622.砂ぴよは知っている

 砂コカトリスは震えていたが、ポーションを飲み切ったカカは元気になったようだな。


「ふぅ、貴重なポーションをありがとう」

「師匠もお疲れみたいだからね」


 ぴここここ。

 カカが羽を上下させる。かなりの勢いだな。これは元気ある。


「……ぴよ」(……大丈夫みたい)

「ぴよよ……?」(なんだったんだ、今のは……?)

「ぴよ! あれは癖みたいなものぴよね!」


 ディアが砂コカトリスの頭をペチペチしながら解説している。……そこはディアに任せようか。


「それで遺跡についてだが――砂嵐との関連性がこれまであったのか?」


 俺の問いかけにカカが首を振る。


「あの遺跡自体は昔から知られていて、調査は終わっている。もしそうなら、何らかの手を打っていただろうな」

「ウゴ、それもそうだね」

「逆に近年は完全に放置されていたはずだ。砂漠の都市を繋ぐルートからは外れているし、オアシスも遠い」


 そこまで聞いて、俺は羽をぴこぴこ動かした。


「ふむ……海での話と似たような雰囲気を感じるな」

「そうだな。アレも異常事態だったが。ダンジョンが原因だった」


 ヴィクター兄さんも同意する。


「では、やはりその遺跡にも……何かがある、と」

「その可能性は高いだろうな」


 他に原因らしいモノも思い浮かばない。


「すぐにでも調べに行きたいが、外がこんな様子じゃな……」

「わっふ。まだまだ砂嵐は止みそうにないんだぞ」


 そこでカカが羽をぴこぴこさせる。


「いや、そうでもない……。この宮殿には地下に抜け道がある」

「おおっ、そうなのか……!」


 じゃあ、最悪そこを使って脱出できるわけだ。

 まぁ、砂嵐が消えないと戻れないので根本的な解決にはなっていないが。


「ん? だが、待て。あの通路の先は……」


 ヴィクター兄さんが口を挟む。


「ああ、魔物の生息地のど真ん中だ。作った後に侵食されてな……」

「……それは安全性に問題ですね」

「しかし魔物はそれほど強くはない。どうしてもダメなときはそこから――」


 そこまで話していると、ディアが突然大声を上げた。


「ぴよ! どーやら遺跡で怪しいところがあるみたいぴよ!」

「……ぴよ!」(……ふんす!)


 砂コカトリスが羽をぴこぴこさせている。

 おお、さすがにこの砂漠で長生き(多分)しているだけあって、物知りだな。


「なんだって!?」

「そんなところがあったのか……」


 カカとヴィクター兄さんも羽をぴこぴこさせている。ぴこぴこぴこ。

 ステラとレイアが、なんだか満足そうな微笑みを浮かべているな……。

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