第10話 留加の光~首都炎上
第1撃で
変電所がやられて給電不能になり、信号機さえ動いていない。交通が混乱し、交差点で車が立ち往生していた。
都営団地と登の家は路面電車の駅で3つ離れている。義母とあの娘がいるとはいえ、ともかく、今は帰らなければならなかった。
愛情というより、男としての義務感だった。
走りながら、
学校へ逃げろという声が口々に聞こえる。真っ黒な街路の中で、車のヘッドランプだけが光っている。逃げまどう群衆の顔が、ヘッドランプに照らされて、またすぐに消えた。警官たちも「群衆の数が多すぎます。避難場所などの指示を願います。
「
誰かが叫んだ。「伏せろ」「伏せて」という複数の声が波状に重なった。
悲鳴が、あたりにこだました。
登は、路面電車の線路沿いに走った。自宅の玄関に走り込んだとき、ようやく空気が
明かりの消えたリビングに駆け込んだ時、登は一瞬立ちすくんだ。室内よりも外の方がぼんやりと明るかった。白い光が一瞬横切った。そして、また爆発音と震動。
あの娘が、窓辺に立っていた。
「
祈りを捧げるような静かな声。
鳥肌が立った。
「誰だ、お前……」咄嗟にそう言っていた。
あの娘は、登の方を少し見た。
「私は、留加めぐみ」
登は
「偽名だろ」
外でオレンジ色の閃光が走った。大音響とともに家屋全体が軋んだ。登は立って居られなくなり、テーブルにすがりついた。
「お前、どう思ってるんだ?」
「どうって?」
「お前らのせいで、こんなことになってるんだぞ!」
娘はふーんと鼻を鳴らした。
「あなたたちは、罪なき
今の登には、返す言葉が出てこなかった。ただ、睨むだけである。だから、娘は
政府軍戦死者【246名】戦傷者【492名】
留加人民被害数:不明
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