637.瓦礫の下に

 ぴよ、ぴよよ……。


(・Θ・ っ )つ三 ノソノソ


 砂コカトリスは真剣に砂の上を移動している。


「ぴよ! どうぴよ?」

「ぴよよー」(こっちかなぁー)


 魔力は徐々にではあるが強まってきている。

 風も砂が舞う程度だったのが、髪がなびくぐらいの勢いになってきていた。


 そんなに猶予はないかも知れない。

 しかし焦りは禁物だ。魔力を探るには集中力がいる。俺自身もわかっていることだ。


「ぴよ? ぴよよ?」(こっちかな? もっと塔の中かな?)


(・Θ・ っ )つ三 ズリズリ


 砂コカトリスが身体の向きを塔へと向ける。

 むっ、やはり怪しいのは塔なのか……。


「ぴよ……!?」(どるぅーしてる……!?)

「わふ。地面に反応してるんだぞ」


 砂コカトリスが頭をもぞもぞと大きな石の瓦礫に押し付けている。

 ステラと見て回った壁みたいな感じだな。

 壊れた塔の一部か?


「つ、ついに何かが……!?」

「ぴよ! これは期待大ぴよ……!」


 どきどきしながら見守る俺たち。

 砂コカトリスはぐりぐりと頭を瓦礫に押し付けているが……。動きが止まった。


 ……大丈夫か?


「ぴよ……!」(この下に何かがある気がする……!)

「この下になにかあるかも、ぴよ!」


 砂コカトリスとディアが俺に顔を向ける。


「よし、俺の出番だな」


 見ると大きな瓦礫がしっかり地面にはまり込んでいる。これを取り除くのは大変な手間だな。


 砂コカトリスとレイアを瓦礫から退避させ、俺は魔法を発動させる。

 荒れる風と魔力の中で……少し引っ張られるような感触があるが、まだ魔法は普通に使えるな。


【大樹の腕】


 俺は地面の下のほうから樹木の腕を生やす。


 ふむふむ……埋まっている部分もかなり大きいが、動かせないほどじゃない。


 ゆっくり慎重に、大樹の腕で瓦礫を傾けていく。

 少しずつ、少しずつだ……。


「わふー。地下に空気の流れがあるんだぞ!」


 レイアの胸元にいるマルコシアスがぴっと脚を上げた。


「本当か……!? まだ俺からは見えないが、やはり地下になにかあったんだな」

「ですね……これは空洞でしょうか?」


 レイアも破片の下を覗き込んでいる。

 俺は魔法の発動中で体勢を変えられない。


「ぴよ! この瓦礫の下に道があるぴよー! ちゃんと見たぴよよー!」

「だぞだぞー!」

「ぴよよー!」(やったぁー!)


 と、その時――すざざーと砂が瓦礫の下に流れ込んだ。


「ぴよー!? 埋まったぴよー!」

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