第56話 職場の仲間
北条倫『今日何時の電車?』
オフ会当日の昼過ぎ、期末考査3日目も無事終了し、俺は社会科準備室で採点の傍ら、だいに連絡をとってみた。
まぁ昨日LA内で聞いてもよかったんだけど、なんとなく、
キモいとか言うなよ!
LAの中で、〈Yume〉や〈Pyonkichi〉とは会っているが、リアルのゆめとぴょんは3週間ぶりか。
そう考えると、俺だいとすげぇたくさん会ってるんだなぁ。
里見菜月『私少し早く行くから、一人で来なさい』
里見菜月『遅刻禁止だからね!』
あれ、先行っちゃうのか。
なんだろ、買い物でもすんのかな。
別に付き合ってもいいんだけど……さすがにやめとくか。
女性の買い物にこっちから付き合うよとか、さすがに無神経だしな。
北条倫『気を付けます』
少しだけ残念な気持ちもあるが、仕方ない。
じゃあ、とりあえず
そして勤務時間終了の17時。
採点はあと1クラスだけなのだが、ここで残業しようものなら、
続き始めると時間忘れるリスクもあるし、とりあえずこれは月曜に回そう。
でもまだ18時待ち合わせにはちょっと早いし……。
どうすっかなー。
「おい倫、ソフト部って夏は月見ヶ丘と組むんだって!?」
「うお、そ、そうだけど、どうかしたか?」
「赤城が教えてくれたんだけど、顧問めっっっちゃ美人らしいじゃん!」
おいおいどんだけ「めっちゃ」貯めるんだよ、と呆れつつ、俺は背後からいきなり肩を掴んできた同僚に向き直る。
社会科準備室で採点をしていた俺に話しかけてきたこいつは、同い年だが採用試験合格が俺より1年遅かった
星見台が初任校で、日本史が専門。今は高3の担任を務める赤城の担任だ。
社会科教師は俺含めて6人いるのだが、俺とこいつ以外はみんな40歳オーバーのベテランであるため、去年俺が異動してきたことを喜んでいた奴でもある。異動したての頃の飲み会で、すぐ打ち解けたしな。
性格はけっこう熱い、ぐいぐいいくタイプで、見た目も俺と違ってザ・男前な顔立ちかつ身長180近くのいい体格と、女子生徒から人気の教師だ。
あ、俺も日焼けはしてるけど、こいつは俺の比じゃないくらい焼けてるぞ。
「あー、うん。そうだけど」
「いいなー! 連絡先とか交換したの?」
「そりゃお前、合同チームなんだから当然だろ」
「いいなー! くそ、なんで水泳は合同チームとかないんだ……!」
そう、こいつが日焼けしているのは水泳部の顧問だから。
土曜の部活とかだと一緒に泳ぐらしく、7月にもなればもう南国の人間かと思うほどである。
「紹介してくれ!」
「やだよ」
「えー! なんでだよ!」
「相手の気持ちもあるだろうが。というかまず彼氏いるかとか、結婚してるのか? って俺に聞いてくるもんじゃないのかよ」
うん、こいつはいいやつだが、勢いが過ぎる。
ちょっとアホの子。
「え、彼氏いんの?」
「いないと思うけど」
「お前聞いたのか!」
「あ」
「先に独り身抜け出さないでくれよーーー」
「うるせえ! 弱肉強食だろうがっ」
しまった今のは失言だった!
完全に俺がだいを狙ってると思われたぞ……。
いや、たしかに好きには違いなんだけど。
でもなんというか、俺自身でもだいと付き合って、その先に行きたいのか、俺はどうしたいんだろうか。
これは俺自身もまだわからない。
こういうこと考えてると亜衣菜の顔も浮かぶほど、俺は今クズだからな!
「じゃあ今度一緒に飲みに行こうって言ってくれ!」
「はぁ?」
「その先生の同期とか友達も呼んでさ!」
「合コンかよ……」
「いいだろそれくらい! 倫ばっかずるい! 俺も女の人と会いたい!」
「お前……学年組んでる
ちなみに宮内さん、
落ち着いた大人の女性って感じで、異動したての頃はちょっといいなとかも思ったりしたのは秘密である。
ちなみに独身。彼氏いるかは知らないけど。
「あー、宮ちゃんはほら」
「なんだよ」
「ふくらみがない」
「お前……訴えられろ」
「男ならわかるだろ!!」
大和の言いたいことは、まぁわかる。
ぴょんの言葉を借りれば、まな板、という言葉を使ってもいいような、うん。
あ、でもぴょんよりはあると思うよ。
これ以上は何も言わないけど。
「俺はおっぱいが大きい人と会いたい!」
「でかい声で言うなバカ!」
あぶねぇ! この部屋にこいつと二人でよかった!
廊下とか、誰もいなかったよな!?
しかしなおさらこいつにだいは紹介できねぇ……。
俺も男だから気持ちはわかるけどさ!
でもほら、だいは俺のだから、とか言うわけじゃないけど、うん。やっぱいやだ。
「なぁ今日飲みにいこうぜー」
「残念、俺は今日別件だ」
「はぁ? 誰と飲むんだよ!」
「お前は俺の彼女かよ……」
「で、誰なのよ!?」
「なんだその言い方……今日はオフ会なの」
「オフ会? あー、倫がやってるゲームのやつ?」
「そ」
「へぇ、ほんとにそういうのあるんだ」
「ああ。まぁ今回が2回目なんだけど」
「男ばっかで集まって楽しいのかー?」
「ふふふ、それはどうかな?」
「え、女の人もゲームやってんの!?」
「お前、いつの時代の人間だよ……」
まぁ俺もそう思ってたけどね!!
少なくとも、女性3人は確定してるのは、だまっとこ。
万一……いや、弱気に百が一ジャックとゆきむらも女性だったら……いや、やめろ、俺。
信じろ。信じるんだ!
「可愛い人いるの?」
「あー、まぁ、うん」
みんな、という言葉は黙っておこう。
ぴょんもけっこう美人だし、ゆめも可愛いし、何よりだいは……。
うん、そこに月見ヶ丘の先生がいるよ、とか、言えるわけねぇよな……!
「マジかー! そうか、最近お前機嫌いい日多いと思ってたけど、そういうことか……」
「え、顔に出てた?」
「そりゃもう」
「マジか」
「俺もやってみようかなー」
「そんときゃ教えてやるよ」
「オフ会もセットで?」
「それはノーコメントで」
「ひどい! 倫ばっか!」
「ふふふ、言っただろ? 世の中は弱肉強食だよ」
こいつも始めたら【Teachers】の資格はあるけど、あのゲームは強くなるの年単位だから、まぁあんましおススメはできないけどな。
しかしそんなに顔に出てたのか。
そりゃ、市原になんか言われるわけだ。
気をつけよ。
木曜日は……無理かもしんないけど。
「じゃ、俺は行ってくる」
「いいなぁ、お土産よろしく!」
「ふざけんな!」
きっと大和は残って採点でもするんだろう。
頑張りたまえよ!
恨めしそうな顔を見せる同僚にドヤ顔で別れを告げ、俺は職場を後にする。
まぁキャッキャウフフな展開なんかないけどな!
さぁ、今日はどんなオフ会になるのやら……とりあえず、みんなでリダの誕生日おめでとうするのは忘れないようにしとこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます