第85話 背中越しの相棒
くだらない
残念ながらあーすはまだ現れず。
あいつはいつも、肝心なタイミングでこねーんだなー。
〈Gen〉『時間かー。しょうがない、今日は8人でいくかー』
〈Jack〉『ゼロやんいれば大丈夫っしょーーーーw』
〈Pyonkichi〉『そろそろ杖でねーかなー』
〈Yume〉『斧がいい!』
〈Yukimura〉『刀・・・』
〈Daikon〉『出るまで付き合うわよ』
〈Soulking〉『頑張らないとねー』
〈Zero〉『秋には新装備出るだろうしな』
〈Gen〉『じゃ、いつも通りの感じでいくべ』
〈Yume〉『は~い』
あーすを除いた8人で、今日も今日とてあのダンジョンに向かう。
今となってはもう作業になった討伐だが、いつもなら気楽な討伐も、今日ばかりはちょっとミスるかもしれない。
そんな緊張感をもって、俺はコントローラーを握る手に力を込めた。
〈Jack〉『いい感じだねーーーーw』
〈Pyonkichi〉『やっぱリダは盾うめーなー』
〈Yukimura〉『安心します』
〈Gen〉『これでも一応、ギルドリーダーだしw』
〈Soulking〉『褒めると調子乗るからね』
〈Daikon〉『嫁キングはスパルタね』
順調に5体の中ボスたちを撃破し、俺たちはいつも通りに
ここまではいつも通り。だいも集中しているのか、コンテンツ開始から話しかけてくることはない。
ちょっと安心。
〈Gen〉『じゃ、いつも通りで!』
〈Zero〉『おk』
〈Jack〉『ちゃっちゃかたおそーーーーw』
いつもの布陣で、いつもの戦闘を開始する。
今日はあーすがいない分、俺もやることは多いけどな!
あの日俺の偶然の行動から知れ渡ったモンスターの攻撃阻害。
発見者としてのプライドがあるし、俺は今日も的確に部位攻撃を当て続ける。
自分で言うのもなんだけど、俺相当上手くなったと思うんだよね。
〈Jack〉『尻尾も一発で当てるとか、神がかってきたねーーーーw』
〈Soulking〉『たのもしいねぇw』
〈Pyonkichi〉『さすがモテ男だな!』
さすがギルドメンバーわかってるな。
1名は除く!
「後衛はしゃべる余裕あっていいわよね」
「そ、そうだな!」
急にしゃべりかけられてちょっと焦ったが、ちょうどやってきたブレス攻撃を、ギリギリで止める。
そうだった、集中して意識してなかったけど、後ろにだいがいるんだった!
「あ、急に話しかけてごめん」
しかも狙撃が遅れたの、気づかれたし!
「大丈夫さ」
まぁ、俺らアタッカーは集中してないといけないから、タイピングする余裕ないからな。
普段思っても言えないこと、言いたくなったんだろうな。
あ、別に後衛が集中しなくてもできるとか、そういうわけじゃないぞ。
ジャックなんか、たぶん軽口言いつつも一番集中してる気がするし。
ジャックはタイピング速度が尋常じゃないからこそ、成せる技だろうな。
〈Yukimura〉『1番!』
〈Daikon〉『2番』
〈Zero〉『3』
モニター上では俺の銃撃を確認したゆきむらを起点とした連撃が開始する。
ちなみにだいが2番って言ってるけど、連撃カウントとしてはだいのシャドウスタッブが1連撃目扱いだ。
今日はいつもの順番にあーすを抜いてるから、4連撃目にゆきむらくるかな?
〈Yukimura〉『5番!』
あ、やっぱりきた。
ゆめは順番が変わったせいか、スキル発動コマンドに自分の順番を発言するようコマンドを組んでないからわかりづらいが、モニター上ではちゃんとだいの次に斧の一撃を食らわせている。
ゆきむらの
今のでここまでの通常攻撃含めて2割は削ったから、このペースならあと4回で、いけるかな?
ちなみにだいが使っているスキルは安定のシャドウスタッブ。この前取った短剣のオリジナルスキルを使わないのは、MP消費が大きすぎるからだ。
消費MP3桁の技なんか、使ってたらすぐ
通常攻撃のダメージ値も上がってるから、それだけでも十分すぎるくらい手に入れた価値はあるけどな。
〈Jack〉『今日もゆっきー絶好調だねーーーーw』
〈Pyonkichi〉『トドメはもらうけどな!』
〈Soulking〉『みんながんばれーw』
〈Jack〉『ゆっきーが確実に連撃入れるこの構成のが、倒すの早そうだねーーーー』
ジャックの言うのは、みんな何も言わないがその通りだろう。
ゆきむらとあーすでは武器スキルの差が大きいし、現状最高峰の弓を使っているとしても、近接攻撃と遠隔攻撃では基本的なダメージ性能が違う。
そこらへんは、戦闘不能リスクのない距離から攻撃できる弓の仕様だからな、しょうがない。
〈Pyonkichi〉『やばい』
〈Jack〉『どしたのーーーー?』
〈Pyonkichi〉『めっちゃトイレいきたい』
〈Soulking〉『いっておいでーw』
〈Pyonkichi〉『ごめん、いってくる!』
2回目の連撃が始まる前、ぴょんはそう言って動かなくなる。
やばいって言うから何事かと思ったが、まぁこればっかは、生理現象だからしょうがない。
リダが離席しようものならその瞬間壊滅リスクがあるが、後衛のぴょんなら大丈夫だろう。
これもMMOならではの光景だな。
そしてぴょんが帰ってくる前に2回目の連撃が終わる。
今回も、2割削れただろうか? ちょっと微妙。
このボスはラスト1割を切ると猛攻が始まるからな、そうなる前に、残り1割を切らないよう調整して、一気に倒していくのが重要なのだ。
これはこのボスに限らず、ボス級モンスターを相手にする共通項なんだけど。
そして戦闘開始からまもなく15分。
ちなみにぴょんは3回目の連撃中から復帰したぞ。
〈Jack〉『あと1回で行けるかなーーーー』
〈Soulking〉『微妙だねー』
〈Pyonkichi〉『いけるっしょ!』
ボスのHPバーは、残り2割を切っているかどうかを示している、ように見える。
2回目の連撃でぴょんの魔法が入っていれば、きっと確実に倒しきれるくらいまでは減っていただろうが、過ぎたことはしょうがない。
うーん、俺なら安全策を取って、もう2回連撃の作戦を取るが……。
「微妙ね……」
「そう、だよな」
やはりだいも同感か。
さすが、この辺の感覚はプレイ歴がほぼ同じだし、似ているらしい。
〈Pyonkichi〉『突撃あるのみ!』
〈Gen〉『押してみるか』
〈Pyonkichi〉『そうこなくちゃな!』
リダの言葉で、次の連撃でトドメを狙うことが決定する。
うーん、でもなんかやな予感がするんだよなー。
だが、もうちょっと通常攻撃で削っておきたい俺の気持ちを無視するように、お
リダの指示だし、いつも通りに俺はそれを狙撃して止める。
〈Yukimura〉『1番!』
〈Daikon〉『2番』
〈Zero〉『3』
〈Yume〉『あ』
〈Yukimura〉『5番!』
〈Jack〉『あーーーー』
〈Soulking〉『あってなにー!』
トドメの連撃途中に挟まった、ゆめの
ジャックが気づき、相変らずのタイピングで疑問を口にした嫁キングよりも早く反応していた。
うん、やっぱ時間にゆとりもあったんだし、石橋は叩いて渡るべきだった。
案の定と言ったらゆめに悪いが、俺の嫌な予感は的中だ。
〈Pyonkichi〉『ぎゃー!』
〈Yukimura〉『む』
〈Yume〉『ごめん!;;』
〈Daikon〉『リダ耐えて!』
「押せる?」
「当たれば!」
連撃でボスのHPを削り切れそうな雰囲気はあったが、まだボスは死んでいない。
物凄い速さで流れる戦闘のログの中で、ジャック同様俺も気づいたが、ゆめの使ったスキルは、一言で言えばミスだった。
いつもであればゆめが使うスキルはグラウンドダウンという、斧スキルの中でもトップクラスのダメージ性能を持つスキルを使うところなのだが、今ゆめが使ってしまったのはクロススラッシュという、グラウンドダウンよりも消費MPが少ない分ダメージ性能が低いスキルだった。
その分、ゆきむらの追撃やぴょんの魔法を加えても、HPバーがミリ残ってしまったのである。
さっきも言った通り、この状態になるとボスは猛攻となり、攻撃速度と攻撃力が倍増する。
アタッカーたちが
防御性能の高いリダも、着実にHPが減っていく。
このまま負ける、きっとそう思ったメンバーもいただろう。
だがな!
〈Pyonkichi〉『うお』
〈Yume〉『おお!』
〈Yukimura〉『さすがです』
〈Jack〉『お見事ーーーーw』
「さすが」
闇の奔流が、ボスを包み込む。
嫌な予感がしていた俺は、半端な攻撃では削り切れない可能性も考慮し、ゆめがスキルを間違えた段階で、俺はこっそりと、俺に行使しうる最強スキルを起動させていたのだ。
ターゲットマークがかなり小さくなるというリスクはあったが、俺は無事に
さすがにボスモンスターなだけあり、カンストダメージは出なかったが、残りミリ程度のHPであれば、無事削り切れた。
ま、これでMPはすっからかんだし、外してたら文字通り終わってただろうけどな!
みんなの称賛のログと、1名の肉声が俺の活躍を褒めたたえる。
きっと今の俺は、モニター越しにドヤ顔だ。
うん、絶対今は振り向けないな!
〈Gen〉『いやぁ死ぬかと思ったw』
〈Jack〉『ゼロやん神反応だったねーーーーw』
〈Yume〉『ごめんね、ありがと!』
〈Zero〉『勝ったんだから気にすんな』
〈Pyonkichi〉『しかし、ドロップこれかよw』
〈Soulking〉『倒したのゼロやんだからねーw』
〈Yukimura〉『刀は・・・』
〈Zero〉『誰か鍛えろよw』
ボスにトドメを刺した武器のドロップ率が上がるのは、既に何回も話した通りだが。
トドメの予定でなかった俺がトドメを刺したことからもお分かりだろう。
ドロップ品の一覧には、
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