第26話 邦城小礼はかく語りき
「
本当にここは現代なのか? 現代になってもこんなことがあるのか? 本殿の廊下を歩きながら、登はそれをまず思った。
本殿の大広間は、
そして、大広間には五十名以上の
全空間の
「座ってください」
吉村に命じられて、登は末席に正座させられた。
「頭を下げて」
言われるままに頭を下げた。ふと横に座っている巫女兵が、自分とほとんど変わらないことに気づいた。そばかすの浮いたあどけない横顔と真剣なまなざしが、対照的であった。登はなんだかいたたまれない気がした。
「
すべての巫女兵の頭が、一段と低くなった。そばにいた吉村が、登の頭を心持ち、下げさせた。
頭を押さえられているので、頭を上げることもできなかったが、襖の開く音と
「一同、表を上げよ」
上段の間の玉座に、
小礼は巫女装束で、頭に金色の髪飾りを付けていた。更にお召しの巫女装束には、他のものと違って、階級章がない。階級など超越したところにいるのだ、ということがはっきり示されていた。
「我こそは、
すすり泣く声が、巫女兵たちの間で低く聞こえた。
そして、小礼はあくまで母親のような厳しさと優しさで、言葉を
「今は詳しく申し述べることはできぬが、東京にて、終戦へ向けた様々な取り組みをして参った。必ず、皆を
侍女頭が、吉村の方を見た。
「吉村、
「かしこまりました。ご
吉村が、登の手を取った。
さっと、潮が引くように巫女たちの隊列が横にはけた。まっすぐと玉座へ至る道が生まれた。登は吉村の手を払うと、自分で歩き出した。そのまま上段の間にどっかりとあぐらをかいた。
「無礼者!」
侍女頭が叫んだ。
登は鼻に皮肉な
「
吉村が、登を引き下ろそうとした。しかし、その前に小礼が制した。
「鏡の中の映像は、見ましたか?」
小礼は、そう言った。
「見たよ。薄気味悪い映像だ」
「あれが、あなたの未来です」
「ふざけんな」
登は、小礼を睨み返した。
小礼は、手をそっと侍女頭の方へ伸ばした。侍女頭は一冊の
それを見ながら、小礼は話した。
「私の姉、
「“非国民制裁砲”?」
「正式名称:
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