727.すぐ元気
ぽにぽにぽにー!
着ぐるみを駆使して俺は第2層を走る。
おっと、際どいラインのワープボールだ。くぐり抜けるにはちょっとタイミングが……。
「ぴよー! スライディングぴよ!」
「そ、そこまでは無理だ!」
ぴたっ。俺はワープボールの前で止まった。
……ぽよーん、ぽよーん。
ワープボールが上に行ってから、すすっと通り抜ける。
「ぴよ……とうさまは安全しこーぴよ」
「わっふ。確実な方法なんだぞ」
「俺は初見だしな」
多分ディアの感覚は麻痺している。仕方ないが、俺はそこまでの危険をおかせない。
とはいえ、俺の突破速度もかなりのモノのはずだ。ぽにぽにぽにーっと進む。レイアより少し遅い、くらいか。
ステラのところに到着すると、レイアが目を丸くしていた。
「さすがエルト様ですね。着ぐるみですが、かなりの高速です……!」
「ぴよ! さすとおさまぴよ!」
「わふ。我が主の羽はくるくるなんだぞ」
ま、まぁ……ディアはそんなとこもあるかもしれない。割りとノリで生きている。そのあたりはステラとも少し共通する……。
しかしまだ第2層は序盤だ。気を抜かず進んでいこう。というわけでステラの先導に従い、俺たちは第2層を進んでいく。
そしていくつかポイントを超え、第2層に来てから1時間ちょっとが経過した。
「ちょうどいい時間ですね。ここならワープボールもなさそうです」
ステラが目の前の石場を指差す。確かにワープボールはなさそうだ。
「ああ、ここなら休憩できそうだな」
「ウゴ! 時間的にはどう?」
ナナが小さな柱時計をポケットからよいしょっと取り出す。
「予定通りかな。問題なく休めるよ」
と言って、小さな柱時計をポケットに戻す。ダンジョンでは日時計の類は使えないので、こうした魔法具で時間を確認するしかない。
「スムーズぴよね!」
ステラがうんうんと頷く。
「次の層まで行くだけなら、第1層よりも早いはずですからね」
「下の階層ほどだんだん狭い構造になっているんだったよな」
「そうです、なので直線距離では短くなります」
とはいえ第1層に比べると、第2層を進むのは格段に難しい。きちんと身体を鍛えていないとまずここまで来ることさえできない。
「よし、まずはここで休憩していこう……!」
「はい、ありがとうございます……」
……レイアは少しお疲れ気味であった。やはり飛んだり跳ねたりは単純に疲れるか。
そんな様子を見ていたコカトリスたちがレイアを羽でちょいちょいと呼ぶ。
「ぴよー?」(こっちきて一緒に休むー?)
「ぴよよ」(横になるターイム)
意図を汲み取ったレイアが目を輝かせる。
「はっ、いいんですか……!? では、遠慮なくー!」
ふむ……一瞬で元気になったレイアがコカトリスに抱きついていった。
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