638.地下へふにふに

「大丈夫だ……! とりあえず瓦礫をどけてっと」


 砂が流れ込んで地下道が埋まってしまったみたいだ。身体が動かせないので、見えないが。


 大樹の腕を操作して瓦礫を平らなところに置く。


「わふ。ぐらぐらはしてないんだぞ」

「ぴよよ。でも道は埋もれちゃったぴよね」


 しかし砂コカトリスのおかげで光明は見えた。


「ぴよ! 道はちょうどこの辺だったぴよね」


 レイアの胸元におさまっているディアが羽で指し示してくれる。


「よし……! それじゃ地下を掘り進める魔法を使うから、少し下がってくれ」

「承知しました!」


 レイアがぴょんと後ろに下がる。

 それを見て砂コカトリスもレイアの隣に移動した。


「ぴよよー」(どうするのかなー)

「建物をどーこーするのは、とうさま得意ぴよ!」


 ディアが目にする植物魔法の大部分は、大樹の家とかだからな。あとは手からご飯を出す魔法と言ってもいい。


「いくぞ……!」


 俺は大樹の塔を地中に展開するようなイメージで発動させた。ちょうどトンネルを掘るみたいな形だ。


 ゴゴゴ……!


 地鳴りを響かせながら、大樹の根っこが地面を潜っていく。大樹の塔を斜め下にするようにっと……。


「道は浅いところに作っているみたいだな。これなら上を補強しながら行けば……」


 あまり深い道だと怖いのだが、どうやら地下1、2メートルしか掘っていないようだ。

 これなら俺の植物魔法で掘って、壁を固定すれば大丈夫だろう。


 そうして少しの間、魔法を使うとなんとか道になった。大人ひとり入れるかどうかだが。


「壁も……大丈夫だな」


 ぺたぺたと触ってみるが、がっしりしている。

 というより天井はほとんど地上に出ているが。浅い穴で良かった。


「それじゃ、進むぞ」

「ぴよ! れっつごーぴよ!」

「わふふ。中々の道なんだぞ」


 うむ……魔力を辿るのにディアとマルコシアスは必要だ。俺にも感知できない魔力を辿れるみたいだし。


「レイアは万一に備えて、入口で待機していてくれ」

「わかりました! お気をつけて……!」


 あとは砂コカトリスだな。この子が頼りだ。


「ぴよ?」(ちょっと狭くない?)

「大丈夫ぴよよ! ぎゅむっと前進ぴよ!」


 実は砂コカトリスのサイズ的にはギリギリである。

 俺よりも体格いいからな、砂コカトリス。


 しかし広く作ろうとすると手間がすごくかかる。

 なんとかこれで……!


「ぴよよー!」(そうだ、これならいけるー!)


(・Θ・ っ )つ三 ふにふに


 ……うむ。ほふく前進で解決したぞ。

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