第25話 巫女兵の城
「な、なんだ。これは?」
登は、あわてて部屋を飛び出した。
見渡して見ると、かなり長い。50メートルはある。中学時代、修学旅行で行った京都の
とにかく、廊下を歩いて行こうとした時、「御目覚めになりましたか?」という聞きなれた声がした。
巫女装束になった
「ここは、
「ええ。留加の中枢・
「やしろ?」
「ここには
「みこへい?」
「留加大社、そして“朱の
廊下を巫女兵が優雅な足取りで過ぎてゆく。そのうち1人が衣擦れの音を微かに残して、近寄った。そして何事か吉村に耳打ちした。
吉村は「ありがとう」と言って、巫女を返した。
そして、登に言った。
「
巫女兵が
それとすれ違う形で、吉村美沙と登が行く。
巫女兵たちが、吉村に対して敬礼した。
巫女兵の装束の襟には、黒線で階級章表示がなされていた。ヒラの巫女兵は細線一本。それに対して、吉村の襟には黒の太線が1本引かれていた。どうやら吉村は士官に相当するらしい。
様々な部屋を通り過ぎた。
畳の上にカーペットを
「第132グループ387名。無事に移送を完了しました」
「第133グループ403名は午前2時30分までに、移送する予定になっています。前線にいる第1連隊は
「そこは、上に確認してきます。ちょっと待っててください」
断片的に、そんな会話が聞こえて来た。
一般人らしい老人、女・子ども、妊婦が集まっている広間もあった。
5分ほどで、吉村と登は、本丸御殿の
吉村は下駄箱から登のローファーを取り出し、そっと三和土に置いた。登はローファーを履いた。観光客向けのパンフレットが一部落ちていたが、誰かに踏みつけられたまま、もう見向きもされない。
外に出ると、もう夜だった。
都会と違って星が見える。かがり火がそこかしこで
吉村が、城壁にそって歩いていく。敵を攻撃するために複雑に折りたたまれた
「鉛の瓦?」
「ここの瓦は籠城した際に、溶かして鉄砲の弾丸にできるように鉛瓦にしてあるのです」。
しばらく行くと小さな門があった。神前幕が飾られ、
吉村が命令した。
「
「かしこまりました」
門が音もなく開いた。
「さあ、お入りください」
吉村は、登を促した。
登は、崖から飛び降りる思いで、門を一気にくぐった。
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