636.ずりずりー

「ぴよよー! これだけ魔力があれば、追えるみたいぴよ! あたしにも、なんとなくわかるぴよ!」


 ディアと砂コカトリスがぴよっと羽を広げる。


「魔力への感受性が高いのかな……?」

「ぴよ。砂漠で生きてきたから、わかるらしーぴよね」


 ディアが補足してくれる。砂コカトリスはドヤ顔だな。


 普通のコカトリスはそこまで魔力に敏感ではなかったと思うが、長年住んでいるだけに特別なのかもしれない。


「ぴよよ……!」(ご飯の恩義を返すとき……!)

「さすが砂ぴよちゃんです……!」


 よし、これで地中の魔力を追うこともできる。

 俺が見渡すとステラとヴィクター兄さんが頷いた。


「砂嵐の対処と魔力の追跡、どちらも今ならできると思います」

「確かにな。砂コカトリスが教えてくれるなら光明はある」


 ナナが羽をぴこぴこさせる。


「コカトリスを信頼してるんだね」

「コカトリスは万能だからな」


 ぴこぴこ。うむ、答えに迷いがないな。


「わふ。すごく乗り気なんだぞ。さすがコカ博士なんだぞ」

「ウゴ、そうしたらまた分かれる?」


 ステラとヴィクター兄さんが頷いた。


「ですね……。砂嵐を撃退する班と地中を探索する班。それに分かれるのが上策かと」

「そうだな、そうしようか。班分けは――」


 ステラ、ナナ、ヴィクター兄さん、ウッドが砂嵐の撃退班。

 俺とレイア、ディアとマルコシアス、砂コカトリスが地下の探索班に決まった。


 俺が探索班なのは植物魔法で地下を掘ることも可能だからだな。巨大な木の根を生やしたり、枯らしたりすることで空洞を作れる。


 レイアは……まぁ、ディアとマルコシアスを守る係だ。俺が魔法を使っている間はどうしても意識が分散する。


「よし――それじゃ分かれて行動だ!」


 ◇


「ぴよ、ぴよ……」(こっちー、どっちー……)


 砂コカトリスは腹ばいになりながら、ずりずりと砂の上を移動していた。


 今は塔の外周部をゆっくり回っている。


「ぴよ。大地を感じながら進んでるぴよ」

「ほふく前進なんだぞ」

「実に可愛らしいですねっ!」


 ディアとマルコシアスを抱えているレイアが砂コカトリスの頭を撫でる。


「ぴよよ……!」(こっちだ……!)


 砂コカトリスがキリッとしながらずりずり進む。


「……ぴよ?」(……あれ?)

「大丈夫ぴよか」

「ぴよっぴ! ぴよ!」(たまに魔力が途切れる! でも大丈夫!)


 そんな感じで進んでいるな。


 ……ちょっと不安になってきた。

 しかし他に頼る方法もないからな。仕方ないのだ。

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