三月二十日 引越し

 今日、僕は引っ越しをした。大学三年生になるまでは実家に居ないといけなかっだ。

けれどもこれでようやく、僕は嫌いな父から離れることができた。

家にいた頃は「三年生になるまでの辛抱だ」と、自分自身に言い聞かせていたので家から離れられる今日は、何時もに比べてちょっとだけ気持ちが上がった。


 僕の引っ越し先は彼女の夏樹が住んでいるマンションの一室、勿論両親には内緒だ僕は大学生だが成人していたのでそこら辺は大丈夫だった。何故僕が彼女の家に引っ越す事になったのかと言うと、彼女に三年生になったら実家を出ると話をしたときに、彼女が

「引っ越すんだったら私の家に住んじゃえば、あんたの大学からもそう遠くないんだし。」

そういう風に彼女が言ってくれたのもあって僕は彼女の家に恋人兼家政婦兼同居人として住むことになったのだ。


「ちーくん、机とパソコンはこの辺でいいかしら」

「悪いけどもうちょっとずらして、パソコンのカメラに部屋のドアが映らないようにしてもらえる」

「わかった、ほらあんたも早く次の段ボール開けちゃいなさい」

そう彼女に言われた僕は家から持ってきた、段ボールを開けた元々実家を出るつもりでいたから、段ボールの中身はスカスカだった、思い出の品は実家の自分の部屋に置いてきた。

僕がマンションに持ってきた物は布団と洋服と大学の講義で使うものだけだった。

「夏樹、僕の服どこにしまえばいい」

僕が聞くと彼女は待っていましたと言わんばかりに

「そうね、そこのクローゼット使って」

「えっ僕そんなに服持ってないよ」

「そんな事、知ってるよあんたのことだからどうせちょっとしか服持ってこないと思ったけれども、流石に引き出しだとスーツしまう時にクシャクシャになっちゃうでしょ」

「えっ、スーツなんて持ってないよ」

僕が言うと彼女は呆れた顔をしてこう言った。

「あんた馬鹿じゃないの、三年生になったらインターンや就職説明会とかで嫌でもスーツ着なくちゃいけないのよ。持ってなさそうだし、次出かける時に買っちゃおうかついでにデートもしちゃいたいな」

「げっ、わかったよ今日のお礼も兼ねて来週辺り出かけよっか」

僕がそう言えば彼女は満足したように

「わかってるじゃない」と言った。

照れてる事を隠せていないのを言うのはやめた。

「あっ、後今日の夕飯はあんたが作ってね」

「わかったよ」

前言撤回やっぱり言ってやろう、でもそれじゃぁ面白くないから次のデートで何か仕返しをする事を僕は心に決めた。


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