第25話 昨日までの当たり前に、さよなら
練習試合の件についてTalkでだいに連絡を取ろうと思ったのが、よく考えればLA内でもいいなと思った俺は、今日も今日とてログインをする。
これはもう生活の一部だからな。
〈Zero〉『よーっす』
〈Jack〉『お、ゼロやんやっほー』
〈Daikon〉『うぃー』
〈Yukimura〉『こんばんは』
〈Gen〉『おう』
お、今日は割とみんなログインしてるな、だいもいるし、よかった。
だいのログインを確認し、早速メッセージを送る。
〈Zero〉『仕事の話なんだけど、いい?』
〈Daikon〉『何よ、直接連絡すればよかったのに』
〈Zero〉『いや、まぁだいならこっちにいるかと思って』
〈Daikon〉『まぁ、こうしているわけだけど・・・』
〈Daikon〉『で、何?』
〈Zero〉『練習試合したいんだけど、どっかいい相手いる?』
〈Daikon〉『練習試合? いつ?』
〈Zero〉『テスト明けの、最初の土曜』
〈Daikon〉『あ、そっか。来週の土曜はもう部活できないものね』
〈Zero〉『そそ。で、どっか知り合いいる?』
〈Daikon〉『あてがないわけじゃないわ』
〈Zero〉『おお、どこ?』
〈Daikon〉『確実に試合してくれるかは分からないから、OKだったら教える』
〈Zero〉『なるほど、わかった』
〈Daikon〉『7月11日でいいのよね?』
〈Zero〉『ああ』
〈Daikon〉『了解。OKだったら連絡するわ』
〈Zero〉『さんきゅ!』
〈Daikon〉『別に、生徒のためだし』
ツンデレか!!!!!
そんなツッコミは心に留め、俺は一昨日のログインまで続いていた、俺が男だと思っていただいはいなくなってしまったことに少しだけ
いや、でもこれはこれで、嫌いじゃないぞ、もちろん。
女性とやり取りするとか、久々の感覚だしな……。
〈Yume〉『やっほーーーーーーーーー!』
〈Pyonkichi〉『いぇーーーーーい』
〈Yume〉『ゆめちゃん復活!!』
〈Gen〉『お、きたなw』
〈Yukimura〉『復活したんだ、よかったね』
〈Jack〉『よかったねーーーーwww』
俺がだいとのメッセージをひと段落させるや否や、ギルドチャットにやかましい二人が現れる。
同時にくるとか、こいつら打ち合わせてきたな……?
〈Gen〉『昨日楽しかったのかw』
〈Yume〉『もち!!みんないいやつだった!!』
〈Pyonkichi〉『ゼロやんイケメンwww』
〈Yume〉『ぴょんもだいも、美人だった!!』
〈Zero〉『やめろ!』
〈Daikon〉『ちょ!』
個人情報もくそもない二人の発言に、俺はモニターの前で頭を抱える。
こいつら、自由すぎんだろ。
だいも完全に慌ててるようだし、今まで男として振舞っていただいとぴょんは、もう今後は素になってくのだろうか。
……だいは、素でいけるのだろうか。
〈Pyonkichi〉『いやー、マジでだいは美人。びびった』
〈Daikon〉『やめて!』
あー、かわいそ。
と思いつつ、だいがモニター越しに慌ててる姿を想像し、俺は思わずモニターの前で笑ってしまう。
あ、これかなり気持ち悪いやつだな!
〈Gen〉『なんだ、二人ともネナベだったのかw』
〈Gen〉『あ、嫁が「だと思った」と言っております』
〈Yukimura〉『美人さん・・・見てみたいな』
〈Yume〉『そしてお知らせがあります!』
〈Jack〉『おおーーーー?』
〈Pyonkichi〉『次回開催は7月3日!仕事終わりに新宿集合!』
〈Yukimura〉『行く』
〈Jack〉『ほんとに新宿でやってくれんだーーーーwじゃあ、行っちゃおうかなーーーーw』
〈Gen〉『よし俺も・・・っていけるかーいw次回の感想も楽しみにしてるぞw』
〈Yume〉『リダごめんね><夏休みにみんなで栃木いこ!』
〈Pyonkichi〉『栃木オフじゃー!』
〈Daikon〉『餃子・・・』
〈Zero〉『だいは餃子好きかw』
〈Daikon〉『う、うるさいわよ!』
〈Jack〉『あ、だいが女の子なったーーーーwww』
〈Daikon〉『ああもう!』
〈Yukimura〉『ツンデレ?』
〈Daikon〉『ちがうわよ!』
〈Pyonkichi〉『いや、まじ絵に描いたようなツンデレ』
〈Yume〉『しかも巨乳美人』
〈Gen〉『ほほう』
〈Daikon〉『ギルド抜けるわよ?』
〈Yume〉『ごめんなさい』
〈Pyonkichi〉『すんませんでした』
リダもだいとぴょんが女だとは思ってなかったようだが、やっぱ男には気づけないもんだよなー。
でも、だいには悪いが、なんか、これはこれで楽しいかも……。
次回はちゃんとジャックとゆきむらも来れるみたいだし、頼む、二人はちゃんとキャラ通り男であってくれ……。
〈Yume〉『ちなみにイケメンゼロやんは彼女なしらしいでーす』
〈Zero〉『おい!』
〈Pyonkichi〉『始まる争奪戦』
〈Zero〉『なんだそれ・・・』
〈Jack〉『うちのギルドのヒロインはゼロやんだったのかーーーーw』
〈Yukimura〉『ゆめ、切り替えはやい・・・』
〈Yume〉『人生は有限だからね!』
〈Daikon〉『そのポジティブは尊敬するわ・・・』
〈Pyonkichi〉『ちなみに争奪戦エントリーは現在3名』
〈Daikon〉『待って、それ私もはいってるの?』
〈Jack〉『ギャルゲーじゃーーーーんwww』
〈Yukimura〉『イケメンは罪?』
〈Zero〉『・・・俺はじめてギルド抜けたくなったわ』
〈Yume〉『は?』
〈Pyonkichi〉『その選択肢は承認されてませんね』
〈Zero〉『だいのときと反応がちげえ!!』
前言撤回!!
やりづれぇ!!!
昨日行ったのが正解だったのかどうなのか……。ちょっと後悔しそう……。
〈Gen〉『結婚はいいぞー。子どもは可愛いぞー』
〈Pyonkichi〉『人生の先輩だ!』
〈Yume〉『そういえば、リダって嫁キングとどこで出会って、いつ結婚したの~?』
〈Daikon〉『あ、それ気になるかも』
〈Zero〉『たしかに』
〈Yukimura〉『後学のために教えていただけるとありがたい』
〈Jack〉『俺も便乗――――w』
〈Gen〉『おいおい全員かよw』
〈Gen〉『待てよw今本人の確認を取るから』
みんなの反応見る限り、みんなまだ独身なんだよな。
というかあれか、家庭もったらMMOなんか、そう簡単にできるもんじゃないか。嫁の理解があるとか、リダみたいな場合じゃないと難しいよなー。
オフラインゲームと違って、リアルタイムで誰かとプレイするMMOはやはり時間的拘束が発生するから、家族からの理解を得る敷居は高いだろう。
既婚者のソロプレイヤーとか、よく聞く話だもんなー。
……俺も、いつまでできるのかな。
8年間自分の分身としてLAの中を一緒に冒険している〈Zero〉には、かなりの愛着がある。俺だけが年をとり、当然〈Zero〉は8年前のあの日からずっと同じ見た目だが、なんというか、一緒に生きてきたって感覚は、あるんだよな。
昨日会った誰かとそうなれば……理解はしてもらえそうな……っておい! 何考えてんだ俺!
まず、結婚の予定がないしな!!
〈Gen〉『本人の許可取れたw』
〈Yume〉『やった~』
〈Pyonkichi〉『待ってました!』
数分の間を置いて、リダのログが現れた。なんていうか、この間がリアルだよな~。
本当にそこに嫁キングがいるんだという、家に自分以外がいるというその感覚が、実家を離れてもう10年目の俺には不思議に感じてしまう。
おそらく今、ログインしているみんながモニターの前でリダのログを待っているのだろう。
一緒にはいないが、同じ時間を共有している仲間たちを思い、やっぱここが居場所だな、とか思ったりするのだった。
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