対そんなことはないって、改めて断言したい。


 今の気持ちは、俺とだいが、好き合ってるからこその気持ちなんだ。

 好き同士だから、幸せなんだ。


 触れ合う肌の感触も、だいがもぞもぞと動く度に当たる髪がくすぐったいのも、全部が幸せなんだ。


 付き合っていきなりとか思われそうだけど、そんなことは関係ないと思う。

 だって、今ここにたしかに、愛があると思うから。


 あ、これはくさすぎるか。

 聞かなかったことにしてください。


 俺の腕に包まれる愛しい人だいは、気づけば穏やかな寝息を立てていた。

 俺の右腕を枕に丸まるように眠っているから、寝顔は見えないけど、きっと幸せそうな顔をしてるんだと思う。


 俺は左腕で眠るだいの頭を撫でる。

 ずっとこうしてたいってくらい、今ほんとに幸せだ。


 出会いはLAゲームの中とか、世間的に見たらどうなのって思われるのかもしれないけど、周囲の声なんて関係ない。

 俺が幸せで、だいが幸せで、それだけで十分だろ。


「……好きだよ」


 この声は聞こえてないだろうけど、別にいい。心の声を漏らすように、俺は空気を振動させる。


 ああほんと、いい日だったな。


 もっとこの幸せに浸っていたいのに、穏やかなだいの寝息が、俺の睡魔を誘う。

 いや、この睡魔さえも、幸せの一部分なんだろうな。


 段々と重くなってくる瞼に抵抗できず、俺は彼女を抱きしめたまま、意識をどこかへ投げ出すのだった。




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以下作者の声です。

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 本編とSide Storiesを別の章としてUPしていくと、更新の度にSide Storiesの最新話が位置的に最新ではなく、非常に読みづらく(気付きにくく)なることが分かりましたので、別作品として展開していくことにしました。


 気になる方は佐藤哲太の『オフ会から始まるワンダフルデイズ〜Side Stories〜』をフォローしていただけると嬉しいです!

 本編とそちらと、一日1話ずつ更新していく予定です。

…予定です。


追記 Twitter登録したんですけれど、いまいち使い方が分かりません。誰かいくつかお知らせチックに投稿してみましたが、合ってますか…?

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