620.砂嵐の性質

「砂嵐がよく生まれる……?」


 少し疲れているが、大事なことのような気がする。


「わふー。ここから北西に行ったところに、柱がぶわーっとしているところがあるみたいなんだぞ」

「柱がぶわー……?」


 ステラも首を傾げているな。やはりちょっと抽象的だ。


 だが、ヴィクター兄さんがぴこっと羽を掲げた。


「ふむ、北西には確か……遺跡があったな。ぼろぼろの石柱が並んでいるところだ」

「ぴよ! きっとそれぴよよ!」

「ぴよー?」(それかもー?)

「ウゴ、砂コカトリスは自信なさげ……!」


 そこでヴィクター兄さんがぽよぽよと広間を出ていった。


「ちょっと待っててくれ。絵を持ってくる」


 ふむ、しかし本当にそこならヴィクター兄さんが詳しい場所も知っているかな。


「手掛かりが掴めたのはいいことだが……」


 ゴロゴロ……。


 砂嵐から雷の音がしている。激しい落雷はないが……。


「うーん……ちょっと集中して探ってみましょうか……」

「ぴよ! かあさま、どうするのぴよ?」

「こうするのです……!」


 ステラが地面にあぐらをかいて座ると、両手を床についた。


 トン、トン……と床をたまに叩いている。

 そのたびに波紋のような魔力がステラから放たれているな。


「広範囲で魔力の反響を探っているのか……?」

「凄く高度な技術だね。僕は魔力そのものを探るだけで精一杯なのに」


 少しの間静かにしていると、ステラが目をかっと見開いた。


「周辺の魔力を集めていますね、この砂嵐は……!」

「ぴよ! どーいうことぴよよ?」


 ディアが可愛らしく首を傾げる。


「つまり――また雷が落ちるようになります!」

「ウゴ! もしかして雷落ちて精霊がきて、それがずっと?」

「おそらく……!」


 むぅ、それはマズいな。

 というか周囲の魔力が集まって魔物が生まれる、ということは……。


「つまりダンジョン化しているということか?」

「現実世界は歪んでいませんが、魔物がえんえんと放出される環境になっていますね」


 ナナが羽をぴこぴこさせる。


「移動するダンジョンみたいなもの、そんな風に理解すればいいんだね」

「わふ、なるほどなんだぞ!」

「なるほど……しかし、ステラ様。だとすると問題があるように思います」


 レイアが腕を組んで悩んでいる。


「ダンジョンなら核を破壊するか、魔力の供給を断てば霧散します。この砂嵐はどちらが簡単でしょう」


 ステラが耳をぴくぴくさせながら、応える。


「はっきり言いますが……どちらも現段階だと難しいですね」

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