639.ノックの時間
エルト達が地下道に入った頃――。
ステラ達は塔の上へと移動していた。
髪がばっさばっさと風に巻かれる中、ステラは上空の砂嵐を見つめる。
「風が本当に強くなってきましたね……!」
とはいえ、ステラの体幹は極めて強い。
風にあおられたりすることはないのだが――むしろ足場の塔のほうが崩れそうだ。
今も風によって砂ぼこりと小さな破片が舞っている。
「ここから先は風魔法も慎重に使わないとな」
崩れて剥き出しになった塔をひょいひょい飛び跳ねながら、ヴィクターが言う。
「風魔法は戦闘に使えるが、すでに嵐が起きているところでは使いづらい」
「そうなんだ。知らなかった」
ナナはふよーっとヴィクターの風魔法で浮きながら移動している。
「風は目に見えない、ゆえにイメージしづらい。すでに強い風があると邪魔なのだ……。コカ博士の弱点だな」
「まさか月刊ぴよに書いてあった、あの設定は真実だったのですか……?!」
ステラが目を見開く。
月刊ぴよにはコカ博士の連載記事もあるが、そこに図鑑ぽくプロフィールが書いてあったのだ。
コカ博士とは( ╹▽╹ )
好きなもの・コカトリス、勉強
弱点・風の強いところ
「コカ博士は嘘を書かないのだ。さて、と――だいぶ上まで登ってきたな」
崩れかけているとはいえ、塔の高さはそれなりにある。極めて古き建物だが6、7階分くらいだろうか。
今は5階くらいの高さか。もうすぐ頂上ではある。
「僕が思ったよりも砂嵐が上空にあるね」
「砂嵐の中心は頂上からさらに数階分、上の感じですね」
砂嵐は魔力を吸い上げ、今も大きくなりつつある。
「核はだいたいこの真上か。おっと……!」
ヴィクターがぴっと羽で上空を指し示す。
砂嵐からまたもや砂の精霊がざざーっと生まれ、ステラたちへと向かってくる。
「どうしますか……!?」
「まず雑魚掃除をやってしまおう。君たちふたりの火力のほうが高いから、隙を見て上に飛ばす。その瞬間が勝負だ」
ヴィクターの言葉にナナが頷く。
「はいよー」
そしてお腹からライフル銃を取り出した。
ステラもバットを構え、集中している。
時間をかけるほど砂の精霊は増えていく。
攻撃のチャンスはどれほど雑魚を早く片付けられるかにかかっていた。
「まずは……高速ノックから、ですね!」
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