第28話 運も実力の内
〈Earth〉『えー!でかすぎじゃないですか??』
〈Gen〉『基本モーションはさっきのと同じだw』
〈Yukimura〉『速度は変わらない。範囲が広いだけ』
〈Jack〉『あーすが守れないと、3人死んじゃうからねーーーーw』
〈Yume〉『ちゃんと守ってね~』
〈Earth〉『責任重大……でもあーちゃんにお任せっ☆』
ボス部屋に待ち構えるキングサウルスは、相変わらずでかい。でかいくせに、回避率が高い設定で、殴りアタッカーからするとターゲットマークの表示される時間が短いらしい。
銃と弓持ちからすればターゲットマークが消えることはなく、動くだけなのでちょっとその感覚は分からない。まぁその動きは速いんだけど。
つまり、こいつを相手にするのは、全員が今までよりも集中しないといけないってことだ。
〈Zero〉『俺はリダの後方に立つな』
〈Gen〉『おう、ブレスきたら頼むなw』
〈Zero〉『あんま当てにはすんなよ?』
〈Soulking〉『強化おk』
〈Jack〉『こっちもーーーーw』
〈Gen〉『じゃ、いきますか!』
先ほど同様、リダがつっこみ、あーすがそれに続く。
二人の立ち位置が固まったら残りのメンバーも移動。
いつもは俺も後方に回るが、今回は初めてリダのいる前方だ。
しかし、ブレス来る瞬間に口の中狙撃で硬直できたなら、爪攻撃の瞬間の爪とか、尻尾攻撃の尻尾とか撃っても効果あるのかな……。
まだギミックかどうかも分からないが、もしかしたら、気づかなかっただけで密かに銃に追加された効果なのかもしれない。
サービス開始から8年。攻撃はターゲットマークが出ている時orターゲットマークに照準を合わせて、というのがこのゲームの常識だった。だが盾で攻撃を防ぐときや、刀で攻撃を捌くときはターゲットマークではなく、敵の動きに合わせている。あ、成功確率は100%ではないが、格闘にもカウンター攻撃が与えられているか。
だが盾と刀、格闘以外には攻撃を捌く効果が付与されておらず、代わりに高い攻撃スキルが与えられている。
それに加え銃と弓には元々敵の攻撃範囲外からの攻撃という恩恵が与えられてきたものの、その都度の構えや照準合わせがあるため、どうしても攻撃間隔が遅く、時間制限のあるコンテンツや周回コンテンツではそれが弱さになり、不人気の武器とされてきたのも事実。
もしかしたらこうしたプレイヤーの嗜好を汲んで、銃に新たな効果を付与してくれたとか……?
本当にさっきのは不具合かもしれないし、このコンテンツオンリーのギミックかもしれないけど。
考えても当然答えは分からないが、なんとなく銃の新たな可能性が見えた気がして、俺は少しだけ高揚感を覚えていた。
PCゲーム用コントローラーを握る手に、力が入る。
〈Gen〉『きた!』
戦闘開始から2分、ようやくボスが大口を開けてくれた。
この時のために銃撃の頻度を抑えていた俺は、待ってましたとボスの口の中に照準を合わせる。
ブレスの発射までの1秒、いきなり合わせるのは困難だが、待っていたのであれば、動かない口の中に銃弾を撃ち込むなど造作もない。
さぁ、くらいやがれ!!
〈Jack〉『とまったーーーーw』
〈Yukimura〉『いく』
〈Jack〉『って、硬直みじかーーーーw』
〈Yume〉『えー』
俺の銃撃を受けたボスは、ブレス攻撃をストップさせ一瞬の硬直状態になった。それに気づいたゆきむらが居合切りを放ったが、ゆめの次撃が放たれると同時にボスも行動を再開してしまった。
結果だけを見れば、攻めるのには失敗した。
だが、少なくとも2回も決まったのだ、これは不具合ではないだろう。
発見こそ運だったが、気づいた者勝ちだ。
銃に見いだされた新たな可能性に、俺は何とも言えない高揚感を覚える。
多くの人々がプレイするこのLAの世界で、自分が一番に発見したギミック。
動画を公開すれば、この情報は瞬く間に広がるだろうが、その情報元は【
銃の新たな可能性を見つけたのは、最強
ゲーマーの血が騒ぐ。
やってやったぜ! という感覚が、俺の胸に押し寄せた。
〈Zero〉『硬直させたら、ゆきむらも硬直を上乗せでやってみよう』
〈Yukimura〉『なるほど』
〈Daikon〉『ありね』
だが新たなギミックを見つけたとて、今のは決定打になっていない。このままだらだら戦っても勝てるかもしれないが、せっかく動画をあげるなら、スカッと勝った動画じゃないと恥ずかしいからな。
俺の考えを察したメンバーが同意してくれる。
ブレスストップの硬直が短いなら、本来の硬直専門スキルを重ねればいいのだ。
〈Zero〉『あと』
〈Zero〉『ゆきむら防御寄りに』
〈Jack〉『むむーーーー?』
リダをさしおいて俺が指示をしても、このギルド内では問題にならない。
だからこそ俺は思いついた行動をするため、さらなる指示を出すことにした。
〈Yukimura〉『信じる』
〈Zero〉『あーす、こっちこい』
〈Earth〉『え?』
〈Zero〉『こっちきて弓チェンジ』
〈Gen〉『お!検証!』
〈Jack〉『ゼロやんはチャレンジャーだなーーーーw』
〈Earth〉『わかったっ☆』
銃でも硬直させられるなら、弓でもいけるかもしれない。
そう思っての俺の指示だ。
〈Zero〉『通常射撃しなくていいから、ブレスくるまでボスの口あたりに照準マーク構えといて』
〈Earth〉『おお、スナイパー☆』
〈Zero〉『リダはあーすに合図よろ』
〈Gen〉『おう!』
新たな作戦を提示した俺は、先ほどまでの役割をあーすに委ね、口以外の、別なポイントに銃を構える。
そしてボスが右手を振り回した爪攻撃が来た瞬間。
照準マークをその爪に合わせ、アタック!
〈Jack〉『おーーーー』
〈Gen〉『なんだ?』
〈Zero〉『爪撃った』
ボスの攻撃がストップした。だが爪じゃ硬直にはならないみたいだな。
ターゲットマークからも大きく外れていたから、大したダメージを与えられたわけではない。
だがこれも新たな発見だ。銃にも、攻撃を捌く機能が実装されたとみていいだろう。
続いて今度は左手の爪攻撃にも、アタック!
〈Gen〉『なんか、俺が守ってもらってるみたいw』
〈Soulking〉『ヘイトは?』
〈Gen〉『お、そうか』
嫁キングの指摘はたしかにいいポイントだった。盾で攻撃を防ぐことでヘイトを盾役だが、自分で防いでいないため、ヘイトをあげることができていない。
銃で敵の攻撃を阻止したことが与えるヘイトはまだまだ未知数のため、リダは念のためヘイト上昇スキルや魔法を使ってくれる。
〈Pyonkichi〉『尻尾多いな』
〈Jack〉『防いだ部位攻撃、しばらくストップとかかねーーーー?』
〈Daikon〉『ありそう』
攻撃魔法のタイミングをうかがうぴょんの指摘に、みんなも色々と気づきだす。
攻撃パターンが絞れるなら、防ぐのも容易になるというものだ。
〈Gen〉『ぶれす!』
そしてやっと待ちに待ったブレスの構えがくる。
〈Zero〉『あーす!』
ここまで黙ってそのときを待っていてくれたあーすが、弓矢をボスの口に打ち込む。
予想通り、ボスの動きが硬直した!
〈Yume〉『2番!』
満を持してゆきむらが一刀両断で硬直させ、ゆめが続き、だいが続き、俺が続き、ぴょんが続く。
〈Jack〉『いいねーーーーw』
〈Soulking〉『一気に減ったね!』
ここまで減らしていたボスのHPは1割ほどだったが、今の連撃で7割ほどまで減らすことができた。
ここまで戦闘時間はまだ5分ほど、5分で3割削れてるということは、単純に計算して20分は切れるかもしれない。
これは大発見だぞ!
〈Zero〉『ゆめの次、あーすもストライクアローいこう』
〈Earth〉『まっかせろっ☆』
あーすの火力がいかほどかは期待できないが、スキルを重ねることには大きな意味がある。
連撃後は阻止した部位攻撃が再開したが、もう1度同じ手順で俺が爪を狙うところから始め、ブレスを待ち、ブレスに合わせて連撃を開始し、2回目の連撃でボスのHPを5割まで減らすことができた。
5割からは両手の爪攻撃の速度が上がり、脚による攻撃も始まったため、少し攻撃阻害に手間取ったが、その後も俺たちは安定した連撃を繰り返し続け。
〈Jack〉『あーすはラッキーだねーーーーw』
〈Earth〉『え、も、もらっていいの??』
〈Daikon〉『次からはもっと楽になるわね』
〈Yukimura〉『馬車馬の如く働いて』
〈Yume〉『ゆめ斧ほしい』
〈Zero〉『その弓持ちはレアだぞw』
〈Pyonkichi〉『明日もやろうぜw』
〈Soulking〉『やりたくなっちゃうねーw』
戦闘開始から17分38秒。
俺たちの画面に『WIN!!』という表示が現れた時間である。
ドロップはまさかのトドメを刺しただいの短剣、ではなく、1%の確率でドロップした弓。これには思わず笑ってしまったが、かなり楽に勝てたことで、俺たちはみな大満足の勝利なのだ。
〈Gen〉『再生数が楽しみだ!!』
っと、動画UPは明日以降にしてもらうように、念を押しとかないとな。
挑戦回数8回目。戦績は8戦2勝(うち1回はボスまでいけず)だが、今回の勝利は俺たちに明るい未来を与える勝利となった。
やっぱ、LAって楽しいな!!
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