第20話 お酒は適量が一番だぞ☆
「ほほ~、そんな過去がね~」
「その別れ方、ゆめの元カレと同じじゃない?」
「あっ、たしかに! だい鋭いっ」
「いや、絶対ゆめの比じゃなかったからな? ゆめくらいの頻度なら、俺だってゲームするんだし何も言わなかっただろうさ」
「いや~、やっぱ廃神って言われるプレイヤーってすげーんだなー」
ビールを飲み干した俺は2杯目からはハイボールを頼み、半ば酒の勢いで
そして、案の定昨日も俺が感じていたことをツッコまれてしまった。
だからゆめには言いたくなかったんだ……!
「え、もうほんとずっと、LAやってる感じだったん?」
「ああ、そうだね。大学の課題とか、俺が代わりにやることもあったし、基本飯は俺が作ってた」
「うわ、ゼロやん一家に一台欲しいタイプか」
「尽くす系なんだね~」
「昔の話な?」
「え、でもさ」
にやにやした顔でぴょんが何かを言おうとする。ぴょんはかなりピッチが早く、既にビールは4杯目だ。
「そんなずっとゲームされてたら、男として寂しかったんじゃないのー?」
「え、それどういうこと~?」
「夜の方とか、かまってもらえたのかー?」
「おいっ」
下ネタじゃねぇか!!!!!
「ぴょん……破廉恥」
「うわ~、おっさんノリじゃん」
さすがにだいもゆめも若干引いている。
まだ時刻としてはまだ17時を少し回ったくらい。この時間から、ドストレートに下ネタを振ってくるとは、これはぴょんが一番厄介だな……!
「セシルったらレイヤーとしても有名じゃん? え、そういうプレイもしてたんかー?」
「深掘りすんな!」
「ぴょん、それは最低」
「うん、さすがに引くね……」
「えー、なんだよお前らノリわりいなー」
ちぇっ、とぴょんが唇を尖らせる。だが流石に今の話題はアウトだろ!
みんながセシルを知らないならまだしも、完全にみんな見た目知ってんだから、完全アウトだ。
「まー、でもLAやってっから思うけど、相手のスタイルを押し付けられたりすんのはしんどいよなー」
「そうね、期待されたり頼られたりするのは嬉しいけど、限界もあるものね」
「わたしらはいい条件でやれてるよね~」
「だなー。やっぱ学生の頃はできても、働き出してからだと、特にこの仕事だと厳しいもんはあったなー」
「もこさんとこのギルドでも、やっぱしんどかったのか?」
「もこさんとこって、【
「そそ、ゼロやんとだい、昔所属してたんだって」
「え、すご~い」
さすがに誰もついてこない状況で下ネタは厳しいと察したのか、ぴょんが話題を変えたことで今度は別な昔話になりそうだ。
うん、この話ならいくらでもしてやるぜ!
「俺は教師1年目は頑張って続けたけど、やっぱ無理があったね。週に1スキル上げろって言われんだよ? それに加え、週3で難関コンテンツで装備取りとか金策だぜ? 一日2,3時間のログインじゃ無理だって」
「そうね、今の自分にあの頃と同じことやれって言われても、無理だわ……」
俺の思い出に、だいが相槌を打ってくれる。
「だいも教師なってから抜けたの~?」
「ううん、私は大学4年なるちょっと前、採用試験の勉強に本腰入れるために抜けさせてもらったの。合格したら、どのみち続けられなさそうだと思ってたし」
「抜けたの、俺が相談した直後だったし、ほぼ同じタイミングだったよな」
「そうね」
「おやおや、ゼロやんがいなくなるから追っかけて抜けたのかなー?」
「は!? そ、そんなわけないでしょ!?」
「あー、だい照れてる~。図星だな~?」
「うるさいっ! だ、だって私……フレンドいなかったんだもん……」
「だい照れてる~可愛い~」
「恥じらう美人ってのは、絵になるねー」
言葉にこそしなかったが、正直俺もゆめとぴょんと同感だった。
さっきからずっとツンツンしていただいが、今は恥ずかしそうに顔を赤くしてそっぽを向いている。
あいつ全然お酒に手をつけてないから、ガチ照れなんだろうな。
うーん、美人が照れてる姿とか、いいな……!
「まーあたしギルドに入ったとき、お前らそういう関係なんだと思ったしな」
「あ、それわたしも思った~。いつも一緒だし、そういう関係なんだと思った~」
「LA内カップルもけっこういるっていうしなー」
「だいは人見知りなだけだよ」
「は!? 馬鹿なこと言わないでよ!」
今回ばかりはだいの怒りも全員に振りまかれる。
正直俺はビビッてしまっているが、ぴょんもゆめも何のその、という感じ。
女ってすげぇな……。
「なんで二人はフレンドなったん?」
「あ、それ聞きたいね~」
「あー、亜衣菜と別れてなんか全部面倒になった後、俺ギルドも抜けて野良プレイヤーやってたんだけど、その時に3回だか連続でスキル上げだったり、傭兵募集とかでパーティかぶってさ、すごい確率ですねー、って少し話して、フレンドなったんだよ」
「あいな?」
「あ」
しまったああああ!!!
だいの聞き返しで、俺は自分のミスを痛感する。
完全に油断した。うわ、時間戻せるなら戻したい。
勝手にセシルの本名とか言っちゃダメだろ俺!!
「へー、セシルはあいなって言うんだー。メモメモ」
「メモんな!」
「もういまさらでーす」
「個人情報流出とか、教師失格ね」
「ほんとほんと、訴えられろ~」
「すみませんでした」
心の中で亜衣菜に謝罪しつつ、俺は今ばかりは自分の責を受け入れる。
個人情報は、今のご時世かなりデリケートだからな。忘れちゃダメだぞ!
「しかもそういう経緯だったと聞かされると、別れた女の代わりにされた気分だわ」
そしてさらっと言われただいの言葉に、俺は思わず飲んでいたハイボールを吹き出しかけた。
ちなみに既に俺はこれが4杯目。だいとぴょんは2杯目はそれぞれ甘めのカクテルを頼んでいた。
ぴょんにいたってはもう何杯目か覚えていない。
食べ物はあまり頼んでないのに、飲んでばっかで悪酔いしそうな飲み会だ。
「うわ、ゼロやん女泣かせじゃーん」
「俺はだいを男だと思ってたから!」
「それも信じらんないね~」
「私も、フレンドとか初めてだったからありがたかったけど……」
「え、だいツンデレ~?」
「デ、デレてなんかないわよ!」
「こんな絵に描いたような奴、ほんとにいたんだなー……」
若干呆れ顔になるぴょん。薄暗い中でも、たぶんもうけっこう出来上がってるんだろう。
ゆめもさっきから終始笑ってばかりだし、こいつもきっとアルコールは強くないんだろうな。
「だいはそんな美人さんなのに、彼氏とかいないの~?」
え!? またそういう話に!?
「あたしはいませーん!」
「ぴょんには聞いてませ~ん」
「い、いないわよ!」
「え~、なんで?」
「なんでって……べ、別に欲しいと思ってないし!」
「うっそ、あたしとかいつでもウェルカムなんだけど?」
「ぴょんと一緒にしないで!」
「うわ、ひでぇ」
「ゼロやんも今は独り身なんだよね~」
「そうな、じゃあみんな独り身だな」
時刻はまだ19時過ぎ。だが既に3時間近く飲んでいるせいか、みんなもう、けっこう出来上がってきている気はする。
この後どうなるんだろうなー、と思いつつも、俺も酒が入っているせいか、どうにでもなれと思い始めていた自分を、翌日きっと後悔するんだろうなと思う。
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