第27話 一度負けた相手に負けるわけにはいかない
翌日のログインにて。
〈Gen〉『うし、揃ってるなー』
〈Earth〉『今日こそあーちゃんがみんなを勝たせるぜっ☆』
〈Daikon〉『この前はごめんなさい。今日はちゃんとするから』
〈Earth〉『あれれ?だいちゃんなんか、話し方変わった??』
〈Pyonkichi〉『そのくだりもう終わったから、あとは自分で察せー』
〈Jack〉『ぴょんつめたーーーーw』
〈Earth〉『え?どゆこと??』
〈Yume〉『昨日いなかったのが運の尽きだね~』
〈Yukimura〉『久々のフルメンバー』
〈Zero〉『ボスのとどめ、だいかゆめに譲るから頑張れよw』
〈Soulking〉『それでも10%だっけ?』
〈Jack〉『運営が鬼畜なのは、今に始まったことじゃないっしょーーーーw』
〈Daikon〉『というか、ジャックのメイス、あれ?それって』
〈Jack〉『あ、バレタかーーーーw日曜ちょっとね、傭兵で行ったらもらえたーーーーw』
〈Zero〉『うお、ほんとだ。テュルソスじゃん、すげぇ』
〈Earth〉『え、なんか、一人置いてかれてる気がするんですけどっ?;;』
〈Pyonkichi〉『ま、がんばれ』
どんまいあーす。昨日のリダの語りに参加できなかった自分を悔やめ。
しかし、いつの間にかジャックが手に入れていたメイスは、俺がこの前手に入れた銃相当のメイスだった。
今回のコンテンツの最大の目玉が、ドロップする武器なのだが、トドメを刺した武器種のドロップ率が通常の1%から10%に上昇する、とは運営が公式発表している。
ただし、盾持ち、ヒーラー役の錫杖持ち、サポーター役のメイス持ちはどう考えてもトドメを刺せる武器ではないため、通常ドロップ率が1%ではなく5%とされている。
5%を高いと思うか低いと思うかは個人差があるだろうが、トドメドロップ枠と通常ドロップ枠は別枠のため、最大で2種類武器がドロップすることは良心的と言えば良心的か。もちろん武器なしで素材やアクセサリー装備のみドロップということの方が多いぞ。
おそらくジャックは【
〈Jack〉『使うのは初陣なんだけどねーーーー』
〈Gen〉『期待してるぞw』
今日の編成は
盾役:メインは〈Gen〉。サブが〈Earth〉
アタッカー:
後衛:
という、うちのギルドで想定できるベスト編成だった。
一般的にはガンナーはいれずに、大剣持ちか斧持ちを増やすのが多いみたいだが、まぁそこらへんのファイターより俺の方が強い――と思う――から、これがベストだろう。
今日は亜衣菜からの連絡はきていないが、今日も攻略動画についてはUPしないことは既にリダには伝えている。
『月間MMO』の発売は明日か、明日一応チェックしてみよっと。
あれだぞ、亜衣菜の特集ページ目的じゃないぞ。それ以外にもLA情報が多々あるからだぞ!
〈Gen〉『それじゃ、しゅっぱーつ』
今日はダンジョン前にも俺らに話しかけてくる奴らもおらず、ダンジョンに着くや俺らは早々とコンテンツ攻略を開始することができた。
まぁ、この前みたいな展開のほうがイレギュラーなんだけどな。
前回の経験で慣れたあーすも今日は安定した盾さばきを見せ、1体目、2体目、3体目と順調に中ボスを撃破していく。
そしていよいよ、この前は苦渋をなめさせられた4体目の槍&斧持ちコンビだ。
〈Zero〉『タゲミスはやめてくれよー?』
〈Daikon〉『うるさいわね!今日は大丈夫よ!』
個別のメッセージでだいを冷やかすが、まぁこの感じなら大丈夫だろう。
しかしゲーム内で対面したからこそ分かったが、イケメン顔の男キャラが女言葉だと、変な感じだな。
〈Gen〉『槍持ちから落とすぞ!』
〈Yume〉『おらおらー!』
〈Yukimura〉『硬直させる』
〈Daikon〉『
〈Zero〉『あーす、ヘイトあげろよ!』
通常攻撃で敵のHPを7割ほどまで減らし、この前同様ゆきむらの一刀両断で敵を硬直させてから、ゆめの斧による振り下ろしの一撃グランドダウン、だいの短剣による背後からのシャドウスタッブ、そして俺の銃によるマルチプルショットを打ち込み、トドメにぴょんのブリザードで槍持ちの巨大恐竜型獣人が消滅した。
うん、これが普通だ。
ちなみに、プレイヤースキルは別種類の技を敵の行動が起こる前に連続で命中させることで、与ダメージを増加させることができる。
2連続目は1.2倍、3撃目は1.5倍、4撃目は2倍、という感じでダメージが増えるのだ。
そして連続ヒット中は魔法によるダメージも高確率で魔法防御力を無視してダメージを加えることができるため、今のような連撃はHPの多い敵を倒すときの基本なのである。
重要なのは1手目で敵を硬直させることなのだが、これは盾持ちのシールドタックルか、刀持ちの一刀両断が基本だな。
〈Jack〉『ナイスーーーー』
〈Soulking〉『いいぞいいぞー』
〈Gen〉『次!敵のアタック後に俺からいく!』
〈Yukimura〉『1番了解』
〈Yume〉『2番おk!』
〈Daikon〉『3番』
〈Zero〉『トドメまかせろ』
そしてリダが斧持ちの一撃を完璧に防ぎ、防いだ盾でそのまま敵にタックルするシールドタックルをかまして、敵が硬直状態になる。
その状態になるや否や、ゆきむらの居合切りから、先ほどの技の連撃が決まり、ほぼほぼフルで残っていた斧持ちのHPが一気に0になった。
〈Earth〉『え、みんなすご・・・』
〈Jack〉『普段なら、みんなこのぐらい余裕なんだよーーーーw』
〈Pyonkichi〉『お、ジャックのだいディスりだw』
〈Daikon〉『もう!』
〈Yume〉『ゆめもいるしね!』
〈Zero〉『これならボスも余裕ありそうだなw』
〈Gen〉『編成普通過ぎて、再生数は伸びなさそうだがw』
〈Yukimura〉『次は、5人?』
〈Jack〉『やめてーーーーw』
〈Gen〉『さ、次のはあーすは初対面だな』
〈Earth〉『なんでもかかってこーいっ☆』
4体目の中ボスコンビを撃破して、5体目の中ボスを倒すまでの時間制限は10分もある。うん、まぁこれが普通だがやっぱこのメンバー揃うと安定感があるな。
俺らの中で一番プレイヤー歴が浅いのが、実はけっこうな火力を見せているが、実はゆめだ。
俺とだい、ジャックはサービス開始組だし、リダと嫁キングも最初の拡張データ頃から、ということで7年前ほどにはプレイヤーになっていたと聞いている。
ぴょんとゆきむらが確か3年くらい前からで、ゆめが2年半前からだったかな。
まぁ、2年という期間ってふつうに考えればかなりの期間だけど。
ちなみにあーすがいつからやってるかは知らない。
俺たちは溶岩流れるダンジョン内で雑魚モンスターを蹴散らしつつ、いよいよ5体目の中ボス部屋に辿りつく。
ジャックの見事な支援魔法により、道中にMPもしっかり回復しているから頼りになるもんだ。
〈Earth〉『あれ、キングサウルスってボスと同じ名前?』
〈Gen〉『これは幼体、って設定っぽいな』
〈Earth〉『え!これで!?』
〈Jack〉『でかいよねーーーーw』
俺たちを待ち受けていたのは、まぁザックリいえばティラノサウルスみたいなモンスターだ。
この5体目の中ボスとして現れるこいつは、標準型ヒュームでプレイする俺の〈Zero〉の身長より10倍くらい大きい。一般的には大型モンスターに分類されるのだが、本当のボスはこいつのさらに1.5倍くらいの大きさになり、鎧のような皮膚になったグラフィックに変わり、尻尾が3本に増え、爪も大きくなる。
まぁほんとに前哨戦、っていう意味合いで作られたんだろうな。
親しみ込めて俺らはボスジュニアと呼んでいる。
〈Yukimura〉『爪と尻尾とブレスと、3パターン攻撃がくる。体力半分以下だと連続攻撃もあるし、尻尾は左右どっちからくるか分からない。頭にいれといて』
〈Pyonkichi〉『ゆっきーは親切だな!』
〈Yukimura〉『死んだらタイムロス』
〈Soulking〉『辛辣だなぁw』
〈Earth〉『お、おー!がんばるぜーっ☆』
〈Gen〉『俺がメインで攻撃を受けるから、あーすは背後にまわってタゲ動いた時にだいとゆめとゆきむらを守れ!』
〈Yume〉『たのむよー』
〈Daikon〉『よろしくね』
〈Yukimura〉『サポートはする』
こいつもだし、次に待ち構えるボスもそうなのだが、基本は敵の正面に盾持ちが立ち、ヘイトを上げて攻撃を受け続け、背後からアタッカーが攻撃するというのが基本となる。
そして時折くる背後への尻尾による攻撃は刀持ちが受け流し、アタッカーたちはただひたすら攻撃を仕掛けるのみというのが攻略サイトにも掲載されている戦い方だ。
だが今回は盾持ちが二人ということもあり、本来であればゆきむらが防ぐべき尻尾攻撃もあーすに任せることができる。討伐の時に比べて物理アタッカーが増えているため、リダのヘイト管理でも動くリスクがあるが、これなら盤石の体制だろう。
〈Gen〉『じゃ、いくぞ!』
リダが突っ込んで
ちなみに俺は後衛の魔法の届くギリギリかつ、アタッカーたちの後方で、敵の攻撃範囲外に陣取り銃を撃つだけ。
一応敵の行動を阻害する系の銃スキルもあるのだが、それは後衛の方が効果が高いため、本当に連携を決めるまでは通常攻撃あるのみだ。
ボス系のモンスターは雑魚と違ってモンスターが動かなくてもターゲットマークが動く仕様のため、集中しないとほんとお荷物だからな。
本当にボスの練習台のような中ボスなのだが、こいつはHPが5割になるまで行動がランダムであり、先読みした上で硬直させづらいため、セオリーだと通常攻撃や単発スキルでまずは5割まで減らすのが基本だ。
基本に忠実に、俺もパーフェクトな銃撃を繰り返し、みんなで順調にボスジュニアのHPを7割ほどまで削っていっていたのだが。
〈Jack〉『あーすいったよーーーー』
〈Jack〉『あ、
なんだと!!
この銃のせいでヘイト上がり過ぎたか!
どんなタイピング速度だとツッコミたいがその余裕は俺にはない。だが事実、突然ボスジュニアがアタッカー側へ動き出した瞬間、ジャックがそう知らせてくれた。
この間1秒もあっただろうか。
〈Yukimura〉『ぶれす』
単語しか打てないほどの時間で、ボスジュニアはブレス攻撃をしかけるモーションに以降する。
ブレスのモーションから被弾までは1秒ほど。
あー、死んだ。
このブレスのモーション直前、俺は銃撃の構えをしていたせいで、これは回避できないことを悟っていた。もちろん元々はこいつの攻撃範囲外に陣取ってたが、動いたせいで射程圏内に入ってしまったのだ。
ちなみになぜ回避できないかというと、それは銃の仕様にある。
銃はアタックコマンドを押した瞬間にダメージ判定こそ行われるものの、キャラクターモーションの関係でアタックコマンド後、2秒弱は移動ができなくなる。照準合わせを解除するのも、銃を下ろすモーションという僅かなタイムロスが生じるから、うん、避けるのは無理ゲーだ。
ゲームの仕様を理解しているからこそ、俺には
もし生き残れるとすれば、あーすが奇跡的な対応で範囲防御スキルを発動させてくれることだろうが、まぁ数秒の間にあーすにその判断を求めるのは酷というものだろう。
ええい!!!
どうせ死ぬなら、とりあえずこのまま撃ってしまえ!!!!!
俺はブレスが発射されるコンマ数秒前、ターゲットマークも無視してアタックコマンドを押した。ボスジュニアのターゲットマークは心臓あたりにでていたのだが、こいつが動いたせいで俺の照準マークはブレスを発射する口の中になっていた気がする。
照準を外せば、いかに銃が強いとて大ダメージは望めない。
まぁ照準外しでどのくらいでるか分かるかな、なんて思ったのだが。
〈Jack〉『何?』
〈Daikon〉『ゆっきー!』
〈Yukimura〉『1番!』
集中力の高いプレイヤー陣はすぐに敵の状態に気づき、ゆきむらはログの直後、居合切りを発動させた。続けてゆめのアングリーバウンド、だいのシャドウスタッブ、俺も慌ててマルチプルショットを放ち、ぴょんのブリザードを食らわせて、戦闘が終了する。
〈Earth〉『え、倒した?』
〈Gen〉『どういうこと?』
〈Jack〉『わっかんないねーーーーw』
〈Pyonkichi〉『だいとゆっきーが言わなかったらあたし間に合わなかったわw』
〈Yume〉『わたしも~』
〈Daikon〉『どういうギミックだったんだろ』
〈Yukimura〉『不具合・・・?』
おそらく全員が回避行動をしていたあの時間に、ジャックも分からないということは、あの瞬間に攻撃をした俺しか、今の現象を起こした可能性はないだろう。
〈Jack〉『ゼロやん何かしたーーーー?』
〈Zero〉『あー、銃撃った』
〈Zero〉『たぶん、口開けたときの口の中』
〈Daikon〉『タゲマは?』
あ、タゲマはターゲットマークの略ね。
〈Zero〉『ブレス直前は、心臓らへんにあった気がするな』
〈Yukimura〉『・・・ギミック?』
〈Jack〉『1回だけだとわかんないねーーーーw』
〈Jack〉『ボス戦でもやってみなよーーーーw』
〈Yume〉『そだね~、こいつはボスと似てるし、もしかしたら?』
〈Daikon〉『こいつのみの、時短ギミックって可能性もあるけど』
〈Jack〉『不具合の可能性もあるけどねーーーーw』
〈Gen〉『ま、やってみればわかるだろw』
〈Gen〉『新ギミック発見できたら、また再生数増えるぞーw』
俺としては偶然の産物というか、スーパーまぐれの気分だ。そもそも本当に俺の銃のおかげかは分からないしな。
だがおかげで死なずに済んだし、面白みもない討伐動画が、面白くなる可能性が出た、のか?
ブレスに合わせて口の中撃つとか、意識してやるとなると、相当面倒だが新ギミック解明ができたとすれば、俺たちの今後の装備取りも楽になる。
楽しみが増えたような気持ちで、俺たちはいざボス部屋へと進むのだった。
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