初等部編
第3話再びなる、学園生活
私、ルチア・フェルメスは死んだ。たしかに死んだのだ。
殴られて、蹴られて、暴力の限りを尽くされて、死んだ。死んだはずだったのに、
「(な、何故…私は初等部にいるのでしょうか!)」
周りにいるのは、似たような制服を着た幼い子供達。
そして、その中にいて何の違和感もない私。
手を見れば、小さくふっくらとしていて。体を見れば、紺色のセーラーワンピースの制服を着ている。
急いで化粧室へ行けば、鏡に映るのは幼い少女。
______間違いなく、私。
驚きに見開いた瞳から、涙が流れる。
今のこの状況は何?時が巻き戻ったの?
何故私には記憶がある?どうして…?
パニックになり、涙が止まらない。ハンカチで目元を押さえる。
今更になって、殴られていた時の異常さと、恐怖と、痛みを思い出す。
吐き気がして、慌てて個室へ入る。
頭が熱い。気持ち悪い。痛い、怖い。寒い。
いろんな感情が混じって混じって、さらに吐き気が酷くなる。
吐きながら、泣きながら、考える。
多分今は初等部三年。年齢は12歳。あと一年経てば卒業して、中等部へ入学する。
戻ったのだ。四年前に。
まだ平凡で、幸せだったあの頃に。
吐くものが無くなり、息を整える。
口内は最悪の味が広がっているが、それは放っておく。口を濯げば大丈夫だろうから。
「…はぁ……ふぅ………」
涙も止まった。だいぶ、心が落ち着いたようだった。
…何故だかわからないけど、私は…転生?をしたのだろうか。
逆行というのかな?でも、一度死んでいるのだし…
「…とりあえず、情報を集めなければなりませんね」
私が過ごした世界と、同じかどうかを調べなければ。
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図書館へ行き、調べた結果。
見事に同じだった。
西暦、歴史、歴代王族の名前。全て。
…夢にしては、リアル過ぎますね。
「…はぁ…どうしましょう…」
もし前と同じ世界ならば、このまま行けば私はまた死んでしまう。
それは幾ら何でも嫌だ。もう殴られたくありません。私はM属性じゃないです。
「……距離を置けば、とりあえずはいいのでは?」
距離を置けば、事件などにも巻き込まれようがありませんし。
あれ、これ結構いい案じゃないですか?
「と、ぁ。いけませんいけません。テンションが上がりそうになりました…抑えなきゃ」
頬をパチパチと軽く叩いて、意識を切り替える。
気を緩ませてはダメだ。前回(?)とは違う行動をとれば、いつ死ぬのかはわからないのだから。
「…よし。いきますよ。ルチア・フェルメス」
生き抜くために、離れましょう。
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ルチア・フェルメスは大人しい令嬢である。
成績はそれなりに良く、素行も良い。特に騒いだりはせず、ただ自分の席で本を読む。
それが彼女だ。
得意なものはおまじないで、よく他の令嬢に頼まれ、匂い袋などを作っている。
優しい金色の髪を最近は伸ばし始め、灰色の瞳はどこか遠くを見ていることが多くなった。
時折金属の音に怯えを示すが、何の問題もない普通の女子生徒。
それが、ルチアに対する教師陣からの印象だ。
素行の良い生徒は、魔法会補助委員のリストに上がる。魔法会補助委員は名の通りの役割で、10人弱で仕事を回す魔法会の手伝いをする者のことだ。
教師たちからの評価が良いルチアは、自然とそのリストに名前が載っていた。
知らず知らずのうちに自ら墓穴のようなものを掘っていたルチアであった。
それでも、平穏に暮らしていたルチアに忍び寄る影一つ。
「…なんだ。ただの小娘じゃありませんこと」
キツく巻いた金髪。赤い大きなリボン。
サファイアのような瞳に小さな顔。白い肌。
人形のように美しく愛らしい少女が、ニヤリと嫌な笑みを浮かべた。
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