621.遺跡の絵

「わふー。難しいんだぞ?」

「ええ、今探ってみましたが……核は存在しなさそうです」

「ウゴ、ダンジョン化してないから?」


 ふむふむ、わかってきたぞ。


「ダンジョンになっていれば、その中心が核だからな。ダンジョン化していない場合、壊すべき核もない……ということか」

「その通りです。そして魔力の供給を絶つのも……」

「外に出られないし、魔力を片っ端から吸い上げているから――ということか」


 なんとなく俺の感覚でも、砂嵐を起点に魔力が集まっているのはわかる。

 ナナもうーんと悩んでいた。


「消耗戦を続けるのがいいってこと?」

「他に手がなければ、根気強く内側からやるしかなさそうですね……」


 学会が終わったら、早々に帰る予定だったのだが……面倒なことになってきたな。


 そこにヴィクター兄さんが大きな本や巻物をいくつも抱えて戻ってきた。


「待たせたな。通訳を頼めるか?」

「ぴよ! おまかせぴよよー!」


 ヴィクター兄さんが持ってきたのは地図と遺跡解説の資料だった。


 本に書かれていたのは、巨大な塔が倒壊したような遺跡だな。柱がどーん、石柱がばらばらとなっている。


 俺の知識ではパルテノン神殿やそんな感じの柱に見えた。

 ヴィクター兄さんが資料を広げて砂コカトリスに見せる。すぐに砂コカトリスは羽を差して反応した。


「ぴよ! ぴよよー!」(これ! ここがそうー!)

「この絵のところでいいみたいぴよねー!」


 ディアもぴよっと羽を掲げる。


「ウゴ、すんなりわかった!」

「ふむ……これは北西の遺跡でいいのか?」

「そうだ。俺もちらっと訪れたことはあるが……カカを呼んでもらったから、話はすぐに聞ける」


 それから少しして、カカが広間にやってきた。


 ぺた……ぺた……。


 着ぐるみの足取りが重い。肩も下がっている。

 どうやらお疲れのようだな。


「師匠、ヒールベリーの村のポーションがあるよ」

「それが手紙にあった村の特産物か? ありがたい……」


 ナナがお腹から無造作に取り出したポーション瓶をカカはほいと受け取る。

 カカはそのまま、くちばしに瓶をツッコんでごくごくとポーションを飲み始めた。


「……ぴよよ……!?」(……なにそれ……!?)


 砂コカトリスがくちばしを抑えて驚いているな。


「ぴよー……」(こわー……)


 ほとんどリアクションが同じだ……!

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