610.サボテンのフルコース

 大広間に小さなテーブルセットが並べられる。

 外は相変わらず砂嵐だが……しかし晩餐っぽい雰囲気だけは味わえそうだ。


 テーブルは磨き上げられた乳白石、椅子も木目が美しい。


「わふ。砂ぴよたちはどうするんだぞ?」

「気持ちよく( ˘ω˘)スヤァしてますね……」


 まだお昼寝からいくらも時間が経っていない。


「ぴよ。お腹は空いてないかもぴよね」

「ウゴウゴ、さっきたくさん食べてたからね」


 15ぴよ分、80キロ近いサボテンを食べまくっていたからな。

 コカトリスは大食いなので、それくらいは食べてしまう。


 すやー、ぴよー。

 すややー、ぴよぅ……。


 砂コカトリスは全員、輪になって起きる気配はない。


「俺たちだけで食べるか。起きてお腹が空いたら、考えればいい」

「そうですね……!」


 ワゴンが運ばれ、コース料理が振る舞われる。


「ぴよよっ!」


 すちゃっとディアがフォークを掲げる。


 ヴィクター兄さんは立っており、饗応役に徹するらしい。まぁ、彼から呼ばれて来たわけだしな……。


「前菜は風味豊かなサボテンの一口料理だ。岩塩を添えたサボテンのサラダ、酢漬けのサボテン、サボテンの串焼き……」


 本当にサボテンがメインだな。

 さすがに串焼きにはアスパラなんかも刺さっているけど。


「ぴよ! おいしそーぴよ!」

「さっそく頂こう」

「恵みに感謝ぴよー!」


 もぐもぐ……。


「味はしっかりしていますね! サボテンの酸味と歯ごたえがよいです……!」

「ウゴ、それぞれ全然違うね!」

「そうだな。シンプルな味付けもあれば、凝った味付けもある……」


 個人的なお気に入りはサボテンの串焼きだな。フルーティーなソースがかかっており、抜群に好みだ。


 まぁ、着ぐるみのまま食べるのは一苦労だが……慣れてきた。もぐもぐ……。


「ぴよ。この串焼きおいしいぴよね……」

「わふわふ。我もこれ好きだぞ」

「……! 俺もそうだな」

「ウゴ、俺もこれ好き!」

「奇遇ですね、わたしもこれはいいと思っていました……!」


 おお、意見が一致したな。


「これは家でも作ってみたいな」

「ぴよ! サボテン串焼きぴよー!」

「味を覚えていきましょう……!」


 なおナナはひたすらトマトを食べていた。

 完全なサラダ状態だが……。


「もしゃもしゃ……!」


 いわく、この状態でもトマト以外よりはいいらしい……。

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