728.ぽよーんという音

「はふぅ……」


 レイアがコカトリスの身体にすりすりと抱きつく。


「ぴよぴよー」(よしよしー)

「ああ、ふわもっこ……」


 レイアが至福の表情を浮かべている。どうやら疲れは吹き飛んだらしい。


「あとは横になってゆっくりしたいとこだが、この地面だとシートを敷いても休めないな」


 ワープボールがないのはいいとしても、ここはゴツゴツとした荒れ地だ。ウッドが足の裏で砂利の度合いを確かめるが……悲しそうな顔になった。


「ウゴ、そうだね……」

「なんとかできるかな。ちょっと下がっててくれ」


 果たして成功するかどうか。右腕に魔力を集中させ、俺は植物魔法を使ってみた。


「むっ、抵抗があるが……大丈夫そうだ」


 俺は休憩場所に芝生を生み出そうとしていた。集中を続けていくと、俺の羽の向け先からふかふかの芝生が生まれてくる。地上に比べると半分くらいの速度だが……やはりダンジョンそのものが植物魔法を拒んでいる。


 だが、なんとか休憩場所に芝生が用意できた。


「ぴよ! ふかふかぴよね!」

「わふふ! これで横になれるんだぞ!」


 ナナが前と同じくシートを取り出す。


「よいしょっと。じゃあこれで休もうか」

「はい、そうしましょう!」


 というわけで芝生の上のシートに横になる。俺も着ぐるみを脱いでっと……。

 ディアとマルコシアスも着ぐるみからにゅっと出てきた。


「ぴよよ。ごつごつして全部灰色ぴよね」

「空は綺麗なんだぞ」

「あとは……この音ぴよね」


 ディアが羽を揺らす。ぽよーん、ぽよーん。

 このワープボールの音のタイミングに合わせて。


「なんだかほのぼのするぴよ」

「そ、そうか?」

「ええ、なんだか不思議に耳に残る音ですよね」


 うーむ。俺には奇妙なゲームの効果音にしか聞こえないが……。これは俺には前世の記憶があるからで、ステラたちには物珍しく俺とは別の捉え方をしているんだろう。


「まぁ、一定のリズムだからな。こうして横になると……」


 シートの上に寝転がると、ぽよーんという気の抜けた音が眠気を誘ってくる。


 ぽよーん、ぽよーん……。


「わふ。父上も休むんだぞ」


 むにむにっとマルコシアスが肉球で俺の頬を撫でる。気持ちいい……。


 向こう側では寝ているコカトリスのお腹の上に、レイアがしがみついている。そばにはナナもコカトリスに寄りかかって休んでいるな。


「すやー、ぴよー……」

「はふ……」


 俺も休んだほうがいいのは間違いない。そっとマルコシアスを抱き寄せる。


「……うん、俺も休もう」

「わふ。みんなでおやすみなんだぞー」


 というわけで俺はぽよーんという音を聞きながら、うとうととするのであった。

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