第5話絵本とメガネさん
朝学園に来てから下校まで、ラメアさんの側にいて。お昼は共に食べ、たまにすごくイライラしてる時だけ家に呼び出されて、八つ当たりをされる。
そんな日が毎日続く。
ただ、機嫌が良い日はお菓子を分けてくれたり、小物を買ってくれたりするので、前回のあの豚のような男の元にいた時よりも断然マシだ。
むしろ時給良いです…働いてるわけじゃないですけどね。
「ルチア。今日は殿下にプレゼントを渡してくるから、午後は自由時間で良いわ。好きにしてて」
「わかりました。ラメア」
私たちは一応、学園内ではお友達として通っているので、名前で呼びあっている。
なんと、今日はお休みがもらえました!
ホワイトですね!この環境!働いてるわけじゃないですけど!
あ、プレゼントというのは、私が相談に乗り、ラメアが自分で考え出した王子攻略法の一つです。
予想通り、ラメアはフランチェスカ王子に恋をしていました。
公爵家ですから、お金を使って婚約者の地位を確保することもできそうですが…
【それはあくまでも最終手段】
と言われました。
そこまで横暴じゃないんですね。
そして、今日のプレゼントは押し花の栞。
サプライズではなく、王子様や王様、臣下の方々には知らせてあるものです。
万が一毒が入っていたりしたら、ラメアの首が飛びますからね。
「とりあえず、今日はお休みですね…図書館にでも行きましょうか」
この学園の図書室には、本が沢山ある。
綺麗な絵本から分厚い歴史書。絵が沢山あるマンガというものもある。
前の時、本は必要最低限しか読まなかったですしねぇ…
「ふむ…何を読みましょうか…」
…え、絵本とか、まだ12歳ですし平気ですよねっ!お、大人でも読みますし!
背表紙に宝石の形のシールが貼られたこの絵本!一度くらい読んでみたかったんですよ!
「読むスペースもありましたよね…よし」
1人用のソファに座って絵本を開く。
絵本の題名は【灰色のお姫様】。
【むかしむかし、あるところ。おひめさまがひとり、おりました。
おひめさまは、はいいろのおめめに、はいいろのおぐし。
まるでねずみのようだと、みんなにわらわれました。
おひめさまはがんばりました。
おべんきょう、マナー、ダンス、ぜんぶ。
でも、だれもほめてくれませんでした。
うつくしくないおひめさまは、あるひ、いしのとうにとじこめられてしまいました。
つめたいかぜがふく、とうのなか。
おなかをすかせて、おひめさまはなきました。
でも、あるひのこと。
だれかのこえがきこえてきました。
『そこのとうにいる おじょうさん。おはなしをしませんか?』
それは、となりのくにのおうじさまのこえでした。
おひめさまはへんじをして、おうじさまとおはなしをしました。
それから、おうじさまとおひめさまは、なかよくなりました。
そして、あたたかい、はるのひのこと。
『おひめさま、どうかぼくの、およめさんになってください』
おひめさまはなきながらうなずき、いしのとうをでました。
それから、おひめさまはおうじさまのくにへいき、りっぱなおうひさまとしてくにをまもりましたとさ。
めでたしめでたし】
そこまで読み終えて、ふと、顔を上げると
「…そろそろ掃除の時間なので、一旦どいてもらっても良いですか」
メガネの男の子が、いた。
年は同い年くらいの子。
その子はムスッとした顔をしていて、手には雑巾を持っていた。
掃除、の時間なのですか。
「それは失礼しました。他の本を選んでくるので、お気になさらず」
「わかってくれたようで結構。さぁ、新しい本を探しに行ってください」
どこかトゲのある言い方で、メガネ男子は言う。
うぅ、大人しく他の本を見にいきましょう…これ以上、この人の邪魔をしたらいけない気がします…。
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