第55話 オフ会前日の戦い
7月2日木曜日早朝。
あれ、なんか通知来てるな。誰だ?
里見菜月『昨日は色々付き合ってくれてありがとう。猫カフェの写真、しょうがないから送っておきます』
おお、そういや昨日送ってくれって言うの忘れてたけど、なんという僥倖!
しょうがないからとか言いつつちゃんと送ってくれるとか、あいつらしいな。
添付された画像の中には、猫を抱いて幸せそうなだいと、少しだけ緊張した顔つきになっている俺。
いやー、朝からテンションあがるな!
スマホのアルバムをスライドすれば、猫を抱いて破顔するだいのピンショット。
あー、やばいな。ずっと見てられそう。
感極まって天を仰いだ俺はさらに一枚アルバムをスライドしていたようで、再びスマホに目を戻すと、この前の日曜の、亜衣菜が送ってくれた亜衣菜とのツーショットが表示されていた。
あ、でもこいつも可愛い……。
ってああもう、クズか俺は!
とりあえず、今日も一日、仕事がんばろ……。
〈Zero〉『2番!』
〈Earth〉『3番!』
〈Yume〉『とどめだー!』
〈Yukimura〉『5番』
〈Jack〉『おっとーーーーwゆっきーもはいってきたかーーーーw』
今日は俺の試験があったため、19時くらいまで残業して採点をしてから帰ってきた。
そして日課的にログインをした。昨日だいと約束したばっかりだからな。
そうしたら何と言うことでしょう。明日がオフ会だからかもしれないが、今日は活動日でもないのに全員が揃った。
そんな状況だったため「何かする?」と嫁キングが言ったことをきっかけに、急遽臨時活動日として俺たちは今日も今日とて、武器を取るためにキングサウルスを討伐しにきたのだ。
ちなみにトドメドロップ10%を狙って、今日から連撃の順番を変えた。
今までは後半ほど威力が上がる仕様を活かし、攻撃力重視で、
硬直してからのモンスターの行動再開まではだいたい5秒ほど。4連撃がこの5秒間に打ち込める目安と言われているため、これが適正だろうと俺も思っていたのだが。
いや、まさか無理やり5撃目をゆきむらがねじ込んでくるとは思わなかった。しかも今回はトドメをもっていった。
たしかに初手スキルだから、最後にもう1回スキルを発動させるのは問題ないだろうが、よく
最近のゆきむらの集中力はすごい。
この前手に入れた槍に触発されたのか、槍スキルも100近くまでスキルを上げてるみたいだし、仕事に支障とか出てないんだろうかと不安になるレベルだ。
だが、残念ながら今回は武器はノードロップ。
まぁ今までかなりラッキーだったからな。
色んなプレイヤーのブログとか見てる感じ、これが普通なんだとは思う。
〈Yume〉『はずれかー』
〈Pyonkichi〉『ま、そのうちでんだろ』
〈Gen〉『しかし、ゆきむらは貪欲だなw』
〈Jack〉『5連撃とか久々にみたよーーーーw』
〈Yukimura〉『ゼロやんとだいが速いから、いけると思って』
〈Jack〉『あーーーー、たしかにーーーーw二人は連撃判定ギリギリのタイミング分かってるからねーーーーw』
〈Yume〉『流石元廃ギルド』
〈Pyonkichi〉『揃いも揃って廃人め』
〈Daikon〉『変なこと言わないでっ』
〈Soulking〉『相変わらず仲いいねw』
〈Earth〉『仲良きことは素晴らしきかなっ☆』
〈Zero〉『ま、こうやって数こなせばそのうちでるべ』
〈Gen〉『そうだなwいやぁ、すっかり安定して、嬉しいよw』
ゆめとぴょんの言葉はもうスルーするが、リダが言う通り、ギルドのフルメンバーが揃うとほんともう苦戦することもない。
道中の雑魚や中ボスから得られる経験値で武器スキルもみんな少しずつ上がったりしてるだろうし、今後はさらに順調になるだろう。
まだ拡張データが予定されてる秋までは時間はあるが、早めに武器を揃えれば、活動にも選択の幅が広がるしな。
今はこつこつ倒し続けるしかあるまい。
〈Pyonkichi〉『さてさていよいよ明日ですが』
〈Yume〉『新宿駅西口、18時にヨコバシカメラのゲーミングPCコーナー集合で!』
〈Jack〉『俺ららしい集合場所だねーーーーw』
〈Pyonkichi〉『買い物したければちゃんと早くくるんだぞ!』
〈Daikon〉『私たちはいいけど、ジャックとゆっきーと、どうやって合流するの?』
〈Zero〉『またゆめが元カレスカートはいてくんのか?w』
〈Yume〉『そんなの捨てた!』
〈Yume〉『セクハラ!』
〈Pyonkichi〉『セクハラ!!』
〈Soulking〉『せくはら!w』
〈Zero〉『なんでだよ!』
嫁キングまで悪乗りしやがって……!
あー、今からもう気が重くなってきたわ!
〈Pyonkichi〉『目印は簡単です』
〈Yukimura〉『何?』
〈Pyonkichi〉『イケメンwith美女3人』
〈Jack〉『それはわかりやすいーーーーwww』
〈Gen〉『自分で言うのかw』
〈Earth〉『ほんといいなっ!!いきたーーーい;;』
〈Yukimura〉『わかるかな・・・』
〈Yume〉『絶対わかるよwだいほんと美人さんだもんw』
〈Daikon〉『ほんとやめて』
〈Yume〉『一人はまな板』
〈Pyonkichi〉『あ?』
〈Yukimura〉『一人はまな板』
〈Pyonkichi〉『復唱すんあ!』
〈Jack〉『まないあーーーーw』
〈Pyonkichi〉『うがー!!』
〈Daikon〉『おちつきなさいよ・・・』
〈Pyonkichi〉『巨乳はだまってろ!!』
〈Daikon〉『だからやめてって!』
〈Yukimura〉『巨乳・・・』
〈Gen〉『ほうほうw』
〈Soulking〉『おい』
〈Gen〉『ごめんなさい』
〈Earth〉『いいなぁ;;たのしそう;;』
〈Zero〉『えーっと、もうあえて何も言わないけど』
〈Zero〉『もし俺遅刻したらどうすんの?』
相変わらず愉快な奴らだ。
モニター越しに思わず笑ってしまいそうなログが並ぶ。
まぁ、これを対面でやられると、ちょっとしんどいんだけどな!
とりあえず、真面目な質問をねじこんでやったぜ。
〈Pyonkichi〉『へ?』
〈Yume〉『??』
〈Zero〉『え?』
〈Daikon〉『禁止よ?』
〈Zero〉『いやwあのさw』
〈Pyonkichi〉『問題起こしそうなやついたら事前にやめさせろ』
〈Yume〉『やめさせろーw』
〈Zero〉『不謹慎なこと言うな!』
〈Zero〉『ああもう、遅刻しなきゃいんだろ・・・』
〈Pyonkichi〉『わかればよろしい』
〈Yume〉『目印なんだから、仕事して!』
ぴょんとゆめだけならまだしも、だいまで乗っかるのかよ。
っつーかあれか、だいはほぼ経路一緒だから、一緒に行けばいいか。
あとで聞いてみよ。
〈Jack〉『むしろ遅刻しちゃいけないのは俺たちだよねーーーーw』
〈Yukimura〉『うん。気を付ける』
〈Soulking〉『またお話、楽しみにしてるねw』
〈Gen〉『ちなみに俺明日誕生日w』
〈Gen〉『俺いないけど祝っといてw』
〈Pyonkichi〉『え、まじ!?』
〈Daikon〉『おめでとう』
〈Earth〉『リダ、はっぴーばーすでぃ☆』
〈Zero〉『おめでとー』
〈Yume〉『みんなでケーキ食べなきゃね!』
〈Daikon〉『ケーキ・・・』
〈Pyonkichi〉『一人でホール食いそうなやつがいます』
〈Yukimura〉『大食い巨乳美人・・・』
〈Daikon〉『ちょ、やめて!』
〈Yume〉『胸にばっか栄養いくのいいな・・・』
〈Yume〉『あ、まな板に失礼なこと言っちゃった』
〈Pyonkichi〉『お前らのおっぱい爆発しろ』
〈Jack〉『楽しみだなーーーーwwwww』
ほんと、こいつら会話つきねーなー。
無限に続きそうな会話に、俺はもうログを楽しむことに専念することを決める。
でも、うん。いい仲間だ。
【
まぁオフ会以降、ちょっとずつ俺の扱い雑になってる気はするけどな!
明日の仕事が終われば、またあいつらに会える。
ジャックとゆきむらに、ほとんど諦めつつも男仲間であることを期待しつつ、会話を惜しみながらも、俺たちは臨時活動日となった木曜日を、終えるのだった。
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