648.嵐を穿つ
ステラとナナは黒い砂漠を突き進んでいく。それをファントムが空を飛びながら妨害してきた。
「消えろ……!」
「愚か者め!」
ファントムの声は不自然なほどに冷たく甲高い。この世のものではない叫びだった。
しかしステラはそれを一蹴する。
「えいっ!」
ファントムが飛びかかるのに合わせて、ステラはバットを振るう。
パパァン!
ステラの魔力が伝わったバットが閃くとファントムが弾け飛ぶ。
「……ファントムってそんなにたやすく倒せる相手だっけ?」
ナナは銃でファントムを撃ちながら走っている。しかし一発では中々倒せない。数発当てないとだめなのだ。
ファントムは砂の精霊よりも遅く身体が大きいので、当てるのにそれほど苦労はないが。
「的が大きいですからね。物理が完全に無効でないならわたしの敵ではありません!」
(*・ω・)_/彡 しゅしゅしゅっ……!!
ステラは小刻みに近寄ってくるファントムを迎撃する。
「災いあれ……!」
「消えろ……!」
ファントムの絶叫が響き合い、精神を揺さぶる。
常人ならかなりの心理的ダメージを受けるだろう。
「残念だね。僕の着ぐるみはそーいうのもシャットアウトするんだよ」
ナナの着ぐるみには精神系攻撃を防ぐ機能もちゃんとある。
「わたしは心を強く持っているだけですが、大抵効きません!」
「……う、うん」
ものすごい根性論だが、今更である。
ナナはかつてステラが状態異常にも異様に強いと聞いたことがある。
「ていうか、なんでそんなに耐性があるの? 鍛えてどうにかなるものかな」
「これはまぁ、コツがあるのです……!」
ステラとナナはファントムを撃破しながら進んでいく。しかしファントムは黒の砂漠からどんどんと湧き出てくる。
「もう! 数が……!」
「中心部に進むしかありません!」
ふたりが走り続けると――魔力の流れに変化が起きた。荒れ狂う砂嵐に穴が穿たれるような。
こころなしかファントムの数も減ってきていた。
「これは……」
ナナがステラの顔を見る。彼女にも心当たりのない不思議な現象だった。
ダダダダダダ……!
魔力の粒が連打され、砂嵐にほころびが生まれる。
「もしかするとエルト様と砂ぴよちゃんが何かをしてくれているのかも知れませんね!」
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