653.砂嵐の竜

 エルトたちが伝言を受け取った後、ステラたちは――。


 ナナが空に浮かぶファントムを銃で撃ちながら、焦りを感じていた。


「ファントムが多いー……!」

「ええ、嵐が近寄ってからでしょうか。明らかに増えてます!」


 ステラも高速でバットを振るい、石を投げてファントムを撃破していく。


「やれやれ、あと少しだってのに」

「この魔力の流れ、そして地下にあるというナニカ……。どうやら少しわかってきました」


 ステラの言葉にナナがふにっと頷く。


「まぁね……。つまり崩落した塔全体が、砂嵐を呼び寄せる装置だったんでしょ?」

「恐らくはそうですね。こんなに早く魔力が集まり、砂嵐が生まれるのは偶然ではありません。あえてそう作られたのです」


 ナナはぽにぽにと銃を撃ち続ける。


「ところが何かの事故が起きた。塔は中途半端に壊れて、砂嵐も暴走するようになった――ということかな」

「そうでしょうね……」


 ステラがファントムを見上げる。


「これも防衛装置のひとつでしょう。魔力で形作られた、影のようなもの……」


 そう言うとステラが耳をぴくぴくさせた。


「嵐が……もう近づいてます!」

「ん? うわっ!?」


 突然、ふたりの足元が揺れ始めた。


「ふたつの砂嵐が融合し始めています……!」

「もう……!? うぐっ」


 ナナはぽよっと着ぐるみで踏ん張る。

 さらに強まる魔力の波が、砂漠の中を駆け抜けていった。


「あれを……!」


 強い魔力にステラが目を向けると、暗雲の中から黒い砂嵐の竜が現れた。

 宮殿に現れたのと同じ姿形をしている。


 砂嵐の竜は牙の生えた口を開け、ステラたちを睨みつけていた。


「どうやら最後の戦いみたいだね」

「ええ、エルぴよちゃんたちが……魔力の波を変えるまでの辛抱です!」


 ステラがぐっとバットを構える。


「甲子園はもうすぐそこ……です!」


 ……ナナは「どこそれ?」と思ったが、口に出さないことにした。野ボール絡みだと謎が多いのだ。


「さぁ、打ってみせます!」

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