649.スピードアップ

 その頃、地下の祭壇では――。


「ぴよぴよぴよー!」(ダダダダダーッ!)

「押しまくるぴよー!」

「わふわふわふー!」


 ディアたちが連打しまくっている横で、俺も連打していた。


 もうどれくらい続けているだろうか。

 10分ぐらいは全員で連打している気がする。


 これで良いのか、いまいち自信がないのだが。

 確かに変化はあるが目に見えて大きな変化はないのだ。


「……もう少し反応があるといいのだが」

「ぴよ。なんとなく楽しくボタン連打してたぴよ」

「わふふ。外に行って確かめてみるんだぞ?」

「うむ……そうするしかないか」


 とりあえず状況がわからん。俺は手を止めて祭壇から離れようとした。


 そのとき、レイアが地下室の入り口に滑り込んできた。


「エルト様……!」

「レイア、どうかしたのか?」


 レイアはずいぶん焦っているようだ。


「コカ博士から伝言がありまして! なにかやっているのなら、もっと速くやるようにと」

「わふ。連絡が来たんだぞ」

「上空で変化が起きているようで……コカ博士は伝言があるからとすぐ上に行ってしまいました!」

「な、なるほど……」


 ヴィクター兄さんは急ぐときは本当にバダバタと去っていくからな。しかし手がかりが得られたのは良かった。

 とりあえずこのボタン連打を続けるしかない。


「では、わたしはまた伝言があったらいけませんので!」


 そう言うとレイアは風のごとく地下室から出ていった。


「ぴよ。もっと速くぴよね」

「腕が届かないんだぞ」

「マルちゃん、諦めちゃダメぴよよ!」


 ディアはそこで祭壇にぴょんと飛び移った。


「こうなったら脚と羽で頑張るぴよ! 全身を使って連打連打ぴよ!」

「わふ! その手があったんだぞ!」


 マルコシアスもぴょんと飛び移り、四肢を伸ばす。

 ギリギリ、ボタン連打に四肢の長さは足りそうだった。


「イケそうだぞ!」

「ぴよ! やるぴよよ!」


 ディアは脚でふみふみしながら、屈んで羽を伸ばしている。なかなかリズミカルにやるじゃないか。


「ぴよー!」(さらにはやくー!)


 様子を見ていた砂コカトリスが、頭を祭壇に近づける。ま、まさか……。


「ぴよぴよぴよぴよ!」(くちばしで連打連打連打ー!)


 砂コカトリスが頭を振りながら、くちばしでもボタンを連打し始めた。ものすごい速さだ。


 ……そんな風にくちばしを使うのか。


 コカトリスってあまりつっつかないから、くちばしを使うイメージがなかった。


 そこでディアが俺を見る。


「ぴよ! とうさまもスピードアップぴよね!」


 お、おう……そうだな。

 でも俺はくちばしは使わないぞ。

 速くしていいなら、俺は魔法でボタン連打をするからな……!

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