変わってしまった世界でも愛したい

あにょま

プロローグ

 僕の家の教訓は、「何事にも遣る気と素直さを持つ」というものだ。僕は子供の頃この言葉を耳にタコができるんじゃないかってくらい聞かされた、成長するにつれてその言葉を理解できてもなかなか行動に移すことは出来なかった。僕は臆病で周りに合わせていた。

 そんな僕は突飛な事をする父親が苦手だった、僕の父親は建築家で暇さえ有ればいつも設計図を書いてばかりだったそのせいか子供の頃の僕の中にある父の姿は設計図を書いている姿しか浮かばない。

 僕の父親は決まって「仕事」のことを「遊び」だとか言って毎日社用のパソコンで仕事を行っていた、とても自由にやっていた。

 けれどそんな父親の僕にとって一番嫌いな所は夕食の時間に酒を煽るように飲んで、酔っ払って暴言を僕や母親に吐く所だ。母親は強い人だったから父の言葉にツッコミを入れていたが、僕は何も言い返せないで唯々父親の話していることを聞いているしかなかった。そのせいで言葉の刃で切り刻まれた臆病な僕の心はボロボロになってしまった。


だから僕は僕の心を傷つける父親が嫌いだった。

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