第14話 有名人に話しかけられるって、緊張するよね
21時の定刻5分前にだいはログインしたが、結局ゆめはログインしなかった。
ゆめが活動日に連絡もなしにログインしないなんて珍しいな。
なんかあったのだろうか。
まぁ世の中は土曜日だし、飲みに行ったりとかそういうのも普通にあって然るべきとは思うが。
〈Gen〉『ゆめがこないかー。火力にちょっと不安があるけど、噂に聞くゼロやんの力に頼る形でいってみるか!』
〈Zero〉『まかせろ』
〈Jack〉『ボス層まではあーすが
〈Gen〉『そうだな、あーす、がんばれよ!』
〈Earth〉『まっかせとけい☆』
〈Gen〉『今日はだい、
リダの中身が戻ってきたのは20時半頃だったが、忘れないうちに俺は亜衣菜との約束を伝え、動画のUPは来週の水曜以降という約束を取り付けた。
亜衣菜との関係? そんなものは伏せたに決まっている。活動前に、余計なこと言われんのも面倒だからな!
〈Gen〉『おーい、だい、聞いてる?』
〈Daikon〉『え、あ、ごめんwおkおk』
〈Pyonkichi〉『
〈Earth〉『あ! 真似しないでくださいよぅ!』
〈Soulking〉『
〈Earth〉『あー!』
だいが少し反応悪かったのも気になるが、ぴょんと嫁キングのあーすいじりに俺はモニターの前で一人笑ってしまった。
そうか、そういういじり方もあるのか。勉強になるわー。
〈Gen〉『それじゃ、【Teachers】いきますか!』
パーティを組んで準備を終えた21時半頃、ジャックの転移魔法でコンテンツの最寄りエリアまで転移する。
現在取り組んでいる、先月に実装されたばかりの新コンテンツは、大型モンスターが徘徊するギヌン山脈というエリアからリアルタイムで10分ほど進んだ、王竜の寝床というダンジョンからスタートすることになる。
コンテンツがスタートすると、30分の時間制限がスタートし、この制限時間内に合計5回の中ボスモンスターを撃破し、ボスエリアまで行くことが最初のミッションとなるのだ。
ボスエリアまで、5体の中ボス+雑魚を相手とするのに30分に対して、ボス1体にまた30分の時間制限が与えられることからも、今回のボスが本当に難敵だというのが分かるだろう。
まぁ【
〈Yukimura〉『ダンジョン前に死体の山』
〈Gen〉『おー、今日も敗れた者たちがいっぱいいるねーw』
〈Jack〉『こんなコンテンツ久々だよねーーーー』
山脈エリアを進み、開けたエリアの奥に洞窟の入口然としてものが見える辺り着いた俺たちは、ゆきむらが言った死体の山という物騒な言葉の意味を理解した。ちなみに本物じゃなく、ダンジョン攻略中に全滅し、戦闘不能状態でダンジョン外に排出されたパーティのことだぞ。
戦闘不能になっているとはいえ、きっとプレイヤーたちはどうして負けたのかについてきっとパーティチャットで盛り上がっているだろうし、俺らも勝つまではああなっていたのだから、彼らの気持ちは分からなくはない。
戦闘不能状態であることが、自分たちの敗戦を噛み締める意味になるのだから。
〈Pyonkichi〉『あ、今度はどっか出てきたって…うぇwww』
〈Earth〉『あ! セシルちゃん!』
〈Yukimura〉『
〈Jack〉『【Vinchitore】の幹部さんたちだねーーーー』
〈Gen〉『だが、6人しかいないぞ?』
〈Jack〉『むしろ幹部しかいない、だねーーーー』
〈Jack〉『って、あれ? もこさんもいるじゃーーーーん』
俺たちがダンジョンに到着したのとほぼ同時にダンジョンから生きた状態で出てきたのは、全員が高名なプレイヤーたちだった。
セシルの名を見つけた俺は何も言わずに黙ることにしたが、本当に豪華なメンバーで、出来るなら装備とかまじまじと見たかったね。
ギルドリーダーであり、無敗の盾と呼ばれる銀髪男エルフの〈Luciano〉
最強
ジャックの後任で
斧と大剣がスキルキャップというスキンヘッドの男ヒューム、無双ファイター〈
全ての魔法の効果・詠唱時間を把握しているという、老人男エルフキャラの最強ウィザード〈
そして【Vinchitore】ではなく双璧ギルド【Mocomococlub】のギルドリーダーで、文字通りの
〈Gen〉『あの編成……俺らもちょっとは意識してもらえるほどになったのかなw』
そのメンバー構成に気づいたリダが、ちょっと嬉しそうにパーティチャットでそう発言する。
編成……あ、そういうことか。
〈Moco〉『おー、よかった、いいタイミングで会えたねー』
俺たちに気づいたもこさんが、オープンチャットで話しかけてくる。
すまんな、戦闘不能集団よ。君ら、出てきたメンバーに踏まれた形だが、きっとしばらくそのままだぞ。
〈Cecil〉『ほんとだ! いやー、【Teachers】すごいねー』
〈Luciano〉『お前らの装備でよく勝ったものだな』
〈Jack〉『俺らの編成真似て、どうでしたーーーー?w』
さすがジャック。みんなパーティチャットで慌てふためき、オープンチャットで返信する勇気もないようだったが、やはりルチアーノさんをるっさんと呼ぶだけのことはある。先陣を切って彼らの言葉に返事を返していく。
たぶん、死体になってる彼らもこの会話には興味津々だろう。
〈Ume〉『なんて編成で攻略してくれたんすか・・・恨んでやる・・・』
〈Richard〉『おー!じゃっくん久しぶりだな!』
〈Richard〉『うめのやつ、グロッキーだなw』
〈Ume〉『動画見た時から思いましたよ。うわ、これるっさん真似るだろうな、って・・・まじほんと、恨みます』
〈Semimaru〉『わしらの装備でも、23分もかかってしまった』
〈Moco〉『あと1分時間かかったら、負けてたけどねー』
〈Cecil〉『もこちゃんそれはしーっ』
〈Luciano〉『まぁ、うめにはいい修行になったろう』
〈Luciano〉『編成を真似したことに気を悪くしたならすまない。謝罪する』
〈Gen〉『いやいや、動画を見ていただけただけでありがたいですよ』
もこさんがいるのは謎だが、どうやらルチアーノさんたちはそれまで8人以上推奨とされていたキングサウルス討伐を、俺たちが6人でやってのけたことに触発されたようだった。
彼らは攻略サイトへの情報提供者でもあり、本当に6人でも勝てるのか、検証したくなったのだろう。
〈Jack〉『でもなんでもこさんも?』
〈Moco〉『えー、面白そうだったから?』
〈Luciano〉『ふっかけてきたのはもこのほうだ』
〈Ume〉『みんな恨んでやる・・・』
〈Cecil〉『うめちん暗いよー』
〈Luciano〉『まぁ、一般プレイヤーにはオススメはできないってのが答えだな』
〈Moco〉『そうねー。盾・超火力アタッカー2枚、ウィザード・サポーター・プリーストが、6人でやるなら無難じゃないかなー』
〈Moco〉『ゆきむらちゃんの動き参考にしたけど、よくあれだけ火力全振りのスキル順思いついたねー』
〈Yukimura〉『え、あああ、ありがと《いgぞあmす》』
彼らの講評の中で不意に褒められたゆきむらが完全にテンパっている。まぁ、しょうがないよな、雲の上の存在だと思ってたプレイヤーだろうしな。
〈Luciano〉『この編成じゃ、サポーターに相当なプレイヤースキルがないと全滅待ったなしだな』
〈Richard〉『うめでもギリギリだったもんな!w』
〈Ume〉『ジャックさんと比べないでくださいよ・・・』
〈Semimaru〉『精進せい精進』
俺も正直ルチアーノさんと同意見だ。
ジャック役としてサポーターを務めたうめも高名なプレイヤーだが、ここまでグロッキーになっているということは、まぁやっぱ一人で全員のサポートとヒーラーもやるって、半端ないってことだよなー。俺もサポーターは出来ないことはないが、ジャックと同じことをやれと言われてできる自信は0だ。
ジャック恐るべし……。
〈Luciano〉『だが、ガンナーをいれるというのは面白いな』
〈Cecil〉『でしょでしょ? ガンナー強いでしょー?』
〈Cecil〉『ゼロくんももっと言ってあげてっ』
〈Zero〉『え、あー。ガンナーはプレイヤースキル依存ですから、安定攻略向きじゃあないと思いますが』
〈Cecil〉『ちょっと! 後ろ向き!』
急に
俺は思ったままを発言しただけなのだが、セシルのお気に召すものではなかったようだ。
でも、ちゃんと場面を弁えてゼロくんって呼んでくれて、よかった……。
〈Moco〉『でもそれって、俺はスキルありますよー、っていう風にも取れるよね?』
〈Jack〉『そりゃ、うちのゼロやんはいいガンナーだからねーーーー』
〈Moco〉『また戻ってくれないかしらねー』
〈Cecil〉『あたしには及ばないけどね!』
もこさん……! と俺はモニター越しに恨みがましく桃色の髪の小人を睨む。
〈Luciano〉『と、そちらはこれから攻略にいくんだよな? 時間をとらせてすまなかった。がんばってくれ』
〈Moco〉『あ、そうだね、がんばってねー』
〈Cecil〉『ゼロくん、ガンナーの腕前見せつけちゃえ!』
〈Gen〉『ありがとうございます! また動画あげたら、ぜひ見てくださいね!』
〈Jack〉『じゃあねーい』
〈Zero〉『はい』
コンテンツ開始前にちょっとごたごたしてしまった感じだが、俺たちはようやくダンジョンへと侵入していく。
パーティチャットでは嫁キングやあーす、ぴょん、ゆきむららが名だたる面々に(特にセシルに)わーきゃーいったり、直接話しかけられた俺にずるい! などと言っていたが、まぁそれはここでは割愛する。
そういや、だいはなんかずっと静かだったのが気になるけど……。
今回はどんな戦いになるだろうか?
まだ足元で死んだまま、豪華メンバーに踏まれ続けてる彼らの分も、頑張ることとしよう。
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