第31話 善意に説教するのは心が痛い
再生数増えるかな、か。そうだな、たしかに伸びたよ。
だがな、自分の影響力分かってなかったのかなー?
亜衣菜からのメッセージに対し、俺はさきほど撮った写真だけ送信した。
武田亜衣菜『え、嘘』
武田亜衣菜『ごめん!!』
武田亜衣菜『こんなことなるなんて思わなかった』
武田亜衣菜『ごめん、どうしよ』
お前がどうしようって言って、どうすんだよ……。
あー、もうこいつ……。
別れてからかなりの時間が経つが、亜衣菜の人間性を考えれば、今謝ってるのは本心だとは思う。
そして、今どんな顔をしているかも、想像がつく。
しょうがねぇな……。
メッセージを返すでもなく、スマホで別な機能を起動し。
Prrrr.Prrrr.
『え、もしもし?』
「あー、俺だけど。今平気か?」
『う、うん、りんりん、久しぶり……ごめんね』
久々に聞いた亜衣菜の声は、弱々しかった。
見た目通りの、ちょっとアニメ声っぽい、可愛い声。
学生の頃は、ずっと一緒にいた声だ。
「ったく、あんなこと書いたらどうなるか、分からなかったのかよ?」
『う~、ごめん……』
「お前、ほんとに人気だな」
『え?』
「いや、俺もコラムとか読んでるけどさ」
『そう、なんだ……ありがと……』
「まぁ、写真可愛いし、ファンいっぱいいるのも分かる」
『え……?』
「記事も、頑張ってるなって思うよ」
『あ、ありがと……』
「たしかに今回のは困ったけど、怒ってるわけじゃない」
『え、でも……』
「とりあえず、亜衣菜からSNSとかでやめてって呼び掛けてもらっていいか?」
『わ、わかった!』
「あとさ」
『うん?』
「亜衣菜がサドンリーデス撃ってるとこ、動画にあげてくれ」
『あ、そっか』
「うん、俺の技よりも、セシルが撃ってるとこ見たいって人のがほとんどだろうし」
『えー、りんりん可愛いのに』
「みんな男には興味ねぇよ。しかも中身はおっさんだから」
『えー』
「それに、俺らが次にあげる動画は、違う意味で注目浴びたいんだ」
『え、どういうこと?』
「悔しがるがいいぞ」
『えー、なんだよ気になるじゃーん』
「自分で確認してくれ」
『むぅ、わかったよぉ』
「ということで、この後やることはいいな?」
『うん、ごめんね。すぐやる。……でも、久々にりんりんの声聞けてよかった』
「はぁ?」
『ご飯行くの、楽しみにしてるねっ』
「はいはい。じゃあな」
『うん、ばいばい』
余韻を残さないよう、さっさと通話を終了する。
これでよし。
よし……いや、うわー。
よしじゃねえよな……!
声聞けてよかったって、くそ……ちょっと嬉しくなった自分が情けない。
あー、色々思い出すなー。
思い出はいいことばかり出てくるというが、ほんとにその通りだ。
耳に残る、亜衣菜の可愛い声。
あー、ほんとに俺、あいつと付き合ってたんだよなー。
……りんりん、か。
〈Daikon〉『ゼロやん、大丈夫?』
っと、しばらくモニターを見てなかったら、急に何も言わなくなった俺を心配したギルドメンバーたちのメッセージがたくさん書かれていた。
無論、ログインしたてからは減ったが、まだある程度余計なメッセージは多かった。
っつーか、この〈
〈Zero〉『ちょっと本人に連絡してた』
〈Zero〉『SNS通じてやめるよう言ってもらうことになったよ』
〈Daikon〉『そう、よかった』
〈Pyonkichi〉『本人ログインしてねぇのにw』
〈Yume〉『まだ連絡先残ってるんだね~』
〈Earth〉『え!どういうこと!?』
〈Yukimura〉『SNSで直接連絡?』
〈Pyonkichi〉『オフ会でのお楽しみ!』
ぴょんとゆめとか、もうこれ半分楽しんでるだろ……!
〈Zero〉『とりあえず、リダは予定通り動画UPよろ』
〈Gen〉『お、そうかwまぁもう編集は終わってるw』
〈Earth〉『あーちゃんもついに動画デビュー!』
〈Jack〉『いやーーーー、るっさんとかもこさんの反応楽しみだなーーーーw』
そう、昨日の動画は攻略ギルドたちに一石を投じる動画となるだろう!
俺の名もさらに有名になるだろうが、まぁ今回の件で悪評もセット、ってなるんだろうな。
〈Cecil〉『任務完了!』
〈Cecil〉『私にもけっこうメッセ多いやw』
〈Cecil〉『早くりんりんに会いたいな』
俺がギルドメンバーと話していると、
〈Zero〉『確認する』
会いたいとか言われたことにはあえて触れず、俺はスマホで亜衣菜のSNSを確認する。
『この度は私の不用意な発言により、プレイヤーの〈Zero〉さん及びギルド【Teachers】の皆様にご迷惑をおかけしました。謹んでお詫び申し上げます。なお〈Zero〉さんや【Teachers】の動画に誹謗中傷をするのはおやめください。みんなで仲良くしましょうね! セシル』
という文章と、セシルがサドンリーデスを撃っている動画及び、セシルのコスプレをした亜衣菜が頭を下げている写真があがっていた。
既に7万GOODされてるって、あいつほんとすげー人気だな。
写真とかは、いきなりは用意できなかったろうから、使いまわしだろうけど。
俺の電話からまだ30分くらいしか経ってないが、仕事早いな。
投稿が3分前くらいだから、なるほど。だから最初に比べてメッセージ減ったのか。
ファンってのは分かりやすいもんだ。
〈Zero〉『ん、急ぎでやってくれてありがとな』
〈Cecil〉『んーん。迷惑かけてごめんね。でも、相変わらずりんりん優しくて、なんか懐かしかったw』
〈Zero〉『まぁ、お前に悪意ないのは、わかってたし』
〈Cecil〉『えへへー、さすがりんりん』
〈Zero〉『ま、今後は気をつけろよ?』
〈Cecil〉『はーい。いま、るっさんにも怒られてるんだよねー』
〈Zero〉『怒られてろwあとそうだ、もぶくんも俺にどうでもいいメッセージ送ってきたから、お前からも言ってやれw』
〈Cecil〉『は?あいつかー。わかった!言っとく!』
よし、まぁこれでいいだろ。
あー、なんかすげー疲れたな……。
気が付けばプレイヤーハウスを出ないまま、もうすでに22時前だ。
〈Zero〉『ちょっと疲れたから、今日はおちるわー』
〈Gen〉『火消しありがとな!日付変更と同時にUPするから、明日楽しみにしとけw』
〈Jack〉『ゼロやんおつかれーーーーw』
〈Yume〉『おつかれ~』
〈Yukimura〉『お疲れ様』
〈Pyonkichi〉『ま、ゆっくり休めよw』
〈Earth〉『ばいばーい☆』
ログアウト、っと。
あー、なんかぐったり。
こんな日は寝るに限るな、っと。
俺がベッドに横になると、スマホから立て続けに通知音が聞こえた。
里見菜月『今日は夕食付き合ってくれてありがと。セシルさんのこと色々お疲れさま。今日はゆっくり休んでね』
武田亜衣菜『今日はごめんね!メッセージ送ろうと思ったら、もうりんりんいなくなってたや><』
武田亜衣菜『連絡くれて、ありがとね!』
Talkのメッセージリストに並ぶ、二つの名前。
普段は公式アカウントとかの公告とかばっかなのに、なんだ最近の流れは……!
しかし、これじゃ普段恋バナばっかしている生徒たちのことを馬鹿にできないな。
二人に返事を返しつつ、さっきまでの疲れが一転、なんだか浮かれ気分で、俺は眠りにつくのだった……Zzz
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